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網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)

更新日:2014年04月22日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

網膜と眼のしくみ

図1 眼の構造と物が見えるしくみ
図1 眼の構造と物が見えるしくみ
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網膜とは眼底(がんてい)と呼ばれる眼の奥一面に広がっている薄い膜状の組織であり、眼球をカメラに例えると、網膜はフィルムのような役割を果たしています。角膜を通って瞳孔(どうこう)から眼球内に入った光は、レンズの働きをする水晶体(すいしょうたい)により屈折した後、硝子体(しょうしたい:卵の白身のような粘り気のある透明の物質)を通り、網膜に映し出されます。このとき網膜で感じ取った光の刺激が視神経を通って脳に伝わり、「見える」と認識されます。

網膜芽細胞腫とは

網膜芽細胞腫は網膜に発生する悪性腫瘍(しゅよう)で、網膜芽腫と呼ばれることもあります。乳幼児に多い病気であり、出生児15,000~16,000人につき1人の割合で発症しています。

網膜に腫瘍ができると視力が低下しますが、乳幼児はまだ、ものが見える、見えないという状態がよくわからず、その状態を伝えられないことから、発見されたときには進行している場合も少なくありません。ある程度進行すると、光が腫瘍に反射して夜のネコの眼のように白く光って見えたり、左右の眼球の向きが合っていない状態(斜視:しゃし)になったりします。その他、まぶたの腫(は)れがみられることもあります。こうした症状に家族が気付いて受診する場合が多く、95%が5歳までに診断されます。早く治療が行われれば生命に関わることは少なく、治癒(ちゆ)させることができます。全国登録の結果では、約9割の患者が、がんの治癒の目安である治療後5年の経過以降も生存しています。

遺伝・遺伝子について

この腫瘍は、特定の遺伝子(RB1遺伝子)の異常と関連していることがわかっています。たまたま網膜の細胞の遺伝子が傷ついて腫瘍が発生したときは、必ず片眼性(へんがんせい:片方の眼球だけに発症)であり遺伝することはありません。

体の全ての細胞にこの遺伝子の異常がある場合は原因となる遺伝子が子どもに引き継がれることがあり、その子どもも網膜芽細胞腫にかかる可能性があります。両眼性(りょうがんせい)網膜芽細胞腫の全てと片眼性の10~15%が相当します。またRB1遺伝子の異常は、将来、骨肉腫など別の悪性腫瘍を引き起こす可能性もあるため、注意深く観察する必要があります。

家系に1人しか網膜芽細胞腫の患者がいない場合で両眼性の場合にはその患児の子どもには49%、片眼性の場合には5%で網膜芽細胞腫が発生するとされています。現在、遺伝子解析技術が進歩しており、血液検査により、ある程度遺伝子異常を検出できるようになってきました。遺伝子検査の目的、限界を十分理解していただくために、遺伝相談外来などでカウンセリングも行われています。相談の方法については担当医にご相談ください。
【遺伝・遺伝子について、もっと詳しく】
網膜芽細胞腫の発症頻度は15,000人の出生につき1人の割合で、性別、人種、地域による違いはありません。現在、わが国では毎年約80人が発症しています。両眼に生じる場合と片眼だけの場合とがあり、その比率は両眼1に対し片眼2.6です。この腫瘍は13番染色体長腕の13q14という部位にあるがん抑制遺伝子であるRB1遺伝子の異常によって発生することがわかっています。

身体の1つの細胞には23対の染色体があり、同じ遺伝子が2個あります。もともと身体の細胞に遺伝子の異常がなく、網膜の一部の細胞だけで一対のRB1遺伝子の両方が働かなくなり、その結果、腫瘍が発生することがあります。この場合は必ず片眼性であり、遺伝性はありません。

一方、親の精子か卵子にRB1遺伝子の異常があると、これから発生した胎児の身体のすべての細胞はRB1遺伝子の一方に異常をもつことになります。この状態でも細胞は正常に働きますが、網膜がつくられる過程で、他方のRB1遺伝子に異常が生じると、網膜芽細胞腫が発生すると考えられています。両眼性の症例すべてと、片眼性の症例の10~15%がこの状態とされています。RB1遺伝子は細胞分裂に重要な働きをもつため、将来骨肉腫など別の種類の悪性腫瘍の発生頻度が高いので注意が必要です。

すでに網膜芽細胞腫の子(患児)がいる場合、次に生まれる子や患児の子に網膜芽細胞腫が発生する確率は、以下のように計算されています。家系に1人しか網膜芽細胞腫の患者がいない場合、両眼性の場合はその患児の子には49%、その患児の弟や妹には3%の確率で発生し、片眼性の場合はその患児の子には5%、その患児の弟や妹には2%の確率で発生します。

遺伝子解析技術の進歩により、血液検査で遺伝子異常を検出できるようになってきました。しかしながら、現在の技術では60~80%しか発見できません。着床前診断、羊水検査などの技術もありますが、網膜芽細胞腫は現在の倫理指針では対象になりません。遺伝子検査の目的、限界を十分理解していただくために、遺伝相談外来などでカウンセリングも行われています。
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