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網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)

更新日:2014年04月22日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。
治療法は腫瘍が眼球内にとどまっているか、眼球外に広がっているかによって大きく異なります。 眼球内にとどまっている場合、眼球をなるべく摘出(てきしゅつ)しないで、可能な限り残す方針で治療するという考え方が最近では多くなってきています。 眼球を摘出することによる治療効果や、眼球を残せる可能性について、担当医とよく相談しましょう。

腫瘍が眼球内にとどまっている場合

視力の温存が期待できない場合や緑内障などを合併している国際分類E群の場合には、眼球摘出が行われます。摘出した眼球の病理検査で眼球外にも腫瘍の広がりが認められた場合は、転移の危険性を減らすために抗がん剤治療を行います。

視力の温存が期待できる場合には眼球を残す方法で、腫瘍の治療を行います。局所治療、抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせて行いますが、標準治療**はまだ確立していないのが現状です。

治療の効果は眼底検査で判断します。画像検査では腫瘍の残存と瘢痕(はんこん)化組織の判断は困難です。

*病理検査:採取した組織に腫瘍細胞があるかどうか、あるとすればどのような種類の細胞かなどについて顕微鏡で詳しく調べる検査。
**標準治療:治療効果・安全性の確認が行われ、現在利用できる最良の治療。

転移や眼球外への広がりがみられる場合

手術(外科治療)

可能な限り腫瘍を切除します。術後は全身に対する抗がん剤治療や放射線治療を行いますが、患者数が少ないため、標準治療は確立していません。

手術治療では、腫瘍を眼球ごと摘出します。眼球内の腫瘍だけを切除することは、転移の危険性が高いため行いません。そのため、網膜芽細胞腫では、腫瘍切除が眼球摘出と同等の意味になります。全身麻酔をして行われる手術は、1時間程度で終わります。手術後はまぶたの腫れや皮下出血が見られる場合がありますが、1~2週間でおさまり、傷が落ち着けば、義眼(ぎがん)を入れることができます。

手術後は眼臉腫脹や皮下の出血斑が生じることがありますが1週間から2週間で消えます。手術直後に有窓義眼と呼ばれる透明なプラスチックの義眼を入れておき、結膜嚢の形成を助けます。術後2週から4週で角膜の描いてある仮義眼を装用します。その後義眼を調整し、本義眼をつくることになります。

義眼について

義眼は正面を向いたときの見た目はよく、まばたきもできますし、涙も流れます。横を見るときに動かすことはできませんが、顔を視線の方向に向けて見るようにすればさほど目立ちませんし、人前で義眼がずれることはほとんどありません。ゴーグルを着用すれば水泳を楽しむこともできます。義眼は毎日はずして結膜(白目の部分)をきれいに洗い、清潔にしておかなければいけません。また、成長に合わせて義眼を変える必要があります。めやにが多いときには、眼の軟こうや点眼剤を使います。

なお、義眼台という台を入れておくと少しは眼を横に動かすことができますが、後に義眼台が外に飛び出してしまい取り除かなければならないこともあります。義眼台を入れるかどうかは、担当医とよく話し合って決めましょう。

局所治療

温めたり凍らせたりすることで、腫瘍を破壊します。

レーザー照射(温熱療法)

比較的小さな腫瘍に対してはレーザー単独で、大きな腫瘍に対しては化学療法と併用して行います。

冷凍凝固

-80℃に冷却した専用の器具を眼球の壁に当て、腫瘍を凍らせて破壊します。網膜の周辺部(眼球の前方)にある比較的小さな腫瘍に対して行います。術後に結膜の充血や腫れがみられます。

抗がん剤治療(化学療法)

抗がん剤を用いて腫瘍を小さくします。

全身化学療法

腫瘍の眼球外への広がりや転移がみられる場合には可能な限り腫瘍を切除しますが、切除できない場合や、切除できた場合でも再発の危険性を低くするため、強力な抗がん剤による治療を行います。これは生命維持のための化学療法です。

これとは別に、眼球温存のための全身化学療法があります。局所治療では治癒が難しい大きな腫瘍(国際分類B~D群)に対しては、まず全身化学療法を行います。この治療により、眼球内の腫瘍は小さくなりますが、この治療だけで眼球の腫瘍を治癒させることは難しいため、局所治療とともに行います。また、抗がん剤は腫瘍だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすため、毛が抜けたり、吐き気がしたり、白血球や血小板が減るなどの副作用が出る場合があります。

局所化学療法(眼のみの治療)

局所化学療法は、全身化学療法もしくは放射線を照射したにも関わらず残っている腫瘍(残存腫瘍)や、再発した大きな眼内腫瘍に対して行います。眼球に流れる眼動脈(がんどうみゃく)に抗がん剤を少量注入する方法(選択的眼動脈注入法)で行われ、眼の腫瘍のみに対する治療となるため、正常なほかの細胞を傷つけることが少なく、副作用が比較的軽い治療法です。また、結膜や眼球に抗がん剤を注入する方法もあります。いずれも標準治療ではなく研究的な治療法であり、現在は効果を評価している段階です。

放射線治療

X線などの放射線によって腫瘍を破壊する治療です。

外照射

週に5日間、約4週間にわたり、主に顔の側方からX線を当てます。1回の照射時間は短く麻酔の必要もないため、主に外来で行われます。治療効果は高いのですが、放射線の影響が周囲の組織にも及ぶため副作用(後述)が起こりやすく、現在はほかの治療が困難な場合に限り、行われています。 側方から照射する理由は、水晶体の被曝による白内障を避けるためです。 放射線治療により約60%の症例で腫瘍が寛解し、治療効果は最も期待できますが、放射線による二次がん、眼部の骨の成長障害など副作用も多く、現在は治療困難な進行例に限り行われます。 陽子線治療(陽子線という放射線を用いて腫瘍のみに効率よく集中的に当てる治療)や、定位放射線治療(放射線を腫瘍の形に一致させて集中的に当てる治療)という新しい方法も開発されていますが、眼球の固定が難しい上に、小児の場合は腫瘍に正確に放射線を当てるためには全身麻酔が必要であることから、限られた施設でのみ行われているのが現状です。

小線源治療(内照射)

放射線を発生する金属(ルテニウム)の板を眼球の外から腫瘍部に固定して、腫瘍にのみ放射線を当てる治療です。周辺の組織への放射線の影響を減らすことができます。手術後はものが二重に見えることがあります(複視)。この治療は鉛でおおわれた特殊な病室で行われますので、家族でも限られた時間しか入室できません。

眼球を残すにあたって

腫瘍の大きさや場所により視力への影響は異なるため、眼球が残せても良好な視力が保てるとは限りません。また、眼球を残すことで、見た目は義眼よりもよくなる可能性がありますが、考慮すべき問題もあります。
●再発や転移の可能性、抗がん剤による副作用の可能性は残ります。
●眼球を残すことにより、治療の回数が増えると、体への負担が大きくなります。
●眼球を残す治療によって眼球が小さくなったり、斜視や白内障などが起こり、外見的に目立たなくすることが望めなくなる場合があります。特に放射線治療を行った場合、眼の周りの骨の成長が悪くなってしまいへこんだり、顔の骨や筋肉に2次がんが発生する可能性があります。また、下垂体への照射により、全身の成長障害も考えられます。

予後

生命予後は、全国登録の結果から5年生存率93.1%、10年生存率90.6%と報告されています。眼球外に腫瘍が広がっている場合には、5年生存率71.2%、10年生存率66.0%に低下します。

眼球保存率は、全体で約50%程度です。国立がんセンターの5年眼球保存率は非進行例(国際分類のA~C)で83%、進行例(国際分類のD~E)で33%でした。
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