以上のように、患者背景や治療方法がアメリカと日本では大きく異なり、また肝がん診療ガイドラインとPDQの記述形式も異なるためここのポイントごとに相違点を述べることが困難であった。以下に日常診療との相違点を付記した。
| No | PDQ | 日本における日常診療 |
| 1 | 外科的切除以外の治療法は臨床試験の一環として実施されるのが最良である。 | 経皮的エタノール注入療法、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓療法は通常診療として、行われている。 |
| 2 | 肝細胞がんの主たる徴候:アルカリホスファターゼの漸増 | アルカリホスファターゼは重要視されていない。 |
| 3 | 切除を予定している患者には、MRアンギオグラフィーとともに撮影する核磁気共鳴画像(MRI)による術前評価が必要である。 | MRアンギオグラフィーに限らず、超音波、CT、血管造影と血管造影CT、MRIなどを幅広く行っている。 |
| 4 | 腹腔鏡検査によって、転移性病変、両葉性病変、あるいは不十分な残肝の検出が可能で、開腹検査の必要性を避けられる。 | 肝細胞がんの術前に、腹腔鏡検査はほとんど行われていない。 |
| 5 | 組織学的分類:肝細胞がん(fibrolamellar変異型) | Fibrolamellar変異型はほとんど認められないことより、肝細胞がんに含まれ、別分類にはならない。 |
| 6 | 完全な腫瘍の外科的切除が適切ではない。このような患者は肝移植を検討すべきであろう。 | 肝移植は最終的な手段としての位置づけであり、経皮エタノール注入法、ラジオ波焼灼療法、または肝動脈化学塞栓療法が選択されることが多い。 |
| 7 | 部分肝切除を施行した場合の5年生存率は30〜40% | 5年生存率はおよそ50% |
| 8 | 肝がん切除後の化学療法または生物学的療法: I-131リピオドールと養子免疫療法 | I-131リピオドールと養子免疫療法はあまり行われていない。日本でのRCTで、インターフェロンも生存期間の延長が示され、期待されている。また、レチノイドやビタミンKによる発癌抑制効果についてもRCTによる検証がすすめられている。 |
| 9 | 小さな肝細胞がんを有する肝硬変患者を対象とした1件のランダム化試験は、唯一の治療形態としてラジオ波焼灼療法を受けた患者では、経皮エタノール注入療法に比べ、局所無再発生存率の改善がみられた。しかし、全生存率は変わらなかった。 | 最近、無作為化比較試験が3試験報告されており、すべてラジオ波焼灼療法の生存期間が長いことが示されている。 |
| 10 | 門脈圧亢進、門脈血栓症、または臨床的な黄疸のあるときには化学塞栓療法は禁忌である。 | 門脈圧亢進は、化学塞栓療法の禁忌としていない。また、門脈血栓症は側副血行路が発達していれば、禁忌としていない。 |