日本ではD2リンパ節郭清を伴う胃手術が確立、普及しており、腫瘍の十分な局所コントロールが安全に行われています。患者の手術リスク(年齢、併存症、肥満度など)も欧米に比べて格段に低く、また早期の胃がんがよく発見されるため、手術療法が治療の中心をなしています。
これに対し、欧米では高度の進行がんが多く、手術合併症率や死亡率も高く、リンパ節郭清もほとんど行われません。これを反映して術後の再発形式も局所再発が高率です。
日本では、治癒切除後の微小遺残病変に対してさまざまな補助化学療法が試みられてきましたが、2006年、TS-1による効果が初めて大規模臨床試験で示されました。今後、これを軸に、さまざまな補助化学療法が評価されていくと考えられます。
これに対しアメリカでは、D0/D1郭清という、いわば不十分な局所制御のあとに化学放射線療法を加えることの有用性がRCTで示されました。手術+照射により局所制御が向上したわけで、これはアメリカで大きな波となり、現在、術前化学放射線療法など、照射を中心とした補助療法の臨床試験が次々と展開されています。
一方欧州は、患者背景や手術療法に関してアメリカに近い環境ながら、アメリカほど照射に前向きではなく、3剤併用化学療法による術前化学療法のRCTが行われ、これが生存に寄与するという結果が得られました。現在、このレジメンを軸に術前化療の臨床試験が展開されています。
このように、胃がん治療に関しては、手術成績、患者背景などに大きな東西格差がみられ、それぞれが独自のエビデンスを得ています。それを理解したうえで、たとえば日本でも、肥満患者で十分なリンパ節郭清の行えなかった症例に対して補助化学放射線療法を試みる、といった応用が可能と考えられます。