胃X線検査
胃がん死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診・任意型検診として胃X線検査を推奨します。ただし、間接撮影と直接撮影では不利益の大きさ(直接撮影の方が放射線被曝線量が多い)が異なるので、事前に不利益に関する十分な説明が必要です。
胃内視鏡検査、ペプシノゲン法、ヘリコバクターピロリ抗体
胃内視鏡検査、ペプシノゲン法、ヘリコバクターピロリ抗体は、胃がん死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診として実施することは勧められません。個人を対象とした任意型検診(人間ドックなど)として実施する場合には、胃がん死亡率減少効果が不明であることについて適切に説明する必要があります。
これまでのわが国で行われた研究をまとめると、X線検診を受けることにより、男性では61%、女性では50%の胃がん死亡率の減少が認められました。このほかの複数の研究でも、X線検診による胃がん死亡率の減少が確認されています。X線検診の感度(がんのあるものをがんと正しく診断する精度)はおおむね70〜80%、特異度(がんでないものを正しくがんがないと診断する精度)は90%、陽性反応適中度(精密検査が必要と判断されたうち、本当にがんがあった割合)は0.7〜2.0%です。
さらに、がん発見率や早期がん率などの間接的証拠でも、精度評価や生存率など死亡率減少効果を導く多くの研究があることから、胃X線検査法による40歳以上を対象とした逐年の胃がん検診は死亡率減少効果を示す相応の根拠があるとしました。不利益は許容範囲内ですが、間接撮影と直接撮影では不利益の大きさが異なる(被曝線量は直接撮影の方が多い)ことから、事前に不利益に関する十分な説明が必要です。
ペプシノゲン法を導入することによって、胃がん死亡率が減少したという報告があります。しかし、新たにペプシノゲン法を導入した地域では、すでに何年もの間接X線検診が行われていたにもかかわらず、X線検診受診歴などについての検討が十分行われていませんでした。こうした質の低い研究だけからは、検診を評価することはできません。したがって、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分と判定されました。
胃がん検診の偶発症に関する報告は少ないですが、バリウム飲用による副作用として、排便遅延や硬い糞便の排泄の訴えがあります。便秘に関しては、緩下剤の投与が有効であるとされています。誤嚥に関しては、男性・高齢者に多いとされ、65歳以上では、男性で0.17%、女性で0.08%に誤嚥が発生すると報告されています。バリウム腹膜炎による穿孔44人のうち、小腸1人、大腸6人の死亡例が報告されています。
間接撮影では前投薬は使用しませんが、直接撮影では人間ドックなどで鎮痙剤を投与する場合があります。前投薬を使用した場合には、内視鏡検査と同様に血圧低下やショックなどの可能性があります。ただし、系統的な報告はなく、発生率は不明です。服薬に関しては、抗凝固剤や降圧剤などは服用をしても検査に支障はなく、休薬による不利益はほとんどありません。
現在は、間接X線はすべてI.I.TVを使用しています。医療機関における胃X線検査1件あたりの実効線量は3.7〜4.9mSv、間接撮影による胃X線検査1件あたりの実効線量は0.6mSvです。健康に影響を与える放射線被曝はないと考えられています。