がんと共に働く:[がん情報サービス]

  • がんと共に働く まず一歩前へ。
  • はじめに
  • 本人編
  • 家族編
  • 病院編
  • 職場編
  • 地域編
  • まとめ

02 「どこまで決めるか」ではなく「どこまで決めないか」

 人事部の仕事は、一言でいうならば、社員が安心して仕事に集中できる環境を作ることだと思います。

 例えばお給料が安定して支払われるということも、そんな環境づくりのひとつです。また、頑張っている社員が「がん」にかかってしまい治療中で会社のサポートが必要になった時、その社員が復帰した時の環境づくりも仕事のひとつです。

 もちろん、人事部だけで当事者が復帰できるような就労環境すべてを作り出すことは不可能です。所属する部署や現場など周囲の協力も必要になりますし、健康面や精神面では産業医・保健師などのスタッフの方々にも協力してもらう必要があります。

 がんになった社員をどのようにサポートすべきか。

 それはがんにかかった社員一人ひとりの状況によって異なります。たとえ同じ種類のがんであっても、それぞれ発見時の病期(ステージ)も違いますし、同名のがんであってもいろいろなタイプがあるからです。効果的な治療は人によって違う、と考えるべきです。

 人事部ががんにかかった社員が受ける治療内容の細かなところまで把握する必要はありませんが、診療を受けるためにどのくらい休職しなければならないのか、治療の副作用や体調面でどんな影響が及ぶ可能性があるのか、などは知っておく必要があります。これは、復帰した時にどんな職種や現場が適切なのかを決めていくために必要な情報です。

 がんの治療パターンはいく通りもあり、治療に必要な時間も通院回数も一人ひとり違うと考えるべきです。治療以外の部分でも、体調が良くなったり悪くなったりの「波」の出方もそれぞれ異なります。

 また、通勤にかかる時間や家族構成なども社員によって異なるわけで、個別に配慮する必要があります。病状や治療の内容によって、これまで担当していた仕事を続けられる場合もあるでしょうし、別の仕事に転換しなければならない場合もあるでしょう。

 まさに、がんにかかった社員への対応は個別に行わなければならないのです。 だから、がんにかかった社員への対応は、先入観を持たずに行いましょう。

 たまに、がんにかかった社員のサポート経験のある所属長が、次にがんにかかった社員が出た時に「この人はこの病気だから、こういう対応パターンで良いよね」と過去の経験でものを言うことがあります。けれども、今申し上げたように、過去のパターンが次のケースに当てはまるとは限らないのです。安易に経験に頼らず、先入観にとらわれず、判断していく必要があります。

 一方、がんにかかった社員をサポートする事例が積み重なっていくと、人事部としては、自社でどのような対応が可能か、どんな方法や選択肢があるのかが、より具体的に分かってきます。

 一企業としてサポートできる範囲にはやはり限界があります。就業規則で規定されている範囲と、その社員の治療のために必要な環境の間にどう折り合いをつけるのか、現場で所属長の裁量に任せられる範囲はどこまでか……。企業としての経験を積み重ねていくほど、社員に対するサポートもスムーズになっていくでしょう。

 一番理想的なのは、「柔軟な対応」です。

 けれども、実際には会社には規則や制度があります。その前提を崩してまで対応するのは困難です。また、よかれと思って制度を一部変えたことで、別の弊害が出てくる可能性もあります。

 現状の就業規則や制度を踏まえて、一体どこまでが対応可能なのか? その運用が現場の所属長の裁量にどの程度任せられるのか? 職場での配慮で対応できることは何か? 

 私たちはがんにかかった社員に対する対応策を「制度」「運用」「配慮」の3つに分けて考えています。以上をチャート化すると次のようになります。

「制度」「運用」「配慮」の連携が大切

 会社としてできる「柔軟な対応」とは、つまるところ、[1]規則や制度で対応可能なこと、[2]現場の裁量で任せられること、[3]周囲の配慮や気配りで対応できること、の3つを組み合わせながら、個別事例に対応することだと私たちは考えています。

 また「柔軟な対応」を実現するには、対応のルールを事前に細かく決めすぎないことも大事です。

 全てがルール化されてしまうと、対応しきれない事例が必ず出てきてしまうからです。前例が積み重なってきても、私自身はルールを「どこまで決めるか」ではなく「どこまで決めないか」を重要視しており、社員一人ひとりに合わせて選択できる幅を広くとることを心掛けています。

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  • 01 貴重な人材を簡単に手放さないでください
  • 02 「どこまで決めるか」ではなく「どこまで決めないか」
  • 03 オープンな雰囲気が会社の力に、そして誇りになります
  • TOPICS 01-1 情報を集め、利用できる制度や支援の仕組みを活用しましょう
  • TOPICS 01-2 どう生き、働きたいか。 本人が主体的に 動くことが大切です
  • TOPICS 01-3 CSRプロジェクトを通じて感じた、仕事を続けることの大切さ
  • TOPICS 02-1 社員と会社、双方向の コミュニケーションを大事に
  • TOPICS 03-1 がんにかかる前の 信頼関係が、 自分を支えてくれました
  • TOPICS 03-2 がん患者さんが働きやすい就労の場所を創りたい

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  • 本人編
  • 家族編
  • 病院編
  • 職場編
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