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子宮頸がん

子宮頸がん 治療

子宮頸がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法、緩和ケアがあります。

1.病期と治療の選択

治療は、がんの進行の程度を示す病期やがんの性質、体の状態などに基づいて検討します。子宮頸がんの治療を選択する際には、次のことを調べます。

1)病期(ステージ)

がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。子宮頸がんでは、治療開始前に病期を決定する進行期分類を用いていて、Ⅰ期〜Ⅳ期に分けられ、早期から進行するにつれて数字が大きくなります(表1)。

表1 子宮頸がんの進行期分類(日産婦2020、FIGO 2018)
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2020、FIGO 2018) Ⅰ期
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2020、FIGO 2018) Ⅱ期
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2020、FIGO 2018) Ⅲ期
表1 子宮頸がんの臨床進行期分類(日産婦2020、FIGO 2018) Ⅳ期
日本産科婦人科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会,日本放射線腫瘍学会編.子宮頸癌取扱い規約 臨床編 第4版.p4-5,7-11.2020年,金原出版.より改変

2)がんの種類(組織型)

子宮頸がんは、顕微鏡下でのがん組織の見え方によって、いくつかの組織型に分類されます。主な組織型としては、扁平へんぺい上皮がんと腺がんがあげられます。扁平上皮がんが全体の8割程度、腺がんが2割程度を占めます。

扁平上皮がんには、 CIN(子宮頸部けいぶ上皮内腫瘍)と呼ばれるがんになる前の状態が存在します。CINには3つの段階があり、CIN1、CIN2、CIN3と進みます。CIN3は以前「上皮内がん(CIS)」とされていた病変を含み、扁平上皮がんの前がん病変とされています。腺がんの前がん病変はAIS(上皮内腺がん)といいます。前がん病変(CIN3またはAIS)があることが分かった場合には、治療を行います。また、CIN1、CIN2の場合には、引き続き定期的に検査を行って進行していないか確かめます。

図2 扁平上皮がんの発生・進行
図2 扁平上皮がんの発生・進行のしかた(イメージ)の図
日本婦人科腫瘍学会編.患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン.2016年,金原出版.を参考にして作成
子宮頸部異形成の診断と治療について、動画でわかりやすく紹介しているページです。

3)治療の選択

治療は、がんの進行の程度や組織型に応じた標準治療を基本として、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、担当医と話し合って決めていきます。

図3、図4は、子宮頸がんの標準治療を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。前がん病変(CIN3またはAIS)やⅠA期の子宮頸がんでは、まず子宮頸部円錐えんすい切除術せつじょじゅつなどで組織診を行い、その結果に基づいて治療方針を決めていくことが一般的です(図3)。ⅠB期やⅡ期では手術や放射線治療と、放射線治療と薬物療法を同時に行う同時化学放射線療法、Ⅲ期やⅣA期では同時化学放射線療法、ⅣB期では薬物療法がそれぞれ治療の中心となります(図4)。

図3 子宮頸部前がん病変と子宮頸がん(IA期)の治療の選択
図3 子宮頸がんの進行期分類の図解の図
日本婦人科腫瘍学会編,子宮頸癌治療ガイドライン2022年版.2022年,金原出版.を参考にして作成
図4 子宮頸がん(ⅠB1期~Ⅳ期)の治療の選択
図4 子宮頸がんの治療の選択の図
日本婦人科腫瘍学会編,子宮頸癌治療ガイドライン2022年版.2022年,金原出版.を参考にして作成

妊娠や出産について

子宮頸がんの治療は、妊娠や出産に影響を及ぼすことがあります。妊娠を希望する方で、子宮頸がんの治療を受ける場合には、将来の妊娠や出産に与える影響について、治療開始前に担当医に確認しましょう。

前がん病変からⅠB1期までの方で、将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性にんようせいを温存すること(妊娠するための力を保つこと)が選択肢となる場合があります。ただし、妊孕性温存治療では、将来の妊娠の可能性を残すため、通常であれば切除する部分を残すことになりますので、再発などのリスクを考慮しなければなりません。また、治療後に妊娠したときの流産・早産のリスクなどが高まるとされているほか、対応できる病院も限られています。妊孕性温存治療を検討するときには、自分のがんの状態や再発などのリスクについて十分理解した上で、自分の希望を伝えて、担当医とよく相談することが必要です。

2.手術(外科治療)

CIN3、AIS、およびⅠ~Ⅱ期の子宮頸がんに対する治療法です。がんの広がりに応じて、ⅢC期でも手術を検討することがあります。がんの広がりにより、子宮頸部の一部または子宮全部を切除します。卵巣と卵管は、年齢や病状に合わせて切除するかどうかを決めます。切り取った組織を顕微鏡で詳しく調べてがんの広がりを診断し、手術後の治療方針を決めます。

前がん病変に対する単純子宮全摘出術では、腹腔鏡ふくくうきょう下手術も広く行われています。子宮頸がんに対する腹腔鏡下手術も一部保険適用になっていますが、実施可能な病院は限られています。

1)手術の種類

(1)円錐切除術

子宮頸部の一部を円錐状に切除し(図5)、病理組織学的に病変の広がりを詳しく調べます。CIN3に対しては、病変を完全に取り切る治療として行います。子宮の多くの部分を残すことができますが、その後の妊娠や出産に影響が出る場合もあります。

図5 円錐切除術の範囲
図5 円錐切除術の範囲の図

(2)単純子宮全摘出術

子宮頸部の周りの組織は取らずに、子宮だけを切除します(図6)。円錐切除を行い、切除した面にCIN3があった場合や、診断がAISまたはごく早期のがん(ⅠA1期)だった場合に行います。おなかを切り開いて切除する開腹手術、おなかを切らずにちつから切除する腟式手術、腹腔鏡下手術のいずれかで行います。子宮を摘出するため、妊娠することはできなくなりますが、性交渉は可能です。

図6 単純子宮全摘出術の範囲
図6 単純子宮全摘出術の範囲の図

(3)準広汎こうはん子宮全摘出術

がんを取り残さないように、単純子宮全摘出術よりも少し広めに子宮を切除する方法です(図7)。子宮と一緒に、子宮を支えている基靱帯きじんたいなどの子宮頸部の周りの組織の一部と、腟の一部を切除します。膀胱の神経の大部分を温存することができるため、尿が出にくくなるといった術後の排尿のトラブルはほとんど起こりません。子宮を摘出するため、妊娠することはできなくなりますが、性交渉は可能です。

図7 準広汎子宮全摘出術の範囲
図7 準広汎子宮全摘出術の範囲の図

(4)広汎子宮全摘出術

がんを完全に取り切るために、準広汎子宮全摘出術よりもさらに子宮を広く切除する方法です(図8)。子宮と一緒に、子宮の周りの組織や腟を大きく切除します。また、骨盤内のリンパ節も一緒に切除するリンパ節郭清を行います。がんを完全に取り切ることができる可能性は高くなりますが、リンパ浮腫、排尿のトラブル、性生活への影響などが起こることもあります。卵巣を切除するかどうかは、年齢や組織型、病期なども考慮して決めます。

図8 広汎子宮全摘出術の範囲
図8 広汎子宮全摘出術の範囲の図

(5)広汎子宮頸部摘出術

妊孕性を温存する(妊娠するための力を保つ)ために、子宮体部たいぶと卵巣を残し、それ以外は広汎子宮全摘出術と同じ範囲を切除します(図9)。通常であれば広汎子宮全摘出術が必要な病期の場合で、将来子どもをもつことを望んでいて、妊娠可能な年齢のときに検討します。主な手術方法として、おなかを切り開いて切除する開腹手術と、おなかを切らずに腟から切除する腟式手術があります。本来取るべき子宮体部と卵巣を残すため、ⅠA2期またはⅠB1期で明らかなリンパ節転移がないなどの一定の基準を満たしている必要があります。

図9 広汎子宮頸部摘出術の範囲
図9 広汎子宮頸部摘出術の範囲の図

2)手術後の合併症など

子宮頸がんの手術の合併症には、腸閉塞ちょうへいそくなどがあります。

腸閉塞は、腸の炎症による部分的な癒着ゆちゃく(本来はくっついていないところがくっついてしまうこと)などによって、腸管の通りが悪くなる状態のことをいいます。便やガスが出なくなり、おなかの痛みや吐き気、嘔吐おうとなどの症状が出ます。多くの場合、食事や水分を取らずに点滴をしたり、胃や腸に鼻からチューブを入れて胃液や腸液を出したりすることなどで回復しますが、手術が必要になることもあります。

このほか、手術後に起こりうる日常生活への影響としては、排尿のトラブル、便秘があります。また、リンパ節を切除した場合にはリンパ浮腫(足や下腹部のむくみ)、卵巣を切除した場合には卵巣らんそう欠落けつらく症状しょうじょう(更年期障害と同様の症状)などが起きることもあります。詳しくは、関連情報「子宮頸がん 療養 2.日常生活を送るうえで 1)手術後や放射線治療後の日常生活」をご覧ください。

3.放射線治療

放射線治療は手術、薬物療法などと並んで、がんに対する主な治療法の1つです。細胞内のDNAを直接傷つける高エネルギーのX線やガンマ線などの放射線を、がんに照射し治療するものです。

子宮頸がんの放射線治療には、骨盤の外から放射線を照射する外部照射と、子宮や腟に放射線を出す器具を入れて直接子宮頸部のがんに照射する腔内くうない照射、また、放射線を出す物質をがん組織やその周辺組織内に直接挿入して行う組織内照射があります。

子宮頸がんでは、ほとんどの病期で放射線治療を行うことができますが、比較的進行したがんの場合には、治療の効果を高めるために、細胞障害性抗がん薬とともに放射線治療を行う化学放射線療法も検討されます。また術後再発リスクの高い人や、初回治療で放射線治療を行わなかった人の再発の際の治療手段にもなります。

放射線治療を行うと、卵巣の機能はほぼ失われてしまいますが、排尿機能や性生活への影響は手術より放射線治療のほうが軽いとされているため、年齢や全身状態の指標であるパフォーマンスステータス(PS)、他の持病の有無なども考慮しながら治療法を選択します。

また、重粒子線治療が一部の子宮頸がんに対して保険適用となりましたが、治療を行うことのできる施設は限られており、2023年1月現在、標準治療にはなっていません。

放射線治療の副作用

放射線治療の副作用には、照射開始後数週間以内に起こる急性反応と、治療後数カ月から数年たってから起こる晩期合併症があります。

急性反応には、だるさ、吐き気、下痢や、照射された部位の皮膚炎、粘膜炎、直腸炎や膀胱炎などがあります。しかしこれらは治療終了後には通常自然に治っていきます。

晩期合併症や、卵巣の機能が失われることにより起こる卵巣欠落症状(更年期障害と同様の症状)などについては、関連情報「子宮頸がん 療養 2.日常生活を送る上で 1)手術後や放射線治療後の日常生活」をご覧ください。

4.薬物療法

子宮頸がんの薬物療法は、主に、遠隔転移のある進行がんや再発したがんに対して行われる治療法です。生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を保ち生存期間を延ばすことが治療の目標となります。

1)細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞の増殖の仕組みに注目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬です。がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受けます。

子宮頸がんに対しては、白金製剤(細胞障害性抗がん薬のうち白金を含むグループの薬)のみによる薬物療法と、白金製剤以外の細胞障害性抗がん薬と併用する薬物療法が行われています。また、放射線治療の効果を高めるために白金製剤が使われることがあります。

2)分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質を標的にしてがんを攻撃する薬です。子宮頸がんでは、細胞障害性抗がん薬を使用する際に、併用することがあります。

3)薬物療法の副作用

子宮頸がんの治療に用いられる細胞障害性抗がん薬の主な副作用には、吐き気や嘔吐、脱毛、白血球減少、末梢まっしょう神経障害(しびれ、感覚低下、痛み)などがあります。また、分子標的薬の副作用としては、消化管に穴が開く、血栓ができて血管がつまる、高血圧、傷が治りにくい、出血、タンパク尿などが報告されています。

副作用については、使用する薬ごとに異なり、その程度も個人差があります。最近では副作用を予防する薬なども開発され、特に吐き気や嘔吐については、予防(コントロール)することができるようになってきました。

しかし、副作用の種類や程度によっては、治療が継続できなくなることもあります。自分が受ける薬物療法について、いつどんな副作用が起こりやすいか、どう対応したらよいか、特に気をつけるべき症状は何かなど、治療が始まる前に担当医によく確認しておきましょう。また、副作用と思われる症状がみられたときには、迷わずに担当医に伝えましょう。

5.緩和ケア/支持療法

がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。

緩和ケア/支持療法は、がんに伴う心と体、社会的なつらさを和らげたり、がんそのものによる症状やがんの治療に伴う副作用・合併症・後遺症を軽くしたりするために行われる予防、治療およびケアのことです。決して終末期だけのものではなく、がんと診断されたときから始まります。つらさを感じるときにはがんの治療とともに、いつでも受けることができます。本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えましょう。

「さまざまな症状への対応」には、症状別に、がんそのものやがんの治療に伴って起こることがある症状や原因の説明、ご本人や周りの人ができる工夫などを紹介しているページへのリンクを掲載しています。

6.リハビリテーション

リハビリテーションは、がんやがんの治療による体への影響に対する回復力を高め、残っている体の能力を維持・向上させるために行われます。また、緩和ケアの一環として、心と体のさまざまなつらさに対処する目的でも行われます。

一般的に、治療中や治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示のもと、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などをリハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

7.再発した場合の治療

再発とは、治療によって、見かけ上なくなったことが確認されたがんが、再びあらわれることです。原発巣(最初にできたがん)のあった場所やその近くに、がんが再びあらわれることだけでなく、別の臓器で「転移」として見つかることも含めて再発といいます。再発の治療は、再発した場所が、以前に治療で放射線をあてたことのある部位か、あてていない部位かによって大きく方針が異なります。

放射線をあてていない部位に再発した場合には、放射線治療や、放射線治療中に細胞障害性抗がん薬を併用する化学放射線療法を検討します。骨盤内に再発した場合には、直腸や膀胱などもあわせて摘出する骨盤除臓術が行われることもあり、その場合は人工肛門や人工膀胱をつくることが必要になります。また、細胞障害性抗がん薬や分子標的薬を使用した薬物療法を行うこともあります。がんが最初にできた場所から離れた臓器に再発した場合や、再発したがんの数が多い場合には、症状を和らげ、生活の質を保つための放射線治療を行います。

放射線をあてたことのある部位に再発した場合には、手術や2度目の放射線治療をすると、合併症の頻度が高くなります。そのため薬物療法が選ばれることも多いですが、効果があまり期待できないため、生活の質を保つために、痛みなどの症状を和らげる治療も検討します。

更新・確認日:2023年02月28日 [ 履歴 ]
履歴
2023年02月28日 「子宮頸癌治療ガイドライン 2022年版」「子宮頸癌取扱い規約 臨床編 第4版」より内容を更新しました。
2020年10月27日 「2.手術(外科治療) 2)手術後の合併症 (4)腸閉塞」を更新しました。
2019年10月10日 「子宮頸癌治療ガイドライン2017年版」「子宮頸癌取扱い規約病理編第4版(2017年)」より、内容の更新をするとともに、4タブ形式に変更しました。
2016年02月12日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2014年10月03日 「3.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2012年11月08日 内容を更新しました。タブ形式に変更しました。
2012年05月01日 内容を更新しました。
1996年04月01日 掲載しました。
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