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急性骨髄性白血病(きゅうせいこつずいせいはっけつびょう)

更新日:2006年10月01日    掲載日:2006年10月01日

1.急性骨髄性白血病の診断

病気を分類することは、治療方針を決定するうえで非常に重要です。フランス、アメリカ、イギリスの血液学メが集まって骨髄性白血病の血液を調べ、形態的な特徴をもとに分けたのが、“FAB分類(French-American-British Classification)”です。FAB分類は、1976年にはじめて提唱されて以後、世界中で使われてきました。骨髄液の中にある細胞を採取し、染色して顕微鏡で観察する骨髄穿刺(こつずいせんし)という検査をし、骨髄性白血病をM0からM7のタイプに分類します。比較的簡単に診断できるため、多くの施設で用いられてきました。FAB分類では、骨髄細胞中に「芽球(がきゅう)」と呼ばれる幼弱な細胞、つまり白血病の細胞(がん細胞)が30%以上を占めるものを、「急性骨髄性白血病」と定義しています。

【FAB分類についてさらに詳しく】


FAB分類

M0 急性未分化型骨髄性白血病

芽球のペルオキシダーゼ陽性率は3%未満ですが、細胞質内免疫ペルオキシダーゼが陽性です。

M1 急性未分化型骨髄芽球性白血病

未熟な骨髄芽球。ペルオキシダーゼ陽性率は3%以上です。

M2 急性分化型骨髄芽球性白血病

成熟傾向のある骨髄芽球。ペルオキシダーゼ陽性率は3%以上。染色体転座でt(8;21)を持つものが多く、比較的予後は良好です。

M3 急性前骨髄球性白血病

骨髄芽球から少し分化した前骨髄球が増加しています。血小板が激減して、出血傾向を示す「DIC:播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)」を合併しやすいです。染色体転座でt(15;17)を持つものが多く、レチノイン酸による分化誘導療法が有効で、予後は良好です。

M4 急性骨髄単球性白血病

顆粒球系と単球系の2系統の血液細胞が、がん化しているものです。inv(16)の染色体異常を持つものは、予後が良好です。

M5 急性単球性白血病

単球系の幼弱な細胞が、がん化しているものです。ペルオキシダーゼ染色だけでなく、エステラーゼ染色でも陽性を示します。

M6 赤白血病

赤血球をつくる造血幹細胞が、がん化したものです。

M7 急性巨核芽球性白血病

血小板をつくる造血幹細胞が、がん化したものです。

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しかし近年、白血病の研究が進み、がん細胞の染色体や遺伝子レベルを詳しく調べる検査法や、レチノイン酸(ATRA、アトラ:All-trans Retinoic Acid)を使った治療法等、新しい検査や治療方法が登場しました。従来のFAB分類では限界があると認識されるようになり、染色体や遺伝子変異も含めた新たな白血病の分類法が必要となりました。そこで、世界保健機関(WHO:World Health Organization)が発表したのが「WHO分類」です。分類方法だけでなく、FAB分類で骨髄中の芽球の割合を「30%以上」としていた急性骨髄性白血病の定義を、新しいWHO分類では、「20%以上」としていることも大きな違いです。

【WHO分類についてさらに詳しく】


WHO分類

A.急性骨髄性白血病

1)特異的染色体相互転座を有する急性骨髄性白血病

a) 染色体8;21転座を有する急性骨髄性白血病(または融合遺伝子AML1/CBF-α/ETOを有する):FAB分類の8;21転座を有するM2に相当します。
b) 急性前骨髄球性白血病(染色体15;17転座または融合遺伝子PML/RARαを有する):FAB分類のM3に相当します。
c) 骨髄中異常好酸球増多を伴う急性骨髄性白血病(染色体16番逆位または16;16転座または融合遺伝子CBFβ/MYH 11を有する):FAB分類のM4Eoに相当します。
d) 染色体11q23異常を有する急性骨髄性白血病:FAB分類の11q23異常を有するM5に相当します。

2)多血球系異形成を伴う急性骨髄性白血病

a) 骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病
b) 多血系異形成を伴う初発の急性骨髄性白血病

3)治療に関連した急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群

a) アルキル化剤と呼ばれる抗がん剤使用に関連した急性骨髄性白血病
b) 抗がん剤であるエピポドフィロトキシン関連の急性骨髄性白血病
c) その他のタイプの急性骨髄性白血病

4)上記以外の急性骨髄性白血病

a) 急性骨髄性白血病最未分化型:FAB分類のM0に相当します。
b) 急性骨髄性白血病未分化型:FAB分類のM1に相当します。
c) 急性骨髄性白血病分化型:FAB分類のM2に相当します。
d) 急性骨髄単球性白血病:FAB分類のM4に相当します。
e) 急性単球性白血病:FAB分類のM5に相当します。
f) 急性赤白血病
A) 分化型:FAB分類のM6に相当します。
B) 未分化型
g) 急性巨核芽球性白血病(FAB分類のM7に相当します)
h) 急性好塩基性白血病
i) 骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症
j) 腫瘤形成性急性骨髄性白血病(骨髄肉腫)

B.急性混合性白血病

骨髄芽球とリンパ芽球の2種類の白血病が混在したもの(2系統混在型)と、1つの白血病細胞が両方の性格を持ったもの(二重表現型)があります。

その他、WHO分類では明確には定義されていませんが、骨髄で細胞があまりつくられずに、細胞数そのものも少ない“低形成”の状態でありながら、芽球の割合が20%以上存在するときには、「低形成白血病」と診断されます。高齢者に多く、末梢血でも白血球減少や貧血、血小板減少、すなわち「汎血球減少症」を示します。

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2.急性骨髄性白血病の治療

白血病細胞数と治癒の図

治療法は、年齢や病型分類によって異なります。一般的には、初期に行う寛解導入療法(かんかいどうにゅうりょうほう)として、抗がん剤をいくつか併用した治療を行います。しかし、急性前骨髄球性白血病(M3)は特殊で、最初は抗がん剤を使わず「レチノイン酸」という内服薬を用いることで、高い寛解率と生存率を得ています。再発例以外では、造血幹細胞移植も行いません。一方、M0、M1、M4〜M7では、抗がん剤の治療だけでは再発する可能性が高いものや骨髄異形成症候群から白血病に移行したもの、異形成を伴うものに対しては、年齢や全身状態が許せば造血幹細胞移植が必要になることがあります。造血幹細胞移植は、抗がん剤の効かない難治例や再発例にも、ある程度治癒が期待できる治療法です。詳しくは他項をご覧ください。

「寛解」とは見かけ上、白血病細胞(がん細胞)が見つからない状態を指しますが、さらに詳しくは以下に分けられます。

血液学的完全寛解:治療により、顕微鏡検査をしても白血病細胞が目で見た限りはなくなり、同時に白血球、赤血球、血小板の数が正常な範囲内にある状態です。全身には、まだ白血病細胞がたくさん残っている可能性があります。

分子学的完全寛解:白血病細胞が持つ染色体異常(遺伝子変異)を目安にして、より精密に検査しても白血病細胞が見つからない状態です。上記よりは少ないものの、この状態でもなお、体内には100万個までの白血病細胞が生き残っている可能性があります。

血液や骨髄液以外にも白血病細胞は潜んでいますし、現在用いられている検査にも限界があるため、白血病細胞が見つからないからといって、ただちに「治癒した」といえるわけではありません。

一般的には、完全寛解の状態が5年以上維持された場合には治癒したと考えられますが、5年以上を経過してもまれに再発することがあります。

抗がん剤治療は以下のように行います。

1)寛解導入療法

抗がん剤により、完全寛解を目指して白血病細胞をできるだけ減らす治療です。急性骨髄性白血病では、ダウノルビシンとシタラビンを組み合わせた治療が、標準的な治療法とされます。

2)分化誘導療法

急性前骨髄球性白血病(M3)では、ビタミンAの誘導体であるレチノイン酸を寛解導入療法として用います。他の抗がん剤が白血病細胞を直接破壊するのに対し、レチノイン酸は白血病細胞を成熟させることによって、正常な白血球と同様な経過をたどって死滅させます。白血病細胞が多い場合は、抗がん剤治療を先に行ったり、あるいは同時に併用したりします。

3)寛解後療法

完全寛解になっても、体内には白血病細胞が多く残っている可能性が高く、放置すると再発することがあります。さらに、白血病細胞を減らして寛解を確固たるものにするための「地固め療法」や、再発しないように寛解を維持するための「維持・強化療法」を行います。

造血幹細胞移植療法は、最も強力な地固め療法です。抗がん剤を用いた急性骨髄性白血病の寛解後療法としては、シタラビンを大量に投与する治療法が有用とされています。

4)抗がん剤治療の合併症と対策

他項もご参照ください。

急性骨髄性白血病では、白血病細胞が殖えている一方で、正常な血液細胞は圧迫されて減少しています。白血病細胞を減らす目的で抗がん剤治療を行いますが、減少した正常な血液細胞もダメージを受けて、一時的にはさらに減少します。病気の原因となるさまざまな菌(細菌やカビなどの真菌)やウイルスなどの病原体と戦う白血球が減ると、肺炎や敗血症などの感染症を起こすことがあります。状況によっては、個室に入りアイソレーター(空気清浄機)を用いたり、うがいや手洗いも必要となります。感染症に対しては、抗生物質などを用います。また、白血球の回復を早めるためには、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などサイトカインと呼ばれる薬を使用します。貧血や血小板減少に対しては、成分輸血を行います。また、抗がん剤による悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、下痢、口内炎、脱毛、発熱等の副作用がありますが、おのおのに対して可能な限り副作用を軽減させ、対策を立てて治療を行います。

【参考文献】


参考文献

  • 浅野茂隆、池田康夫.「白血病はこわくない」臍帯血でつなぐ命のきずな. アドスリー社
  • 正岡 徹. インフォームドコンセントのための図説シリーズ「白血病」.医薬ジャーナル社
  • 白血病といわれたら. 全国骨髄バンク推進連絡協議会発行
  • 押味和夫 扁. 白血病 リンパ腫 骨髄腫 今日の診断と治療. 中外医学社
  • 大野竜三. EBMによる白血病の診断と治療. 中外医学社

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