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成人T細胞白血病リンパ腫(せいじんてぃーさいぼうはっけつびょうりんぱしゅ)

更新日:2006年10月01日    掲載日:2006年10月01日

1.成人T細胞白血病リンパ腫(“ATLL”あるいは“ATL”と呼ばれます)とは

1977年に京都大学の内山医師、高月医師らによって日本ではじめて報告された疾患です。他の悪性リンパ腫や白血病と大きく異なるのは、このがんは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type I:“HTLV-1”)によって引き起こされることです。主に西南日本に多く、リンパ節腫脹(しゅちょう)、肝脾腫大(かんひしゅだい)、皮膚病変、高カルシウム血症を特徴とします。悪性リンパ腫の一種ですが、大部分が白血病化するために、成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia:ATL)と呼ばれたり、成人T細胞白血病リンパ腫(Adult T-cell Leukemia/Lymphoma:ATLL)と呼ばれたりします。

【ヒトT細胞白血病ウイルス1型についてさらに詳しく】


ヒトT細胞白血病ウイルス1型とは

成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の原因ウイルスとして、1980年にヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)が発見されました。HTLV-1は、C型レトロウイルス(RNAウイルス)に属します。ATLLは、HTLV-1感染から数十年の経過後に、感染リンパ球の遺伝子的な変化の積み重ねによって発症すると考えられています。発症に至る少なくとも初期の過程で、HTLV-1ウイルスタンパク質「Tax」が重要な役割を果たしています。しかしながら、HTLV-1感染がなぜATLLを発症させるのかについて、まだ明確な答えは得られていません。

HTLV-1の感染経路は、“垂直感染”として母乳、胎盤、産道を介して、また“水平感染”として性交、輸血、臓器移植などを介して広がります。成人期以降に水平感染で感染した人からは、ATLLの発症はほとんどみられません。以前は輸血によってHTLV-1に感染した人に、HTLV-1感染細胞が脊髄の神経細胞を傷害することにより発症する、「HTLV-1関連脊髄症(HTLV-I Associated Myelopathy:HAM)」がみられることがありました。しかし1986年以降、日本赤十字社では献血者の抗HTLV-1抗体検査を実施し、陽性者の血液を使用しなくなったことから、輸血でのHTLV-1感染の可能性はほぼ完全に消失しました。性交による夫婦間感染では、ATLLの発症までの潜伏期間が50〜60年であり、夫婦間感染が成立した後にATLLが発症したという報告はありません。ATLLは垂直感染したHTLV-1キャリア(HTLV- 1の症状はないが、ウイルスを体の中に持っている状態の方)から発症するため、発症を減少させるには、垂直感染のほとんどを占める母乳感染を予防することが最も重要です。現在では、鹿児島県や長崎県のようなATLL多発地域では、妊娠中に妊婦の抗HTLV-1抗体検査をできるだけ実施しています。陽性の母親に対して、長崎県では子への断乳、鹿児島県では断乳、または授乳を強く希望する場合には3ヵ月以内の短期授乳を指導しています。

HTLV-1キャリアが40歳以上になると、1年間に1,000人に1人の割合でATLLが発症すると推測され、HTLV-1キャリアのATLLの生涯発症率は3〜5%といわれています。

このように、HTLV-1キャリアのほんの一部がATLLを発症するわけですが、どのようなキャリアがATLLを発症しやすいのかは、現在まで明らかにされていません。

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2.成人T細胞白血病リンパ腫の特徴

図1 末梢血中の花細胞
図1 末梢血中の花細胞

日本では120万人、世界では1,000〜2,000万人のヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)キャリア(HTLV-1の症状はないが、ウイルスを体の中に持っている状態の方)がいると推定されています。成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の発症は、HTLV-1キャリアの分布と一致することが知られています。日本では、九州を中心とした西南日本、紀伊半島、三陸海岸、北海道などに多く、世界的にはカリブ海沿岸地域、南米アンデス地域、中近東、アフリカなどで多くみられます。しかし、東京や大阪では比率は低いものの、実際には、人数にするとかなりの数のキャリアとATLLの患者さんが存在しています。

末梢血液中に出現するATLL細胞は、特徴的な花びらのような形状をした核を有し、「花細胞」(図1)と呼ばれています。免疫担当細胞として重要なT細胞ががん化したもので、強い免疫不全を示します。そのため、感染症にかかりやすくなり、真菌、原虫、寄生虫、ウイルスなどによる日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)を高頻度に合併します。

ATLL細胞は、抗がん剤が最初から効きにくかったり、途中から効きにくくなったりする性質があり、化学療法にしばしば抵抗性を示します。また寛解(見かけ上病気が良くなること)が得られたとしても、再発率は非常に高いことが知られています。ATLLに伴う免疫不全に加えて、抗がん剤が効きにくいことから、ATLLの予後(治療後の経過)は現在でも極めて不良です。

最近、ATLLに対する同種造血幹細胞移植の有効性が発表され、ATLLの予後の改善に大きく貢献することが期待されています。さらに、種々の抗体療法や分子標的薬剤などの新薬の臨床応用もはじまろうとしています。

3.ATLLの症状と検査結果

全身のリンパ節が腫(は)れたり、肝臓や脾臓(ひぞう)の腫大、皮膚紅斑(ひふこうはん)や皮下腫瘤(ひかしゅりゅう)などの皮膚病変、下痢や腹痛などの消化器症状がしばしばみられます。成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の病勢の悪化によって血液中のカルシウム値が上昇(高カルシウム血症)すると、全身倦怠感(けんたいかん)、便秘、意識障害等を起こします。また、免疫能低下により、いわゆる日和見感染症を高頻度に合併します。細菌感染症のみではなく、ニューモシスチス肺炎、クリプトコッカス肺炎・髄膜炎、全身のカンジダ症やアスペルギルス症などの真菌感染症、サイトメガロウイルス肺炎・網膜炎・消化管感染症、汎発性帯状疱疹(はんぱつせいたいじょうほうしん)などのウイルス感染症、糞線虫(ふんせんちゅう)症などの寄生虫感染症等が高頻度に見られます。

貧血、血小板減少は急性白血病に比べて軽度ですが、白血病化した場合は、白血球数がさまざまな程度に増加します。血清LDH上昇は非常によくみられ、血清カルシウム値や腫瘍マーカーである可溶性インターロイキン-2レセプターの増加もみられます。その他、肝機能障害や低蛋白血症(ていたんぱくけっしょう)も高頻度にみられます。腹部超音波検査やCT検査では肝脾腫大、腹腔内(ふくくうない)リンパ節腫大、腹水等がみられることが多く、ATLL細胞の消化管浸潤(しんじゅん)例では、X線検査や内視鏡検査でびらん、潰瘍(かいよう)などの粘膜異常や腫瘤形成(しゅりゅうけいせい)などがみられます。

【診断の方法や病型についてさらに詳しく】


診断の方法や病型

リンパ節腫脹、肝脾腫大、皮膚病変、意識障害、日和見感染症、白血球数の増加、血清LDHやカルシウム値の上昇等のうち、いくつかの症状や異常がみられた場合、成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)を疑い、血清のヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)抗体検査を実施します。異常リンパ球を含む白血球増加がみられる場合やリンパ腫病変が存在する場合は、がん細胞の表面抗原を調べることにより、がん細胞が成熟型T細胞であることを証明します。日常の臨床では、白血病細胞や組織のがん細胞が成熟型T細胞で、血清抗HTLV-1抗体陽性(HTLV-1の場合は、抗体が陽性であることは、HTLV-1というウイルスを保有していることを意味します)であれば、通常ATLLと診断します。まれに、血清抗HTLV-1抗体陽性でありながらがん細胞中にHTLV-1を含まない、ATLLでない成熟型T細胞リンパ腫が存在します。そのため臨床像がATLLに合致しない場合には、診断を確実にするために、がん細胞のDNA中に原因ウイルスであるHTLV-1が組み込まれていることを証明します。がん細胞のDNA中にHTLV-1が組み込まれていれば、ATLLであると確定診断されます。

ATLLでは臨床病型分類が提唱され、広く用いられるようになりました(表1、図2)。急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4病型に分類され、化学療法を含めた治療方針の決定に広く使用されています。しかしこれらの臨床病型は、本質的に差があるものばかりを分けているのではありません。境界領域が存在したり、経過中に自然寛解や急激な悪化がみられ、数日のうちに臨床病型が変わることもあります。臨床症状に乏しい症例においては、経過をみながら治療すべきかどうかを判断する必要があります。

表1 ATLLの臨床病型の診断基準

  急性型 リンパ腫型 慢性型 くすぶり型
リンパ球数(/μl)*2 * 4000未満 4000以上 4000未満
                異常リンパ球 1%以下 5%以上
花細胞 時々 時々
LDH * * 正常の2倍以下 正常の1.5倍以下
補正カルシウム値(mEq/l)
* * 5.5未満 5.5未満
組織学的に腫瘍病変が確認されたリンパ節腫大 * *
腫瘍病変 皮膚 * * * *3

* * * *3
リンパ節 * *
肝腫大 * * *
脾腫大 * * *
中枢神経 * *
* *
腹水 * *
胸水 * *
消化管 * *
* 条件の制約はなく、あってもなくてもよい。
*2 正常リンパ球と異常リンパ球を合計した実数。
*3 末梢血の異常リンパ球が5%未満の場合は生検にてリンパ腫の証明が必要である。
(下山ら. Br J Haematol, 1991)

図2 ATLLの臨床病型別生存曲線
図2 ATLLの臨床病型別生存曲線
Brit J Haematol, 70; 428. 1991

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4.治療の一般的な流れ

1)ATLLそのものに対する治療

図3 ATLLの治療指針
図3 ATLLの治療指針

成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の治療方針を、図3に示します。ATLL診断後、ATLLの臨床病型を正確に診断して、治療方針を決定する必要があります。くすぶり型と、予後不良因子を有しない慢性型は、ATLLそのものに対しては経過観察とし、日和見感染症などの合併症に対しては抗生剤などによる補助治療が必要です。くすぶり型に分類されるものの中に皮膚型ATLLと呼ばれるタイプが存在し、皮膚科的治療の対象となります。慢性型の予後不良因子とされている尿素窒素(BUN)の上昇、LDHの上昇、低アルブミン値のいずれかを有する場合は、抗がん剤治療(化学療法)を行ったほうが良いと考えられます。急性型、リンパ腫型と診断される場合は、ほとんどの場合に急速進行するため、速やかに入院にて化学療法を行う必要があります。

(1)皮膚科的治療と抗がん剤治療

図4 皮膚型ATLLの治療指針
図4 皮膚型ATLLの治療指針

皮膚型成人T細胞白血病リンパ腫(皮膚型ATLL)は、皮膚紅斑丘疹(ひふこうはんきゅうしん)型、皮膚腫瘤(ひふしゅりゅう)型に分けられます。紅斑丘疹型はくすぶり型ATLL、腫瘤型はリンパ腫型ATLLにそれぞれ類似した病型であり、後者の予後もリンパ腫型とほぼ似ているとされています。皮膚紅斑丘疹型ATLLの治療は、副腎皮質ステロイドホルモン軟膏の塗布(とふ)、紫外線治療、電子線治療、放射線治療、インターフェロン投与等です。一方、皮膚腫瘤型ATLLは、急性型、リンパ腫型ATLLと同じような、強力な化学療法の治療対象となります(図4)。

【抗がん剤治療についてさらに詳しく】


抗がん剤治療

化学療法は、インターフェロン、ジドブジン併用療法、非ホジキンリンパ腫の標準的治療であるCHOP療法(シクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)(表2)にビンデシン、カルボプラチン、カルムスチン、エトポシドを併用したCHOP-V-MMV療法(表3)、10種類の抗がん剤を用いて、4種類ずつ週1回投与するRCM療法(表4)などの成績が報告されています(表5)。治療成績は、完全寛解率が20〜35%、化学療法を開始した日からの生存期間の中央値が3〜8ヵ月です。1978年からスタートした、日本臨床腫瘍研究グループのリンパ腫研究班(JCOG-LSG)の治療成績を表6に示します。完全寛解率は16〜41%、生存期間の中央値は5〜13ヵ月でした。LSG15療法(表7)では、生存期間中央値が13ヵ月、2年生存率が31%(表6、図5)でした。

表2 CHOP 療法の治療スケジュール

薬 剤 投与量 (mg/m2)
投与法 投与スケジュール(日)
1 2 3 4 5
シクロホスファミド 750 点滴        
アドリアマイシン 50 点滴        
ビンクリスチン 1.4 静注        
プレドニゾロン 50 経口


表3 CHOP-V-MMV療法の治療スケジュール
薬 剤 投与量
(mg/m2)
投与法 投与スケジュール(日)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
プロトコールA ビンクリスチン 1 静注                    
シクロホスファミド 400 点滴                    
アドリアマイシン 40 点滴                    
プレドニゾロン 40 点滴          
エトポシド 35 点滴      
プロトコールB ビンデシン 2 静注                    
ラニムスチン 50 点滴                    
ミトキサントロン 7 静注                    


表4 RCM療法の治療スケジュール
薬 剤 投与量
(mg/m2)
投与法 投与スケジュール(日)
1 2 3 4
シクロホスファミド
500 点滴
プレドニゾロン 40 点滴
ビンデシン 2 静注      
ラニムスチン 70 点滴      
メソトレキセート
40 点滴      
ピラルビシン 40 点滴      
エトポシド 70 点滴      
ペプロマイシン 7 点滴      
マイトマイシンC 2 点滴      
アドリアマイシン 40 点滴      


表5 ATLLに対する化学療法の成績
発表者 症例数 完全寛解率 (%)
生存期間中央値(月) 治療法
Gillら(1995) 19 26.0 3 インターフェロン, ジドブジン
魚住ら(1995) 43 20.9 6 RCM療法
田口ら(1996) 83 35.8 8.5 CHOP-V-MMV療法
松下ら(1999) 79 31.0 7.1 OPEC/MPEC療法


表6 ATLLに対する併用化学療法の臨床試験成績 (JCOG-LSG)
  J 7801 J 8101 J 8701 J 9109 J 9303 JCOG 9801
LSG 1 LSG 1/LSG 2 LSG 4 LSG 11 LSG 15 mLSG 15 mLSG 19
                症例数 18 54 43 60 93 57 61
完全寛解率 (%) 16.7 27.8 41.9 28.3 35.5 40 25
生存期間中央値 (カ月) 5 7.5 8.0 7.4 13.0 12.7 10.9
2年生存率 (%)       15.5 31.3
   
3年生存率 (%) 0       21.9 23.6 12.7
4年生存率 (%)   8.3 11.6        
5年生存率 (%)
    10.3
     
JCOG-LSG:日本臨床腫瘍研究グループ-リンパ腫研究班
(宇都宮. 臨床血液, 印刷中)


表7 LSG15療法の治療スケジュール
薬 剤 投与量
(mg/m2)
投与法 投与スケジュール(日)
1 8 15 16 17
プロトコールA ビンクリスチン 1 静注        
シクロホスファミド 350 点滴        
アドリアマイシン 40 点滴        
プレドニゾロン 40 経口
       
プロトコールB アドリアマイシン 30 点滴        
ラニムスチン 60 点滴        
プレドニゾロン 40 経口        
プロトコールC ビンデシン 2.4 静注        
エトポシド 100 点滴    
カルボプラチン 250 点滴        
プレドニゾロン 40 経口
   

図5 LSG15療法による生存曲線
図5 LSG15療法による生存曲線
(山田ら. Br J Haematol, 2001)

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(2)造血幹細胞移植

1.自家造血幹細胞移植
成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)に対する自家造血幹細胞移植は、移植後の再発や感染症の合併が多いために、ほとんどうまくはいきませんでした。移植細胞に混入するATLL細胞が再発に関係することが考えられたため、移植細胞からATLL細胞を取り除いたり、あるいは造血幹細胞のみを選択した移植も試みられました。しかし、治療成績の改善は得られませんでした。現時点では、ATLLに対する自家造血幹細胞移植の有用性は低いとされています。


2.同種造血幹細胞移植
九州血液疾患治療研究(K-HOT)グループでは、ATLLに対する同種造血幹細胞移植の治療対象(適応)について、アンケート調査を実施しました。解析した結果を表8にまとめました。ATLLの臨床病型は急性型およびリンパ腫型で、治療後の病気の状態としては、「完全寛解」、「部分寛解」、「病勢の安定している非寛解」の患者さんを同種移植の対象とすべきという意見が大半を占めました。ATLLの病勢がコントロールできない増悪例の場合の同種移植は、拒絶反応や合併症の頻度が高くなるため実施が非常に困難です。HLAの一致度については、血縁、非血縁ともに完全一致が望ましいとされています。最も重要な年齢については、骨髄破壊的同種移植の場合は55歳までが対象となり、骨髄非破壊的同種移植(“ミニ移植”)では50〜70歳までを対象とすることが可能です。しかし実際は、年齢が65歳を超えると移植合併症が増加するばかりでなく、ドナーの方の健康上の理由などからも、兄弟間でHLA一致のドナー候補者を得ることが困難です。また、50〜55歳までの場合は、骨髄破壊的移植がよいか、あるいは骨髄非破壊的移植がよいかについての結論は出ていません。

【同種造血幹細胞移植についてさらに詳しく】


同種造血幹細胞移植

成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)に対する、同種造血幹細胞移植の治療成績に関するデータは多くありません。10例のATLL患者さんについての発表では、移植後の再発のない生存期間の中央値は17ヵ月で、ATLLの予後を改善させる可能性があるとされました。急性や慢性のGVHD(移植片対宿主病)の全くみられなかった3例のうち2例の患者さんが再発し、いずれかのGVHDのみられた7例の患者さんからは、1人も再発がみられませんでした。GVHDがみられた患者さんには、ATLLの同種移植後の再発がなかったのです。移植後のGVHDが患者さんを苦しめないようにコントロールできるならば、この力(“GV-ATLL効果”)をうまく利用して、再発を予防することが可能かもしれません。別のアンケート調査では、40例の同種移植を施行したATLL患者さんの、移植後3年の時点の全生存率は45%、無再発生存率33%となっています(図6)。移植後に10例が再発しましたが、そのうち5例で再度寛解が得られています。5例中3例の患者さんが、免疫抑制剤を中止しただけで再寛解が得られています。先ほどの報告と同じように、移植後の免疫効果であるGV-ATLL効果が働いたと考えられます。これらの報告は従来の移植治療の成績でした。

最近はミニ移植の成績が発表され、移植2年後の時点での生存率は33%でした。この報告では、急性GVHDのみられた10例の患者さんの2年時の生存率が50%であるのに対して、急性GVHDのみられなかった5例の患者さんは、全例で早期に再発し、死亡しています。また移植後、末梢血リンパ球中のHTLV-1プロウイルスが検出限界以下になった例が8例みられ、同種造血幹細胞移植によって、原因ウイルスに対する効果も得られることが証明されました。特に、HTLV-1陰性の正常なドナーの方からの移植では、移植後3ヵ月以内に8例中6例の患者さんのHTLV-1プロウイルスが検出限界以下になりました。

図6 同種造血幹細胞移植からの全生存期間
図6 同種造血幹細胞移植からの全生存期間
(福島ら. Leukemia, 2005)

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最近、成人に対する臍帯血(さいたいけつ)移植の実施例が急速に増加していますが、ATLLに対する臍帯血移植の成績はほとんど報告がありません。


表8 ATLLの同種造血幹細胞移植の適応
1. 適応年齢
骨髄破壊的移植:55歳未満
骨髄非破壊的移植:50歳/55歳以上70歳未満
2. 臨床病型
急性型・リンパ腫型
3. 寛解状態
完全寛解・部分寛解・病勢の安定している非寛解
4. ドナーについて
血縁・非血縁ともにHLA完全一致もしくは1座不一致
5. 移植時期
化学療法開始後6ヵ月以内
6. 臍帯血移植・不一致移植・子母間移植
血縁・非血縁のHLA一致のドナーがいない場合や時間的に間に合わない場合

(3)分子標的治療

抗CD25抗体(抗Tac抗体)や、抗CD52抗体(Campath 1H)などの報告がありますが、まとまった治療成績の報告はみられず、有効性もはっきりしていません。

【分子標的治療についてさらに詳しく】


分子標的治療

最近、リンパ球の体内移動や免疫応答に、ケモカインとケモカイン受容体の相互作用が重要な役割を果たすことが解明されてきました。成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)細胞は、Tリンパ球ががん化したものですが、ほとんど(約90%)のATLL患者さんから分離したATLL細胞は、その表面にケモカイン受容体であるCCR4の発現がみられます。このCCR4を標的とした抗体療法薬として、ヒト化抗CCR4抗体が作成されており、その臨床第I相試験(治験)が、ATLLの患者さんに対して開始されています。

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2)合併症に対する治療

(1)高カルシウム血症

成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)の進行に伴い、高カルシウム血症がしばしば合併します。これは、がん細胞から産生される骨吸収促進因子が関与するとされています。治療としては、ビスホスホネート製剤の投与、大量の補液、利尿剤、カルシトニン製剤の投与を行います。また、ATLLの増殖を抑えるために、抗がん剤を用いた化学療法が同時に必要です。

(2)日和見感染症

細菌感染症のみでなく、日和見感染症と呼ばれる真菌(カビ)感染症、ウイルス感染症、原虫や寄生虫感染症等が高頻度にみられます。これを防ぐことがとても重要になります。

【日和見感染症についてさらに詳しく】


日和見感染症

真菌感染症では、カンジダ症(食道炎や気管支肺炎等)、クリプトコッカス症(肺炎や髄膜炎等)のような疾患がよくみられ、治療としてフルコナゾールやアンホテリシンBが用いられます。アスペルギルス症(気管支肺炎)に対しては、ミカファンギンやボリコナゾールが用いられます。ニューモシスチス肺炎の治療としては、ST合剤やペンタミジンが用いられます。しかし最近では、ST合剤の予防投与(4錠/日の週2日間もしくは0.5〜1錠/日の連日投与)がなされ、ニューモシスチス肺炎の合併はほとんどみられなくなっています。ウイルス感染症で最も多いものはサイトメガロウイルス感染症(肺炎、網膜炎、消化管感染症)で、ガンシクロビルが使用されます。寄生虫症としては、糞線虫(ふんせんちゅう)症がよく知られ、サイアベンダゾールやアイバメクチンで治療されます。しかし、これらの日和見感染症は免疫能の低下に基づく合併症であり、しばしば再発を繰り返します。

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5.予後

成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)に対して、化学療法のみの治療成績では完全寛解率は16〜41%、生存期間中央値は3〜13ヵ月であり、その予後は依然極めて不良です。ただ最近になって、同種造血幹細胞移植によって、ATLLの治癒も期待できるようになりました。高齢の患者さんや造血幹細胞移植の対象でない場合においても、化学療法と分子標的薬剤の組み合わせによって今後徐々にではありますが、確実に改善すると期待されています。

【参考文献】


参考文献

  • Uchiyama T, Yodoi J, Sagawa K, Takatsuki K, Uchino H. Adult T-cell leukemia: Clinical and hematologic features of 16 cases. Blood. 50 : 481-492, 1977.
  • 城野昌義.成人T細胞白血病/リンパ腫.最新皮膚科学大系.第13巻「神経腫瘍 間葉系腫瘍」中山書店、279-286、2002.
  • 田島和雄、広瀬加緒瑠.わが国におけるHTLV-I感染とATL発生の動向.血液・腫瘍科 38 : 173-180, 1999.
  • 宇都宮與.成人T細胞白血病.ATL治療の新しい展開.つばさ42:32-45、2003.
  • 木下研一郎.成人T細胞白血病・リンパ腫.新興医学出版社、2003年.
  • 宇都宮與.ATLLの臨床.臨床血液(印刷中)

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