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MALTリンパ腫(まるとりんぱしゅ)

更新日:2006年10月12日    掲載日:2006年10月12日

1.MALTリンパ腫の概念

粘膜とリンパ球の複合組織(Mucosa-Associated Lymphoid Tissue:MALT、マルト)があるという、従来なかった新しい考えが提唱されました。この組織から発生するB細胞性リンパ性腫瘍を「MALT(タイプ)リンパ腫」と呼ぶようになりましたので、この病気の概念は比較的新しいものといえます。

MALTリンパ腫はもともと、胃と小腸に発生するものを指していました。しかし、扁桃(へんとう)や肺に類似のリンパ腫ができるとわかったことから、MALTリンパ腫と一括して呼ぶようになりました。さらに唾液腺および甲状腺(こうじょうせん)では、自己免疫疾患に伴う反応性リンパ節腫大を経て、リンパ腫が発症することがあります。腫瘍リンパ球の性状、細胞表面マーカー、組織像が似ているので、これらのリンパ腫もMALTリンパ腫と呼ばれています。これらには、以前「偽リンパ腫」、「反応性リンパ節腫大」などと呼ばれていたものも含まれます。

2.MALTリンパ腫の病態は多種多様1)

すべての悪性リンパ腫に占めるMALTリンパ腫の割合は7〜8%とされ、発症年齢中央値は61歳で、女性にやや多いようです。MALTが存在する臓器としては消化管が50%を占め、その85%を胃が占めています。次いで、肺(14%)、唾液腺など頭頸部(とうけいぶ、14%)、まぶた、涙腺、眼窩(がんか:目を取り囲む骨)等の眼付属器(12%)、皮膚(11%)、甲状腺(4%)、乳腺(4%)と続きます。ほかに膀胱(ぼうこう)、腎臓、胸腺(きょうせん)での報告例もあります。なお、これらの臓器に出現するリンパ腫のすべてがMALTリンパ腫というわけではありません。

MALTリンパ腫は通常、局所に1ヵ所だけ現れますが、胃および唾液腺では近くのリンパ節の増大も認められることがあります。また、長期に経過を観察すると、約1/3が骨髄や他のMALT臓器へ浸潤(しんじゅん)するといわれています2)

原因の一部に、感染症が関係していると考えられています。実際に、胃MALTリンパ腫におけるヘリコバクタ−・ピロリ(Helicobacter Pylori:H. Pylori)という細菌の感染頻度は、92〜98%にも達します3)

唾液腺のMALTリンパ腫には、自己免疫疾患である「シェーグレン(Sjögren)症候群」が関係していると考えられています。シェーグレン症候群の患者さんは、悪性リンパ腫の発症率が44倍増加し、その4〜7%でMALTリンパ腫が発症するといわれています。

甲状腺のMALTリンパ腫は、やはりこれも自己免疫疾患の一種である「橋本病」に伴うことが多いです。橋本病の患者さんは悪性リンパ腫の発症率が3倍になり、殊(こと)に甲状腺の悪性リンパ腫は70倍にも増加します。橋本病の患者さんのうち、0.5〜1.5%が甲状腺のMALTリンパ腫を発症し、逆に甲状腺のMALTリンパ腫の患者さんの94%で橋本病の所見が発見されます。

いずれの部位を起源としても、経過はゆっくりしていて無症状です。一部の大細胞型の病変が存在する場合では、びまん性大細胞型リンパ腫として急速に大きくなることがあります。

MALTリンパ腫には、特徴的な染色体異常があることが知られるようになってきています。今後は、この結果に応じた病型と治療が決まっていくと考えられます。

3.MALTリンパ腫の治療

MALTリンパ腫(MALT Lymphoma)は、病態分類としては一括されています。それでも臓器ごとの特性があるので、治療の際に考慮する必要があります。しかし、臓器ごとの治療結果はあまり多く報告されていません。後述のように、胃では除菌療法が行われます。このような特別な治療がない場合には各臓器の特性を考えて、低悪性度リンパ腫として治療されることが多いと思います。

胃の除菌が無効であった場合をはじめとして、局所にとどまるタイプでは摘出手術がなされます。摘出が困難な臓器では、放射線療法が行われます。一方、化学療法も進行期では行われますが、急速に増殖するがん細胞が少ないために、強力な治療をしても縮小の速度は中高悪性度のものよりゆっくりです。ですから、効果の判断を急いではなりません。IPI(国際予後指数)があてはまらないこともあり、長期の有病生存をする例があるので、病態に合わせた治療が肝要です。

生検は、がんの一部の病理所見を示すにすぎないことがあります。がんが急に大きくなった場合には、大細胞型へのトランスフォーム(形質変換)を常に念頭においておく必要があります。

4.胃のMALTリンパ腫の治療

ヘリコバクタ−・ピロリという細菌の感染が高率に関係していることが、最近になってわかりました。抗生物質の治療を2週間ほど行うことで、病変が消失します。しかしながら、一定の割合で治療の効果が出ないこともあります。また、いったん改善した後に再燃する例、あるいはびまん性大細胞型リンパ腫へ移行する例などもあります。特定の染色体異常があると、除菌療法に対する反応が悪いといわれています4)

日本では従来から、胃のリンパ腫に対しては手術が多く行われてきました。多発病巣が多いこと、残った胃に再発が起こることなどが懸念され、全摘手術が推奨されています。全摘によって、周囲のリンパ節への浸潤があるか否かが判ります。リンパ節転移を伴わない場合には、化学療法を行わなくても長期生存が期待されます。一方、リンパ節転移がある場合には、現在の分類では大細胞型のリンパ腫である可能性が強くなり、「CHOP療法」などの化学療法が必要となります。

欧米では、手術死亡率が10%と報告されていて、胃を温存するための放射線療法が行われてきました。胃全摘をすると生存率が高くなりますが、QOL(生活の質)は著しく低下します。同様の高生存率が得られるのであれば、QOLが落ちない治療が望ましいのはいうまでもありません。日本でも、除菌療法が効かない患者さんに対して放射線治療の単独療法が行われ、欧米に劣らない結果が出はじめています。

5.肺のMALTリンパ腫の治療

肺のMALTリンパ腫は、胸部単純写真で経過を簡単に追うことができる特徴があり、病態の変化が容易に把握できます。治療の第一選択は手術療法が多いですが、病変をすべて摘出できないことが多いと思います。その場合でも、胸のレントゲン写真で経過観察は可能であり、無治療で慎重に経過を観察することができます。ただし、全肺に広範に病変が広がり、体の酸素が不足するようなときには治療が必要です。この症状の軽減にはステロイドが有効です。

特定の染色体転座を有しているタイプのリンパ腫では、経過は極めてゆっくりであり、過剰に治療して体を壊さないようにすることが重要です。

6.大腸のMALTリンパ腫の治療

大腸のMALTリンパ腫でも同様に、切除した後に大腸の他の部位に再発することが多いと考えられます。治療しないで経過観察をする方法も、あるにはあります。しかし、大きくなっていないか絶えず内視鏡で見ていくことは大変なので、治療を行っておくことは有用な選択肢です。また、出血を生じているような例では治療が必要です。この部位のMALTリンパ腫は、胃や十二指腸で再発することがありますので、気をつけなくてはなりません。

7.他のMALTリンパ腫の治療

唾液腺、胸腺では「Sicca(シッカ)症候群(唾液の分泌不足による口腔内乾燥(こうくうないかんそう))」の合併が生じている例が多いのですが、この症状の沈静化にはステロイドを含んだ治療が有効です。

胸腺のMALTリンパ腫は、外科手術で完全に摘出されることが多いです。一方、全身の治療としてリツキサンもしばしば使用されます。ただ、その前投薬として使用される抗ヒスタミン剤は、唾液分泌(だえきぶんぴ)を抑制することが知られているので、治療選択の際に留意する必要があります。

眼窩領域のMALTリンパ腫は、眼以外に及ぶことが少なく、病気が生命にかかわることはまれです。放射線療法によって、80%以上の治癒率が期待できます。一部の限られた症例報告では、手術を繰り返すことでも良好な局所コントロールが得られるようです。他眼に再発することがしばしばありますが、その場合は全身病として抗がん剤投与が必要かどうかはわかっていません。放射線療法でも、無再発生存が十分得られます。

8.再発時の治療

MALTリンパ腫は多くの場合、局所にとどまるものであれば再発は少ないです。再発時にはまず、MALTリンパ腫であるかどうかを疑って、組織診断で確認することが必要です。理由は2つあり、1つは他のタイプのリンパ腫である可能性があることと、もうひとつは病態が変化した可能性があるからです。前者は、当初の病理生検組織が必ずしも全体像を反映していなかった可能性があるためで、後者は、MALTリンパ腫がトランスフォーム(形質転換)することが原因と思われます。

再生検が必要なこともあります。その結果、びまん性大細胞型と診断された場合には、治療戦略を変更して、CHOPなどの中高悪性度のリンパ腫に行う治療が必要になることもあります。

再発が生じうる場所としては、原発巣、他のMALT臓器、所属リンパ節をはじめとする広範な進展、のいずれもがあります。最初の治療が放射線療法であった場合には原発巣で再発する頻度は少ないのですが、照射を行った部位から再発したときには、再生検をすることが有用です。当初の診断がMALTではなく、トランスフォームしていた可能性があるからです。

臓器により、原発巣の経過観察が容易な部位と、そうでない部位があります。眼窩領域の結膜、甲状腺、乳腺、皮下などは比較的観察が容易ですが、消化管内、肺、肝臓等では、経過観察のためにCTや超音波検査を適宜組み合わせる必要があります。

PETやガリウムシンチでは、しばしばMALTリンパ腫の取り込みが「弱い」か、あるいは「ない」ので、他の悪性リンパ腫ほど検査の意義はありません。

9.再発時の一般的戦略

そもそも、初期治療として治療が必要かどうか不明なことが多いのです。ましてや、残存病変や再発に対して画一的に抗がん剤の追加治療を行って、生命予後を改善できるかどうかは不明です。例えば、患者さんの発症年齢にも左右され、高齢者ではMALTリンパ腫が致死的になるとは限りません。当然、無治療のまま経過を観察するという選択肢が残ります。特に、がんの消長をみることができる部位であれば有力な方法です。

抗がん剤を使用する場合には毒性との兼ね合いがあり、治療しすぎないことが重要です。従来COP療法が用いられてきましたが、リツキシマブ、プリンアナログも有用な選択肢です。ただし、まとまった報告例は少ないです。

今後、抗CD20抗体に放射性同位体を結合させた「イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab Tiuxetan)」が、新薬として保険が適用されます。放射線感受性が高いことから、MALTリンパ腫の治療に期待されています。


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