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悪性リンパ腫の病理組織像(あくせいりんぱしゅのびょうりそしきぞう)

更新日:2006年10月10日    掲載日:2006年10月10日

1.はじめに

悪性リンパ腫の病理診断は、患者さんから採取された検体をもとに、病理医によってなされます。臨床の医師は患者さんと会って仕事をしますが、病理医は「患者さんの代理人である臨床医」から渡される検体、すなわち細胞や組織を相手に仕事をします。この病理医という立場で最も慎重に考えるのは、まず、徹底してがんではない可能性を考えることです。自信を持ってがんであるという所見が出ない限りは、結論は出しません。臨床の医師が患者さんに、病理の診断をもとに「これはがんです」という場合は、そのまますぐに治療に入る時点にある、つまり結論が出ている段階です。病理医は、がん診断の最も基本を担うものといえます。すべては診断からはじまりますので、場合によってはなかなか結論を出せず、臨床医との協議を繰り返し、必要に応じて特殊検査や再検査を依頼しなければならないときもあります。その過程で絶えず診断は検証され、新たに得られた所見によっては、診断自体が修正されることもある点に注意が必要です。

2.診断のポイント

悪性リンパ腫は免疫性のがんであり、診断には2つのポイントがあります。すなわち、例えばリンパ節の腫脹が反応性のものか腫瘍性のものか、そしてがんであれば、悪性リンパ腫なのかほかの転移性がんなのかです。

免疫を担う器官であるリンパ節や胸腺(きょうせん)は、外敵の侵入があればいろいろな反応を示します。その反応の1つが、「リンパ節が腫(は)れる」ことです。したがってリンパ節の腫れだけでは、それが腫瘍性か反応性かわかりません。果たしてどちらなのかの判断が第一段階の大問題で、それががんである場合、悪性リンパ腫かそれ以外のがんなのかが次の重要な問題点となります。悪性リンパ腫であれば、根治性が期待できるがんの1つです。すべてとはいかないまでも、現在の医療レベルで、幸いにも半数近くを治すことができます。一方、他のがんがリンパ節に転移したのであれば、今日の医学では根治がなかなか難しい疾病ということになります。

患者さんからすれば、診断までの時間が非常に長く感じられて、その期間が大変不安だろうと思います。しかし冒頭で述べた通り、病理医は「がんである」という結論にとても慎重になりがちなのです。

3.分類と診断

現時点では悪性リンパ腫の分類はまだまだ難しく、疾患と診断について、われわれの知識はまだ普遍的な域に達していません。過去にも当然、診断や分類はされてきました。しかし、これらは各時代の知識の制約のもとでのもので、診断は科学の進歩とともに常に変化します。また、治療法も進化します。したがって、分類についての知識がどのようなものであっても、それを実際の今の医療現場にどのように応用するかが、大切な問題になります。悪性リンパ腫の主な病型については、別のところで個別に詳しく述べられています。ここでは、全体の主な留意点をみることにします。

2001年、世界保健機構(World Health Organization:WHO)の国際腫瘍分類シリーズ(いわゆるBluebooks)の1つとして、「造血組織およびリンパ系腫瘍」編が新訂公刊されました。現在の悪性リンパ腫は大きく6つの項目に分類され、このWHO分類に基づいて診断されています(図表1)。

「前駆細胞型のBおよびT細胞性腫瘍(Precursor B- and T-cell Neoplasms)」は、子どもに多くみられるがんです。「成熟BあるいはTおよびNK細胞腫瘍(Mature B-cell Neoplasms, Mature T-cell and NK-cell Neoplasms)」は、多くが成人の免疫系のがんです。「ホジキンリンパ腫(Hodgkin Lymphoma)」の「Hodgkin」は、19世紀の研究者の名前です。医学では、本態がまだよくわからないものには、人の名前が付けられています。今、ホジキンリンパ腫の多くがB細胞由来であることが明らかにされつつあります。そして「免疫不全関連リンパ増殖異常症(Immunodeficiency Associated Lymphoproliferative Disorders)」は、患者さんの何らかの免疫不全状態を背景として発生する、リンパ増殖疾患・リンパ腫のことです。例えばAIDSは、「Human Immunodeficiency Virus」に感染した病気です。さらに、まれな組織球・樹状細胞腫瘍があります。これら6つの大項目の下に、さらに個別の診断が多数あります(50診断名以上)。ですから、専門家でもすべてを把握することは難しく、一方、実際に遭遇する頻度は、疾患によって大きく異なります。参考までに、比較的頻度の高い前駆細胞型腫瘍、成熟B細胞腫瘍、成熟TおよびNK細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫の分類の一覧を示します(表1)。

WHO分類のまとめ

  • 1994年に公表されたREAL分類をもとに、2001年に新訂WHO分類が公表されました。
  • 新訂WHO分類では、疾患単位という考え方が重視されています。
  • 疾患単位は、予後を含む臨床病態、形態、免疫型および遺伝子型により総合的に定義されています。ですから、診断を正しく進めるためには、医療機関でこれらの検索を可能にする体制の構築が必要となります。
  • 悪性リンパ腫では、疾患単位はB細胞とT/NK細胞の2系列のリストが列記されています。
  • 治療を考える場合、単に病理診断だけではなく、いろいろな予後予測因子の考慮が必要です。

ワンポイントアドバイス

  • 新訂WHO分類では、悪性リンパ腫の主な病型項目に限っても30以上にも及びます。しかし実際に遭遇するもの、すなわち頻度の高いものはB細胞腫瘍です。特にびまん性B大細胞型リンパ腫(わが国の頻度33%)、粘膜関連リンパ組織型辺縁帯B細胞リンパ腫(8%)、濾胞(ろほう)性リンパ腫(7%)およびマントル細胞リンパ腫(3%)の4項目で、全体の半数を占めるといえます。
  • T/NK細胞リンパ腫は、九州地区に多い成人T細胞白血病/リンパ腫(わが国における頻度7%、九州地区では20%)、アジア地域に多い鼻および鼻型NK/T細胞リンパ腫(2%)、若年者に多い未分化大細胞型リンパ腫(2%)とリンパ芽球型リンパ腫(2%)、および血管免疫芽球型リンパ腫(2%)を念頭におく必要があります。
  • ほかは十二分に整理されていなく、まだ症例報告レベルにとどまるものが多いといえます。

図表1 WHO Classification: List of the diseases

  • Precursor B- and T-cell neoplasms
  • Mature B-cell neoplasms
  • Mature T-cell and NK-cell neoplasms
  • Hodgkin lymphoma
  • Immunodeficiency associated lymphoproliferative disorders
  • Histiocytic and dendritic cell neoplasms

表1 新訂WHO分類
B細胞腫瘍分類 前駆Bリンパ芽球型白血病/リンパ腫
Precursor B-cell lymphoblastic leukemia/lymphoma
成熟B細胞腫瘍 Mature B-cell neoplasms*
B細胞性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
B-cell chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma
B細胞前リンパ球性白血病
B-cell prolymphocytic leukemia
リンパ形質細胞性リンパ腫
Lymphoplasmacytic lymphoma
脾辺縁帯リンパ腫
Splenic marginal zone lymphoma
有毛細胞白血病
Hairy cell leukemia
節外性粘膜関連リンパ組織型辺縁帯B細胞リンパ腫
Extranodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) type
マントル細胞リンパ腫
Mantle cell lymphoma
濾胞性リンパ腫
Follicular lymphoma
皮膚濾胞中心リンパ腫
Cutaneous follicle center lymphoma
節性辺縁帯B細胞リンパ腫
Nodal marginal zone B-cell lymphoma
びまん性B大細胞型リンパ腫
Diffuse large B-cell lymphoma
バーキットリンパ腫
Burkitt lymphoma
形質細胞腫
Plasmacytoma
形質細胞性骨髄腫
Plasma cell myeloma
Tおよびnatural killer
(NK)細胞腫瘍分類
前駆Tリンパ芽球型白血病/リンパ腫
Precursor T-cell lymphoblastic leukemia/lymphoma
成熟T細胞ならびにNK細胞腫瘍
Mature T-cell and natural killer cell neoplasms*
T細胞前リンパ球性白血病
T-cell prolymphocytic leukemia
T細胞大顆粒リンパ球性白血病
T-cell large granular lymphocytic leukemia
セザリー症候群
Sezary syndrome
NK細胞性白血病
Natural killer cell leukemia
節外性NK/T細胞リンパ腫, 鼻型
Extranodal NK/T cell lymphoma, nasal-type#
菌状息肉腫
Mycosis fungoides
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫
Primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma
皮下蜂窩織炎様T細胞リンパ腫
Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma
腸炎型T細胞リンパ腫
Enteropathy-type T-cell lymphoma
肝脾γδT細胞リンパ腫
Hepatosplenic γδ T-cell lymphoma
血管免疫芽球型T細胞リンパ腫
Angioimmunoblastic T-cell lymphoma
末梢性T細胞リンパ腫, 非特定
Peripheral T-cell lymphoma (unspecified)
未分化大細胞型リンパ腫, 原発性全身型
Anaplastic large cell lymphoma, primary systemic type
成人T細胞白血病/リンパ腫
Adult T-cell lymphoma/leukemia (HTLV1+)#
ホジキンリンパ腫分類 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
Ndular lymphocyte predominance Hodgkin lymphoma
古典的ホジキンリンパ腫
Classical Hodgkin lymphoma
結節硬化型
Nodular sclerosis (Grades I and II)
古典的ホジキンリンパ腫、リンパ球豊富型
Classical Hodgkin lymphoma, lymphocyte rich
混合型
Mixed cellularity
リンパ球減少型
lymphocyte depletion
普遍的に認められる腫瘍は太字で表記されている。
*:BならびにT/NK細胞腫瘍は主な臨床病態別に、すなわち白血病、節外性腫瘍および節性腫瘍の各グループごとに列記されている。
#:地理病理学的に発生頻度の差異が認められる腫瘍である。これらは欧米ではまれであるが、アジアではときにしばしば認められる。

1)B細胞腫瘍、TおよびNK細胞腫瘍

これから、最も多い成熟B細胞腫瘍(悪性リンパ腫全体の80%)、T細胞およびNK細胞腫瘍(およそ15%)について触れていきます(図表2)。

それ以外にあるのがホジキンリンパ腫で、これは日本を含むアジアでは5%です。しかし欧米では、20〜40%と非常に多いがんです。

図表2 Malignant lymphoma in Asia
  Japan Korea Hong Kong Western countries
Case nos. 3194 1548    
B-cell neoplasms 69% 71% 70〜75% 60〜75%
T/NK-cell neoplasms 25% 24% 18% 2〜9%
Hodgkin lymphoma 4% 5% <10% 30〜40%
Total % 100% 100% 100% 100%

2)発生頻度と地域

ところで冒頭で、悪性リンパ腫の分類は時代とともにどんどん変わると述べましたが、特定の病型については、地域によって全く発生頻度が違います。例えば、本州と九州にいるのであれば、疾患に対する立場を大きく変えるに違いないと思います。九州とそれ以外の地域では、成人T細胞白血病リンパ腫の発生内容が異なるからです(図表3)。

細胞は、発生の初期の段階からさまざまに形を変えていきます。がんを診断するときには、その形質がもともとの細胞のどれに近いかということが、非常に重要になります。そして、染色体および遺伝子異常が重要です。がんあるいは悪性リンパ腫とは、基本的には、何らかの原因によって遺伝子に異常を来した結果として、不幸にしてがんができてしまったと考えればよいわけです。このような異常は、誰にでも一定の確率で起こりうるといえます。

一般的な説明では、悪性リンパ腫は大きく「B細胞性腫瘍(B細胞性リンパ腫)」、「T細胞およびNK細胞性腫瘍(T/NK細胞性リンパ腫)」、「ホジキンリンパ腫」の3つに分けられます。この分類は、そのまま予後の違いでもあります。ところで、ホジキン(Hodgkin)は人の名前で、本態はよくわからないということになっていましたが、最近では前述のごとくB細胞性のものといわれています。10年生存率の高い順に並べると、ホジキンリンパ腫、B細胞性リンパ腫、T細胞性リンパ腫となります。

地域的には九州では、それ以外の日本の地域と比べて、T細胞性腫瘍の頻度が2〜3倍です。九州では成人T細胞白血病が多く、T/NK細胞性腫瘍が悪性リンパ腫全体の40%となっています(図表3)。世界的に悪性リンパ腫の頻度を見た場合、B細胞性リンパ腫は西欧諸国(Western Countries)が60〜75%で、日本全体では69%です。しかし日本国内の内訳をみますと、九州が54%で、他の地域全体が75%という違いがあります。T細胞性リンパ腫は、西欧諸国が2〜9%で日本全体が25%ですが、国内の内訳は九州が40%で、他の地域全体が18%という違いです。国別の発生頻度は、日本、韓国、香港はほぼ似たものとなっています。

ホジキンリンパ腫は西欧諸国に多く、日本が4%、韓国が5%でわずかしか発生しません。なお、このT/NK細胞性腫瘍については、8年前(2006年現在)に日本全国から集積した約3,000人分のデータをもとに解析されたものです。

図表3 Malignant lymphoma in Asia
  Japan Korea Hong Kong Western
countries
Kyushu Others
Case nos. 995 2199 1548    
B-cell neoplasms 54% 75% 71% 70〜75% 60〜75%
T/NK-cell neoplasms 40% 18% 24% 18% 2〜9%
Hodgkin lymphoma 4% 5% 5% <10% 30〜40%
Total % 100% 100% 100% 100% 100%

4.発生のメカニズムと診断

1)前駆細胞型

図表4
図表4

前駆細胞型のBあるいはT細胞性腫瘍は子どもに多く発生し、全悪性リンパ腫の約1%です。核小体が目立たず、核縁の薄い芽球細胞が特徴です(図表4)。

ワンポイントアドバイス
  • 患者が小児である。
  • 核小体が目立たず核縁の薄い芽球細胞からなる。
  • B、T細胞マーカーとともにTdTを証明する。


【前駆細胞型についてさらに詳しく】


前駆細胞型

図表5
図表5

図表6
図表6

体は、いわばDNAの設計図によって構成されます。しかし設計図の段階から、生後全く変わらないというわけではありません。いろいろな形で修飾されます。例えば、細胞レベルでDNAが切れるとか、配置換えが起きるなどです。そのときに働く酵素が「Terminal Deoxyribonucleotydil Transferase」で、「TdT」と略称されるものです。基本的に、幼若な細胞で働くであろうと考えられています。TdTという核が非常に強く染まっていることを見て、前駆細胞型であると判断します(図表5)。そのうえで、免疫染色あるいはFlow Cytometryなどの検査により、B細胞あるいはT細胞に特有のマーカーの発現の有無を調べることにより、B細胞性あるいはT細胞性に分けられます。一方、前駆細胞型腫瘍のようにがん細胞の分化が幼若な段階にとどまる場合には、マーカーの解釈において、成熟腫瘍のそれがそのまま当てはまらない点に注意が必要です。例えばCD79aというB細胞マーカー(蛋白:たんぱく)が存在しますが(図表6)、前駆細胞型腫瘍では、T細胞性のものにしばしば陽性となります。さらにCD56はNK細胞のマーカーですが、CD56陽性の芽球型NK細胞リンパ腫(Blastic NK-cell Lymphoma)があります。現在では、特殊な細胞、形質細胞様樹状細胞(Plasmacytoid Dendritic Cell)の前駆細胞型腫瘍との考えが提唱されています。今後、さらに検討の必要な問題でしょう。

前駆細胞型腫瘍は小児に発生する以外に、B細胞性のものが、ときに成人で節外性に発生することがあります。また、まれに後述の濾胞性リンパ腫や、慢性骨髄性白血病の悪性転化に伴い発生することがあります。急性骨髄性白血病の肉腫型(Myeloid Sarcoma)との鑑別が問題となる点にも留意が必要でしょう。

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2)成熟B細胞腫瘍分類の発達

繰り返しになりますが、悪性リンパ腫の分類は今後も変わります。しかし、成熟B細胞腫瘍の中の3種類の主な病型を原型として考えると、診断が理解しやすいように思います。この3種類の主な病型は、リンパ腫の分類で、すでに普遍的な位置が確立されたものといえます。それが「粘膜関連リンパ組織(MALT)型リンパ腫」、「濾胞性リンパ腫(Follicular Lymphoma)」、「マントル細胞リンパ腫(Mantle Cell Lymphoma)」です。

粘膜関連リンパ組織(MALT)型リンパ腫の「MALT」は粘膜関連リンパ組織(Mucosa Associated Lymphoid Tissue)の略称です。免疫系の中枢臓器は、リンパ節、胸腺、脾臓(ひぞう)、骨髄などですが、実はそれ以外の臓器にもリンパ組織があり、MALT型リンパ腫と深い関係があります。例えば胃には、そもそも生まれたときには免疫組織はありませんでした。しかし、胃にヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter Pylori)細菌感染が起こった場合、5〜10年という経過中に、細菌感染そのものによる刺激などで免疫組織ができてくるのです。それを粘膜関連リンパ組織(MALT)といいます。表では、これが全悪性リンパ腫の9%を占めるとなっていますが、実は最近ではもっと多く診断されるようになっていて15〜16%です。

「濾胞性リンパ腫(Follicular Lymphoma)」と「マントル細胞リンパ腫(Mantle Cell Lymphoma)」は、おのおの全悪性リンパ腫の7%、3%を占めています。最近、やはり濾胞性リンパ腫の頻度が高くなり、10〜15%を占めつつあります。以上の3種類の病型の理解が、成熟B細胞腫瘍を考えるもととなるといえます。

上記以外で多いのが、びまん性B大細胞型(Diffuse Large B-cell Lymphoma)です。これは悪性度は高いものの、それなりに化学療法が効くタイプです。MALT型リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性B大細胞型リンパ腫の4つで、日本の現在の悪性リンパ腫の60〜70%を占めることになります(図表7)。

図表7 悪性リンパ腫の診断:成熟B細胞腫瘍の頻度
・MALT lymphoma 9%
・Follicular lymphoma 7%
・Mantle cell lymphoma 3%
・CLL/SLL 1〜2%
・Plasma cell myeloma 1%
・Diffuse large B-cell lymphoma 34%
・Burkitt lymphoma 1%

5.悪性リンパ腫発生のメカニズム ―成熟B細胞腫瘍を例として:DNAの変化

図表8
図表8

図表9 転座:染色体の一部が他の染色体部分と入替わること
図表9

悪性リンパ腫は、がんの発生を考えるうえで最も良いモデルとなったものです。

図は腫瘍組織ではありません。一般の方にも理解しやすいように、健康な脾臓の組織を示しています。よく見ると、3つほどの細胞群に分別できます。リンパ濾胞の中央が胚中心(Germinal Center)によって構成されています。その外側の小さな細胞からなる黒っぽい部分を、暗殻(マントル層)といいます。そしてその外側に、胚中心と暗殻の中間くらいの大きさの細胞が広がっていますが、これを辺緑帯と呼びます(図表8)。

がん細胞が、胚中心細胞に分化してできるのが濾胞性リンパ腫、暗殻細胞に分化してできるのがマントル細胞リンパ腫、そして辺緑帯B細胞に分化してできるのがMALT型リンパ腫です。

免疫系細胞は、常に姿を変えることで機能を恒常的に維持しています。例えばリンパ球は、血液細胞の1つです。血液細胞は、骨髄の幹細胞(Stem Cell)から再生され続けます。骨髄から生まれ出たリンパ球の、例えば幼若なB細胞は、最初にこの暗殻の部分に入ります。そこでさまざまな抗原刺激を受け、胚中心を形成します。この際、この抗原に対してより反応性を高めるために、DNAを切ったり張りつけたりして抗体の多様性をつくります。ただしこのような激しいことをすれば、1〜10%の細胞はうまくいきますが、90〜99%の細胞は死んでしまいます。生き残ったものは、DNAを並べ替えることができて記憶細胞となり、辺縁帯を形成するといわれます。

つまり、リンパ球は骨髄に由来し、胚中心に入る前の細胞、すなわち前胚中心細胞の段階に相当する疾患がマントル細胞リンパ腫、胚中心の段階に相当するのが濾胞性リンパ腫、そして辺緑帯に相当するのがMALT型リンパ腫です。この3つに分ける理由は、疾患の成り立ち、組織所見、病態が大きく異なるためです。予後もそれぞれで違ってきます。最も単純化したものを示します(図表9)。

6.主な成熟B細胞腫瘍

1)マントル細胞リンパ腫

図表10
図表10

図表11
図表11

図表12
図表12

発生平均年齢は64歳です。年齢の下限は35歳くらいで、それ以降の高齢の方に多い病気です。したがって、20歳代でマントル細胞リンパ腫と診断されたら、その診断は本当に大丈夫かなと考えなければなりません。

これは、中間型の細胞の単調な増殖をします。B細胞性ですが、元来はT細胞のマーカーである「CD5」が染まります。予後は良くありません。サイクリンD1の分子異常が、このがんの本態です。

図は、マントル型リンパ腫の最も典型的な組織所見です。リンパ濾胞内部の胚中心は正常です。がんではありません。胚中心のすぐ外側の暗殻部分が、がんに置き換わっています(図表10、11)。細胞像は、暗殻の細胞を思わせるように非常に均一な、中間型といわれる細胞が密に増殖しています。そしてCD5というマーカーが陽性になります(図表12)。

ワンポイントアドバイス
  • 高齢者、平均64歳
  • 中間型細胞の単調な増殖
  • B細胞性、CD5+、CD10-、CD19+、CD20dim+、CD23-/+
  • 予後不良、5年生存率11%
  • サイクリンD1が診断の決め手

【マントル細胞リンパ腫についてさらに詳しく】


マントル細胞リンパ腫

図表13
図表13
転座:染色体の一部が他の染色体部分と入替わること 11番染色体と14番染色体の転座(聖マリアンナ医科大学 三浦偉久男教授のご好意による)

図表14
図表14

このがんは、11番染色体と14番染色体に異常があります。B細胞の特徴は免疫グロブリン(抗体)をつくると前述しました。その中の特に重鎖(Heavy Chain)という抗体の中で、最も大きなペプタイド(peptide)をつくる遺伝子は、この14番染色体にあります。そして11番染色体には、このマントル細胞リンパ腫の原因遺伝子であるサイクリンD1があります。図でBCL1と記載されているのがサイクリンD1であり、BCL1という言葉は、B細胞腫瘍で見いだされた最初の染色体転座という事実に由来します。腫瘍の発生は、骨髄から暗殻に入るまでの間にたまたま11番染色体と14番染色体が切れて、互いに別のところとつながってしまった「染色体転座」という異常が起きたことに由来します(図表13)。

図のように、14番染色体の下に11番染色体の長腕がつながってしまいます。これによって、B細胞の機能である免疫グロブリンが発現する際に、本来発現しないサイクリンD1の遺伝子が異常に(過剰に)発現してしまうことになります。その結果として、非常に予後の悪いマントル細胞リンパ腫がつくられるわけです。サイクリンD1遺伝子の過剰発現は、現在、免疫染色により比較的簡便に検出が可能です。血液リンパ系細胞の場合、細胞核にサイクリンD1が陽性であれば、同遺伝子の過剰発現があるといえます(図表14)。マントル細胞リンパ腫診断の大きな手がかりとなります。一方、サイクリンD1の遺伝子の転座と過剰発現は、ときに形質細胞性骨髄腫でも検出されることがあります。病態が異なり、注意が必要でしょう。

図表15 Overall survival: Cyclin D1+ mantle cell lymphoma
図表15 Overall survival: Cyclin D1+ mantle cell lymphoma

図表15では、マントル細胞リンパ腫の予後曲線を示しています。すべての患者さんが、がんで亡くなっているわけではありません。少数ながら、長期生存をしている患者さんがいます。このことは、同じ遺伝子異常が起きたとしても、すべて同じ結果になるわけではないことを示しています。同じ人間といっても一人一人顔が違うように、固体レベルでのもともとの素質、あるいは背景の免疫系に多様性があることから、ある1つの遺伝子異常がリンパ系細胞に起きても、実際の病態には幅が出てきます。個々の患者さんの年齢、がんの進展度なども大きく関係します。また、がんの広がり具合や、日常労作状態(パフォーマンスステイタス:Performance Status)も考慮に加える必要があります。がんの広がりについては、首の周囲だけにとどまっている場合と、首からリンパ節、さらに骨髄へと広がっている場合では、全くその状況が違っています。

日常労作状態では、体を少しでも動かすと苦しくてつらい、あるいはほとんど普通に動くことができるというような大きな違いがあります。それらを総合的に考えて、治療が選択されることになります。

図表16
図表16

図表17
図表17

図表18 Histologic Variants
図表18 Histologic Variants

例えばマントル細胞リンパ腫であれば、まずサイクリンD1の遺伝子異常が発現していれば、予後が悪いといえます。しかし形態と分子さえわかれば、診断はもう簡単ということではありません。前述しましたが、病態に多様性があるように、同じ遺伝子異常が起こったとしても、個々のがんの実際の組織像、細胞像は大きく幅があります。

図は、マントル細胞リンパ腫の組織像の多様性を示すものです(図表16[芽球亜型 Blastic Variant]、17[多形亜型 Pleomorphic Variant])。細胞が先ほどの黒い卵のような核のものに比べてはるかに大型で、もとの形に似ても似つかないような、非常に多形性の細胞となっているのがわかります。確かにこのような形態になると予後は悪いのですが(図表18)、最近ではある程度治すことができるようになってきました。末梢血幹細胞移植を併用することによって、これまででは使えなかった量の薬を投与できるようになり、ある程度は根治が可能になりました。

以上のように、悪性リンパ腫で診断が大事な理由は、適切な診断によって適切な治療法が選択されるからです。また、1つのがんの中にも大きな多様性があることがわかります。そのために、実際の診断に際してしばしば難渋すること、また臨床経過中に診断が変わることもときに経験します。

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2)濾胞性リンパ腫

これも高齢者に多く、リンパ節から発生するものです。そして、本来は予後の悪い急性白血病のマーカーであるCD10が、なぜかわかりませんが発現します。経過は非常に緩(ゆる)やかですが、なかなか治りにくいがんです。BCL2が遺伝子異常の本態で、濾胞性リンパ腫の発生にかかわっています。近年は、治療用キメラ型抗CD20抗体(リツキシマブ:リツキサン(R))が使われるようになっています。

ところで前に簡単に述べたように、濾胞性リンパ腫は、現在わが国で急速に患者さんが増えつつあります。例えば、欧米では濾胞性リンパ腫は20%くらいですが、愛知県がんセンターでのデータによれば、1990年代は8%だったものが、最近では15%とほぼ倍増しています(図表19)。ただし、アメリカに移民して暮らしている日本人では20%ですから、発生の頻度は環境に影響を受けていることが推測されます。

図表19 Trend in the incidence of lymphoma subtypes
in Aichi Cancer Center and affiliated hospitals
Year Case no. Hodgkin lymphoma Follicular lymphoma Diffuse large B-cell lymphoma
1986-1990 318 3% 8% 32%
1991-1995 616 6% 10% 35%
1996-2000 872 7% 15% 39%

図表20
図表20

図表21
図表21

図表22
図表22

濾胞性リンパ腫は、慣れればある程度は肉眼で診断を推測することが可能です。濾胞そのものの大きさが、大体1mmくらいあります。図表20、21は、国立がんセンター(現国立がん研究センター)の病理の松野吉宏医師にお借りしたスライドですが、多数の小結節構造、組織では胚中心・濾胞に相当する結節がリンパ節全体に見えます。細胞像は、単調な細胞構成を示すマントル細胞リンパ腫とは異なり、中型から大型のくびれ細胞、非くびれ細胞で構成されています(図表22)。

濾胞性リンパ腫は、基本的にリンパ節に出るもので、病初期から全身に広がっている場合が多いです。しかし、少数ながらリンパ節以外の、例えば皮膚や十二指腸などに出ることがあります。その場合には、病変の広がりが発生部位に比較的限局しています。したがって、通常の濾胞性リンパ腫では全身治療が中心になりますが、このようにリンパ節以外に発生した場合には、局所の治療も考えられます。同じ病気であっても、どこから発生したのかということが非常に重要になるわけです。ですから、問題のがんがどの部位から発生したのか、年齢はいくつかなどのことを考えずに、肉眼や画像所見、組織像、細胞像、または遺伝子異常だけを見ていても、正しい診断と治療方針には絶対にたどり着けません。全体を総合的に考える重要性が、何度も強調されるわけです。
ワンポイントアドバイス
  • 高齢者、リンパ節性
  • 濾胞形成、くびれ/非くびれ細胞
  • B細胞性、CD5-、CD10+、CD20+
  • 経過は緩徐、非治癒
  • BCL2が診断の助け
  • 治療用キメラ型抗CD20抗体

【濾胞性リンパ腫についてさらに詳しく】


濾胞性リンパ腫

図表23
図表23

図表24
図表24

図表25
図表25

図表26
図表26

図表27 Overall survival in 94 patients with follicular lymphoma.
図表27 Overall survival in 94 patients with follicular lymphoma.

濾胞性リンパ腫は、CD10が陽性です(図表23)。また、染色体異常として、14番と18番染色体が転座しています(図表24)。14番染色体には、前述のごとく免疫グロブリン重鎖の遺伝子があって、18番染色体上にBCL2という遺伝子があります。BCL2は、B細胞性リンパ腫で発見された2番目の染色体異常ということで、このような「名前」がついています。BCL2は、細胞が生理的に死ぬ(アポトーシスと呼ばれます)ことを妨げる働きをします。細胞の代謝が正常に進めば、一定の期間を過ぎた細胞は死んでしまうという現象があり、それらの細胞が死ぬか死なないかという事象に、BCL2という蛋白の発現の有無が深くかかわっています。細胞が生理的に死ぬかどうかという現象は、がんの発生を考えるうえで非常に重要です。BCL2は、濾胞性リンパ腫ではまさに腫瘍性胚中心に陽性です(図表25)。BCL2は、細胞レベルではミトコンドリアに局在し、がん細胞の細胞質に陽性となります(図表26)。一方、がんではない、正常の反応性のリンパ濾胞では、BCL2の蛋白レベルでの発現は一切認められません。ですから、胚中心でBCL2が陽性であれば、まず濾胞性リンパ腫を考えることになります。一方、濾胞性リンパ腫の10〜20%でBCL2が陰性のことがあります。また、濾胞性リンパ腫以外の他のリンパ腫、例えば前述のマントル細胞リンパ腫、後述のMALT型リンパ腫では、BCL2遺伝子異常がなくとも、蛋白レベルでは通常、BCL2陽性であることに注意が必要です。BCL2蛋白は正常の胚中心細胞“以外”の成熟B細胞では、普通に発現しているからです。BCL2蛋白発現の評価は、胚中心細胞およびそれへの分化を示す腫瘍においてのみ意味を持つといえます。

参考までに、愛知県がんセンターにおける濾胞性リンパ腫の予後曲線を示します(図表27)。

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3)粘膜関連リンパ組織型(MALT型)リンパ腫

消化管や肺、あるいは眼など、本来はリンパ組織がないところ(リンパ節以外:節外と呼ばれます)に二次的に発生するがんが「MALTリンパ腫」で、発生率の高いリンパ腫といえます。高齢者に多く、特定の臓器に発生するものであるために、その臓器だけにとどまってなかなかほかの部位へは出ていきません。そこで、例えばそれが胃であれば、胃だけを取ってしまえばそれで治るというケースが多いことになります。胃に限った例をあげれば、MALTリンパ腫ができる原因となるヘリコバクター・ピロリという細菌を、抗生物質で除菌してしまうだけで治ってしまうという症例が近年では増えています。

ワンポイントアドバイス
  • 高齢者、節外性
  • リンパ上皮性病変、Centrocyte-like Cell
  • B細胞性、CD5-、CD10-、CD20+
  • 予後良好、外科的治療効果
  • 慢性炎症を背景
  • t(11;18)染色体転座によるAPI2-MALT1キメラ
  • 胃原発例、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法が奏効
  • ヘリコバクター・ピロリ菌除菌反応性の予測にAPI2-MALT1キメラが有用

【粘膜関連リンパ組織型(MALT型)リンパ腫についてさらに詳しく】


粘膜関連リンパ組織型(MALT型)リンパ腫

図表28 Marginal Zone B Cell Lymphoma of MALT
図表28 Marginal Zone B Cell Lymphoma of MALT

図表29
図表29

図表30
図表30

図表31
図表31

消化管、肺、唾液腺、甲状腺、胸腺等に発生します。原因には、染色体異常、臓器等に二次的に免疫組織ができる要因となる自己免疫疾患、細菌感染等があげられています(図表28)。

図は肺にできた粘膜関連リンパ腫で、20年ほど前の症例です。これは手術で取る方法しかなかったケースです。気管支の腺管上皮の中に、がん細胞がたくさん入り込んでいます(図表29、30、31、32)。

図表32
図表32

図表33
図表33

図表34
図表34

また胃原発MALT型リンパ腫でも、同様に既存の腺管上皮の中に多数のリンパ腫細胞が観察されます(図表33)。リンパ上皮性病変(Lymphoepithelial Lesion)と呼ばれ、しばしばMALT型リンパ腫に特徴的とされます。免疫染色では、リンパ腫細胞はB細胞のマーカーであるCD20が染まっています(図表34)。

図表35
図表35

上皮細胞のマーカーであるケラチン陽性の腺菅内に、多数のリンパ腫細胞が入っていることがわかります(図表35)。

図表36
図表36

図表37
図表37

図表38 胃MALTリンパ腫59例の経過とAPI2-MALT1キメラ陽性例(10例)
図表38 胃MALTリンパ腫59例の経過とAPI2-MALT1キメラ陽性例(10例)

図表39
図表39

胃原発MALT型リンパ腫は、最近では80〜90%が、ヘリコバクター・ピロリ菌を除去するだけで治るとされています。愛知県がんセンターの中村常哉内視鏡部長より借用したデータを示します。胃にできたMALT型リンパ腫の図ですが、粘膜面はこのように腫れて炎症を起こします。それが除菌を行うことで、半年後にはきれいに治っています(図表36、37、おのおの左側が除菌前、右側が除菌半年後)。

図表38は、MALT型リンパ腫の治療に関するデータです。このデータの解析の段階で、59人のMALTリンパ腫の患者さんのうち、感染があったのは50人でした。そのうち除菌できたのは47人でした。3人は、抗生物質を変えてもどうしても除菌できませんでした。除菌が成功した47人のうち、40人の患者さんは治癒と判断されました。細菌感染がなかった9人のうち6人の患者さんに、インフォームドコンセントを行ったうえで除菌治療が試みられました。その結果、1人の患者さんはMALTリンパ腫が治癒しました。この患者さんは、細菌に対する血清抗体検査、培養試験では全くヘリコバクター・ピロリは見つけられなかったのですが、一見正常な胃粘膜内に、顕微鏡レベルで反応性のリンパ濾胞の形成が観察されました。臨床経過からみますと、おそらくヘリコバクター・ピロリ菌の感染があった可能性、すなわち検査結果が偽陰性であった可能性が推測されました。しかし6人のうちの5人の患者さんでは、除菌治療は全く効果がありませんでした。

愛知県がんセンター遺伝子医療研究部の瀬戸加大医師らとの共同研究により、現在ではこのような除菌の効果がないケースは、11番染色体と18番染色体が転座しているということがわかっています(図表39)。

この転座の結果として、本来発現しない2つの遺伝子が発現してしまいます。1つは前出のBCL2と同じように、細胞死を抑制することに関与する遺伝子API2です。もう1つは、新規遺伝子で瀬戸医師らにより命名されたMALT1と呼ばれ、やはり細胞死の抑制に関与することがわかっています。

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4)びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫

図表40
図表40

図表41
図表41

悪性リンパ腫全体の35〜40%を占めるのが、びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫です。組織学的には大型の芽球化リンパ球系細胞からなります(図表40)。一方、本態的には多様ながんの集まりで、全身のどの臓器でも、またどのような年齢の人にも発生するがんです。したがって、臨床の医師はこのがんを見る機会が非常に多いことになります。半数以上が治るがんといわれています(図表41)。

ワンポイントアドバイス
  • 悪性リンパ腫の約半分を占める
  • 本態的には多様な腫瘍の集まり
  • 全身のいかなる臓器からも発生
  • 疾患単位と見なしうる特殊型の存在に留意
  • B細胞性、CD19+、CD20+、CD79a+
  • 3q27領域染色体転座とBCL6の再構成
  • p53遺伝子突然変異は予後不良

【びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫についてさらに詳しく】


びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫

突然に(de novo的に)発生したもの以外に、前に述べた3種類のB細胞リンパ腫などの臨床経過中に、二次的に高悪性度転化したものまで含まれます。したがって、その本態は極めて多様であり、さまざまな病型のものが含まれている点に注意が必要です。現在でも、染色体異常や分子の発現状態を総合的に調べるなど、いくつかの疾患に類型化を試みた研究が継続的に行われています。現時点で、すでにいくつかの臨床病理学的な疾患単位が分離されています。その主なものが、亜型としてあげられた縦隔(胸腺)発生B細胞リンパ腫、原発性侵出液リンパ腫、血管内B大細胞リンパ腫等です(図表42)。

B細胞腫瘍ですから、基本的に免疫グロブリン遺伝子のモノクローナルな再構成が証明されます。一方、染色体・遺伝子の異常について多く報告されています。20〜30%の症例で、t(14;18)染色体転座とそれに基づくBCL2遺伝子の再構成が検出されます。また、30%以上の症例で、3q27領域染色体転座に伴うBCL6の再構成が報告されています。BCL6再構成を有する症例は、節外臓器浸潤(しんじゅん)を伴う傾向が指摘されていますが、必ずしも有意差はないとの指摘もあります。BCL6分子の腫瘍発生とのかかわりについては、現在解明の途上にあります。一部の症例で、t(8;14)染色体転座に基づくc-myc遺伝子の再構成が報告されています。後述のバーキットリンパ腫で特徴的とされる遺伝子異常ですが、区別して考える必要があります。びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫における、p53遺伝子の突然変異の有無と予後が密接に相関し、変異例が予後不良であることが指摘されています。また最近、免疫学的な特徴であるCD5陽性のリンパ腫が、予後不良で特異な一群を形成することが注目されています。ほかにも、CD10、BCL2、IL-6、nm23、survivin、Bax、CD44v6、E2F-1、p16、beta-2 MG、HLA-DR、surface Ig、Ki-67、p27、TIL、caspase-3、VEGF、bFGF (FGF-2)、p14ARF等、多くの分子と予後との相関の検証がなされ、さらに最近ではGene Expression Profileを用いた解析が進められつつあります。

図表42 Diffuse Large B Cell Lymphoma
  • Subtypes
    - Mediastinal large B-cell lymphoma
    - Intravascular large B-cell lymphoma
    - Primary effusion lymphoma
    - Lymphomatoid granulomatosis
    - Pyothorax-related lymphoma

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(1)前縦隔(胸腺)原発B大細胞型 Mediastinal Large B-cell Lymphoma

胸腺在住の特異なB細胞(Asteroid B-cell)由来と考えられるがんです。20歳、30歳代の比較的若い女性の前縦隔(ぜんじゅうかく)に好発します。心膜、胸膜、肺、胸壁など周囲組織への浸潤を示し、しばしば上大静脈症候群と呼ばれる病態を呈します。腎臓に再発する傾向が高いといわれています。以前は予後不良と考えられましたが、最近では、通常のびまん性大細胞型リンパ腫と治癒率に差はないとされています。

ワンポイントアドバイス
  • 20〜30歳代の若年女性の前縦隔に好発
  • ときに上大静脈症候群
  • 周囲臓器(心膜、胸膜、肺、胸壁)へ浸潤
  • 嚢胞(のうほう)を形成
  • B細胞性(CD20+、CD21-、sIg+/-)
  • 胸腺がんとの鑑別

【前縦隔(胸腺)原発B大細胞型についてさらに詳しく】


前縦隔(胸腺)原発B大細胞型 Mediastinal Large B-cell Lymphoma

図表43
図表43

図表44
図表44

図表45
図表45

肉眼的には嚢胞形成を特徴としています(図表43)。嚢胞形成性の前縦隔病変を見れば、まずリンパ腫を考える必要があります。組織学的には大型芽球化細胞からなり、ときに多分葉核を示すことがあります(図表44)。膠原線維(こうげんせんい)の増生による硬化像を特徴としています。捺印細胞診(なついんさいぼうしん)で、細胞質内にアウエル小体Auer Rod様のアズール顆粒がときに認められ(図表45)、診断の助けとなります。しばしば腫瘍細胞表面の免疫グロブリン(sIg)が検出されず、診断に難渋することがあります。

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(2)慢性結核性膿胸関連リンパ腫 Pyothorax-related Lymphoma
慢性結核性膿胸(のうきょう)後に発生する胸膜の高悪性度リンパ腫で、わが国からの報告が多いがんです。高齢の男性に多いとされます(平均63歳、男女比5.2:1)。結核性胸膜炎後、22〜55年(平均33年)の経過で胸膜に発生します。発生には、昔結核の治療として使われていた、人工気胸術の既往との関連が指摘されています。胸痛、呼吸困難、胸壁腫瘍が主症状です。がんは胸腔内に限られる傾向がありますが、一般的に予後不良です。

ワンポイントアドバイス
  • わが国に報告が多い
  • 発症年齢46〜81歳、平均63歳
  • 男性に多い(男女比5.2:1)
  • 慢性結核性膿胸後、平均33年の経過で発症
  • 予後中間値、8ヵ月
  • Epstein-Barr Virusの関与、特にEBNA2の発現

【慢性結核性膿胸関連リンパ腫についてさらに詳しく】


慢性結核性膿胸関連リンパ腫 Pyothorax-related Lymphoma

図表46
図表46

図表47
図表47

大型芽球化細胞の、びまん性増殖を示しています(図表46)。これらがん細胞は、核小体の目立つ水泡状大型核を有しています。壊死(えし)を伴い、アポトーシスと呼ばれるがん細胞の孤在性変性所見が目立ちます。がん細胞は、B細胞マーカー(CD20、CD79a)が陽性です。また、極めて高率にエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr Virus:EBV)の関与が認められ、慢性結核性膿胸による局所の免疫不全状態が、本がん発生の基盤と考えられています。ですから、最もひどい免疫不全状態ではじめて観察される、EBVウイルス蛋白であるEBNA2の発現ががん細胞核に観察されます(図表47)。

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図表48
図表48

(3)血管内B大細胞型リンパ腫 Intrvascular Large B-cell Lymphoma
腫瘤(しゅりゅう)をつくらず、節外臓器の血管を好んで侵襲(しんしゅう)する特異なリンパ腫です。そのため、しばしば最後まで診断のつかないことがあります。血管内腔(けっかんないくう)の中で増殖するリンパ腫細胞が観察されます(図表48)。比較的高齢者に多く、がん細胞による小血管腔の閉塞に伴う臨床徴候を示します。結節性皮膚病変や神経症状(痴呆、巣症状、ときにネフローゼ症候群、発熱、高血圧や呼吸器症状)が主症状です。しばしば、自己抗体や自己免疫性溶血性貧血などの免疫異常を伴うとされます。白血化は認められません。

最近、皮膚病変や神経症状を伴わず、病初期より汎血球減少症など、いわゆる悪性組織球症様病態を示す症例が注目されています。わが国からの報告が多く、骨髄浸潤、肝脾腫(かんひしゅ)という、特徴的な臨床病態を示します。

ワンポイントアドバイス
  • 比較的高齢者、男女差なし
  • 皮膚病変や神経症状(痴呆、巣症状)、呼吸器症状
  • ときに悪性組織球症様病態
  • 自己抗体などの免疫異常
  • 皮膚、肺、腎臓、骨髄および肝生検
  • 血管腔内に充満する大型芽球化細胞
  • B細胞性

【血管内B大細胞型リンパ腫についてさらに詳しく】


血管内B大細胞型リンパ腫 Intrvascular Large B-cell Lymphoma

がん細胞は、B細胞マーカー(CD19、CD20、CD22、CD79a)が陽性です。ときに、CD5陽性B細胞性のものが報告されています。血管内皮への付着に関与するCD11aや、CD18の欠損が報告されていますが、今後、さらに検討する必要があります。Epstein-Barr Virus(EBV)の関与は認められません。

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5)バ−キットリンパ腫 Burkitt Lymphoma

小児非ホジキンリンパ腫の中では、前述のリンパ芽球型に続いて頻度が高いがんです。ときに成人にも認められます。節外臓器、特に消化管、後腹膜および扁桃(へんとう)が好発部位とされます。わが国では、若年女性の節外臓器(卵巣、乳腺)に発生する例が多いといわれています。

ワンポイントアドバイス
  • 小児、ときに成人に発症
  • しばしば節外臓器から発生
  • 弱拡大で星空像
  • 核小体が明瞭で(通常2〜5個)、核縁の厚い中型細胞からなる
  • 細胞質内空胞、捺印細胞診では脂肪を証明
  • B細胞マーカー陽性であるが、TdTは陰性
  • t(8;14)染色体転座

【バ−キットリンパ腫についてさらに詳しく】


バ−キットリンパ腫 Burkitt lymphoma

図表49
図表49

図表50
図表50

図表51
図表51

組織学的には、 好塩基性細胞質と類円形核を有する中型腫瘍細胞の単調な増殖を示します(図表49)。典型例では、散在するマクロファージにより、“星空像starry-sky”と呼ばれる特徴的な組織像が観察されます。核小体は明瞭で核縁は厚く、リンパ芽球型リンパ腫との鑑別に役立ちます。極めて増殖傾向が強く、MIB1など増殖期にある細胞で陽性となるマーカーで染色すると、ほとんど(99%以上)のがん細胞が陽性になります(図表50)。捺印細胞像では、細胞質内に脂肪空胞が観察されます(図表51)。がん細胞は、sIgM+、B細胞マーカー(CD19、CD20、CD22、CD79a)+、CD5-、CD10+、TdT-です。しばしば染色体転座を示し、t(8;14)が最も多く、続いてt(2;8)、t(8;22)が報告されています。第8染色体にはc-myc遺伝子が存在し、それが免疫グロブリン重鎖(第14番染色体)、免疫グロブリンκ軽鎖(第2番染色体)およびλ軽鎖(第22番染色体)遺伝子近傍に転座し、c-myc遺伝子が活性化され、がん発生と関連すると考えられています。また、アフリカに多いといわれ、Epstein-Barr Virus(EBV)の関与が指摘されていますが、わが国の症例でEBVが証明されることは少ないです(10〜20%)。

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7.主な成熟T細胞腫瘍

この項目では、主なものとして白血病とともに「血管免疫芽球性T細胞リンパ腫」や「成人T細胞リンパ腫/白血病」、「未分化大細胞リンパ腫」、「皮膚の菌状息肉症」、「セザリー症候群」、「鼻咽頭領域や皮膚などに発生する鼻型T/NK細胞リンパ腫」、「消化管の腸炎型T細胞リンパ腫」、「肝脾γδT細胞リンパ腫」、そして「皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫」が列記されています。

また、未分化大細胞型リンパ腫から皮膚原発のもの(Cutaneous Anaplastic Large Cell Lymphoma)までが、別に扱われています。

これら以外は、非特殊末梢性T細胞リンパ腫として一括されています。

1)日本人に多い成熟T細胞腫瘍―成人T細胞白血病/リンパ腫 (Adult T-cell Leukemia/Lymphoma:ATLL)

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)の発症は、日本全体では8%ですが、九州地区では約20%です。一方、東京では約2%ですが、同じアジアでも韓国や香港などでは全く見いだされない特殊ながんです(図表52、53)。京都大学の高月 清医師、国立がんセンター(現国立がん研究センター)の下山正徳医師らの努力により、明らかにされたがんです。ATLLはウイルスの感染によって起きる病気ですが、その原因ウイルスのHTLV-1は、比較的近年になって発見されました。

キャリアになっても発症するのは5%とわずかですが、一度発症すると予後は非常に悪いといえます。ときにはありとあらゆる治療に抵抗し、数週間で亡くなってしまうこともあります。発症年齢の中間値は55歳です。

HTLV-1は太古からヒトについてきたウイルスですが、血液や母乳などによって感染します。しかし感染力は非常に弱く、ある程度の曝露量が必要なので、血液や母乳によって曝露(ばくろ)されるとしても、母乳などの接触を少し抑えれば予防は可能とされています。このことは、場合によってはがんも予防が可能であるということを示していて、非常に重要なことです。

ところでATLLは、カリブ海や中央アフリカ、中南米にも分布している病気です。また、発症率が非常に低いことを前述しましたが、生まれたときに感染したとしても、発症するにはおよそ60年かかります。このことが、ATLLの発見が非常に遅れた理由でもあります。つまり、日本人の平均寿命が50歳、60歳と高くなってきたことによります。見方を変えれば、これから人間が皆90歳を超えて生きる時代が来れば、また別のがんが見いだされる可能性もあるということです。これらのことが示すのは、1つの病気を捉えるには、時間や空間を超えた4次元的な見方も必要ではないかということです。

ワンポイントアドバイス
  • 成人(年齢中間値55歳、M/F=1.5)
  • HTLV1+、極めて長い潜伏期を有する
  • 母乳あるいは血液を介して感染
  • 日本、カリブ海沿岸、南米に地理病理学的に偏在
  • いくつかの臨床的病型:acute, lymphomatous, Chronic and Smoldering
  • T細胞性(CD2+、CD3+/-、CD4+、CD8-、CD25+)
  • 特殊病型Hodgkin-like Variant(CD30+、CD15+、EBV-)
  • 高カルシウム血症
  • 極めて予後不良
  • Pneumocystis Carinii肺炎、糞線虫症
  • HAMなどリンパ腫以外の疾患に留意

【成人T細胞白血病/リンパ腫についてさらに詳しく】


日本人に多い成熟T細胞腫瘍―成人T細胞白血病/リンパ腫 (Adult T-cell Leukemia/Lymphoma:ATLL)

図表54
図表54

図表55
図表55

図表56
図表56

図表57
図表57

図表58
図表58

図表59 The patient was finally diagnosed as adult T-cell leukemia/lymphoma
図表59 The patient was finally diagnosed as adult T-cell leukemia/lymphoma

臨床的に、いくつかの病型に分けられています。高カルシウム血症を伴い、循環系の症状が問題となることがあります。がんは、核形不整あるいは芽球化の著しい中〜大型異型細胞の単調な増殖を示し、症例によって随分異なる組織像を示すことがあります(図表54、55、56)。全体に、反応性要素に比較的乏しいものといえます。従来、主に組織所見から多形細胞型に分類されたがんです。しばしば白血化し、末梢血中に花びら細胞Flower Cellが観察されます(図表57)。また、T細胞マーカーであるCD3εが、がん細胞に陽性となります(図表58)。診断のためには、がん細胞におけるHTLV-1ウイルスゲノムの、モノクローナルな組み込みを証明する必要があります(図表59)。

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図表52 Peripheral T and NK cell lymphoma in Asia
  Japan Korea Hong Kong Western
countries
Kyushu Others
NK/T cell lymphoma of nasal type 3% 3% 9% 8% 0(〜2)%
Adult T-cell lymphoma/leukemia 20% 2% 0% 0% 0%
Anaplastic large cell lymphoma 2% 2% 2% 3% 2〜3%
Angioimmunoblastic T-cell lymphoma 4% 2% 1% 3% 2〜3%
Peripheral T-cell lymphoma 9% 6% 9% 10% 3〜8%

図表53
図表53

2)未分化大細胞型リンパ腫 Anaplastic Large Cell Lymphoma (ALCL)

30歳以下の発症例が多く、予後は比較的良いとされます。リンパ節以外に、ときに皮膚などの節外からも発症します。

ワンポイントアドバイス
  • ALK陽性ALCLは極めて均一な疾患単位を形成
  • 若年者に発症、平均25歳、中間値21歳
  • 治療反応性は良く、一般に予後は良い
  • ALKが診断の決め手
  • EMA、Granzyme B、TIA1が高率に陽性
  • CD56陽性例は予後不良
  • CD15、Epstein-Barr Virusは検出されません
  • ALK“陰性”ALCLの本態は多様で、診断に注意が必要

【未分化大細胞型リンパ腫についてさらに詳しく】


未分化大細胞型リンパ腫 Anaplastic Large Cell Lymphoma (ALCL)

図表60
図表60

図表61
図表61

図表62
図表62

図表63
図表63

図表64
図表64

Reed-Sternberg細胞と特異的に反応するとされたモノクローナル抗体Ki-1(CD30)が陽性となる、組織像、抗原発現様式に類似性を示す一群の非ホジキンリンパ腫として、当初、着目されました。発症年齢や予後を含む臨床病態が、それ以外のT細胞リンパ腫と大きく異なっています。組織学的に、リンパ節での増殖様式が特徴的で、傍皮質(ぼうひしつ)領域、類洞(るいどう)への浸潤が目立ち、ときにリンパ濾胞の残存、線維化を示します。細胞形態は多様で、類円形核を有する中−大型細胞が単調な増殖を示すものから、腎臓様、ドーナツ様と表現される、核の著しい多形性を特徴とするものまであります(図表60)。がん細胞はT細胞性あるいはnull細胞性で、t(2;5)染色体転座とそれに基づくp80NPM/ALK、すなわちAnaplastic Lymphoma Kinase (ALK)の発現が認められます。CD30(図表61)、Granzyme B(図表62)、ALK(図表63、64)は、パラフィン切片での免疫染色でがん細胞に容易に検出され、診断、鑑別および予後評価の参考となります。

本がんの最大の特徴であるALK発現は、2番染色体上に位置するALK Locusの遺伝子異常によりもたらされます。当初、金子医師らにより特異的なt(2;5)(p23;q35)染色体転座が指摘されました。さらに当時、東京大学医科学研究所の森 茂郎医師、塩田真美医師らは、t(2;5)転座をもつ未分化大細胞型リンパ腫細胞株(AMS3)を用いたシグナル伝達を解析し、抗リン酸化チロシン抗体を用いて免疫沈降することにより、80kDaのリン酸化蛋白質p80を同定しました。これが、Leukocyte Tyrosine Kinase(Ltk)類似の新たなチロシンキナーゼであることを示し、Anaplastic Lymphoma Kinaseと名付けたわけです。さらに、p80が2番染色体上に位置するALKと、5番染色体上のnucleophosmin(NPM)からなる染色体転座によって、特異的に発現したキメラ蛋白質Chimeric/Fusion Protein p80NPM/ALKであることを明らかにしました。ALKは、インスリン受容体ファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼであり、生理的には神経組織で高発現し、リンパ組織での発現は認められません。一方、t(2;5)転座におけるパートナーであるNPMは、核小体内に存在するRNA結合性リン酸化蛋白質で、ハウスキーピングジーンとして多くの組織で発現されています。t(2;5)染色体転座により、NPMのN末端を構成する部分とALKの細胞質内キナーゼドメインが融合して、キメラ蛋白質を形成します。その結果、ALK遺伝子はNPM遺伝子プロモーターの制御を受けるようになり、通常はALK発現のないリンパ細胞内で、不完全なALK遺伝子が恒常的に活性化されます。結果的に、この過剰発現したチロシンキナーゼが増殖制御の異常を生じ、がん化を招来すると考えられています。未分化大細胞型リンパ腫では、t(2;5)以外にも、ときにt(1;2)(q25;p23)、inv(2)(p23;q35)等、いくつかの染色体転座が知られています。それらALKのNPMをはじめとする、主なパートナージーンの一覧を示します(図表65)。

本がんの場合にも、個々の患者さんの組織所見は非常に幅広く、診断にしばしば難渋することがあります(図表66)。一般に、ALK陽性の未分化大細胞型リンパ腫は、化学療法に対する反応性は良いとされます。一方、ときにALK陰性の未分化大細胞型リンパ腫と診断される場合があり、予後も悪く注意が必要です(図表67)。

図表65 Fusion genes in ALK+ ALCL
2p23 ALK: anaplastic lymphoma kinase

5q35 NPM: nucleophosmin
1q25 TPM3: nonmuscular tropomyosin
3q21 TFG: TRK-fused gene
2q35 ATIC: IMP cyclohydrolase
22q11 CLTCL:clathrin heavy polypeptide-like protein
Xq11-12 MSN: moesin
19p13.1 TPM4: nonmuscular tropomyosin
17q25 ALO17: KIAA1618
22q11.2 MYH19: non-muscule myosin heavy chain

図表66
図表66

図表67 Overall survival
図表67 Overall survival


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3)鼻型NK/T細胞リンパ腫 Extranodal NK/T-cell Lymphoma, Nasal Type

図表68
図表68

血管中心性リンパ腫(Angiocentric Lymphoma)とも呼ばれます。アジア人に多く、基本的にがん細胞にはEpstein-Barr Virus(EBV)が証明されます。多くが鼻腔、副鼻腔、咽頭および喉頭(声体)より発生し、Nasal NK/T-cell Lymphomaとも呼ばれます。ときに、当初より皮膚など鼻以外から発症するものも認められ、これらを念頭において“鼻型”Nasal Type T/NK-cell Lymphomaとの名称が提唱されました。しばしば特徴的な血管中心性増殖像が観察され(図表68)、壊死(えし)や潰瘍(かいよう)を伴うことがあります。組織球など反応性細胞に富み、病変内に観察される細胞は多彩です。ですから、しばしば鼻炎との鑑別が難しいことがあります。

ワンポイントアドバイス
  • 男性に多く、平均51歳
  • 鼻咽頭領域、ときに皮膚、消化管など
  • 血管中心性、壊死、細胞質内アズール顆粒
  • 放射線に反応良好、5年生存率49%
  • 末期に血球貪食症候群(けっきゅうどんしょくしょうこうぐん)
  • NK細胞性、CD2+、sCD3-、CD16+、CD56+
  • T細胞抗原受容体遺伝子の再構成は検出されない
  • Epstein-Barr Virus陽性、同Terminal Repeatsの解析によりクロナリティ証明

【鼻型NK/T細胞リンパ腫についてさらに詳しく】


鼻型NK/T細胞リンパ腫 Extranodal NK/T-cell Lymphoma, Nasal Type

図表69
図表69

図表70
図表70

図表71
図表71

図表72
図表72

図表73 Overall survival of mature NK cell neoplasms
図表73 Overall survival of mature NK cell neoplasms

がん細胞の大きさは小型から大型まで、また、核形は一般に極めて不規則で、多形性に富んでいます(図表69)。細胞質内には、特徴的なアズール顆粒が観察されます(図表70)。また、CD56が陽性で、T細胞抗原受容体遺伝子の再構成はなく、NK細胞由来と考えられています(図表71左)。in situ B(図表72)やperforinなどの細胞傷害性分子の発現が認められます。

予後は悪いものの(図表73)、鼻などに限局している症例では、放射線療法が奏効することが知られています。

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4)血管免疫芽球型T細胞リンパ腫 Angioimmunoblastic T-cell Lymphoma

高齢者に発生するがんであり、最近患者さんの増加が示唆されています。当初、がんなのか反応性なのかがわからず多くの議論がありましたが、国立がんセンターの下山正徳医師らの努力により、がんであることが明らかにされました。通常、高度の全身症状、すなわち多数のリンパ節の腫脹、ときに皮膚病変、しばしば著明な高免疫グロブリン血症を示すことが知られています。

ワンポイントアドバイス
  • 高齢者、リンパ節性
  • しばしば著明な高免疫グロブリン血症
  • 淡明細胞、免疫芽球
  • 樹枝状血管(じゅしじょうけっかん)、濾胞樹状細胞の増生
  • T細胞性(CD2+、CD3+、CD4+、CD8-)
  • 予後不良、ときにEBV+B細胞リンパ腫

【血管免疫芽球型T細胞リンパ腫についてさらに詳しく】


血管免疫芽球型T細胞リンパ腫 Angioimmunoblastic T-cell Lymphoma

図表74
図表74

図表75
図表75

がん細胞は中〜大型のT細胞が主体であり、淡明細胞やT細胞性免疫芽球が観察されます(図表74)。好酸球や組織球(類上皮細胞)浸潤、高内皮小静脈、また特に、リンパ濾胞の形成に関与する濾胞樹状細胞(図表75)の著明な増生が観察されます。これら反応性要素が病変の形成に有意に関与することにより、特徴的な組織像が観察されます。濾胞ヘルパー型T細胞(Follicular Helper T-cell)由来のがんと考えられています。

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8.ホジキンリンパ腫(ホジキン病) Hodgkin's Disease (Hodgkin Lymphoma)

悪性リンパ腫の1つですが、歴史的にがんか反応性かが定かではない病気として、長くホジキン病と呼ばれていました。WHO分類においてはじめてリンパ腫と名づけられました。Thomas Hodgkin医師による最初の報告(1832年)以来、すでに170年もの歴史があります。診断基準は、“反応性背景の中のReed-Sternberg細胞(Reed-Sternberg Giant Cell:R-S細胞)”の認識ということに尽きます。しかしながら、R-S細胞が見いだされるという組織学的共通項を除けば、病態と組織像にかなりの幅を有する腫瘍群でもあります。その本態については、近年の分子生物学的解析手法の進歩により、B細胞由来とする意見が大勢を占めつつあります。一方、樹状細胞/単球由来にR-S細胞の起源を求める意見などもあり、現在でもがん細胞の由来を巡って議論があります。ときに前述の成人T細胞白血病リンパ腫でも、ホジキンリンパ腫と全く変わらない組織像を示すことがあり、途中で診断が変わることもあります。

【ホジキンリンパ腫(ホジキン病)についてさらに詳しく】


ホジキンリンパ腫(ホジキン病) Hodgkin's Disease (Hodgkin Lymphoma)

図表77
図表77

WHO分類では、明らかなB細胞腫瘍とされる結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(Nodular Lymphocyte Predominant Hodgkin Lymphoma)と、それ以外の古典的ホジキンリンパ腫(Classical Hodgkin Lymphoma)に分けられています(図表76)。古典的ホジキンリンパ腫は、さらに背景の反応性要素とR-S細胞の形態に着目して、4種の亜型、すなわち「結節硬化型(Nodular Sclerosis)」、「混合細胞型(Mixed Cellularity)」、「リンパ球豊富型」、および「リンパ球減少型」に分類されています。これらの中で、一般的には結節硬化型と混合型以外は、見る機会は少ないものといえるでしょう。

R-S巨細胞の主な形をシェーマで示します(図表77 図1-3)。R-S細胞には、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫におけるポップコーン細胞(Popcorn Cell、Lukesらの命名になるLymphocytic and/or Hitiocytic細胞:L&H細胞)、結節硬化型における凹窩(おうか)細胞(Lacunar Cell)等さまざまな亜型があり、最も典型的なものと混合型で認められるものとされます。また、単核のものはホジキン細胞 Hodgkin Cellとも呼ばれます。これらR-S細胞の出現と、背景に壊死、線維化、好酸球や好中球、形質細胞、リンパ球等の炎症性細胞浸潤が組み合わさり、複雑な組織像を呈することになります。そのため、反応性病変との鑑別が最も難しいがんの1つといえます。

頻度は、欧米諸国では悪性リンパ腫の20〜30%を占め、若年成人の最も一般的ながんとされます。一方、アジア諸国では10%未満です(図表78)。

R-S細胞は上記の組織学的特徴に加え、B細胞、T細胞マーカーが通常陰性である一方、CD30(Ki-1)、CD15(LeuM1)が高率に陽性となります。他に、CD25(IL-2レセプター)、CD71(トランスフェリンレセプター)、HLA-DR、CD74(LN-2)、fascin、ビメンチン等が陽性となることがあります。10〜20%の症例では、少数の細胞にCD20が陽性になることがあります。これと関連して、B関連転写因子BSAP(B-cell Specific Activator Protein)が90%の症例で陽性となる一方、免疫グロブリン転写にかかわるOct2やBOB.1は、陰性であると報告されています。R-S細胞の起原については、最近では多くの報告が成熟Bリンパ球(胚中心細胞)由来を示唆しています。しかし、まれに成熟T細胞、あるいは樹状細胞とする報告があります。これらの議論は、ホジキンリンパ腫そのものの中にある多様性を反映しているのかもしれません。

図表76 Hodgkin lymphoma
  • Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma

  • Classical Hodgkin lymphoma
    - Nodular sclerosis classical Hodgkin lymphoma
    - Mixed cellularity classical Hodgkin lymphoma

図表78 Malignant lymphoma in Asia
  Japan Korea Hong Kong Western countries
Case nos. 3524* 1548    
B-cell neoplasms 77% 71% 70〜75% 60〜75%
T/NK-cell neoplasms 18% 24% 18% 2〜9%
Hodgkin lymphoma 5% 5% <10% 30〜40%
*:Diagnosed from Jan. 2000 to Dec. 2002.

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ホジキンリンパ腫とEBV
Weissらが、R-S細胞にEBVゲノムの単クローン性組み込みを証明して以来、同様の検索が世界中で行われました。現在、日本人のホジキンリンパ腫の約半数で、EBVの関連が証明されています。

【ホジキンリンパ腫とEBVについてさらに詳しく】


ホジキンリンパ腫とEBV

Hodgkin病の発がんには、EBVゲノムにコードされているLMP-1蛋白の発現が関与している可能性が考えられています。通常、R-S細胞には EBV関連蛋白のLMP1が発現していますが、EBNA2は検出されません。LatencyII型の感染状態に相当します。

日本人におけるホジキンリンパ腫の発症年齢は、15〜34歳の間と54歳以降にピークがあり、二峰性の分布を示します。これは、成人男性(40歳以上)の患者に多い混合細胞型(EBV検出率80%)と、若年成人女性(14〜40歳)に多い結節硬化型(EBV検出率20%)との組み合わせによるものです。また、低開発国では小児例(0〜14歳)にピークがあるとされます。組織型別の発生頻度は、欧米、日本、南米などで地理的な差異があります。低開発国では混合細胞型が多く、EBVはほぼ全例に認められます。日本を含む先進国、特に都市部では結節硬化型の頻度が高まり、EBV検出率は30〜50%にとどまります。

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1)結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma (NLPHL)

図表79
図表79

結節状増殖を示す反応性細胞の中に、ポップコーン細胞あるいはL&H細胞として知られる散在性大型細胞があることで特徴的な、B細胞腫瘍です(図表79)。

この型は、ホジキンリンパ腫全体の3〜8%を占め、比較的まれなものといえます。年齢中間値は35歳と比較的若く、一般に臨床症状に乏しいとされます。臨床病期I期例が50%以上を占めます。予後は良く、10年生存率は80〜90%です。ときに、10年以上経過後の晩期再発例が認められます。経過中に約3%の症例で、びまん性大細胞型Bリンパ腫への進展があります。

【結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫についてさらに詳しく】


結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫Nodular Lymphocyte Predominant Hodgkin Lymphoma(NLPHL)

図表80
図表80

図表81
図表81

胚中心B細胞由来とされています。リンパ球ないし組織球が主な構成成分であり、壊死はなく、線維化も認められません。診断的なR-S細胞は観察されず、ポップコーン細胞Popcorn CellあるいはLymphocytic and/or Hitiocytic(L&H)細胞が出現します(図表80)。核は水泡状に腫大し、単核または多分葉状で、核小体も典型的なR-S細胞よりやや小さいです。明瞭にCD20抗原を持ち(図表81)、その証明は診断に必須とされます。CD30やCD1等、古典型ホジキンリンパ腫に特徴的な抗原は陰性とされます。さらにOct2とBOB.1が陽性であり、それらが陰性の古典型との対比をなしています。また、EBVは全く検出されません。ポップコーン細胞などの大型細胞は、反応性のTリンパ球でリング状に囲まれていて、特徴的な所見です。

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2)古典的ホジキンリンパ腫

適当な反応性背景の中に、Reed-Sternberg細胞と目される大型細胞を認めるがんであり、ホジキンリンパ腫の約95%を占めています。

初発症状としては、無痛性の表在性リンパ節腫大、特に左側の頸部リンパ節の腫大が多いとされます。病期の進展に従って、予測しうる形で浸潤範囲が初発リンパ節領域から連続性にリンパ行性進展を示します。他のリンパ腫と異なり、遠隔転移様式をとることは少ないです。このような特異な増殖様式を踏まえて考案されたのが、1971年のAnn-Arbor病期分類です。この分類法は、他の悪性リンパ腫にも準用されています。ホジキンリンパ腫はリンパ節の病気であり、リンパ節以外で初発することはまれといってよいでしょう。しかし、最も典型的な結節硬化型では、高度の前縦隔病変により特徴づけられる点に留意が必要です。例外的に乳腺、甲状腺、消化管、特に胃、肺等の節外原発例が報告されていますが、それらの本態については議論があるものと思います。

発熱や感冒様症状を伴うことがあります。病期が進むと、肝脾腫や全身症状の出現がみられ、特に発熱、夜間盗汗、体重減少(6ヵ月間で10%以上)はB症状(B Symtoms)と呼ばれ、重要な臨床徴候です。

【古典的ホジキンリンパ腫についてさらに詳しく】


古典的ホジキンリンパ腫

好中球増多、相対的リンパ球減少、小球性低色素性貧血、血清鉄の低下、フェリチン値の上昇、血清アルブミンの減少、α2グロブリン、βグロブリンの上昇、アルカリホスファターゼ値の上昇、LDHの上昇等の異常が認められます。細胞性免疫の異常を伴うことが多く、結核や真菌感染を合併しやすいといわれます。

近年、有効な多剤併用化学療法が開発され、5年生存率は75%を超えるとされています。予後に影響を与える因子として、年齢(46歳以上)、性別(男性)、臨床病期IV期、低へモグロブリン血症(10.5g/dl未満)、低アルブミン血症(4g/dl未満)、リンパ球減少症(600/μl あるいは8%未満)、白血球増多症(15,000/μl以上)があげられています。

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(1)結節性硬化型 Nodular Sclerosis(NS)

性比はなく、典型例は若年女性(年齢中間値28歳)で、60〜70%の症例で前縦隔病変が認められます。EBVは20%未満の症例で検出されます。

【結節性硬化型についてさらに詳しく】


結節性硬化型 Nodular Sclerosis(NS)

図表82
図表82

図表83
図表83

図表84
図表84

図表85
図表85

少なくとも1つの結節を囲む、結合組織の帯状増生と凹窩細胞Lacunar Cellの存在により特徴づけられます。ホジキンリンパ腫の40〜70%を占めています。病巣が高度の膠原線維束の増生によって、円形の結節に区分されます(図表82)。リンパ節の被膜の肥厚が、結合組織の帯状増生に先行して観察され、まず着目されます(図表83)。典型的なR-S細胞は少なく、その代わりに凹窩細胞Lacunar Cellと呼ばれる、R-S細胞の特殊型が観察されます(図表84)。この細胞は、浮腫性の細胞質が標本作製の過程で収縮し、細胞周辺に間隙を生じるため、組織標本上では、あたかも凹窩lacunaの中に存在するように見えることから名づけられたものです。核は多分葉ないし複雑な切れ込みを有し、核小体は典型的なR-S細胞ほど著明ではありません。結節内に好酸球性あるいは好中球性の膿瘍(のうよう)や壊死を形成し、反応性病変との鑑別が難しいときがあります。R-S細胞の診断には、CD30などの免疫染色で確認することが必要です(図表85)。進展例では、未分化大細胞リンパ腫との鑑別が問題になることがあります。一方、治療後の生検例や軟部組織への浸潤部の検体では、結節硬化型以外の病型でも結節状線維化が現れることがありますから、本型の診断には特に注意する必要があります。

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(2)混合細胞型 Mixed Cellularity(MC)

図表88
図表88

40歳以上の男性に多く(3〜4:1、年齢中間値37歳)、EBVは70〜80%の症例で検出されます(図表88)。

【混合細胞型についてさらに詳しく】


混合細胞型Mixed Cellularity(MC)

図表86
図表86

図表87
図表87

結節性硬化像のないびまん性の反応性背景の中にR-S細胞が観察され、典型的なHodgkin病の組織像とされてきたものです。ホジキンリンパ腫の20〜 50%を占めています。WHO分類で疾患としての独立性が明記されました。病巣には、びまん性に組織球、好中球、好酸球、形質細胞、リンパ球などの浸潤が種々の割合と組み合わせで認められ、軽度の線維化をみることがあります(図表86)。R-S細胞は散在性であり(図表87)、シート状の集まりはなく、また壊死巣はまれです。ときに高度の類上皮細胞反応を伴い、サルコイドーシスとの鑑別が問題となります。

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9.まとめ

悪性リンパ腫の診断、治療、病因解明は、相互に密接に関連しています。また現在、増加率の最も高いがんと目されています。各領域の専門家による治療拠点網の整備など、医療水準全体の向上を図る施策が期待されるものと思います。

【参考文献】


参考文献

  • Jaffe, E.S., Karris, N.L., Stein, H. et al.: World Health Organization Classification of Tumours. Pathology & Genetics. Tumours of Hematopoietic and Lymphoid Tissues, IARC Press, Lyon, 2001
  • Lymphoma study group of Japanese pathologists: The World Health Organization classification of malignant lymphomas in Japan: incidence of recently recognized entities. Pathol Int 50: 696-702, 2000.

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