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聴神経鞘腫(ちょうしんけいしょうしゅ)

更新日:2004年12月02日    掲載日:1997年08月23日

1.神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)とは

神経のネットワークとニューロンの構造

聴神経、三叉神経、顔面神経

神経鞘腫とは、神経を取り巻いて支える鞘(さや)から発生する腫瘍で、脳・脊髄腫瘍の一種です。一般的に、まれな悪性神経鞘腫を除いて良性の腫瘍で、手術で完全に摘出できる場合は治癒が期待できます。腫瘍細胞の増殖速度は遅く、脳以外の他臓器に転移することは極めてまれですが、長期間経過した後に再発する場合もあります。脳にできる良性腫瘍の中では、髄膜腫、下垂体腺腫に次いで3番目に多い腫瘍で、悪性脳腫瘍を含めた脳腫瘍全体の約10%を占めます。毎年、わが国で250〜300人に発生します。女性に多く(男性の1.6倍)、30〜60歳の間に多く発生します。

脳からは12対、脊髄からは30対の神経が出ており、それぞれ頭蓋骨および脊椎骨の孔を通り抜けて、身体の各部位に至っています。多くの場合、神経鞘腫はこれらの神経が脳・脊髄を出てから骨の孔に入るまでのわずかな場所から発生しますが、末梢神経や軟部組織にも発生します。聴神経(第8脳神経)から発生することが最も多く(70〜80%)、次いで三叉(さんさ)神経、顔面神経などから発生します。実際には、ほとんどが聴神経鞘腫ですので、ここでは主に聴神経鞘腫について解説します。

多くのがんの場合と同様に、神経鞘腫も腫瘍が小さい間に発見されると、手術を主体に完全に治療できる確率が高くなります。腫瘍が大きくなったり、周辺の脳組織、脳神経、脳血管などを巻き込むようになると、手術で完全にとり除くことは難しくなり、手術後に放射線療法が行われることもあります。一方、最近では腫瘍が小さい場合には、手術よりも放射線療法が行われることもあります。

2.症状

神経鞘腫の症状は、腫瘍が発生した神経の機能低下によるものです。具体的には、聴神経鞘腫では聴力低下や耳鳴、三叉神経鞘腫では顔の知覚低下などです。ときには、神経刺激症状(痛みなど)がおこることもあります。聴神経鞘腫による聴力低下は、語識別力の低下(音としては聞こえるが言葉として聞きとりにくい)からはじまることが特徴とされます。

腫瘍がある程度大きくなると近くの他の神経を圧迫し、それらの機能障害を伴うようになります。聴神経腫瘍では、ごく近くに顔面神経が走行しているので顔面神経麻痺(顔がたるんで反対側がひきつったように非対称になり、まぶたが閉じられない)を伴うことがしばしばあります。上方に位置する三叉神経が侵されると、顔面の知覚低下がおこります。下方に位置する舌咽神経や迷走神経が侵されると、嚥下(えんげ:食事などを飲み込むこと)障害や嗄声(させい:声がかれること)がおこります。

さらに腫瘍が大きくなると脳幹や小脳を圧迫するようになり、運動失調(手足のふるえやふらつき)や手足の運動麻痺、さらには意識障害がおこり昏睡に陥ることもあります。脳幹への圧迫が強くなると髄液の流れが悪くなり水頭症をおこすので、頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)をきたして、生命を脅かすこともあります。

3.診断

神経鞘腫の診断は、画像診断が主体となります。

1)画像診断

(1)MRI

磁気共鳴法という強力な磁場を用いた検査で、頭蓋骨による画像の乱れがなく、脳あるいは腫瘍のみを鮮明に映し出すことができ、またいろいろな断層面の画像も得られます。脳の構造が細部にわたり観察でき、腫瘍の正確な大きさや広がりを知ることができます。最近では画像の精度も向上し、個々の神経や重要な血管の走行も描出することができるため、最も有用な画像診断法といえます。

(2)CT

X線とコンピューターを用いた断層撮影で、最も一般的な診断法です。造影剤の併用により、小さな腫瘍の診断も可能となりますが、腫瘍検出力はMRIのほうが優れています。しかし、CTの特徴は骨の状態を調べることができる点で、どの骨の孔が破壊され拡大しているかを見ることで、腫瘍の存在の裏付けを得たり、どの神経から発生した腫瘍かを推察できます。

(3)頭部のレントゲン検査

神経の通過する骨の孔が腫瘍で広がっている様子をとらえます。

(4)脳血管撮影

聴神経のすぐ近くには、脳に栄養を送る重要な動脈や静脈があります。そのため、これらの血管の走行異常や奇形がないかどうかを術前に調べておくことが重要なので、大腿部の動脈から脳の血管まで細い管を挿入して脳血管撮影を行います。

2)耳鼻科の検査

神経の機能障害の程度を検査するため、聴力検査、顔面神経の機能の評価(これは味覚の検査を含むことがあります)、前庭神経(平衡感覚やめまいの神経)の機能評価を行います。

4.治療

神経鞘腫の治療には、外科療法と放射線療法の2通りの治療法があり、腫瘍の発生した場所や大きさ、症状、年齢などにより、治療法や組み合わせが決められます。化学療法は現時点では有効なものはありません。

1)外科療法

手術は開頭手術となります。周囲にある脳神経や動静脈などの正常組織を傷つけないように腫瘍を摘出します。術後も聴力の回復は困難で、むしろ悪化することが多いのですが、最近では小さい腫瘍の切除ならば聴力を残せる場合もあります。術後しばらくは、めまいなどの前庭症状がおこることがあります。問題となるのは顔面神経麻痺です。聴神経と顔面神経はほとんど接して走行しており、術前に顔面神経麻痺がない場合でも高度の麻痺(顔がたるんで反対側がひきつったように非対称になり、まぶたが閉じられない)がおこることがあります。この場合、後日顔面神経の再建手術が必要となることがあります。

2)放射線療法

主体は「ガンマナイフ」などと称される特殊な放射線装置による治療です。これは、多数の線源から発せられるガンマ線という放射線を一点に集めて病巣に照射します。通常の放射線照射に比べて、線量の集中度が極めて高く、正常組織の被曝量が少ないため、病巣に一度に高線量を照射できます。そのため、通常の放射線照射では治療効果の小さい神経鞘腫にも有効であり、しかも通常の治療期間(4〜6週間)に比べ短期間(1〜3日)で済みます。この治療法は最近保険適用となりました。

問題点は、腫瘍が小さいものに限られること(体積10ml以下、球形なら直径20〜25mm以下)、腫瘍縮小効果が20〜50%程度であること、顔面神経麻痺の出現は20〜30%で、聴力保存は40〜50%程度と手術よりは少ないのですが、合併症がおこりうることなどがあげられます。高齢や合併症などで手術に危険が伴う場合には、有効な治療法です。

また、通常の放射線治療装置であるリニアックでも、コンピュータ技術、放射線治療技術の進歩により、ガンマナイフとほぼ同等の放射線集中性が得られているので、一部の施設で実際に治療が行われています。

5.予後

腫瘍の成長は1年間で2mm以下といわれますが、最初の1年で増大しなかったものは、その後3〜5年間変化しない傾向がある一方、急速に増大する場合もあります。生命予後は良好ですが、腫瘍が存在していた神経の機能障害としての症状は残ります。

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