胆管は肝臓でつくられる胆汁を十二指腸まで導く導管で、肝臓の中から木の枝が幹に向かって集まるように徐々に合流して太くなっていき、多くの場合、肝臓から出る際に左と右の胆管(左右の肝管)が合流して一本となります。胆管は、肝臓の中を走る肝内胆管と、肝臓の外に出てから小腸までの肝外胆管に分けられます。発生学的には、消化管の芽である肝外胆管と、肝内に樹脂状に発達した肝内胆管は別のものですが、それがつながった状態ではどこからが肝外胆管なのかは明確にはわかりません。肝外胆管は長さが約8cmの細い「くだ」で、肝門部・上部・中部・下部胆管の4つに区分されます。肝外胆管の途中で胆汁を一時的にためておき、濃縮する袋が胆嚢(たんのう)です。これら肝内外胆管と胆嚢、十二指腸乳頭部をあわせて胆道と呼びます。胆管がんは胆管の上皮から発生する悪性腫瘍です。その発生した部位の胆管により、肝内胆管がんと肝外胆管がんの2種類に分けられますが、一般に「胆管がん」の場合は、主に肝外胆管に発生したがんを指します。肝内胆管がんは肝臓にできたがんとして、肝細胞がん(略して肝がん)と一緒に取り扱われることが多いのです。
胆管がんは、胆管の内側の粘膜から発生しますが、大きく分けて以下の3つの発育の仕方があります。
肝外胆管がんは、1と2の発育形式をとり、肝内胆管がんは主に3の発育をしますが、2やまれには1の発育を示すものもみられます。
年齢別にみた胆嚢・胆道がんの罹患(りかん)率、死亡率は、ともに50歳代以降増加します。罹患率の年次推移は、男女とも1975年から80年代後半まで増加傾向でしたが、80年代後半から2000年にかけて男性は横ばい、女性は減少傾向になっています。胆嚢がんの死亡率は女性のほうが高く、男性の約1.2倍、胆道がんでは男性のほうが高く、女性の約1.7倍です。胆嚢・胆道がんの死亡率の年次推移は、男女ともに1950年代後半から80年代後半まで増加傾向にありましたが、1990年代から減少傾向にあります。胆嚢・胆道がん罹患率の国際比較では、日本人は他の東アジアの国の人やアメリカの日系移民、欧米人に比べて高い傾向があります。
胆嚢・胆道がんは、発生率が低いために、疫学的な研究結果は限られています。その中で、胆石や胆嚢・胆管炎、潰瘍(かいよう)性大腸炎、クローン病、原発性硬化性胆管炎、膵(すい)胆管合流異常症などの胆道系疾患の既往は、胆嚢がんのリスク要因として知られています。そして、胆嚢摘出術などによる治療は、胆道がんのリスクを低下させるという報告もあります。その他、女性であること、肥満や高カロリー摂取、野菜・果物の低摂取、出産回数が多いこと、特殊なものとしては、ある種の農薬との関連などがリスク要因の候補として挙げられています。
がんができることによって胆管内腔は閉塞し、胆汁が流れなくなります。細くなった部分より上流(肝臓側)の胆管は圧が上がって拡張し、ついには胆汁が胆管から逆流して血管の中に入るようになると、胆汁中に含まれるビリルビンという黄色い色素のために皮膚や目の白い部分が黄色くなります。これを閉塞性黄疸といいます。
胆汁が腸内に流れてこなくなると便の色が白っぽいクリーム色になります。日本人は黄色人種なので、黄疸の程度が軽いうちは気がつかず、便の色が白っぽいことで最初に気がつくこともあります。
血液中のビリルビン濃度が高くなると尿中に排泄されるようになり、尿の色が茶色っぽく濃くなります。
黄疸が出ると皮膚のかゆみも同時にあらわれることが多く、これは胆汁中の胆汁酸という物質がビリルビンと一緒に血管内に逆流するためです。
胆管がんは前述したように、周りの組織にしみ込むように拡がることが多く、明瞭な腫瘍としてのかたまりをつくらないので、その実体を正確に描出し診断することは容易ではありません。しかし、近年では画像診断技術の進歩により胆管がんをより早期に発見し、またその存在部位や拡がりをかなり正確に診断できるようになりました。
胆管の拡張を調べるのに適しており、外科的処置が必要な閉塞性黄疸かどうかの判断にとても有用です。胆管の拡張の仕方を見ることで胆管の閉塞部を推測できます。また、ある程度かたまりとしての腫瘍をとらえることができます。外来で手軽に行うことができ、苦痛も全くなく、すぐに検査結果がわかります。胆管がんや膵がんでは、前述のように閉塞性黄疸を伴うことが多いので、超音波検査は最初に行われるべき検査です。
腫瘍の存在部位や拡がりをとらえることができます。胆管の拡張程度・部位も調べることができます。また造影剤を用いることで、腫瘍部・非腫瘍部組織の血流の差を利用して腫瘍を浮かび上がらせることもでき、腫瘍がどの程度周囲の血管に浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)しているかも推測できます。
CTと同様に胆管の拡張や病変の存在部位・拡がりを診断できますが、CTとは情報の内容が違い、互いに相補って診断に寄与します。
がんのために胆汁の流れをせき止められ、太くなった上流の胆管に直接針を刺し、造影剤を注入する方法です。胆管の狭窄(きょうさく)・閉塞の様子が詳しくわかり、腫瘍の存在部位や拡がりの診断に有用です。同時に黄疸の治療として、下流に流れなくなった胆汁を身体の外に導出する処置も行うのが普通です。これをPTCD(経皮経肝胆道ドレナージ術:ドレナージとは「水などをある場所から導き出す」という意味です)といいます。とり出した胆汁中のがん細胞を調べることでがんの確定診断に有用です。また、この経路を使用して、直接胆管の中に細いファイバースコープを挿入し、胆管の粘膜を観察したり、その小さな組織片を採取し、腫瘍の拡がりをより詳しく調べる方法もあります(PTCS:経皮経肝胆道鏡検査)。
ファイバースコープを十二指腸まで挿入し、胆管と膵管の出口である十二指腸乳頭から細いチューブを入れ、造影剤を注入して胆管や膵管のかたちを調べる方法です。PTCとは逆に、詰まっている部分より下流の情報が主に得られます。PTCと併用することで、狭窄・閉塞部位についてより詳しい情報が得られます。
血管造影検査は、手術の前に肝臓や膵臓の周りの血管への腫瘍による浸潤や走行異常を調べるために施行します。
胆管がんの進みぐあいは、I期からIV期までの4段階の病期(進行度)で示します。
がんが胆管の中だけにとどまっている段階です。
胆管と隣り合う臓器に拡がっていることが疑われるか、あるいは胆管の近傍のリンパ節に転移をしている状態です。
胆管と隣り合う臓器(膵臓、肝臓、十二指腸、胆嚢など)に明らかに直接浸潤して拡がっていますが、その範囲がごく近傍にとどまっていると考えられる段階です。また、II期より遠くのリンパ節に転移している場合も含みます。
III期より遠くまで浸潤がおよんでいたり、肝臓へ転移していたり、また腹部の中にがん細胞がこぼれて拡がる腹膜播種(ふくまくはしゅ)がある段階です。
治療法には外科療法、放射線療法、化学療法があります。
肝外胆管は、肝臓と膵臓・十二指腸の間にある臓器で、周囲には門脈や肝動脈という重要な血管が走行しているので、手術ではどの程度までがんが拡がっているかが重要になってきます。胆管の手術では、がんが少し周囲に拡がっただけでも手術で治す(根治的手術)ために、いろいろな臓器を合併切除しなければならなくなります。手術では、胆管とその周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切りとるのが基本です。また、術式はがんが胆管のどの場所にできたかでも違ってきます。
肝門部胆管と上部胆管にできたがんは、肝臓にかかわってきます。肝門部は胆管や血管が肝臓に出入りする場所であり、扇のかなめのような位置にあります。この場所にできた腫瘍を切除するには、かなり限局している場合を除いて、肝臓の左右どちらか半分か真ん中をとるかして、できるだけ根治的な切除を目指します。
下部胆管は膵臓に近接しているので、膵臓の一部を一緒にとる必要があります。
中部胆管もそこだけとり除いて済む場合はまれで、肝臓側か膵臓側のどちらかに拡がっています。通常は膵臓を一緒に切除します。
また、がんの浸潤範囲が肝門部胆管から下部胆管まで拡がっていると、肝臓・膵臓両方を同時に切除しなくてはならなくなりますが、このような手術はまだ安全に施行できるとはいえない状況なので治療法の選択が難しくなります。
このように胆管がんでは定型術式といったものはなく、がんの拡がりに応じた、安全でできるだけ根治的な術式が選択されます。胃がんや大腸がんでは、診断・治療の体系がほぼ確立されてきていますが、胆管がんを含めた肝胆膵領域がんではまだまだ日進月歩の状態なのです。
手術の危険度については、手術規模がかなり大きくなること、肝臓や膵臓などの生命に極めて重要な臓器に直接操作が加わることで、術後合併症や手術死亡は他の臓器のそれより依然高率なのが現状です。手術を受ける前にはその手術でどのようなメリットがあり、どの程度の危険度があるのかをよく理解しておく必要があります。
放射線治療は腫瘍細胞の放射線に対する感受性(抗腫瘍効果)が、周囲の健常組織の放射線に対する耐容性(毒性)を上回った時に成り立つものです。しかし、胆管がんの細胞は他の臓器に発生する高感受性腫瘍ほどには感受性は高くなく、周囲正常組織とそれほどかわらない場合が多いのです。がんの周囲の健常組織にはなるべくかからないようにしないと放射線による障害が前面に出てしまいます。また、がんを殺すために必要な線量は、がんの大きさ(がん細胞の量)が小さければ小さいほど、少なくて済みますので、放射線照射はできるだけ狭い範囲に少ない線量で効果が上がるように工夫されています。その適用の際には、部位・手段・線量とその配分についても手術と同様、個別に考慮されるべきものです。線量についても、施設間での考え方の相違があり、学問的な合意には至っていません。
胆管がんの場合の放射線療法は、その照射の仕方により、以下の3つの方法があります。
術中照射法、腔内照射法については、それぞれ施行可能な施設は限られています。胆管がんにおいては、外科的に切除できない場合や、手術で主病巣を切除した後の後療法として放射線治療は有効です。
外部照射法での急性期の副作用としては、全身倦怠感、食欲不振などがあります。また、限局した部位に高線量が照射された場合に、ある程度時間が経過してから、消化管では潰瘍形成・出血、胆管では閉塞、血管では閉塞や出血などが生じます。
胆管がんに対する抗がん剤治療は、まとまった報告がありません。投与の方法としては、(1)経静脈的投与、(2)経動脈的投与、(3)経口投与、(4)局所投与があります。化学療法が胆管がんに対してどの程度有効かは、これから検討されていく問題です。
外科療法を行います。
外科療法を行います。
可能ならば外科療法を行います。病巣の拡がりが大きく、外科療法では病巣の除去が不完全な場合は、外科療法と放射線療法を組み合わせることもあります。種々の理由により切除が不可能な場合は、放射線療法や化学療法を単独で、または組み合わせて行います。
化学療法が中心となりますが、症状改善のために放射線療法が有用なこともあります。
前述したように胆管がんの領域は、まだ標準的な診断・治療が確立しておらず、ある施設では手術可能な場合が別の施設では手術の対象とならないとされることも珍しくありません。特に、肝臓の入口近く(肝門部)にできた胆管がんは、一般的には外科切除は困難とされており、最初に診察した医師の判断が重要になります。内科医は切除の基準が外科医より消極的なのが普通です。胆管がんに対して有効といえる治療法は外科切除をおいて他にないのが現状ですから、胆管がん(胆嚢がんも)と診断されたら、手術の可能性について専門医に必ず相談するようにして下さい。
生存率は、通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。
ここにお示しする生存率は、これまでの国立がんセンターのホームページに掲載されていたものです。生存率の値そのものでなく、ある一定の幅(データによって異なりますが±5%とか10%等)をもたせて、大まかな目安としてお考え下さい。
再発は、いろいろな部位におこります。
再発様式によりおこる症状もさまざまで、治療もそれぞれの状態に合わせて行われます。腹膜再発に対しては対症的な治療しかできませんが、治療の考え方は初回と同様で、外科切除できるのであれば積極的に行われるべきです。
手術でがんがとりきれていると判定された場合の5年生存率は40〜50%ぐらいです。また、顕微鏡で見たレベルで少し残っている場合でも5年生存率は10〜20%です。今のところ、放射線療法や化学療法では完全な治癒は望めません。