子宮は全体として中空の西洋梨のかたちをしています。球形に近いかたちの体部は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は膣に突出しています。この部分が頸部で、膣のほうから見ますと奥の突きあたりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入口があり、この入口を外子宮口と呼んでいます。子宮頸がんは「子宮頚がん」と表記されることもあります。
初期の子宮頸がんでは、全く症状がないのが普通です。婦人科の症状がなくても、20歳を過ぎたら、2年に1回子宮がんの検診を受けることが勧められています。集団検診の知らせがあったらよい機会ですから、おっくうがらずに受診しましょう。くわしくは、「がん検診のすすめ(子宮がん)」をご覧ください。
がんが少し進行するとはじめの症状としては、月経でない時の出血、性行為の際の出血やふだんと違うおりものが増えたりします。他に月経の量が増えたり長引いたりすることもあります。
夫を失った人や高齢の婦人では性行為の際の出血ということは少ないので、頸部がんが相当進行してから後に出血を見ることがよくあります。このような方は、特にふだんの健康診断を受ける必要があります。
しかし、各地の集団検診において高齢の方の受診率が極めて低いため、高齢者の方に進行した頸部がんが今なお多いのが現状です。
がん細胞は正常の細胞と異なったかたちや色合いをしています。がんの部分からこすりとった細胞や、がんから落ちてきたものをガラス板に塗り、色素で染めて顕微鏡で見ますと、がん細胞を見つけることができます。この診断法を細胞診と呼んでおり、がんを診断する各種の検査法の中でも非常に重要な方法です。
頸部がんは前にも述べたように外子宮口の付近から発生することが多いので、この部分を綿棒またはヘラのようなものでこすって細胞診を行います。この方法は簡単で痛みもほとんどなく、大勢の人に短い時間で行えますので、集団検診ではこの方法だけを行うことが普通です。ただし、細胞診だけでがんを決定することはしません。なぜなら、がんでなくても、がんと紛らわしい細胞が出ることがあるからです。細胞診に異状があった場合は、次の検査を行います。
疑わしい部分から組織をとり、標本をつくって顕微鏡で診断する方法を組織診と呼びます。子宮頸部の組織診の際は、ほとんど痛みもなく、出血も間もなく止まります。本診断は外来にて実施可能です。ただ採取する組織が小さいので、0期のがんか、それより進行したがんか、または0期にもなっていない状態かを鑑別するのが困難なことがあり、何回か組織診を行うこともあります。ときには、「円錐切除術」と呼ばれる方法で組織診を行うこともあります。この場合は、入院する必要があります。
コルポスコープという拡大鏡のような機械で、子宮頸部粘膜表面を拡大して、細かい部分を観察する診断法をコルポ診と呼んでいます。組織診の組織を採取する際に欠かせません。
治癒の見込み(予後)や治療の選択は、がんの病期(がんが子宮頸部にとどまっているか、または他の場所に拡がっているかどうか)や全身状態によります。
ひとたび子宮頸がんと診断されると、がんが身体の他の部位に拡がっているかどうか、さらに詳しく検査が行われます。医師は治療を計画するために、がんの進行程度を知る必要があります。子宮頸がんには次のような病期分類が用いられます。
0期の子宮頸がんは非常に早期のがんです。がんは子宮頸部の上皮内のみに認められます。
がんが子宮頸部に限局して認められ、他へ拡がっていない状態(ただし子宮体部浸潤の有無は考慮しません)
組織学的にのみ診断できる浸潤がんで、肉眼的に明らかな病巣はたとえ表層浸潤であってもIb期とします。
浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm以内で、縦軸方向の拡がりが7mmを超えないものとします。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜より計測して5mmを超えないもので、脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しません。
臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがIa期を越えるもの
がんが子宮頸部を越えて拡がるが、骨盤壁または、膣壁の下1/3には達していないもの
がんが骨盤壁まで達するもので、がんと骨盤壁との間にがんでない部分を持たないもの
または膣壁浸潤が下方部分1/3を越えるもの
がんが小骨盤腔を越えて拡がるか、膀胱・直腸の粘膜にも拡がっているもの
子宮頸がんには、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3つの治療法があります。
治療は以下のうちのいずれかです。
外科手術は最も一般的で、医師は以下の術式のひとつを用いてがんをとり除きます。
放射線治療にはがん細胞を殺し、腫瘍を縮小するためにX線や高エネルギー線が用いられます。放射線は体外から放射線を照射する外照射か、がん細胞の認められる領域に薄いプラスチックチューブを通し、放射線を出すラジオアイソトープを使用したプラスチックを入れて治療する腔内照射とがあります。放射線単独で治療する場合と、手術と併用して治療する場合があります。
化学療法はがん細胞を殺すための抗がん剤を使用します。薬剤は経口的に投与されたり血管または筋肉注射として投与されます。抗がん剤は血流に入り全身をめぐり、子宮頸部を越えて拡がったがん細胞を殺すので全身療法と呼ばれています。
病状に応じて、過去の治療成績に基づき、現在最も有効と認められている治療は「標準治療」と呼ばれています。一方、難治性の進行がんでは、標準治療を行っても、多くの場合満足できる結果をもたらすのは難しいことです。そのため、さまざまな新しい治療法が研究され、試みられています。新しい治療法は最新の情報をもとに、よりよい治療を目指して行われますが、必ずしも標準治療よりもよい結果をもたらすとは限りません。新しい治療法は担当医だけでなく、多くの専門家の認める理にかなった方法で、一定の管理のもとで行われる場合を「臨床試験」といいます。これから治療を受ける場合は標準治療を受けるのか、臨床試験中の新しい治療法を受けるのか、どちらかを選ぶことになります。
上記の各種治療法はがんの進行状況、すなわち「病期」により選択され、その他がんの大きさ、年齢、全身状態、将来の出産の希望の有無などを考慮して決定されます。なお、妊娠中の頸部がんの治療は、病期と妊娠月数との兼ね合いで遅らせることができるかもしれません。
次のうちいずれかの治療が行われます。
がん細胞が正常組織にどのくらい深く浸潤しているかにより、次のうちいずれかの治療が行われます。
次のうち、いずれかの治療が行われます。
次のうち、いずれかの治療が行われます。
次のうち、いずれかの治療が行われます。
再発とは、治療で完全に消えたようにみえてもわずかに残っていたがん細胞が増殖し大きくなって発見された状態です。骨盤内におこる局所再発と、肺や肝臓のような原発病巣から離れた遠隔臓器に転移する遠隔転移再発とに分けられ、それぞれ治療法も異なります。
以下のいずれかの治療が行われます。
病巣が孤立性であれば外科手術を、多臓器におよぶ再発や多発性の転移には化学療法が行われます。しかし、標準治療はなく再発部位に合わせ、一人一人に適切な治療を行います。
治癒させる目的ではなく、症状を軽減させる治療です。
生存率とは、診断から一定期間後に生存している確率を示す指標です。
全国がん(成人病)センター協議会加盟25施設の院内がん登録のデータから算出された5年相対生存率を以下に示します。
5年相対生存率についてはこちらをご参照ください。
| 病期 | 症例数 | 5年相対生存率 |
|---|---|---|
| I期 | 1,137 | 92.1% |
| II期 | 447 | 69.8% |
| III期 | 428 | 48.9% |
| IV期 | 151 | 17.2% |
*このデータは、1997年から1999年の間に、子宮頸がんの治療のために、初めて入院して治療を受けられた患者さんが対象となっています。また、手術のみではなく、化学療法、放射線療法、その他の何らかの治療を受けられた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している手術を受けられた患者さんのみを対象とした生存率よりも低い値になっています。