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子宮頸がん(しきゅうけいがん)

更新日:2010年03月24日    掲載日:1996年04月01日

1.子宮頸がんとは

女性生殖器(子宮)の構造と名称

子宮は全体として中空の西洋梨のかたちをしています。球形に近いかたちの体部は胎児の宿る部分であり、下方に続く部分は細長く、その先は膣に突出しています。この部分が頸部で、膣のほうから見ますと奥の突きあたりに頸部の一部が見えます。その中央には子宮の内腔に続く入口があり、この入口を外子宮口と呼んでいます。子宮頸がんは「子宮頚がん」と表記されることもあります。

婦人科のがんで最も一般的な子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がん(子宮内膜がん)があります。

子宮頸がんは、この外子宮口付近に発生することが多いのです。普通の婦人科の診察でこの部分を観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能です。したがって、早期発見が容易なわけです。

頸部のがんは非常にゆっくり増殖しますが、がん細胞が子宮頸部に見つかる以前の初期に正常でない細胞が見つかります。この細胞を異型細胞と呼び、細胞診ではこの段階から診断することができるのです。

子宮がんにかかる方は、全体として年間約17,500人で、このうち子宮頸がんが約8,500人、子宮体がんが約8,200人、どの部位か情報がない子宮がんが約800人となっています(全国がん罹患モニタリング集計2005年報告 上皮内がんを除く)。また、子宮がんで亡くなる方は、全体として年間約5,700人、このうち子宮頸がんが約2,500人、子宮体がんが約1,700人、どの部位か情報がない子宮がんが約1500人となっております(人口動態統計2008年)。

年齢別にみた子宮頸がんの罹患(りかん)率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後横ばいになり、70歳代後半以降再び増加します。近年、罹患率、死亡率ともに若年層で増加傾向にあります。罹患率の国際比較では、頸がんが途上国で高いのに対し、体がんは欧米先進国で高い傾向があります。

子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)の感染が関連しています。子宮頸がん患者さんの90%以上からHPVが検出されることが知られています。最近、一部のHPV感染を予防できるワクチンが使用可能になっています。子宮頸がん予防ワクチンについては、「子宮頸がんの予防(ヒトパピローマウイルスと予防ワクチン)」をご覧ください。たとえ、ワクチン接種を受けた場合であっても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。子宮頸がんの検診については、「がん検診のすすめ(子宮がん)」をご参照ください。

2.症状

初期の子宮頸がんでは、全く症状がないのが普通です。婦人科の症状がなくても、20歳を過ぎたら、2年に1回子宮がんの検診を受けることが勧められています。集団検診の知らせがあったらよい機会ですから、おっくうがらずに受診しましょう。くわしくは、「がん検診のすすめ(子宮がん)」をご覧ください。

がんが少し進行するとはじめの症状としては、月経でない時の出血、性行為の際の出血やふだんと違うおりものが増えたりします。他に月経の量が増えたり長引いたりすることもあります。

夫を失った人や高齢の婦人では性行為の際の出血ということは少ないので、頸部がんが相当進行してから後に出血を見ることがよくあります。このような方は、特にふだんの健康診断を受ける必要があります。

しかし、各地の集団検診において高齢の方の受診率が極めて低いため、高齢者の方に進行した頸部がんが今なお多いのが現状です。

3.診断

1)細胞診

がん細胞は正常の細胞と異なったかたちや色合いをしています。がんの部分からこすりとった細胞や、がんから落ちてきたものをガラス板に塗り、色素で染めて顕微鏡で見ますと、がん細胞を見つけることができます。この診断法を細胞診と呼んでおり、がんを診断する各種の検査法の中でも非常に重要な方法です。

頸部がんは前にも述べたように外子宮口の付近から発生することが多いので、この部分を綿棒またはヘラのようなものでこすって細胞診を行います。この方法は簡単で痛みもほとんどなく、大勢の人に短い時間で行えますので、集団検診ではこの方法だけを行うことが普通です。ただし、細胞診だけでがんを決定することはしません。なぜなら、がんでなくても、がんと紛らわしい細胞が出ることがあるからです。細胞診に異状があった場合は、次の検査を行います。

2)組織診

疑わしい部分から組織をとり、標本をつくって顕微鏡で診断する方法を組織診と呼びます。子宮頸部の組織診の際は、ほとんど痛みもなく、出血も間もなく止まります。本診断は外来にて実施可能です。ただ採取する組織が小さいので、0期のがんか、それより進行したがんか、または0期にもなっていない状態かを鑑別するのが困難なことがあり、何回か組織診を行うこともあります。ときには、「円錐切除術」と呼ばれる方法で組織診を行うこともあります。この場合は、入院する必要があります。

3)コルポ診

コルポスコープという拡大鏡のような機械で、子宮頸部粘膜表面を拡大して、細かい部分を観察する診断法をコルポ診と呼んでいます。組織診の組織を採取する際に欠かせません。

4.予後と治療選択

治癒の見込み(予後)や治療の選択は、がんの病期(がんが子宮頸部にとどまっているか、または他の場所に拡がっているかどうか)や全身状態によります。

5.病期(ステージ)

ひとたび子宮頸がんと診断されると、がんが身体の他の部位に拡がっているかどうか、さらに詳しく検査が行われます。医師は治療を計画するために、がんの進行程度を知る必要があります。子宮頸がんには次のような病期分類が用いられます。

0期または上皮内がん(CIS)

0期の子宮頸がんは非常に早期のがんです。がんは子宮頸部の上皮内のみに認められます。

I期

がんが子宮頸部に限局して認められ、他へ拡がっていない状態(ただし子宮体部浸潤の有無は考慮しません)

Ia期

組織学的にのみ診断できる浸潤がんで、肉眼的に明らかな病巣はたとえ表層浸潤であってもIb期とします。
浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm以内で、縦軸方向の拡がりが7mmを超えないものとします。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜より計測して5mmを超えないもので、脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しません。

Ia1期:間質浸潤の深さが3mm以内で、拡がりが7mmを超えないもの

Ia2期:間質浸潤の深さが3mmを超えるが5mm以内で、拡がりが7mmを超えないもの
ただし子宮頸部腺がんについてはIa1、Ia2期の細分類は行いません。

Ib期

臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがIa期を越えるもの

Ib1期:病巣が4cm以内のもの

Ib2期:病巣が4cmを超えるもの

II期

がんが子宮頸部を越えて拡がるが、骨盤壁または、膣壁の下1/3には達していないもの

IIa期

がんは膣壁に拡がっているが、子宮頸部の周囲の組織、すなわち子宮傍組織には拡がっていないもの

IIb期

がんが子宮傍組織に拡がっているが、骨盤壁まで達していないもの

III期

がんが骨盤壁まで達するもので、がんと骨盤壁との間にがんでない部分を持たないもの
または膣壁浸潤が下方部分1/3を越えるもの

IIIa期

がんの膣壁への拡がりは下方部分1/3を越えるが、子宮傍組織への拡がりは骨盤壁にまで達していないもの

IIIb期

がんの子宮傍組織への拡がりが骨盤壁にまで達しているもの、または腎臓と膀胱をつなぐ尿管ががんによりつぶされ、水腎症や無機能腎を認めるもの

IV期

がんが小骨盤腔を越えて拡がるか、膀胱・直腸の粘膜にも拡がっているもの

IVa期

膀胱や直腸の粘膜へがんが拡がっているもの

IVb期

小骨盤腔を越えて、肺のような遠隔臓器にがんの転移があるもの


6.治療

子宮頸がんには、外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3つの治療法があります。

1)外科療法

(1)早期がんに対する治療

治療は以下のうちのいずれかです。

  • 凍結療法:がん細胞を凍らせて殺します。
  • 高周波療法:高周波を用いて電磁波の熱でがん細胞を殺します。
  • レーザー治療:レーザー光線を用いがんを殺します。

(2)手術治療

外科手術は最も一般的で、医師は以下の術式のひとつを用いてがんをとり除きます。

  • 円錐切除術
    がんが見つかった子宮の頸部組織を円錐状の組織として切除します。円錐切除は生検組織をとる診断的意味の他に、早期がんでは治療的意味も含んでいます。

  • 単純子宮全摘出術
    がんに侵された子宮を摘出する手術です。子宮が経膣的に摘出されれば膣式単純子宮全摘、腹壁を切開して行われれば腹式単純子宮全摘といいます。ときには、両側付属器切除術といい、卵巣・卵管も切除されます。

  • 広汎子宮全摘出術
    患部を子宮と膣の一部を含め、骨盤壁近くから広い範囲で切除します。子宮頸がんに関連する所属リンパ節も同時に切除します(リンパ節郭清)。通常、リンパ節は小豆のようなかたちをしており、全身に存在します。そして感染と戦う細胞を産生したり、貯蔵したりしますが、がんの時には転移したり、他臓器への転移経路となるのでとり除かなければなりません。手術障害については、「女性生殖器がん手術後の排便・排尿障害のリハビリテーション」をご参照ください。
  • 骨盤内臓全摘術
    がんが子宮頸部ばかりでなく女性性器外に拡がっていると、子宮・膣とともに下部結腸、直腸、膀胱をもとらなければなりません。これを骨盤内臓全摘術といいます。術後、人工肛門や回腸導管(回腸を用いて人工的に尿路を再建する)、造膣術など形成手術が必要となります。

2)放射線療法

放射線治療にはがん細胞を殺し、腫瘍を縮小するためにX線や高エネルギー線が用いられます。放射線は体外から放射線を照射する外照射か、がん細胞の認められる領域に薄いプラスチックチューブを通し、放射線を出すラジオアイソトープを使用したプラスチックを入れて治療する腔内照射とがあります。放射線単独で治療する場合と、手術と併用して治療する場合があります。

3)化学療法(参照:がんの薬物療法

化学療法はがん細胞を殺すための抗がん剤を使用します。薬剤は経口的に投与されたり血管または筋肉注射として投与されます。抗がん剤は血流に入り全身をめぐり、子宮頸部を越えて拡がったがん細胞を殺すので全身療法と呼ばれています。

病状に応じて、過去の治療成績に基づき、現在最も有効と認められている治療は「標準治療」と呼ばれています。一方、難治性の進行がんでは、標準治療を行っても、多くの場合満足できる結果をもたらすのは難しいことです。そのため、さまざまな新しい治療法が研究され、試みられています。新しい治療法は最新の情報をもとに、よりよい治療を目指して行われますが、必ずしも標準治療よりもよい結果をもたらすとは限りません。新しい治療法は担当医だけでなく、多くの専門家の認める理にかなった方法で、一定の管理のもとで行われる場合を「臨床試験」といいます。これから治療を受ける場合は標準治療を受けるのか、臨床試験中の新しい治療法を受けるのか、どちらかを選ぶことになります。

7.病期(ステージ)別治療

上記の各種治療法はがんの進行状況、すなわち「病期」により選択され、その他がんの大きさ、年齢、全身状態、将来の出産の希望の有無などを考慮して決定されます。なお、妊娠中の頸部がんの治療は、病期と妊娠月数との兼ね合いで遅らせることができるかもしれません。

0期

次のうちいずれかの治療が行われます。

  • 凍結療法
  • 高周波治療
  • レーザー治療
  • 円錐切除
  • 腹式・膣式子宮全摘

    閉経後の婦人や、妊娠、出産の希望のない婦人に対しては原則として子宮を摘出します。

I期

がん細胞が正常組織にどのくらい深く浸潤しているかにより、次のうちいずれかの治療が行われます。

Ia期

  • 子宮全摘、両側付属器切除(通常、若い婦人では卵巣を残します)
  • 円錐切除(将来、挙児を希望する場合)
  • 準広汎または広汎子宮全摘出術(3〜5mmのより深い浸潤がある場合)
  • 腔内照射

Ib期

  • 腔内照射と外照射の併用
  • 広汎子宮全摘出術(リンパ節郭清)
  • 広汎子宮全摘出術(リンパ節郭清)と術後放射線治療

II期

次のうち、いずれかの治療が行われます。

  • 腔内照射と外照射の併用
  • 広汎子宮全摘出術(リンパ節郭清)
  • 広汎子宮全摘出術(リンパ節郭清)と術後放射線治療

III期

次のうち、いずれかの治療が行われます。

  • 腔内照射と外照射の併用

  • 放射線治療と化学療法の併用による新しい臨床試験

  • リンパ節のサンプリングによる病期決定の外科臨床試験と外照射の併用

    開腹手術をして転移が疑われるリンパ節を採取し、検査することを「サンプリング」といい、リンパ節とリンパ管を系統的にすべて切除することを「リンパ節郭清」といいます。リンパ節のサンプリングの結果、がんの転移が認められれば、その部分を含むよう放射線を照射する範囲を拡大します。

IV期

次のうち、いずれかの治療が行われます。

IVa期

  • 腔内照射と外照射の併用
  • 骨盤内臓全摘術
  • 放射線と化学療法の併用
  • リンパ節のサンプリングによる病期決定の外科臨床試験と外照射の併用

IVb期

  • 疼痛など症状を軽減させるための放射線治療
  • 全身的化学療法

再発

再発とは、治療で完全に消えたようにみえてもわずかに残っていたがん細胞が増殖し大きくなって発見された状態です。骨盤内におこる局所再発と、肺や肝臓のような原発病巣から離れた遠隔臓器に転移する遠隔転移再発とに分けられ、それぞれ治療法も異なります。

(1)局所再発

以下のいずれかの治療が行われます。

  • 骨盤内臓全摘術
  • 放射線療法と化学療法の併用

(2)遠隔転移再発

病巣が孤立性であれば外科手術を、多臓器におよぶ再発や多発性の転移には化学療法が行われます。しかし、標準治療はなく再発部位に合わせ、一人一人に適切な治療を行います。

(3)対症療法

治癒させる目的ではなく、症状を軽減させる治療です。

8.生存率

生存率とは、診断から一定期間後に生存している確率を示す指標です。
全国がん(成人病)センター協議会加盟25施設の院内がん登録のデータから算出された5年相対生存率を以下に示します。

5年相対生存率についてはこちらをご参照ください。

病期 症例数 5年相対生存率
I期 1,137 92.1%
II期 447 69.8%
III期 428 48.9%
IV期 151 17.2%

*このデータは、1997年から1999年の間に、子宮頸がんの治療のために、初めて入院して治療を受けられた患者さんが対象となっています。また、手術のみではなく、化学療法、放射線療法、その他の何らかの治療を受けられた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している手術を受けられた患者さんのみを対象とした生存率よりも低い値になっています。


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