大腸は消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収しながら大便にするところです。多種、多量の細菌のすみかでもあります。大腸のはじまりは盲腸です。盲腸から上(頭側)に向かう部分が上行結腸、次いで横に向かう部分を横行結腸、下に向かう部分が下行結腸、S字状に曲がっている部分がS状結腸、約15cmの真っすぐな部分が直腸で、最後の肛門括約筋(かつやくきん)のあるところが肛門管です。大腸がんは、長さ約2mの大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸ががんのできやすいところです。
大腸がんにかかる割合(罹患〔りかん〕率
)は、50歳代から増加し始め、高齢になるほど高くなります。大腸がんの罹患率、死亡率はともに男性の方が女性の約2倍と高く、結腸がんより直腸がんにおいて男女差が大きい傾向があります。
大腸がんの罹患率を追ってみると、1990年代前半までは増加し、その後は横ばい傾向にあります。大腸がんで亡くなる患者さんの割合(死亡率)に関しては、1990年代半ばまで増加し、その後は少しずつ減る傾向にあります。男女とも罹患数
は死亡数の約2倍であり、これは大腸がんの生存率
が比較的高いことと関連しています。
大腸がんの増加には、主として結腸がんの増加が影響しています。罹患率の国際比較では、結腸がんはハワイの日系移民が日本人より高く、欧米白人と同程度であることが知られていましたが、最近では、結腸がん・直腸がんともに、日本人はアメリカの日系移民および欧米白人とほぼ同じになっています。
大腸がんでは、直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴は、リスク要因になります。特に、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス性大腸がん家系は、確立した大腸がんのリスク要因とされています。生活習慣では、過体重と肥満で結腸がんリスクが高くなることが確実とされています。また、飲酒や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)は、おそらく確実な大腸がんリスクとされています。
国際がん研究機構(IARC)の評価では、喫煙が大腸がんのリスク要因であるとする科学的根拠は、少なからずあるものの、十分とはいえないとされています。日本人を対象にした疫学研究を系統的に総括した論文(2006年)では、喫煙習慣は、日本人では大腸がんリスクを上昇させる可能性があると結論しています。部位別の判定では、直腸がんについては、リスク上昇の可能性がある一方、結腸がんについては不十分と判定されています。
そのほか、ヘテロサイクリックアミンやニトロサミンなどが、大腸がんのリスク要因である根拠が、限定的または不十分とされています。
大腸がんの予防要因として、運動による結腸がん予防効果が確実とされています。また、従来「確実」とされていた野菜については、IARCのリポート(2003年)での新しい評価で、「おそらく確実」と変更されました。その主な理由は、最近発表されたいくつかの大規模なコホート研究の結果、予防的な関連が認められなかったことです。また果物は、同年のIARCリポートでは、大腸がん予防の可能性があるとされています。そのほか、可能性あり、またはエビデンス(科学的根拠)不十分な予防要因として、葉酸、カルシウム、ビタミンD、食物繊維摂取などがあげられています。また、非ステロイド消炎鎮痛剤(NSAIDs、アスピリンを含む)とホルモン補充療法が、リスクを減少させる要因としてあげられています。
大腸がんは早い時期に発見すれば、内視鏡的切除や外科療法により完全に治すことができます。少し進行しても手術可能な時期であれば、肝臓や肺へ転移しても、外科療法により完全治癒が望めます。つまり、外科療法が大変効果的です。しかし、発見が遅れると、肺、肝臓、リンパ節や腹膜などに切除困難な転移が起こります。こうした時期では、手術に加え放射線療法や化学療法(抗がん剤治療)が行われます。
手術を受けた後に再発することもあります。術後は定期的に(4〜12ヵ月の間隔)再発チェックのための検査を受ける必要があります。肝臓、肺、腹膜が転移しやすい臓器であり、また、切除した部位に局所再発が起こることもあります。大腸がんはほかのがんとは異なり、早い時期に再発が見つかれば、再発巣(再発した部位)の切除により完治も期待できます。再発の8割以上は術後3年以内に発見されます。手術後、5年以上再発しないことが完治の目安です。
大腸がんは、早期であればほぼ100%近く完治しますが、一般的には自覚症状はありません。従って、無症状の時期に発見することが重要となります。大腸がんのスクリーニング(検診)の代表的なものは、地域、職域で普及してきた大便の免疫学的潜血反応で、食事制限なく簡単に受けられる検査です。この検査が陽性でも、「大腸がんがある」ということではありませんし、逆に陰性でも「大腸がんはない」ともいえません。健康な集団の中から、大腸がんの精密検査が必要な人を選び出す最も有効で負担の少ない検査法です。
大腸がんの確定診断のためには、大腸内視鏡検査
が必須ですが、下剤で便を全部排出しないと精度の高い検査はできません。胃の検査などに比べれば多少負担のかかる検査といえます。以下に大腸がんの患者さんに一般に施行する検査項目に関して概説します。
大腸がんが疑われると、がんのある部位や広がりを調べるために、直腸指診
や注腸造影検査、内視鏡検査、CT
やMRI検査
などを行います。
指を肛門から直腸内に入れて、しこりや異常の有無を指の感触で調べます。
検査の前日に検査食を食べて腸内をきれいにしてから、肛門からバリウムと空気を注入し、X線写真を撮ります。この検査でがんの正確な位置や大きさ、腸の狭さの程度などがわかります。
腸内をきれいにしてから、先端にライトのついた内視鏡(ビデオスコープ)を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳細に調べます。ポリープなどの異常(病変)がみられた場合は一部組織を採取して(生検
)悪性か良性かを鑑別したり(病理検査・病理診断
)、内視鏡で根治可能な早期がんと手術が必要な病変との判別も行います。最近、一部の医療施設では病変の表面構造を最大で100倍まで拡大して観察できる拡大内視鏡を用いて、より精密な検査も行われるようになってきています。大腸内に便が残っていた場合は十分な検査ができませんので、検査当日に腸管洗浄液を1〜2リットル飲んで、大腸内をきれいにしてから検査を行います。大腸内視鏡検査は、通常20分程度で終わり、多くの場合、大きな苦痛はありません。しかし開腹手術後などで腸が癒着(ゆちゃく)
している場合や、腸の長い場合などは苦痛を伴ったり、検査に長い時間を要することがあります。その場合は、鎮静・鎮痛剤を使用することがあります。
検査は、まず内視鏡を肛門から一番奥の盲腸まで挿入して、主にスコープを抜いてくる際に十分に観察します。その際、検査を受けている患者さんは、モニター画面を直接見ながら医師の説明を聞くことができます。もし、ポリープなどの病変を認めた場合、悪性か良性かを調べるために病変の一部を採取して、どういう性状の病変かを顕微鏡で調べることもあります(これを組織生検といいます)。また、適応があれば内視鏡的に切除(内視鏡的ポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術〔EMR〕)することも可能です。
腫瘍マーカー
とは、体のどこかにがんが潜んでいると異常値を示す血液検査の項目のことで、がんの種類に応じて多くの種類があります。転移・再発の評価指標として、また治療の効果判定などのためにも用いられています。大腸がんではCEAとCA19-9と呼ばれるマーカーが一般的です。しかしこれらの腫瘍マーカーで大腸がんを早期に発見することはできず、進行大腸がんでも異常値が認められない場合もあります。腫瘍マーカーは定期的に測定して判断することが必要です。
超音波(エコー)検査
で、大腸がんと周囲の臓器の位置関係、がんの転移の有無を調べます。
CTはX線を使って体の内部を描き出し、治療前に転移や周辺の臓器へのがんの広がりを調べます。MRIは磁気を使用します。CTで造影剤を使用する場合、アレルギーを起こすことがありますので、ヨードアレルギーを起こした経験のある人は、医師に申し出てください。
放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出するのがPET
です。超音波検査、CT、MRIや病理検査で診断が難しい場合、腫瘍マーカーなどの異常から転移や再発が疑われる場合などには、PETで検査することもあります。
内視鏡治療
茎のあるポリープを認めた場合、スコープを通してスネアと呼ばれるループ状の細いワイヤ(針金)を、茎の部分に引っかけて締め、高周波電流で焼き切ります。
無茎性(むけいせい)、つまり平坦(へいたん)なポリープや腫瘍の場合は、ワイヤがかかりにくいため、病変の下層部に生理食塩水などを注入して周辺の粘膜を浮き上がらせ、広い範囲の粘膜を焼き切ります(図3 内視鏡的粘膜切除術)。通常、外来治療を行いますが、病変が大きい場合には短期間の入院の上、内視鏡治療を行います。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、病変の下層部にヒアルロン酸ナトリウムなどの薬剤を注入しながら、病変を電気メスで徐々にはぎ取る方法で、大きな病変も一括して切除できます(図4)。ただし、従来の内視鏡的粘膜切除術に比較すると高度な手技が必要であり、切除にも時間がかかります。
大腸がんの治療は、手術による切除が基本であり、早期でも手術が必要な場合があります。がんのある腸管とリンパ節を切除します。がんが周囲の臓器に及んでいる場合には、それらの臓器も一緒に切除します。がんの位置に応じて切除範囲、合併症や危険性も異なるため、担当医の説明をよく聞くようにしましょう。
病状や手術の方法によっては、人工肛門の造設が必要になる場合があります。直腸がんの場合は、直腸が骨盤内の深く狭いところにあり、そのすぐ周囲には神経や筋肉があるため、切除する範囲によってはがんと一緒に神経や筋肉を切除します。そのため、排便、排尿、性機能に障害が起きることがあります。進行度によっては、神経や筋肉を残す方法(自律神経温存術、肛門括約筋温存術)が可能な場合もあります。
最近では、おなかに小さな孔をつくり、そこから小型カメラと切除器具のついた腹腔(ふくくう)鏡を入れ、画像を見ながらがんを摘出する腹腔鏡手術
という方法もあります。この手術方法が可能かどうかについては、病状、各施設の方針などにより異なるため担当医にご相談ください。
大腸がんの手術により、軟便や下痢、便秘などの異常を生じることがあります。また、おなかの張りや腸閉塞、縫合不全や創感染(そうかんせん)などの合併症を生じることもあります。食事制限は特にありませんが、自分の胃腸の症状に応じて食べ物を調整するとよいでしょう。基本的には、おいしく、ゆっくり、楽しく、食べることです。食べ過ぎず、消化のよい食品、バランスのよい食事を心掛け、アルコールは飲み過ぎないようにしましょう。
大腸がんの治療は外科療法が基本で、早期がんの場合でも手術が必要になる場合があります。結腸がんの場合、切除する結腸の量が多くても、術後の機能障害はほとんど起こりません。リンパ節郭清(かくせい)
と呼ばれるリンパ節の切除とともに結腸切除術が行われます。
直腸は骨盤内の深く狭いところにあり、直腸の周囲には前立腺・膀胱・子宮・卵巣などの泌尿生殖器があります。排便、排尿、性機能など日常生活の上で極めて重要な機能は、骨盤内の自律神経という細い神経繊維によって支配されています。進んでいない直腸がんには、自律神経を全て完全に温存し、排尿性機能を術前同様に残すことも可能です。しかし、自律神経の近くに進行している直腸がんでは、神経を犠牲にした確実な手術も必要となります。直腸がん手術は、進行度に応じたさまざまな手術法があります。代表的な手術である自律神経温存術、肛門括約筋温存術、局所切除、人工肛門について説明します。
大腸がんに対する腹腔鏡手術は1990年代前半から国内でも行われるようになり、腹腔鏡手術を行う施設は徐々にふえてきています。炭酸ガスで腹部を膨らませて腹腔鏡を腹部に入れ、その画像を見ながら小さな孔から器具を入れて手術を行います。がんを摘出するために1ヵ所、4〜8cmくらいの創(きず)が必要です。手術時間は開腹手術より長めですが、小さな傷口で切除が可能なため、術後の痛みも少なく、術後7〜8日前後で退院できるなど負担の少ない手術です。
腹腔鏡手術は、盲腸、上行結腸やS状結腸、上部直腸に位置し、内視鏡的治療が困難な大きなポリープや早期がんがよい対象と考えられています。一部の専門施設ではがんが横行結腸や下行結腸、下部直腸に位置した場合や、進行がんでも腹腔鏡手術が行われています。
これまでのデータでは、十分に経験を積んだ大腸がんに対する腹腔鏡手術の専門医が担当すれば、進行がんでも腹腔鏡手術の生存率は開腹手術と同等となるのではないかと考えられています。しかし、進行がんに対しても開腹手術と同等の安全性や治療成績が得られるかについては、今後の検討が必要です。現在、国内では進行がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術の臨床比較試験が実施されています。
腹腔鏡手術は近年開発された手術手技であり、特殊な技術・トレーニングを必要とし、外科医の誰もが安全に行えるわけではありません。現在、腹腔鏡手術の最大の問題は、どこの施設でも安全に腹腔鏡の手術が行えるわけではないこと、すなわち大腸がんの腹腔鏡手術の専門医が限られていることです。そのため、施設により腹腔鏡手術の対象としている患者さんが異なるのが現状で、大腸がんに対する腹腔鏡手術を導入していない施設も現時点ではたくさんあります。
腹腔鏡手術を希望する場合には専門医がいる病院を受診し、開腹手術と比較した長所、短所の説明を十分に受けて、腹腔鏡手術か開腹手術かを決定してください。
放射線治療は、高エネルギーのX線を体の外から照射して、がんを小さくする効果があります。直腸がんでは、手術前後の補助治療として、「骨盤内からの再発の抑制」、「手術前のがんのサイズの縮小」や「肛門を温存すること」などを目的として放射線治療を行う場合があります。また、切除が難しい骨盤内のがんによる痛みや出血などの症状緩和、骨転移による痛みや、脳転移による神経症状などを改善するためにも一般的に行います。
切除が可能な直腸がんを対象とします。通常、高エネルギーX線を用いて、5〜6週間かけて放射線を体の外から照射します(外部照射)。化学療法の適応がある場合には、化学療法と併用して行われることが標準的です。手術中に腹部の中だけに放射線を照射する術中照射という方法を用いることもあります。わが国における専門施設では、十分なリンパ節郭清により骨盤内からの再発が少ないなど、手術成績が欧米に比べて良好なことなどから、現在、補助放射線療法は欧米に比べて積極的に行われてはいません。
骨盤内の腫瘍による痛みや出血などの症状の緩和に、放射線療法は効果的です。全身状態や症状の程度によって、2〜4週間などの短期間で治療することもあります。また、骨転移による痛み、脳転移による神経症状などを改善する目的でも、放射線療法は一般的に行われます。
放射線療法の副作用は、主に放射線が照射されている部位に起こります。そのため治療している部位により副作用は異なります。また副作用には治療期間中のものと、治療が終了してから数ヵ月〜数年後に起こり得る副作用があります。
治療期間中に起こる副作用として、全身倦怠(けんたい)感、嘔気(おうき)、嘔吐、食欲低下、下痢、肛門痛、頻尿、排尿時痛、皮膚炎、会陰部(えいんぶ)皮膚炎(粘膜炎)、白血球減少などの症状が出る可能性があります。以上の副作用の程度には個人差があり、副作用のほとんど出ない人も強めに副作用が出る人もいます。
症状が強い場合は症状を和らげる治療をしますが、通常、治療後2〜4週で改善します。治療後数ヵ月してから起こり得る副作用として、出血や炎症など腸管や膀胱などに影響が出ることがあります。
大腸がんの抗がん剤治療は、主に「手術後のがん再発を予防するための補助治療として」と、「根治目的の手術が困難な進行がんまたは再発がんに対して延命および生活の質(QOL:クオリティー・オブ・ライフ
)の向上」を目的に行います。最近は、大腸がんに有効な抗がん剤がいくつか開発されており、患者さんの症状に合わせて数種類の薬剤を組み合わせて使用したり、単独で使用したりします。副作用対策が進歩したことから、外来通院で日常生活を送りながら抗がん剤治療を受ける患者さんも多くなりました。
手術によりがんを切除できた場合でも、リンパ節転移があった場合に再発率が高くなることが知られています。このような場合、手術を行った後に化学療法を行うことで、再発を予防する、あるいは再発までの期間を延長できることがわかっています。このような治療を、術後補助化学療法といいます。一般には、術後補助化学療法の対象はリンパ節転移があるステージIII期の患者さんで、手術後に5-FU/ロイコボリン療法の6ヵ月投与が標準的に行われています。リンパ節転移のないステージI期、ステージII期の大腸がんについて術後補助化学療法の有用性は明らかではないため、基本的には術後補助化学療法は行わず、特に治療しないで経過観察をします。
根治的な手術が不可能な場合には、化学療法の適応になります。大腸がんの場合、化学療法のみで完治することはまれですが、臓器機能が保たれている人では、化学療法を行わない場合と比較して、化学療法を行った方が、生存期間を延長させることがわかっています。抗がん剤というと、副作用が強く、治療を行った方が命を縮めてしまうと考えてしまうかもしれませんが、最近は副作用の比較的少ない抗がん剤の開発と、副作用対策の進歩により、日常生活を送りながら外来通院で化学療法を受けている患者さんも多くなりました。大腸がんの化学療法は外来で行えるものも多く、副作用をコントロールしながら、がんあるいは治療と上手につき合っていくことが、一番の目標といえるでしょう。
わが国では2007年以降に承認された新しい薬で、体内の特定の分子だけを狙い撃ちにしてその働きを抑えるため、「分子標的薬」と呼ばれています。
以下に大腸がん化学療法に用いる代表的な薬と治療法について説明します。
手術のときに縫い合わせた腸管同士がうまくつながらなかった場合、腸の内容物が漏れて炎症が起こり、痛みや熱が出ることがあります。手術の場所によって起こる頻度が異なり、直腸や肛門の手術では、ほかの場所に比べて起こりやすい合併症です。
対策
急な発熱や寒気、腹痛などの症状がある場合は、すぐに担当医に知らせましょう。食事を控えて様子をみたり、入院して点滴や抗生物質の治療をしますが、場合によっては、再手術が必要になることもあります。
手術のときにできたおなかの創に細菌などによる感染が起こることがあります。赤く腫れて痛みや熱を帯びた感じを自覚します。創から膿(うみ)が出ることもあります。
対策
食事や水分をとらないで様子をみていると、痛みが治まることがありますが、痛みや吐き気が続く場合には、担当医の診察を受けましょう。場合によっては処置の必要があります。腸の血管が締め付けられる時間が長く続くと、腸管の細胞が壊死(えし:細胞が死んでしまうこと)してしまい、大変危険です。
手術後に腸の働きが悪くなり、便やガスが出にくくなることがあります。おなかの強い痛みや吐き気、嘔吐が起こります。原因は手術の創の周りの炎症や、炎症の影響で腸が癒着するために腸が狭くなっていることなどです。
対策
食事や水分をとらないで様子をみていると痛みが治まることがありますが、痛みや吐き気が続く場合には、担当医の診察を受けましょう。場合によっては処置の必要があります。腸の血管が締め付けられる時間が長く続くと、腸管の細胞が壊死してしまい、大変危険です。
大腸がんの治療後には、癒着の影響などで便通が悪くなることがあります。これに伴って、吐き気やおなかの張り、便秘などの症状が現れることがあります。一般的には退院するころには少しずつ落ち着いてきますが、半年以上たっても便通が安定しない(ガスが出ない、下痢と便秘を繰り返す、便秘が続くなど)ことも少なくありません。主な後遺症と対策を以下にまとめます。
手術や放射線治療の影響によっては、排尿、性機能に関する症状が現れることがあります。日常生活の過ごし方によって予防できるものもありますが、中には医師による処置が必要なものもあります。気になる症状が現れたら、我慢しないで担当医に相談しましょう。
「大腸がん手術後の排便・排尿障害のリハビリテーション」「ストーマケア」の項も参照してください。
手術や薬物療法、放射線治療の後には、腸の水分を吸収する能力が低下して下痢になることがあります。
対策
多くの場合は、治療後1〜2ヵ月でやや軟らかい便の状態になり、日常生活に支障を来すことはまれです。水分を多めにとり、消化のよいものを、よくかんで、ゆっくり食べましょう。担当医から整腸剤を処方されることがあります。
治療や治療後の癒着の影響などで大腸の動きが悪くなったり、便を肛門に送り込む力が弱まったりすると、便の流れが滞るようになります。そうすると、ガスが出にくくなりおなかが張ったり、便秘になりやすくなります。
対策
おなかを温めたり、マッサージをして腸の動きを刺激します。担当医から緩下剤を処方されることがあります。長い間続く吐き気やおなかの張り、急な痛みは腸閉塞の前触れの可能性があります。担当医に相談しましょう。
直腸がんの手術後や放射線治療で放射線を直腸に当てた後には、便通の回数が多くなることがあります。
対策
お尻に力を入れて肛門をつぼませたり緩めたりする引き締め体操を、1日10回程度行いましょう。また、外出時にはトイレの場所をあらかじめ確認しておくようにすると、便意を感じたときに慌てずにすみます。下着の中に小さなおむつパッドを敷いておいたり、取り換えの下着を用意しておくと安心です。
直腸がんの治療後に、手術や放射線の影響で、骨盤の中にある排尿を調節している神経が影響を受けることがあり、その程度によって、尿意を感じない、排尿してもスッキリしない、などの症状が現れることがあります。
対策
水分を控える人がいますが、尿の出をよくするためにも水分を十分にとりましょう。担当医と相談して、必要に応じて泌尿器科の医師の診察を受けることもあります。場合によっては、薬の処方を受けたり、導尿(カテーテルという細い管を尿道から膀胱に挿入して尿をとる処置)が必要になることがあります。
骨盤内の神経には、性機能に関係するものもあるため、直腸がんの手術をした男性には、勃起不全や射精障害などの性機能障害が生じることがあります。
対策
薬物療法などにより機能を回復する場合もあります。多くの患者さんが経験する悩みの1つですので、恥ずかしがらないで担当医に相談してみましょう。
性機能障害については、「性機能障害とリハビリテーション(男性)」の項を参照してください。
内視鏡治療や腹腔鏡下手術の場合は、大腸の機能が大きく損なわれることがないので、比較的早めに体力が回復し、食事も治療前と同じようにとれるようになります。開腹手術では、治療後にウオーキングやストレッチなどの軽い運動などで、まめに体を動かすようにしましょう。ただし半年くらいは腹筋を使う激しい運動はなるべく控えましょう。
食事の制限は特にありません。「規則正しく、おいしく、ゆっくり、楽しく食べる」ことを心掛けましょう。治療後間もない時期は、腸の動きが十分に回復していないので、便秘を起こしやすい繊維質の多いものや消化のよくないものは食べ過ぎないようにして、水分を多めにとりましょう。
腸の働きには、心理的、精神的な状態も大きく関係しています。あまり神経質にならないで、趣味を楽しみ、休息や睡眠を十分にとって、ストレスを解消することも大切です。大腸がん手術後の食事については、「大腸の手術のあと」の項を参照してください。
排便の調子や時間などを記録して、変化がないかみていきましょう。普段は記録しなくても、便がゆるくなったり、固くなったとき、便秘やおなかの張りが強いときに書きとめるのでもいいでしょう。
トイレが不安でおっくうになり、外出を控える人もいますが、体を動かさないでいると便秘になりがちです。近所を散歩するなど、外出の機会をふやしてみましょう。
治療後も担当医の指示のもとで、定期的に通院し、検査を受けることがとても大切です。
一般的には、手術後3年間は3〜6ヵ月に1度、3年目以降は、約半年に1度の間隔で通院します。通院では食事の様子、おなかの状態などについて問診や診察などがなされ、検査としては、大腸内視鏡、胸部X線、腹部超音波(エコー)、CT、腫瘍マーカーなどの検査を行います。5年経過した後も別の臓器(胃、肺、乳腺、子宮、前立腺など)や大腸の別の部位に新たにがんが発生する可能性があるため、検診などの定期的な検査が必要になります。
転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。大腸がんでは肝臓や肺、リンパ節への転移が多くみられます。がんを手術で全部切除できたように見えても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。肝臓への転移に対する抗がん剤治療や手術、手術後の抗がん剤治療が行われることがあります。
再発とは、治療によって目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。大腸がんでは、再発される患者さんのおよそ80%が、手術から2年以内に認められており、術後の経過観察がとても大切です。手術を行った場所のすぐ近くで再発が認められる場合と、肝臓や肺、骨などへ転移した状態で再発が認められる場合があります。再度手術できる場合もありますがそれほど多くはありません。切除できない場合には抗がん剤や放射線による治療が行われるのが一般的です。再発といってもそれぞれの患者さんでの状態は異なります。転移が生じている場合には治療方法も総合的に判断する必要があります。それぞれの患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。
一般の方向け参考資料
出版物:「大腸癌治療ガイドラインの解説 2009年版」
大腸癌について知りたい人のために 大腸癌の治療を受ける人のために(第2版)
大腸癌研究会編 金原出版 2009年1月
ISBN978−4−307−20251−0
大腸癌研究会ホームページ
「一般の皆様へ」