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マントル細胞リンパ腫

更新日:2006年10月01日    掲載日:2006年10月01日

1.はじめに

図1 正常リンパ節構造と名称
図1 正常リンパ節構造と名称

リンパ節の一次リンパ濾胞(ろほう)、あるいは二次リンパ濾胞のマントル層に存在する、B細胞(リンパ球)に由来するがんと考えられています(図1)。

病理組織学(検査のために外科切除したリンパ節を顕微鏡で見た所見のことです)的には、1970年代半ばよりその存在が推定されていましたが、疾患概念の確立は比較的新しく、1993年に独立した疾患単位として提唱されました1)。現在は、新WHO分類2)に固有の病型として分類されています。

マントル細胞リンパ腫は、欧米ではB細胞非ホジキンリンパ腫の5〜10%を占めますが、わが国では2〜3%にすぎず、比較的頻度の低い病型です。

2.マントル細胞リンパ腫の特徴

病理組織学的には、1)特徴的な細胞形態を示すがん細胞が、しぼんで正常胚中心(濾胞中心)の周囲に固まって増殖する“マントル層型”、2)正常胚中心が消失し、がん細胞が一見濾胞様の増殖を示す“結節型”、さらに、3)進展し、はびこって広く増殖した“びまん型”に細分類されます。また一部は、がん細胞がリンパ芽球様に大型化、あるいは核小体を有する多形性の核を呈することがあり、これらは「芽球型」または「多形型亜型」と呼ばれています。

【マントル細胞リンパ腫の特徴についてさらに詳しく】


マントル細胞リンパ腫の特徴

マントル細胞リンパ腫のがん細胞表面には、Bリンパ球に広く発現する抗原であるCD19、CD20、CD22、免疫グロブリン重鎖(Ig)M(多くはIgDも)、および通常はTリンパ球に発現する抗原であるCD5、さらにはHLA-DRが陽性になります。これらは、正常リンパ節のマントル層(図1参照)に存在するBリンパ球の特徴と同じです。一方、低悪性度B細胞リンパ腫の代表的な病型である濾胞性リンパ腫に特徴的なCD10、慢性リンパ性白血病のがん細胞表面に発現するCD23は陰性であり、これらの特徴は鑑別診断を行ううえで重要な所見となります。

遺伝子・染色体(分子生物学)レベルでは、11番染色体q13部位と14番染色体q32部位に、互いの切断点を有する転座が高頻度に認められます。この染色体転座により、11番染色体q13部位に存在するBCL-1/PRAD-1遺伝子に脱制御を生じます。その結果、細胞増殖周期を制御するたんぱく質であるサイクリン(cyclin)D1が過剰に発現するようになり、マントル層のBリンパ球に相当する細胞が著明に増殖します。これがマントル細胞リンパ腫の原因と考えられています。

Cyclin D1に対する抗体を用いた組織染色の結果、陽性となることは、前記(細胞形態と細胞表面抗原)の特徴と同様、マントル細胞リンパ腫の診断に有用な所見です。

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3.予後因子

マントル細胞リンパ腫は、発症年齢の中央値が60歳代と比較的高く、男女比では約2:1と男性に多い傾向があります3,4)。発病時には全身のリンパ節腫大(しゅだい)とともに、リンパ節以外の部位(節外病変部位)として、骨髄、消化管(食道‐胃‐小腸‐大腸)に浸潤(しんじゅん)する頻度が高くなりますので、進行した病期で見つかる比率も高いです。また、複数の「リンパ節外病変」を有する頻度が高いなどの臨床的な特徴があります。このことから、診断時には悪性リンパ腫の予後指標である国際予後指数*1に基づいたリスクグループは、高(high)あるいは中‐高(high-intermediate)リスクグループに相当する患者さんが過半数を占める結果となっています。

*1国際予後指数(International Prognostic Index:IPI):
主にCHOP療法で治療した場合の中高悪性度非ホジキンリンパ腫の予後推測モデル。下記の5つを予後予測因子とし、診断時にそれを有する数の合計で予後を4群に層別化する。
1) 年齢 >60歳
2) 臨床病期 ≧III期
3) 診断時のperformance status(PS) ≧2
4) 血清LDH >正常範囲の上限
5) リンパ節外病変数 ≧2ヶ所
**年齢≦60歳の場合は臨床病期、PS、LDHの3つが予後因子となる
  リスク数0,1(≦60歳では0): Low risk(低リスク)群
  2 (≦60歳では1): Low-Intermediate risk(低-中リスク)群
  3 (≦60歳では2): High-Intermediate risk(高-中リスク)群
  4,5(≦60歳では3): High risk group(高リスク)群
*1国際予後指数(International Prognostic Index:IPI):Shipp MA: N Engl J Med 329: 987-994, 1993

【マントル細胞リンパ腫の予後因子についてさらに詳しく】


マントル細胞リンパ腫の予後因子

診断時の臨床病期*2(語句の説明参照)は80%以上の患者さんでIII、IV期の進行期であり、消化管病変の影響により、体重減少を伴う患者さんが比較的多く認められます。一方、大半の患者さんでは診断時の血清乳酸脱水素酵素(LDH)は正常範囲内にあり、全身状態の指標である(Performance Status:PS)*3も、多くは0または1と比較的良好に保たれているのが特徴です。

マントル細胞リンパ腫患者の予後に影響を与える、臨床因子の検討結果についてです。リンパ節以外の病変数(≧2ヵ所)、PS(≧2)、末梢血へのリンパ腫細胞の出現、年齢(>70歳)、血清LDH(>正常域上限)等が予後不良因子としてあげられています3)

なお、従来マントル細胞リンパ腫は、病理組織学的には、多くの場合で低悪性度B細胞リンパ腫として扱われてきました。しかし進行期の患者さんでは、「CHOP療法(「4.治療」の項参照)」などの非ホジキンリンパ腫の標準的化学療法で治療した場合の完全寛解率*4は、20〜60%です。完全寛解に達した患者さんも多くは早期に再発し、治癒に至る患者さんは極めて少数であると考えられています。大半の臨床試験研究で、生存期間の中央値は3〜4年です。国際リンパ腫研究グループの分類では、5年生存率が30%未満で予後が最も不良な疾患グループとして位置づけています5)

また、前記の病理組織細分類では、びまん型は結節型や芽球型亜型と比較し、生存率が有意差をもって低い(生存期間の中央値は、びまん型16ヵ月、結節型50ヵ月、芽球型亜型55ヵ月:p=0.0038)結果が報告されています6)。一方、Cyclin D1に対する抗体を用いた免疫組織学的検査では、約15%の患者さんのがん細胞が陰性(染色されない)でした。Cyclin D1が陰性となる患者さんは、臨床像、基本的な組織染色であるヘマトキシリン-エオジン染色による病理組織像からは、陽性例との判別は困難ですが、Cyclin D1陽性の症例に比べ、長期生存率が著しく良好であることが明らかです(5年生存率は陰性例で86%、陽性例では30%、p=0.0002)4)

表1 マントル細胞リンパ腫の各予後因子における単変量解析結果
:値が低いほど影響が大きい
変量項目 完全寛解導入 無増悪生存率 全生存率
年齢(70歳以下/71歳以上) NS NS 0.0075
PS(2未満/2以上) NS NS 0.001
全身症状(あり/無し) 0.04 0.01 NS
臨床病期(I、II期 /III、IV期)      
巨大腫瘤(長径>10cm:あり/なし) 0.014 NS 0.02
末梢血腫瘍細胞浸潤(あり/なし) 0.008 0.02 0.0017
リンパ節外病変(2ヶ所未満/2ヶ所以上) <0.0001 NS 0.00034
ヘモグロビン g/dl(12未満/12以上) NS NS 0.014
β2-ミクログロブリン(3以下/3.1以上) 0.0003 0.03 0.04
血清LDH(正常範囲内/正常域上限以上) NS NS 0.009
IPI(0,1/2−4) <0.0001
組織学的パターン(びまん型/結節型) NS NS NS
bcl-1または染色体転座t(11;14)(あり/なし) NS NS NS
初回治療(アントラサイクリン:あり/なし) NS NS NS
Samaha H., et al. Leukemia 12: 1281-1287, 1998より改変引用


*2臨床病期:
Ann Arbor 分類は、基本的にはホジキンリンパ腫の臨床病期分類であるが、非ホジキンリンパ腫にも応用して用いる。
Ann Arbor 分類(Cotswold改訂)
I期: 1つのリンパ節領域の侵襲(I)、または1つのリンパ組織以外の臓器や部位への限局性侵襲(IE)。
II期: 横隔膜の片側にとどまる2カ所以上のリンパ節領域の侵襲(II)、または1つのリンパ組織以外の臓器や部位への限局性病変と横隔膜と同側の1つ以上のリンパ節領域の病変(IIE)。
III期: 横隔膜の上下にわたる複数のリンパ節領域の侵襲(III)、または1つのリンパ組織以外の臓器や部位への限局性侵襲(IIIE)、または脾臓への侵襲(IIIS)、あるいはこの両方(IIISE)。
IV期: リンパ節病変の有無に関わりなく、1つあるいは複数のリンパ組織以外の臓器や部位への、びまん性侵襲(IV)。 各病期は以下にあげた症状のないものをA、いずれかを有するものをBとして記載する。
  1)初診時までの6ヶ月間に10%以上の体重減少
  2)38℃以上の原因不明の発熱
  3)盗汗
*2 臨床病期:Lister TA, et al: J Clin Oncol 7: 1630-1636, 1989


*3 performance status(PS):
診断時の日常生活機能程度の指標となる。
0: 全ての労作に制限がなく、健常時と同様に行動できる状態
1: 激しい運動は制限されるが、歩行や軽作業は可能で、日中の臥床を必要としない状態
2: 歩行や身の回りのことはできるが、日中半日以内の臥床を必要とする状態
3: 身の廻りのことにある程度の制限があり、日中半日以上の臥床を必要とする状態
4: 身の廻りのことにも著しい制限があり他人の介助が必要で、全日臥床の状態
*3 Eastern Cooperative Oncology Group,(ECOG)の基準を改訳し提示


*4治療成績の評価に関する語句について
<治療効果の評価>
完全寛解 complete response:WHO基準
治療により下記の条件を満たす状態が28日以上継続した場合を完全寛解という。
  1. 触診で病巣を触知せず、CT像で認められるリンパ節が1×1cm以下
  2. 新病変の出現がない
  3. 二次病変が消失しており、PSの増悪がない
  4. 骨髄に腫瘍細胞を認めない
  5. 肝・脾に腫瘍による異常所見を認めない
部分寛解 partial response
  治療により下記の条件を満たす状態が28日以上継続した場合を部分寛解という。
  1. すべての測定可能病巣の2方向計測による積和が、投与前値に比べて50%以上縮小している
  2. 新病変の出現を認めない
  3. 他の評価可能病変の増悪を認めない

<治療効果の持続と生存に関する評価>
治療奏効率 response rate:
  治療実施患者さんのうち、完全寛解および部分寛解を得た患者さんの割合
  臨床研究では治療実施の有無にかかわらず、研究に登録されたすべての患者さんを対象(母数)とする
全生存率 overall survival:
  診断日(あるいは治療開始日)から「原因を問わない死亡」日までの期間を生存期間として算定
  有病・無病の状態、経過中の再発・増悪の有無は問わない
  臨床研究では治療実施の有無にかかわらず、研究に登録されたすべての患者さんを対象(母数)とする
  (以下も同じ)
無再発生存率 relapse-free survival:
  完全寛解成功例を対象とし、完全寛解到達日から再発確認までの期間を無再発期間として算定
無増悪生存率 progression-free survival:
  治療開始日から完全寛解成功例では再発確認日まで、部分寛解/不変例では再増悪確認日まで、
あるいはいずれの場合も「原因を問わない死亡」までの期間を無増悪期間として算定
  治療奏効持続率 failure-free survivalとおおむね同義
無イベント生存率 event-free survival:
  治療開始日から「原因を問わない死亡」、および事前に設定されたすべてのイベントまでの期間を無
イベント期間として算定

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4.治療

現在までの臨床研究では、マントル細胞リンパ腫の標準治療用語集アイコンは、まだ確立していません。

その中でも、初回治療例はリツキシマブを併用した化学療法(「R-CHOP療法」)が第一選択治療です。さらに、リツキシマブ併用化学療法が奏効した比較的若年患者さん(60歳程度まで)については、自己造血幹細胞移植を併用した大量化学療法を追加するのが、考慮すべき治療戦略とされています。

しかし、この治療法で治癒を期待するのは困難であり、より有効な化学療法の開発が待たれます。いくつかの研究的治療では治療成績の改善が得られていますが、長期の治療成績(治癒が期待できるか否か)はまだ不確実であるものも多いです。今後は、分子標的治療薬など新たな薬剤の開発と、それらを有効に組み合わせた治療戦略の開発が望まれます。

(1) 非ホジキンリンパ腫の標準治療としてのCHOP療法の位置づけおよびアントラサイクリン系薬剤(主にドキソルビシン)の有用性

米国での、多施設共同研究におけるCHOP(チョップ)療法(シクロホスファミド/ドキソルビシン/ビンクリスチン/プレドニゾロン)の治療成績の解析では、マントル細胞リンパ腫は他の低悪性度B細胞リンパ腫に比べて予後不良でした。10年の治療奏効持続率*4は6%(比較対象とした、他の低悪性度B細胞リンパ腫のグループは25%:p=0.0002)、10年の生存率*4は8%(同35%:p=0.0001)と報告されています7)。(図2)

*4 治療成績の評価に関する語句について

治療奏効率 response rate
治療実施患者さんのうち、完全寛解および部分寛解を得た患者さんの割合
臨床研究では治療実施の有無にかかわらず、研究に登録されたすべての患者さんを対象(母数)とする
全生存率 overall survival
診断日(あるいは治療開始日)から「原因を問わない死亡」日までの期間を生存期間として算定
有病・無病の状態、経過中の再発・増悪の有無は問わない
臨床研究では治療実施の有無にかかわらず、研究に登録されたすべての患者さんを対象(母数)とする

【治療成績についてさらに詳しく】


図2 マントル細胞リンパ腫と国際分類 Working Formulationでの低悪性度B細胞リンパ腫(A-E)のCHOP 療法での治療成績

図2 マントル細胞リンパ腫と国際分類 Working Formulationでの低悪性度B細胞リンパ腫(A-E)のCHOP 療法での治療成績
A) 治療奏効持続率、B) 全生存率
Fisher RI, et al. Blood 85: 1075-1082, 1995より改変引用

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マントル細胞リンパ腫の、初回治療におけるアントラサイクリン系薬剤(主にドキソルビシン)の有用性については、定見がありません。“Centrocytic Lymphoma”(改訂Kiel分類でマントル細胞リンパ腫に相当する病型)を対象としたCHOP療法と、ドキソルビシン(アドリアマイシン)を含まないCOP療法とのランダム化比較試験の結果、完全寛解率(CHOP療法51%、COP療法41%)、奏効率(同89%と84%)、無再発生存期間の中央値(同7ヵ月と10ヵ月)、生存期間の中央値(同37ヵ月と32ヵ月)は、いずれも両治療グループの間に有意な差を認めませんでした8)。また、米国のネブラスカリンパ腫研究グループの後方視的解析(過去にさかのぼった調査・解析)でも、アントラサイクリン系薬剤は生存率の改善に寄与しないことが示されました6)

一方、アントラサイクリン系薬剤を含む治療のほうが、完全寛解率は有意に良好(含む場合は68%、含まない場合は25%)で、特に国際予後因子指標による低(low)および低‐中(low-intermediate)リスクグループに限れば、全生存率、無病生存率も優れた結果であったとする研究もあります9)

これらの臨床研究結果から、アントラサイクリン系薬剤が有用であるのは、良好な予後因子を有する場合に限られる可能性があります。マントル細胞リンパ腫に対するアントラサイクリン系薬剤の有用性については、今後さらなる検討が必要です。ただ、現時点ではCHOP療法など、アントラサイクリン系薬剤を含む化学療法が非ホジキンリンパ腫の標準治療であるとの認識から、マントル細胞リンパ腫の初回治療にも同様に用いられています。

(2) 抗CD20ヒト-マウスキメラ型抗体(リツキシマブ rituximab)およびリツキシマブとCHOP療法の併用

2002年以降は、わが国でもキメラ型(マウスとヒトの両者のたんぱく質から構成されていることを意味します)抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)が低悪性度B細胞リンパ腫の治療に導入され、マントル細胞リンパ腫の治療にも用いられています。初期の臨床試験研究では、化学療法をしても治療不応だった(治療しても効果がなかった)患者さんと再発した患者さんに、リツキシマブを週1回単独で4週連続投与しました。有効率は22%(完全寛解は0)であり、治療成績の改善は得られていません10)。また、リツキシマブ単剤による初回治療34例と再発治療40例に対する治療成績は、各5例の完全寛解を含め奏効率はおのおの38%、37%でした。リツキシマブが奏効した症例では効果持続期間の中央値は1.2年で、完全寛解例と部分寛解例、初回治療例と再発治療例との間には有意な差は認められませんでした11)。その他の臨床研究を含め、リツキシマブ単剤でのマントル細胞リンパ腫の治療成績は奏効率で33〜38%でした。一般には、リツキシマブ単独療法は、マントル細胞リンパ腫の初回治療として適当ではないと考えられています。

初回治療として、リツキシマブとCHOP療法との併用(R-CHOP療法)は48%の完全寛解率と96%の奏効率(完全寛解+部分寛解)が得られました。リツキシマブと化学療法との併用により治療成績の改善が期待されましたが、治療奏効例の大半は再発・再増悪し、治療後の無増悪生存期間は中央値16.2ヵ月と期待値よりは短い結果となっています12)。R-CHOP療法の有用性を検証する目的で、病期III、IV期を対象としたR-CHOP療法とCHOP療法とのランダム化比較試験が実施されました。この結果、R-CHOP療法の完全寛解率は34%、CHOP療法は7%であり、奏効率はおのおの94%と75%でした。CHOP療法に比べ、R-CHOP療法は無増悪生存期間は延長しましたが、前記の研究結果と同様に奏効例の大半は2年以内に再発・再増悪し、長期生存率には有意な改善が得られていません13)。本比較試験の結果より、リツキシマブと化学療法との併用はマントル細胞リンパ腫の標準的治療戦略と考えられますが、R-CHOP療法では治癒を期待するのは困難であり、より有効な化学療法の開発が待たれます。

最近、リツキシマブを併用した各3コースの「hyper-CVAD療法(シクロホスファミド/ビンクリスチン/ドキソルビシン/デキサメタゾン)」と、「メトトレキサート/シタラビン療法」との交代治療の成績が報告されました。完全寛解率は87%、3年の治療奏効持続率は67%、3年の全生存率は81%と良好です。一方、年齢65歳以上、血清β2ミクログロブリン高値、消化管病変が予後不良因子となることが示されました14)。5%の治療関連死亡を伴いますが、マントル細胞リンパ腫の有用な初回治療法として期待されています。

(3) プリン誘導体

低悪性度B細胞リンパ腫に高い治療効果を有する誘導体のフルダラビン、クラドリビンは、マントル細胞リンパ腫に対しても有用であることが示されています。フルダラビンは単剤で33〜41%の奏効率があり15,16)、シクロホスファミドとの併用(CF療法)では63%の奏効率が報告されています17)。同様に、クラドリビンは単剤で81%18)、アントラキノン系薬剤であるミトキサントロンとの併用では奏効率は100%との報告があります19)。クラドリビンは、再発例でも単剤で21%の完全寛解率と54%の奏効率が得られていますが、治療奏効期間の中央値は5.4ヵ月と短い傾向があります20)。また、再発例に対する「FCM(フルダラビン/シクロホスファミド/ミトキサントロン)療法」と、「R-FCM療法(リツキシマブとFCM療法の併用)」とのランダム化比較試験の結果では、R-FCM療法のほうが、奏効率および無増悪生存率で有意に優れる結果が示されています21)。プリン誘導体は、リツキシマブとの併用化学療法の1つとして期待されますが、長期の治療成績についてはまだ明らかではありません。

(4) 研究的治療

上記のように、通常の化学療法による治療成績は不良です。そのため他の中‐高悪性度リンパ腫と同様に、マントル細胞リンパ腫に対しても、研究的治療として造血幹細胞移植を併用した大量化学療法が試みられています。

a)自己造血幹細胞移植
マントル細胞リンパ腫は、発症年齢の中央値が60歳代と比較的高齢者が占める割合が高いことから、造血幹細胞移植は主に自己末梢血幹細胞が用いられています。

抗B細胞抗体を用い、生体外(試験管内)でB細胞を除去処理した自家骨髄細胞を用いた28例(年齢中央値46歳、第一寛解期が8例、第二寛解期以降が20例、19例が病期IV期)の後方視的解析では、19例は中央値21ヵ月で再増悪し、4年の無病生存率は31%、全生存率は62%と必ずしも良好な結果ではありませんでした22)。他の後方視的解析でも、2年の無イベント生存率は36%、全生存率は65%にすぎなかったと報告されています23)

【米国のMDアンダーソンがんセンターでの前方視的研究についてさらに詳しく】


米国のMDアンダーソンがんセンターでの前方視的研究について

一方、米国のMDアンダーソンがんセンターでは、前方視的研究(今後行われることに対する調査・研究)として、初回治療の25例(年齢中央値54歳、病期IV期が22例)に「hyper-CVAD療法とメソトレキセート/シタラビン療法との交代療法」を、交互に2コースずつ計4コース実施した後に、一部同種を含む骨髄移植/末梢血幹細胞移植を併用した大量シクロホスファミド+全身放射線照射による大量化学放射線療法を行いました。その結果、3年の無イベント生存率は72%、同全生存率は92%(既治療グループではおのおの17%、25%)と極めて優れた成績を報告しています24)(図3)。また、第一寛解期に自己造血幹細胞移植を併用した大量化学療法では、無増悪生存期間の中央値が51ヵ月、生存期間の中央値が72ヵ月以上であるとの最近の報告もあります25)

図3 Hyper CVAD療法+造血幹細胞移植併用大量化学放射線療法実施群(研究対象群) と CHOP 類似療法実施群 (コントロール群) の治療成績図3 Hyper CVAD療法+造血幹細胞移植併用大量化学放射線療法実施群(研究対象群) と CHOP 類似療法実施群 (コントロール群) の治療成績
A) 無イベント生存率、B) 全生存率

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マントル細胞リンパ腫では、骨髄浸潤や末梢血へのリンパ腫細胞の出現頻度が高いことから、自己造血幹細胞を採取する際にリンパ腫細胞が混入する可能性が否定できません。しかし、移植前にリツキシマブを投与して生体内のがん細胞を減少させる処置を行うことにより、観察期間中央値35ヵ月で89%の生存率が得られたとの報告もあります26)。マントル細胞リンパ腫に対する自己造血幹細胞移植併用大量化学(放射線)療法の治療成績はまだ少数例での検討が多く、長期の治療成績について一定の評価を得るには至っていません。ただ、少なくとも初回治療においてはその有用性が期待されています。今後はリツキシマブ併用による有用性の検証も含め、多数例でのランダム化比較試験による評価の確定が待たれます。

b)同種造血幹細胞移植
一部の限られた患者さんを対象とした検討ですが、免疫反応による移植片対リンパ腫効果を期待した同種造血幹細胞移植も試みられています。既治療例11例(1例は自己造血幹細胞移植後の再発)を含む16例(15例は病期IV期)の患者さんに対する治療成績は、3年の無増悪生存率、同全生存率はいずれも55%でした27)。またこの中では、通常の救援化学療法*5が有効であった患者さんは、1年の治療奏効持続率、全生存率はともに90%であったのに対し、救援化学療法が無効であった患者さんの1年の治療奏効持続率、全生存率は、ともに44%と前者の治療成績が良好であったことが示されています。また、少数の患者さんに対する検討ですが、化学療法が効かなくなった時期に同種骨髄移植を行って長期の無病生存を維持している患者さんや、自己造血幹細胞移植後の再発例に同種造血幹細胞移植が有効であった患者さんなども報告されています。年齢その他の宿主因子等により適用は限られますが、最近では薬剤強度を減じた骨髄非破壊的前処置を用い、高齢者、全身状態不良者にも適応を広げた造血幹細胞移植療法(ミニ移植と呼ばれています)も開発中です。通常の化学療法では難治であるマントル細胞リンパ腫に対し、同種造血幹細胞移植は移植片対リンパ腫効果を期待する新たな治療戦略として、今後も研究が進むと思われます。

*5 救援化学療法 Salvage Therapy
初回寛解導入療法が無効である患者さん、あるいはいったん奏効した後に再発・再増悪した患者さんに対する、その後の治療法(化学療法)を救援療法という

c)その他の治療方法 -開発中の薬剤も含めて
放射線免疫療法(アイソトープを標識した抗体療法のことです)として、90イットリウム-イブリツモマブ(ゼバリン:β線のみ、半減期2.6日)、131ヨード-トシツモマブ(ベクサー:βとγ線、半減期8.0日)が、米国で臨床応用がはじまっています。詳しくは「リツキシマブと新規抗B細胞抗体」をご参照ください。わが国ではゼバリンの第II相試験が終了し、早期の承認が期待されています。プロテアソーム阻害という新規のメカニズムを有する抗がん剤である「ボルテゾミブ」は、米国では多発性骨髄腫の再発例の治療薬として食品医薬品局の認可を受けていますが、マントル細胞リンパ腫への臨床応用も行われています。再発33例のうち治療の評価が可能であった29例では、完全寛解6例を含む12例(41%)に奏効したことが報告されています28)。ボルテゾミブは、多発性骨髄腫を対象に近々わが国へも導入が予定されています。米国では、サリドマイドも単独またはリツキシマブとの併用で、マントル細胞リンパ腫に対する検討がはじまっていますが、まだ少数例の検討にとどまっていて、有用性は明らかではありません。

【参考文献】


参考文献

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