絨毛性疾患:[がん情報サービス]
がん情報サービス ganjoho.jp
右側ナビゲーションの始まり
それぞれのがんの解説

パンくず式ナビゲーション
TOPそれぞれのがんの解説 > 絨毛性疾患

絨毛性疾患(じゅうもうせいしっかん)

更新日:2006年10月01日    掲載日:1996年10月16日

1.絨毛性疾患とは

妊娠すると子宮に胎盤(たいばん)ができます。胎盤の内側に臍帯(さいたい:へその緒)があり、胎児につながっています。胎盤の外側には絨毛(じゅうもう)といわれる顕微鏡的に細い糸状組織が密生していて、これが子宮の壁ににじむように入り込んでいきます。胎児は絨毛をポンプのように使い、これを通して母親の血液から酸素と栄養をとっています。この絨毛に発生する病気を絨毛性疾患といいます。

絨毛性疾患は妊娠の後に子宮内部におこり、これを胞状奇胎(ほうじょうきたい:ブドウ子)と絨毛がんに分けます。胞状奇胎では妊娠しても胎児は子宮内にいません。胎児のかわりに絨毛が変化してできた小さな袋が多数集まり、全体としてブドウの房のように見えます。袋の中には水様の液がたまっています。胞状奇胎は侵入奇胎と呼ばれる特殊なものを除いて、子宮外には転移しません。一方、絨毛がんは胞状奇胎からできたり、流産、死産、または正常分娩の後に残った絨毛から生じます。絨毛がんは子宮から身体の他の部分に転移します。絨毛がんの最大の確立したリスク要因は、胞状奇胎です。正常妊娠と比較した場合、全胞状奇胎の絨毛がんリスクは1000倍以上高くなります。

絨毛性疾患の頻度

我が国では、各地の地域登録センターを中心に1974年以降、絨毛性疾患地域登録が行われています。1997年時点では22の地域が参加し、我が国の総人口の約48%にあたる人口を対象として登録が行われました。その結果によると、胞状奇胎の発生頻度は、1974年に人口10万人あたり4.96人であったものが1997年には0.68人と著明に減少しています。出生に対する割合を見ても、出生1000人あたり1974年の2.70人から1997年の0.71人と減少しています。

絨毛がんの発生頻度は、1974年の人口10万人あたり0.158人、出生1000人あたり0.086人から1997年の人口10万人あたり0.038人、出生1000人あたり0.039人とやはり著明に減少しています。胞状奇胎にかかった場合、我が国では尿検査や血液検査をしながら厳重に経過を追い、必要なら治療をしています。この胞状奇胎分娩後の管理(検査を続け経過をよくみること)を行うことが胞状奇胎からの絨毛がんの発生の予防に役立っており、胞状奇胎の減少もあって、絨毛がんの発生頻度の減少が得られていると考えられます。

2.症状

絨毛性疾患は、はじめは正常妊娠とかわらないので、早期発見は必ずしも容易ではありません。不正性器出血(生理以外の出血)を認める場合、分娩や流産の後に子宮が大きくなってきた場合、妊娠したのに予想したような胎児の動きを感じない場合は、医師の診断を受けることが必要です。

3.診断

症状があれば、絨毛性疾患の有無を調べるための検査、例えば、内診や超音波検査、血液検査などを行います。中でも大切なのはβhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ鎖)の検査です。これは血液中のホルモンの値を測定する検査です。このホルモンは、正常妊娠の場合でもつくられますので、妊娠の診断にも用いますが、絨毛性疾患の場合は正常妊娠の場合よりもはるかに高値になります。妊娠していない時にこのホルモンが上昇している場合には絨毛性疾患の可能性があります。

4.絨毛性疾患の分類

日本産科婦人科学会では、下記のような絨毛性疾患の分類を用いています。

1) 胞状奇胎

肉眼的に絨毛が嚢胞(のうほう)化したものを胞状奇胎と呼びます。
すべての絨毛が嚢胞化していて、胎児の成分が認められないものを全胞状奇胎、嚢胞化が一部の絨毛のみに認められる、もしくは胎児の成分が認められるものを部分胞状奇胎と呼びます。いずれの場合も、奇胎が子宮の筋層内に浸潤しているか否かにより、侵入奇胎と非侵入奇胎とに分けられます。

2) 絨毛がん

絨毛細胞からなる悪性腫瘍を絨毛がんと呼びます。
妊娠と関連して発生したか否かにより、妊娠性絨毛がんと非妊娠性絨毛がんに分けられます。

3) 胎盤部絨毛性腫瘍

子宮内の胎盤が付着していた部位の細胞の増殖により発生する悪性腫瘍を指します。

4) 存続絨毛症

胞状奇胎後のβhCGの低下が順調ではないが、臨床的に病変の存在がはっきりしない場合や、臨床的に病変が存在し、侵入奇胎や絨毛がんが疑われるのに病理組織検査(顕微鏡による検査)によって確認できない場合などを指します。

5.病期(ステージ)

絨毛性疾患の病期分類には、下記の国際産婦人科連合の分類が用いられています。

I期

子宮にとどまっているもの。

II期

子宮を越えて広がるが、性器(卵巣、卵管、腟など)にとどまっているもの。

III期

性器病変の有無にかかわらず、肺に病変を認めるもの。

IV期

肺以外の臓器に転移を認めるもの。

6.絨毛性疾患の臨床的分類

外国特に米国では、病気の広がりや、病気の予後にかかわる因子を加味して、下記のような分類を用いています。

1)胞状奇胎

病変は、子宮内腔にのみ存在します。胞状奇胎のうち、侵入奇胎は以下の3.か4.のいずれかに分類します。

2)胎盤部妊娠性絨毛性腫瘍

子宮内の胎盤があった位置に生じ、病変は子宮筋層内に存在します。

3)非転移性妊娠性絨毛性疾患

奇胎治療後、流産後あるいは分娩後に残っていた絨毛組織が、子宮内で増殖して発生したもので、子宮外に広がっていないものを指します。

4)転移性妊娠性絨毛性疾患

奇胎治療後、流産後あるいは分娩後に残っていた絨毛組織が、子宮内で増殖して発生したもので、子宮以外の身体の他の臓器にすでに転移しているものを指します。転移性絨毛性疾患は予後のよい場合と悪い場合とに分けられます。

(1) 予後のよい転移性妊娠性絨毛性疾患

下記の4つの条件にすべてあてはまる場合です。

  • 最終の妊娠から4ヶ月以内。
  • 血中のβhCGの値が低い。
  • 肝臓、脳に転移を認めない。
  • 以前に化学療法を受けたことがない。

(2)予後の悪い転移性妊娠性絨毛性疾患

下記の5つの条件のいずれかにあてはまる場合です。

  • 最終の妊娠から4ヶ月を超えている。
  • 血中のβhCGの値が高い。
  • 肝臓または脳に転移を認める。
  • 以前に化学療法を受けていて、まだ腫瘍組織が残存している。
  • 正常分娩終了後に発症している。

5)再発妊娠性絨毛性疾患

絨毛性疾患の治療後、いったん治ったのに再び腫瘍が増殖してきた場合をいいます。子宮内に生じる場合と身体の他の部位に生じる場合があります。

7.治療

絨毛性疾患の治療は、病期の広がりぐあい、年齢、そして全身状態などによって決まります。主なものは、病巣(悪い部分)をとり除く外科療法と抗がん剤による化学療法の2種類です。他に高エネルギーX線を用いる放射線治療があり、これは身体の他の部位に転移した場合などに用います。

1)外科療法

絨毛組織を手術除去するには次のような方法があります。

(1)子宮内容掻爬(そうは)吸引除去術

子宮の入口を開き、小さな真空吸引器具で子宮内容をとり出す方法です。それから子宮の壁の内側をそっとひっかいて、子宮内に何も残存組織がないようにします。これは奇胎の場合の手術方法です。

(2)子宮の摘出手術

通常、卵巣は摘出せずに子宮だけを摘出します。

2)化学療法

化学療法は抗がん剤を内服したり筋肉や静脈に注射したりする方法です。これは全身療法で、薬剤が血流に入って全身をめぐり、子宮の内外のがんを標的とします。化学療法は手術の前後にも、また化学療法だけの単独治療方法としても用いられます。用いられる抗がん剤の種類は、疾患の種類により異なっています。

化学療法については、「薬物療法(化学療法)」もご参照ください。

3)放射線治療

放射線治療は、高エネルギーX線を用いがん細胞を殺します。体外から機械で照射する外照射と、放射線を出す物質(放射性同位元素)を薄いプラスチック管に入れ、それをがん細胞のある部位に挿入し照射する近接照射の2つの方法があります。放射線治療は、絨毛性疾患に対しては、転移部位、特に脳転移など化学療法が有効でない部位に外照射する場合がある程度で主な治療法ではありません。

放射線治療については、「放射線治療」もご参照ください。

8.絨毛性疾患の種類別治療

1)胞状奇胎の治療

(1)子宮内容掻爬吸引除去術

(2)子宮摘出手術

手術後、慎重に経過を観察し、定期的に血中のβhCGが正常値に下がるのを確認します。血中のβhCG値が上昇する場合、その下がり方が悪い場合には、腫瘍が広がっていないかを検査し、病気の広がりによって治療法を決めます。

2)胎盤部妊娠性絨毛性腫瘍

(1)子宮摘出手術

まれな疾患ですが、通常は子宮摘出手術を行います。

3)非転移性妊娠性絨毛性疾患

(1)化学療法

(2)子宮摘出手術

挙児希望(子供がほしいと思うこと)がなければ、子宮摘出手術を行います。第一選択の化学療法としては、MTX(メソトレキセート)単剤、あるいはAct-D(アクチノマイシンD)単剤などが用いられます。

4)予後のよい転移性妊娠性絨毛性疾患

(1)化学療法

(2)子宮摘出手術+化学療法

(3)化学療法+子宮摘出手術

化学療法、あるいは子宮摘出手術の後に化学療法を追加するかのいずれかになります。化学療法の後、腫瘍が残存している場合には、さらに子宮を摘出することになります。第一選択の化学療法としては、MTX(メソトレキセート)単剤、あるいはAct-D(アクチノマイシンD)単剤などが用いられます。

5)予後の悪い転移性妊娠性絨毛性疾患

(1)化学療法

(2)放射線治療

通常は化学療法を行います。第一選択の化学療法としては、5剤併用のEMA-CO療法[E(エトポシド)+M(メソトレキセート)+A(アクチノマイシンD)+C(サイクロホスファマイド)+O(オンコビン)]などが用いられます。放射線治療は脳などに転移のある場合に用いられます。

6)再発性妊娠性絨毛性疾患

(1)化学療法

一般に化学療法になります。前治療の種類により、単剤の化学療法や、多剤併用の化学療法などが用いられます。

7)存続絨毛症

上記の3)〜5)のいずれにあてはまるかを検討し、治療を行います。

9.治療後の妊娠

1)化学療法後の妊娠

化学療法は排卵を抑制するため、化学療法後は妊娠しにくい場合がありますが、絨毛性疾患の化学療法の場合、卵子自体に対する影響は少ないと考えられており、医師の許可があれば妊娠しても大丈夫です。絨毛がんの場合でも化学療法後に妊娠し、正常分娩に至った報告が多くなってきました。

2)胞状奇胎後の妊娠

胞状奇胎は、はじめて妊娠した場合や、ひとり分娩した後の場合にしばしばみられます。奇胎が反復しておきることはほとんどありません。通常は、治療後6ヶ月〜1年で医師の許可が出ますので、許可が得られたら妊娠を計画して下さい。妊娠する前に、担当医によく相談することが必要です。

10.治療効果:寛解率

絨毛性疾患の、治癒の判定はβhCGの測定値によります。βhCGの測定値が長期間正常となった場合を寛解と呼び、治療効果の判定は、寛解率で示されます。寛解率は侵入奇胎でほぼ100%、絨毛がんで90%以上です。若年女性では治療後の妊娠分娩が問題ですが、侵入奇胎そして絨毛がんの治療後の妊娠分娩も数多く報告されています。

アンケートにご協力ください
よりよい情報提供を行うために、アンケートへの協力をお願いいたします。
簡単な7問ほどのアンケートですので、ぜひ、ご協力ください。
アンケートページへ

フッターの始まり