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肝細胞がん(かんさいぼうがん)

更新日:2015年03月02日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年03月02日 「1.肝細胞がんとは」「2.肝がんと肝炎ウイルス」「3.症状」を更新しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.肝細胞がんとは

肝臓は腹部の右上にあり、成人で800~1,200gと体内最大の臓器です(図1)。その主な役割は、栄養分などを取り込んで体に必要な成分に変えたり、体内でつくられたり体外から摂取された有害物質の解毒・排出をすることです。

肝臓のがんは、肝臓にできた「原発性肝がん」と別の臓器から転移した「転移性肝がん」に大別されます。
原発性肝がんには、肝臓の細胞ががんになる「肝細胞がん」と、胆汁を十二指腸に流す管(くだ:胆管)の細胞ががんになる「胆管細胞がん」、他には、小児の肝がんである肝細胞芽腫(かんさいぼうがしゅ)、成人での肝細胞・胆管細胞混合がん、未分化がん、胆管嚢胞腺(たんかんのうほうせん)がん、神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう)などのごくまれながんがあります。胆管細胞がんは肝内胆管がんとも呼ばれます。胆管細胞がんについては「胆管がん」をご参照ください。日本では原発性肝がんのうち肝細胞がんが90%と大部分を占め、肝がんというとほとんどが肝細胞がんを指しますので、ここでは「肝がん」と記して「肝細胞がん」と同義とします。
図1 肝臓と周辺の臓器の構造
肝臓・胆のう・膵臓の形と名称
【転移性肝がんについて】
肝臓にみられるがんのうち、別の臓器に発生したがんの細胞が、リンパや血液の流れに乗って肝臓に移動し、そこで大きくなったものを「転移性肝がん」と呼びます。本ページでは「転移性肝がん」については扱いませんが、ここで、簡単に付記します。

原因となるがんの診断がなされていることもありますが、原因となるがんがわからない状態(原発不明がんといいます)で、「転移性肝がん」と診断されることもまれにあります。原因となるがんの診断と同時に発見されることも、治療後の経過で後から発見されることもあります。

転移の原因となるがんの種類は、胃がん、大腸がん、膵臓(すいぞう)がん、胆のうがんなどの消化器系のがんや、乳がん、肺がん、卵巣がん、腎細胞がん、頭頸部(けいぶ)のがんなどがあげられます。

検査や治療は、原因となるがんの治療に準じて進められます。がんの広がりや性質を調べるための画像検査(X線超音波〔エコー〕CTMRIなど)に加えて、血液検査による腫瘍マーカー検査や、がんの組織の一部を採取し、どの臓器や組織から転移したがんであるかを調べるための病理検査・病理診断などを行うこともあります。

大腸がんからの肝転移は、手術治療で取り除くことで良好な治療成績を得られる可能性が比較的高いので、転移が肝臓に限られている場合は、まず切除が可能かどうか検討されます。しかしその他の多くのがんの肝転移では、肝臓に多数の病巣があったり、別の部位への転移が同時に認められるため、手術ではなく、薬物療法(抗がん剤治療)が主流となります。原因となるがんの種類や病理診断の結果、これまでの治療の内容や効果によって、使用される抗がん剤の種類、副作用の起こり方が異なります。原因となるがんの治療後などで、肝臓以外にがんが広がっていないと考えられる場合には、肝臓の動脈に抗がん剤をカテーテルという細い管を通して注入する動注療法(どうちゅうりょうほう)を行うことがあります。がんの種類、状態や肝臓の状態、体調などを踏まえた上で、治療や療養の方針が検討されます。治療の選択肢が一つでないこともしばしばありますので、その都度、主治医とよく相談して方針を決めていくことが大切です。
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2.肝がんと肝炎ウイルス

1)肝がんの主要な原因は、肝炎ウイルスの持続感染

肝がんは、肺がんや子宮頸がんと並び、主要な発生要因が明らかになっているがんの1つです。最も肝心なのは、肝炎ウイルスの持続感染です。ウイルスの持続感染によって、肝細胞で長期にわたって炎症と再生が繰り返されるうちに、遺伝子の突然変異が積み重なり、肝がんへの進展に重要な役割を果たしていると考えられています。肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなどさまざまな種類が存在しています。肝がんと関係があるのは主にB、Cの2種類です。

日本では、肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染、約15%がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因すると試算されています。このため、日本の肝がんの予防としては、肝炎ウイルスの感染予防と、持続感染者に対する肝がん発生予防が柱となります。

B型、C型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎では約10%、C型肝炎では約70%の割合で慢性肝炎に至ることが明らかになっています。慢性肝炎になると、炎症が続くことで肝臓の繊維化が進み、肝硬変や肝がんになりやすくなります。したがって、B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、肝硬変の状態を、「肝がんの高危険群(ハイリスクグループ)」といいます。さらに、高危険群の中でも、肝臓の線維化の進行度合いや高齢であること、高ウイルス量や飲酒歴などの因子によって、発がんリスクがより高くなるとされています。
高危険群の人は、定期的に肝機能のチェックを受け、慢性肝炎や肝硬変の治療を受けることで、肝がんに至るリスクが減少します。また、定期的に受診をすることで、たとえ肝がんが発症しても早期に発見して治療することができます。また、アルコールのとり過ぎは発がんの可能性を高めますので、注意が必要です。なお、B型やC型肝炎ウイルスに感染している人は、インターフェロン(注射薬)や核酸アナログ製剤などの経口薬による抗ウイルス療法やウルソデオキシコール酸・グリチルリチン製剤などの肝庇護(ひご)療法によって肝がんを合併する可能性を減少させることが明らかになってきています。
肝炎ウイルスに感染すると多くは「急性肝炎」という病気になります。その症状は、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、尿の濃染(尿の色が紅茶のように濃くなる)、さらには黄疸(おうだん)などです。しかし、自覚的には何の兆候もなく、自然に治癒したり、知らぬ間に慢性肝炎に移行することもあります。また、肝炎ウイルスが体に侵入しても、「肝炎」という病気にならず、健康な人体と共存している場合もあります。このように、体内に肝炎ウイルスを持っていても健康な人のことを肝炎の「無症候性キャリア」といいます。

その他に、ウイルス感染以外の肝がんのリスク要因として、大量飲酒と喫煙、さらに食事に混入するカビ毒のアフラトキシンが確実とされています。また、最近の傾向として、アルコール摂取歴がほとんどない脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎)が原因で肝硬変、肝がん発がんに至るケースが増えてきています。糖尿病などの生活習慣病との関連も示唆されており、健康診断などで肝機能異常を指摘された場合には、たとえ肝炎ウイルス陰性であっても、一度肝臓専門医を受診することが推奨されます。最近の研究において、糖尿病患者でリスクが高いことや、コーヒー飲用者でリスクが低いことを示す報告があり、その確認が今後の課題となっています。
【肝炎ウイルスの感染経路について】
肝炎ウイルスの感染経路としては次のようなものがあります。

(1)妊娠・分娩による感染

妊娠・分娩(ぶんべん)を介して「肝炎ウイルスを持った母親」から子どもへウイルスが感染する経路があり、これを垂直感染といいます。この垂直感染は、主にB型肝炎に多く認められ、同一家族・家系に何人もの肝炎ウイルス感染者が存在することがあり、これを肝炎の「家族集積」といいます。現在では、妊娠中の母親は血液検査で肝炎ウイルスの有無を必ず調べます。母親がB型ウイルスのキャリアと判明すると、垂直感染を防止するために、新生児には直ちにワクチン治療が行われ、B型肝炎の感染(ないし伝播)を防止する措置がとられています。

(2)血液製剤の注射による感染

肝炎ウイルスを含んだ血液の輸血を受けると、輸血を受けた人の体に肝炎ウイルスが侵入します。輸血が必要な場合は、病気・けがなどで体の抵抗力が低下していることが多く、肝炎が高率に発症します。「輸血」にはいろいろな製剤がありますが、血液中の赤血球だけでなく、上澄み部分(血漿(けっしょう))などの「ある成分」だけを注射しても、肝炎ウイルスに感染する可能性があります。現在は、輸血に用いる血液はすべて厳重な品質管理が行われており、特にB型、C型についてはウイルスの有無を検査して、ウイルスの存在する血液は輸血には使わないという体制が確立しています。そのため、現在では輸血による肝炎は激減しています。しかし、B型にもC型にも検査で見つけられない場合がわずかながらあることも事実で、輸血による肝炎が完全にゼロになったわけではありません。輸血は生命を救う唯一の治療である場合も多く、輸血をしなければならないこともありますが、「どうしても必要な輸血」以外は慎むべきですし、この考え方は広く医師に定着してきています。

(3)性行為による感染

性行為もウイルス感染の経路となる可能性があります。しかし、B型肝炎やC型肝炎の夫婦間感染率は低く、通常の性行為では感染する危険性は低いことが報告されています。ただし、B型肝炎でウイルス量が多い場合には感染力が高いとされています。B型肝炎の場合にはワクチン接種でHBs抗体を獲得すれば感染を受けるリスクがほとんどなくなりますので予防が可能です。是非専門医に相談することをお勧めします。

(4)針刺し行為による感染

これは、医師・看護師などの医療従事者が、採血時や検査・処置・手術中などに肝炎ウイルスを持つ人の血液が付いた針を誤って自分の皮膚に刺すなどの針刺し事故や、集団予防接種での針の再利用、入れ墨・鍼灸(しんきゅう)治療などに使った針の使い回し、覚せい剤注射の回し打ちなどで起こる感染のことです。事実、入れ墨を入れた人や、覚せい剤常習者では肝炎ウイルス感染が高率に認められています。しかし、集団予防接種での感染の問題は、現在では使い捨て注射針を用いていますので、心配ありません。
以上、肝炎ウイルスの感染ルートについて、現在わかっているものについて解説しました。しかし、(1)~(4)の感染ルートのどれにも思い当たるものがないという場合も多く、「このルートだ」と断定することは必ずしも容易ではありません。(1)~(4)以外の未知の感染ルートがあるかもしれません。したがって、肝炎ウイルスの感染は個人の意識・知識によってある程度予防できますが、防止できない部分があることも事実です。肝炎ウイルスに感染してしまったら、即、肝がんになり、生命が脅かされるわけではありませんが、肝がんを発症するリスクが高いと考えて対処すべきです。
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2)肝炎ウイルス感染を早期に知り、適切に対応することが重要です

肝炎ウイルスの検査は、地域の保健所やかかりつけの医療機関などで受けることが可能で  す。B型肝炎、C型肝炎に感染をしても自覚症状がないまま経過することが多くあります。特に症状がない場合でも、一生に一度は肝炎ウイルス検査を受けましょう。「日本人のためのがん予防法」でも、「肝炎ウイルス感染検査と適切な措置」が推奨されています。

なお、自治体によっては無料で肝炎ウイルス検査を行っています。無料検査の対象となる条件は、各自治体にお問い合わせください。

一般に、肝炎ウイルスに感染していることが判明する状況として多いのは、a. 体に変調を来し、病院を受診してウイルス性肝炎と診断される、b. 職場や居住地域の健康診断で肝機能の異常が発見され、精密検査で肝炎ウイルス検査を受けて発見されるc. 献血をした際に血液が輸血に適するか否かの検査で後日連絡を受ける、d. 他の病気で医師を受診して手術や検査を受ける必要が生じた際の血液検査で判明するなどがあります。また、家族の一員が肝炎ウイルスに感染していることが判明すると、医師は「家族集積」性を考慮して家族の他のメンバーの血液検査も勧めます。

B型肝炎、C型肝炎などのウイルスに感染していることが判明したら、次に、肝炎を発症していない「無症候性キャリア」であるのか、「肝炎」という病気になっているのかを調べる血液検査が必要です。どちらの場合でも、程度の差こそあれ、非感染者に比べて肝がんを発症するリスクが高いことが知られているからです。

3)肝炎ウイルス感染がわかったら

B型、C型肝炎ウイルスに感染している人は、自覚症状が出現してからではなく、日ごろから定期検査を受けることが必要です。定期検査の間隔は、「肝炎ウイルスに感染している」だけで他に異常がなければ3~6カ月に1回、血液検査や超音波検査などを行います。肝炎ウイルスの感染に加えて肝機能に異常があるときは、血液検査を1~3カ月ごとに行い、必要に応じてCT・MRI検査などを行います。腫瘍マーカーが上昇している場合には、さらに頻繁に検査することがあります。

また、これらの肝炎ウイルス感染者に、慢性肝炎や肝硬変、肝がんとなるリスクを減らすための治療法について、研究が進んでいます。肝炎ウイルスを体から駆除する治療法として、C型肝炎に対しては、ペグインターフェロンという作用時間の長いインターフェロンとリバビリンというインターフェロンの効果を高める内服薬の併用療法が中心でしたが、その後、C型肝炎ウイルスの増殖に関わるタンパクを阻害する内服薬も続々登場し、最近ではインターフェロンを使わず内服薬だけの組み合わせで治療することもある程度可能になりました。これらの治療によってC型肝炎ウイルスを駆除することにより、肝がんの発症を抑える長期的な効果が期待されています。またB型肝炎に関しては、内服の抗ウイルス薬(エンテカビル、テノホビルなどの核酸アナログ製剤)やインターフェロンなどによる治療が、たとえB型肝炎ウイルスを駆除できなくても肝硬変・肝がんへの進展を抑制し得るという長期的な効果が期待されることから推奨されています。

4)肝炎ウイルスの感染予防

肝炎ウイルスが通常の生活で他の人に感染することはありませんので、過度に気にする必要はありませんが、いくつか知っておくとよいことがあります。

●血液が付きやすいカミソリや歯ブラシなどは共有しないようにします。
●食器やタオルを別にする必要はありません。
●B型肝炎ウイルスの感染はワクチンで予防できます。
●ウイルス肝炎には、抗ウイルス療法による治療を行うことがあります。
わからないことがあったら、担当医に相談することをお勧めします。

3.症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどありません。肝炎ウイルス検査を受けなかったために自分が肝炎にかかっていることを知らず、医療機関での定期的な検診や精密検査、他の病気の検査のときにたまたま肝がんが発見されることも少なからずあります。

肝がん特有の症状は少ないのですが、進行した場合に腹部のしこりや圧迫感、痛み、おなかが張った感じなどを訴える人もいます。がんが破裂すると腹部の激痛や血圧低下を起こします。

他には肝硬変に伴う症状として、食欲不振、だるさ、微熱、おなかが張った感じ、便秘・下痢などの便通異常、黄疸(おうだん:白目や皮膚が黄色くなる)、尿の濃染、貧血、こむら返り、浮腫(ふしゅ:むくみ)、皮下出血などがあります。肝硬変が進むと腹水(おなかにたまった体液)が出現したり、アンモニアが代謝されずに貯留することによる肝性脳症という意識障害を起こすこともあります。また、肝硬変になると肝臓に血液を運ぶ門脈の流れが悪くなり、そのかわりに食道や胃などの静脈が腫(は)れてこぶのようになります(食道・胃静脈瘤〔じょうみゃくりゅう〕)。これらのこぶが破裂して(静脈瘤破裂)大量の吐血や下血が起こることもあります。静脈瘤破裂は時に致命的となりかねないため、肝硬変と診断された場合には、定期的な内視鏡検査を受けることも大切です。

4.疫学・統計

年齢別にみた肝臓がんの罹患(りかん)率は、男性では45歳、女性では55歳から増加し始め、70歳代に横ばいとなります。年齢別にみた死亡率も同様な傾向にあります。

罹患率、死亡率は男性の方が高く、女性の約2~3倍です。

肝臓がん罹患率と死亡率の年次推移を生まれた年代別にみると、男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっています。これは、1935年前後に生まれた人が、日本における肝臓がんの主な要因であるC型肝炎ウイルス(HCV)の抗体陽性者の割合が高いことと関連しています。

罹患率の国際比較では、日本を含む東アジア地域が高く、アメリカの東アジア系移民の中では、日系移民が最も低くなっています。

日本国内の死亡率の年次推移は、男女とも最近減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向にあります。死亡率の国内の地域比較では、東日本より西日本の方が高い傾向にあります。

5.一般の方向け参考資料

【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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更新日:2012年10月25日 [ 更新履歴 ]
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2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
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2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

がんの疑い

  「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく受診しましょう。
   

受診

  受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
   

検査・診断

  検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。
   

治療法の選択

  がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。
   

治療

  治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。
   

経過観察

  治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

2.受診と相談の勧め

がんという病気は、患者さんごとに症状のあらわれ方が異なります。また、症状がなく検診でがんの疑いがあると言われることもあります。何か気にかかる症状があるときや、詳しい検査が必要と言われたときには、医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご自身で判断したり、何か見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、問題がないことを確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

がん診療連携拠点病院がん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしていますので、お気軽に訪ねてみてください。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも相談することができますので、わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

詳しくは、「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」をご覧ください。

お近くのがん相談支援センターは「がん相談支援センターを探す」から検索することができます。

3.がんと言われたとき

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。

病気がどのくらい進んでいるのか、果たして治るのか、治療費はどれくらいかかるのか、家族に負担や心配をかけたくない…、人それぞれ悩みは尽きません。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。しかし、あまり思い詰めてしまっては、心にも体にもよくありません。

この一大事を乗りきるためには、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していく必要があります。そこで、まずは次の2つを心がけてみませんか。

1)情報を集めましょう

まず、自分の病気についてよく知ることです。担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。また、あなたが集めた情報が正しいかどうかを、あなたの担当医に確認することも大切です。

「知識は力なり」。正しい知識は、あなたの考えをまとめるときに役に立ちます。

2)病気に対する心構えを決めましょう

大きな病気になると、積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念を持って臨む人、なるようにしかならないと受け止める人などいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためには、あなたが自分の病気のことをよく知っていることが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医からよく説明を受け、いつでも率直に話し合い、その都度十分に納得した上で、病気に向き合うことに尽きるでしょう。

情報不足は、不安と悲観的な想像を生み出すばかりです。あなたが自分の病状について理解した上で治療に取り組みたいと考えていることを、担当医や家族に伝えるようにしましょう。

お互いが率直に話し合うことが、お互いの信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。
更新日:2015年03月02日 [ 更新履歴 ]
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2015年03月02日 「1.検査」「2.病期(ステージ)・障害度分類」を更新しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
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2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.検査

肝がんの検査としては、超音波検査やCT、MRIなどの画像検査と腫瘍マーカー検査を組み合わせて行います。必要があれば針生検などの検査を追加して行います。

1)超音波(エコー)検査

体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。患者さんの負担が少なく簡便に行える検査です。がんの大きさや個数、がんと血管の位置、がんの広がり、肝臓の形や状態、腹水の有無などを調べます。ペルフルブタン(ソナゾイド)という造影剤を使用することもあります。この造影剤は炭酸ガスからできているため、後述するCTやMRIの造影剤と異なり、アレルギーや腎障害などの副作用はまずありません。患者さんの状態や部位によっては見えにくい場合もあります。血管から造影剤を注射して検査を行う(造影超音波検査)ことで、より詳しく腫瘍の性質を調べることができます。

2)CT、MRI検査

図2 CT検査の様子
図2 CT検査の様子
CTは、X線を使って体の内部を描き出し、治療前にがんの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べます(図2)。病変を詳しくみるため、通常ヨード造影剤を使いながら撮影します。造影剤を入れてから何回かタイミングをずらして撮影することで、がんの性質や状態を調べます。そのためヘリカルCT、MDCTなど高速撮影のできる装置が使われます。MRIは磁気を使った検査です。必要に応じてCTと組み合わせて、あるいは単独で行われます。MRIでもガドリニウムやガドキセト酸ナトリウム(EOB・プリモビスト)といった造影剤を使用することがあります。CTやMRIで造影剤を使用する場合、腎臓に負担がかかる恐れや、アレルギーが起こる可能性がありますので、腎臓が悪いと言われたことがある人、以前に造影剤のアレルギーを起こした経験のある人は、医師に申し出てください。血液検査で腎機能が低下していると判断される場合には、通常造影剤を使用することはできません。また、CT造影剤と併用できない糖尿病薬がありますので、内服薬の確認も必ず医師にしてもらってください。

3)腫瘍マーカー

腫瘍マーカーは血液の検査で、体のどこかにがんが潜んでいるかどうかの目安になります。肝がんでは、AFP(アルファ・フェトプロテイン)やPIVKA-II(ピブカ・ツー)、AFP-L3分画(AFPレクチン分画)と呼ばれるマーカーが保険適用となっています。小肝細胞がん(ここではおおむね5㎝以下程度のものを指す)の診断においては、2種類以上の腫瘍マーカーを測定することが推奨されています。ただし、肝がんでもこれらのマーカーがいずれも陰性のことがありますし、がんのない肝炎・肝硬変、あるいは他のがんでも陽性になることもあるので、画像診断も同時に行うことが一般的です。

4)血管造影検査

血管造影検査とは、足の付け根の動脈から細い管(カテーテル)を差し込んで、肝臓や腸管の動脈に造影剤を入れ、血管や病巣の状態を調べる検査を行うことがあります。最近はCT,MRI画像の進歩により、血管造影を検査として行うことは少なく、後述する治療(塞栓療法、動注療法)として行うことが一般的です。

5)針生検

肝がんは多くの場合、画像診断や血液検査の結果から診断がつけられます。しかし、中には典型的な結果が得られず、診断がつけられないことがあります。このような場合には、超音波検査で肝臓内部をみながら細い針を腫瘍部分に刺し、少量の腫瘍組織を採取する針生検という検査を行うことがあります。ただし、出血を起こしたり、がんを広げてしまう危険性がまったくないわけではありませんので、必要性をよく検討してから行うことになります。

2.病期(ステージ)・障害度分類

1)病期(ステージ)分類

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてStage(ステージ)ともいいます。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることが多いかもしれません。病期には、ローマ数字が使われ、肝がんでは、I期、II期、III期、IV期(IVA、IVB)に分類されています。

肝がんの病期は一般に、がんの大きさ、個数、がん細胞が肝臓内にとどまっているか、体の他の部分まで広がっているかによって分類されます(表1)。
表1 病期(ステージ)分類
表1 病期(ステージ)分類
日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)より一部改変

2)肝障害度分類、Child-Pugh分類

病期とは異なりますが、治療法の選択にあたっては肝臓がどのくらい障害されているかも評価します。肝障害(かんしょうがい)度分類は、肝機能の状態によって3段階に分けられます(表2)。他にChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類が用いられることもあります(表3)。どちらもAからCの順序で、肝障害の程度が強いことを表します。肝障害度分類では、下の表のそれぞれの項目別に重症度を求め、そのうち2項目以上が当てはまる肝障害度に分類されます。また、2項目以上に該当した肝障害度が2カ所以上にある場合は、高い方の肝障害度に分類されます。例えば、肝障害度Bの項目が3項目該当していても、Cが2項目あれば肝障害度Cになります。
表2 肝障害度分類
肝障害度 A B C
項目 腹水 ない 治療効果あり 治療効果少ない
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 3.0~3.5 3.0未満
ICGR15(%) 15未満 15~40 40超
プロトロンビン活性値(%) 80超 50~80 50未満
copyright
日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)より一部改変

Child-Pugh分類では、表3の各項目のポイントを加算し、その合計点により分類されます。

表3 Child-Pugh分類
ポイント(Child-Pugh分類) 1点 2点 3点
項目 脳症 ない 軽度 ときどき昏睡
腹水 ない 少量 中等量
血清ビリルビン値(mg/dL) 2.0未満 2.0~3.0 3.0超
血清アルブミン値(g/dL) 3.5超 2.8~3.5 2.8未満
プロトロンビン活性値(%) 70超 40~70 40未満

Child-Pugh分類 A 5~6点
B 7~9点
C 10~15点
copyright
日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)より一部改変
【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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更新日:2016年02月10日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2016年02月10日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2015年03月02日 「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」を反映しました。
2014年10月03日 「2.治療成績」の5年相対生存率データを更新しました。
2012年11月02日 「2.治療成績」を追加しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.肝障害度と治療

肝がんの治療は、外科治療、焼灼療法(穿刺局所療法の代表的なもの)、肝動脈塞栓(そくせん)療法が中心になります。肝がんの患者さんの多くは、がんと慢性肝疾患という2つの病気を抱えています。そのため、治療はがんの病期(ステージ)だけではなく、肝機能の状態なども加味した上で選択する必要があります。図3に、肝がんの状態・肝障害度と治療選択の関係を大まかに表しました。担当医と治療方針について話し合う参考にしてください。その他、日本肝臓学会の「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」もご参照ください。
図2 肝細胞がんの状態・肝障害度と治療
図2 肝細胞がんの状態・肝障害度と治療
日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)より作成

2.治療成績

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。生存率は、通常がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによって、こうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。

表4に、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が公表している院内がん登録から算出された肝細胞がんの5年相対生存率のデータを示します。このデータは、およそ10年前のがんの診断、治療に基づくものです。したがって、診断や治療の進歩により、現在は下記の数字より治療成績は向上していると考えられます。

データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【肝細胞がんの生存率について、さらに詳しく】
このデータは、2005年から2007年の間に、肝細胞がんの診断や治療を受けた患者さんが対象となっています。治療については、外科治療のみではなく、薬物療法、放射線治療、その他の何らかの治療を受けた患者さんが対象となっています。そのため、各施設で公表している外科治療のみの患者さんを対象とした生存率と異なる場合があります。

病期については「肝細胞がん 検査・診断-2.病期(ステージ)」をご参照ください。
表4 肝細胞がんの病期別生存率
病期 症例数(件) 5年相対生存率(%)
I 1,217 57.2
II 965 38.8
III 888 15.7
IV 422 3.6
全症例 3,601 34.9
外部サイトへのリンク全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2016年2月集計)による

なお、こちらの表の臨床病期はUICC(Union Internationale Contrele Cancer:国際対がん連合)TNM分類を用いています。詳細は「臨床病期:全がん協加盟施設の生存率協同調査」をご参照ください。
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3.自分に合った治療法を考える

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、患者さん自身が満足できる方法が一番です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。あなたの体を一番よく知っているのは担当医です。わからないことは、何でも質問してみましょう。診断を聞くときには、先に述べた肝障害度と病期(ステージ)を確認しましょう。治療法は、主にこの2つの要素で異なってくるからです。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。最初にかかった担当医に何でも相談でき、治療方針に納得できれば言うことはありません。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。そのときは、担当医に話してみましょう。多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料をつくってくれるはずです。
【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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更新日:2015年03月02日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年03月02日 「1.手術(外科治療)」「2.穿刺(せんし)局所療法」「3.肝動脈塞栓(そく せん)療法、肝動注化学療法」「5.化学療法(抗がん剤治療)」を更新しました。
2013年03月26日 内容を更新しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。「3.肝動脈塞栓術、肝動注化学療法」の図を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.手術治療(外科療法)

1)肝切除

がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療です。肝切除をするかどうかは、がんの位置や大きさ、数、広がり、さらに肝機能の条件などによって決められます。一般に、がんが肝臓にとどまっており、3個以下の場合、がんの位置や肝臓の機能を考慮した上で、肝切除が選択されます。腫瘍の大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような巨大なものであっても、切除の適応となり得ます。黄疸(おうだん)や腹水を認めるなど、肝機能が十分でない患者さんは、肝切除後に肝臓が機能しなくなる肝不全を起こす危険性が高く、通常は手術以外の治療が選択されます。一方、黄疸、腹水ともにない場合には、上記肝障害度、中でもICGR15分値(肝臓で代謝される色素を静脈内に注射し、その色素の排出(血中濃度の変化)をみる検査です)を基に、肝臓全体の何%まで切除してもよいか(肝切除許容量)を判定し、手術可能かが判断されます。

肝臓は、図3に示すように、肝臓に栄養を供給する血管が左右に二分岐することから、それぞれ左葉、右葉とに大きく分けられます(図4)。また肝臓の裏側(背中側)に位置する部分を尾状葉と呼んでいます。血管の枝分かれに従って、左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に、さらに図のごとく番号のついた合計8つの区域に分けられます。人の肝臓は見た目で分葉はしていませんが、超音波、CTなどの画像でこれらの区域を判断し、腫瘍の位置、肝障害度に応じて、切除する範囲が決定されます。
図3肝臓の解剖
図3肝臓の解剖
一部の肝切除は腹腔鏡手術が可能ですが、適応は限られており、多くは開腹での手術となります。術後1~2週間前後くらいで退院可能となるのが一般的です。開腹手術の場合、おなかの創(きず)は比較的大きくなり、退院後もしばらく痛み止めの内服薬を必要とすることがありますが、通常は1カ月程度で軽減し、社会復帰も可能となります。

2)肝移植

肝臓をすべて摘出して、ドナー(臓器提供者)からの肝臓を移植する治療法です。「肝細胞がん 治療の選択 1.肝障害度と治療 図2」にある通り、肝切除が適応にならないほど肝機能が低下した肝硬変(肝障害度C)の場合に選択肢となります。肝がんにおける適応は、転移がない場合に限られます。
【肝移植について、さらに詳しく】
肝がんに対する肝移植は、a.がんが1つなら5cm以下、またはb.3cm以下で3個以内、という基準(ミラノ基準)を満たす場合に考慮されます。日本では、脳死肝移植は法的には認められていますが、提供者の不足などの問題によって、実際にはほとんど行われていません。その代わり、主に近親者から肝臓の一部を提供してもらい、肝臓を移植する生体肝移植が大学病院を中心に行われています。肝移植の年齢制限は65歳以下とすることが多く、肝機能の面では肝硬変のために肝切除などの局所治療が困難な場合に、治療法のオプションとして考えられます。肝がんと肝硬変に対する最も根治的な治療となりますが、健常人から肝臓の一部の提供が必要となる点、肝切除と比べると、手術直後の合併症(拒絶反応、感染症など)のリスクが高い点、術後は免疫抑制剤の内服を原則一生継続する必要がある点、また、C型肝炎は術後も移植した肝に通常感染する点、などの課題もあります。したがって、適応については主治医と相談しつつ、慎重に決める必要があります。
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【手術に伴う合併症と対策について、さらに詳しく】
手術の場合、手術直後には、酸素マスクや手術の場所から出る血液や体液などを排出するドレーンという管、尿をためる尿道バルーンカテーテルという管が体につけられています。痛みや手術の創(きず)の状態によって、体の動きが制限されることがありますが、体の状態が改善するに従って、徐々に管が外されていきます。局所療法や肝動脈塞栓療法では治療後、数時間から半日程度の安静が必要です。
手術に伴う合併症には、出血、切除面から胆汁が漏れる胆汁漏(たんじゅうろう)、肝不全などがありますが、近年は手術方法の進歩によって出血量の少ない安全な手術が可能になっています。最も頻度の高いものは胆汁漏で、おおむね10%程度とされていますが、通常は自然に漏れが止まって治癒することがほとんどです。術後の肝不全も全国平均で約1%、手術による死亡率は全国平均で1~2%程度で、日本の手術の技術は世界でもトップレベルにあります。

(1)体の痛み

体の痛みには、手術創そのものだけではなく、おなかを切開したことによる皮膚の痛みや、手術のときに肋骨(ろっこつ)を持ち上げるため、筋肉が引っ張られたことで、肋骨の周りや肩、背中、腹部などの痛みやしびれなどがあります。通常、痛みは数カ月で治まってきます。

(2)対策

創の痛みは我慢しないで担当医や看護師に伝えましょう。痛みの度合いや体の回復状況に応じて、痛みを和らげる処置が行われます。骨や筋肉は動作をすると痛むので、急に動くことは避け、手のひらで痛む部分をおおってゆっくりと動くように心がけましょう。「よいしょ、こらしょ」と、自分自身に声をかけながらするとよいかもしれません。咳(せき)をするときも、傷口を手でそっと押さえると、傷口に響かなくてすみます。術後約1カ月は、ゆっくり過ごします。体に負担のかかることは避け、周りの人の手を借り、徐々に体を慣らしていきます。担当医と相談し、体が慣れてきたら積極的に体を動かすようにしましょう。
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2.穿刺〔せんし〕局所療法

体の外から針を刺し、がんに対して局所的に治療を行う療法をひとまとめにして経皮的局所療法と呼びます。穿刺療法ともいわれ、手術に比べて体への負担の少ないことが特徴です。この治療は一般に、がんの大きさが3cmより小さく、3個以下が対象とされています。がんの一部が残ってしまう危険もありますが、比較的手軽に行うことができ、副作用が少なく、短期間で社会復帰できるという長所があります。超音波検査や造影超音波検査などにより、がんの状態を観察しながら行います。

1)経皮的エタノール注入療法(PEIT)

無水エタノール(純アルコール)を肝がんの部分に注射して、アルコールの化学作用によってがんを死滅させる治療法です。エタノール注入時には痛みがあります。通常は腹部の皮膚に局所麻酔が用いられます。術後に発熱、腹痛、肝機能障害などの合併症が起こることもあります。

2)経皮的マイクロ波凝固(ぎょうこ)療法(PMCT)

体の外から特殊な針をがんに直接刺し、マイクロ波という高周波の電磁波をあてることで、がんを熱で凝固させる治療法です。

3)ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)

体の外から特殊な針をがんに直接刺し、通電してその針の先端部分に高熱を発生させることで、局所のがんを焼いて死滅させる治療法です。焼灼時間は10~20分程度で、腹部の皮膚の局所麻酔に加えて、焼灼で生じる痛みに対して鎮痛剤投与や軽い静脈麻酔を行います。発熱、腹痛、出血、腸管損傷、肝機能障害などの合併症が起こることもあります。

実際、ラジオ波焼灼療法は、エタノール注入療法や経皮的マイクロ波凝固療法に比べて、少ない治療回数で優れた治療効果が得られることから、最近ではラジオ波焼灼療法が主流となっています。
【局所療法に伴う主な合併症への対策について、さらに詳しく】
局所療法は、体への負担は少ないのですが、ラジオ波焼灼療法では、針を刺した場所に痛みややけどが起こることがあります。経皮的エタノール注入療法では、アルコールを注入するために、アルコールに弱い体質の人は、酔う感覚になることがあります。こうした症状のほとんどは一時的で、少しずつ回復していきます。
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3.肝動脈塞栓(そくせん)療法、肝動注化学療法

肝動脈塞栓療法(TAE)は、がんに栄養を運んでいる血管を人工的にふさいで、がんを“兵糧攻め”にする治療です。通常は、血管造影検査に引き続いて行われます。血管造影に用いたカテーテルの先端を肝動脈まで進め、塞栓物質(多孔性ゼラチン粒、球状塞栓物質(ビーズ)、ポリビニルアルコール(PVA)、2014年初旬から血管塞栓用ビーズも使用可能)を注入し、肝動脈を詰まらせます(図4)。
近年では、抗がん剤と肝がんに取り込まれやすい造影剤を混ぜてカテーテルを通じて投与し、その後に塞栓物質を注入する「肝動脈化学塞栓療法」(TACE)が施行されるようになってきています。TACE/TAEは、がんの個数に関係なく施行でき、他の治療と併用して行われることもあります。適応の幅が広いので、最近はたくさんの患者さんに対して行われています。
肝動注化学療法(TAI)は、血管造影に用いたカテーテルから抗がん剤のみを注入します。
治療経過やがんの状態によって治療法を使い分けます。
図4 肝動脈塞栓療法
図4 肝動脈塞栓療法
【肝動脈塞栓療法に伴う主な副作用と対策について、さらに詳しく】
発熱、吐き気、腹痛、食欲不振、肝機能障害、胸痛などの副作用が起こることがあります。副作用の程度は、腫瘍の大きさ、広がり、塞栓した程度、肝機能によりますので、予想される副作用について、あらかじめ担当医から十分な説明を聞いておきましょう。
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4.放射線治療

放射線治療は、骨に転移したときなどの疼痛(とうつう)緩和や、脳への転移に対する治療、血管(門脈、静脈)に広がったがんに対する治療などを目的に行われることがあります。肝臓に放射線をあてると正常な肝細胞に悪影響を与えるので、肝がん自体の治療が行われる場合には、細心の注意が払われます。最近は、陽子線、重粒子線など、放射線をあてる範囲を絞り込める放射線治療が肝がんの治療に有効と考えられています。

5.化学療法(抗がん剤治療)

肝がんの抗がん剤治療には、前述した「肝動注化学療法」と「全身化学療法」があります。抗がん剤治療は、局所的な治療で効果が期待できない場合などに行われます。肝がんへの適応が認可されている抗がん剤は複数ありますが、これらの薬剤のうち、最近、経口薬であるソラフェニブ(ネクサバール)が延命効果を示し、標準治療に位置付けられています。
【抗がん剤の副作用と対策について、さらに詳しく】
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を与えます。髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、その結果、吐き気が起こったり、白血球血小板の数が少なくなることがあります。それ以外に、肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。肝がんで使用する抗がん剤は、脱毛、口内炎、下痢や、心臓への影響はあまり多くはありません。副作用が著しい場合は、治療薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。
肝硬変や腹水の有無、肝臓や腎臓の機能などによって副作用の起こり方は異なります。担当医や看護師に治療の内容や副作用について確認しておきましょう。
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6.生活の質を重視した治療

骨などへの転移があって痛みが強い、腹水がたまっておなかが張る、足のむくみが強い、肝機能が悪いために肝臓に負担をかける治療を行うことが難しい、などの場合には、がんそのものへの治療よりも、つらい症状の原因に応じて生活の質を維持することに重点を置いた治療が行われます。
【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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更新日:2012年10月25日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.生活上の注意

治療後の体調や肝臓の状態について、自覚症状や検査で確認しながら、徐々に活動範囲を広げていきます。

食事については栄養のバランスを第一に、気持ちよく食べることが大切です。飲酒は肝細胞がんの発生に関係があると考えられており、特に慢性肝疾患がある人は、肝機能を悪くすることがあるので避けることが重要です。また、肝硬変のために、むくみや腹水がある場合は、塩分を控えることが必要です。担当医や看護師、栄養士などによく確認しておきましょう。

運動は、体力の回復に合わせて散歩などから始め、少しずつ運動量を増やしていきます。ただし、激しい運動は担当医に相談してからにしましょう。体力が回復し、肝機能も安定すれば、徐々に通常の生活に戻れます。

2.経過観察

治療を行った後の体調確認のため、また再発の有無を確認するために、定期的に通院します。再発の危険度が高いほど、頻繁、かつ長期的に通院することになります。なお、喫煙や飲酒も肝がんの発生に関係があると考えられています。肝がんの治療を受けた人や肝炎ウイルス感染者はタバコをやめ、アルコールの摂取を控えましょう。

肝細胞がんの治療は、その背景にある慢性肝疾患を治すというものではありません。肝細胞がんの患者さんの多くは、慢性肝疾患のために肝細胞がんができやすくなっています。治療をしても、肝臓の別の場所にがんが再発することがしばしばあります。

このため、がんや背景の肝臓の状態に応じて、定期的に通院して検査を受ける必要があります。肝機能や腫瘍マーカーを調べるための血液検査に加え、必要に応じて、腹部超音波(エコー)や造影超音波、CT、MRIなどの画像検査が行われます。

なお、熱がなかなか下がらない、おなかが張って苦しい、息苦しい感じが続く、疲れやすい、足がむくむ、食欲がない、何となく足元がふらふらする、手指が震える、ぼうっとしたり眠りがちになる、などの症状が普段の状態と比べて強いとき、あるいは急にひどくなったときは、担当医に連絡して受診するようにしましょう。
【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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更新日:2015年03月02日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年03月02日 「2.再発」を更新しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.転移

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。がんを手術で全部切除できたり、局所療法で治療できたようにみえても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、治療した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。肝がんでは肺やリンパ節、骨など、別の臓器に転移することも少なくありません。転移が生じている場合には、肝臓の状態を含めて治療方法も総合的に判断する必要があります。

2.再発

再発とは、治療の効果により目に見える大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することをいいます。肝がんは、肝炎ウイルスやアルコールなどで障害を受けた肝臓に発生するため、根治治療後も再発する危険が比較的高いことが知られています。そのため、外来通院で3~6カ月に1回はチェックすることが一般的です。
手術でがんを切除したり、局所療法で治療しても、残った肝臓に新しいがんができる危険も高く、再発部位の90%以上が同じ臓器内です。これを残肝再発(ざんかんさいはつ)といいます。それぞれの患者さんの状況や肝障害度に応じて治療やその後のケアを決めていきますが、他の臓器への転移がない場合には、初発肝がんと同じの基準(参照:「肝細胞がん 治療の選択 1.肝障害度と治療 図2」)で、肝機能も考慮しながら手術を含めた治療が選択されます。
なお、肝がんの治療は、その背景である肝炎や肝硬変を治すものではありません。したがって、治療の可能性を狭めないためにも、肝機能を悪化させないように、アルコール、喫煙を控え、栄養バランスの整った食生活を送ることが大切です。
再発や転移、痛みが強いときの治療については、「患者必携がんになったら手にとるガイド」の以下の項もご参照ください。
「がんの再発や転移のことを知る」患者必携サイトへのリンク
「緩和ケアについて理解する」患者必携サイトへのリンク
「痛みを我慢しない」患者必携サイトへのリンク
もしも、がんが再発したら 冊子
がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。
【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
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