HOME > それぞれのがんの解説 > 肝細胞がん

肝細胞がん(かんさいぼうがん)

更新日:2015年03月02日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2015年03月02日 「1.手術(外科治療)」「2.穿刺(せんし)局所療法」「3.肝動脈塞栓(そく せん)療法、肝動注化学療法」「5.化学療法(抗がん剤治療)」を更新しました。
2013年03月26日 内容を更新しました。
2012年10月25日 更新履歴を追加しました。「3.肝動脈塞栓術、肝動注化学療法」の図を追加しました。
2012年10月04日 タブ形式に変更しました。
2011年12月05日 内容を更新しました。
1996年05月23日 掲載しました。

1.手術治療(外科療法)

1)肝切除

がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療です。肝切除をするかどうかは、がんの位置や大きさ、数、広がり、さらに肝機能の条件などによって決められます。一般に、がんが肝臓にとどまっており、3個以下の場合、がんの位置や肝臓の機能を考慮した上で、肝切除が選択されます。腫瘍の大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような巨大なものであっても、切除の適応となり得ます。黄疸(おうだん)や腹水を認めるなど、肝機能が十分でない患者さんは、肝切除後に肝臓が機能しなくなる肝不全を起こす危険性が高く、通常は手術以外の治療が選択されます。一方、黄疸、腹水ともにない場合には、上記肝障害度、中でもICGR15分値(肝臓で代謝される色素を静脈内に注射し、その色素の排出(血中濃度の変化)をみる検査です)を基に、肝臓全体の何%まで切除してもよいか(肝切除許容量)を判定し、手術可能かが判断されます。

肝臓は、図3に示すように、肝臓に栄養を供給する血管が左右に二分岐することから、それぞれ左葉、右葉とに大きく分けられます(図4)。また肝臓の裏側(背中側)に位置する部分を尾状葉と呼んでいます。血管の枝分かれに従って、左葉は外側区域と内側区域、右葉は前区域と後区域に、さらに図のごとく番号のついた合計8つの区域に分けられます。人の肝臓は見た目で分葉はしていませんが、超音波、CTなどの画像でこれらの区域を判断し、腫瘍の位置、肝障害度に応じて、切除する範囲が決定されます。
図3肝臓の解剖
図3肝臓の解剖
一部の肝切除は腹腔鏡手術が可能ですが、適応は限られており、多くは開腹での手術となります。術後1~2週間前後くらいで退院可能となるのが一般的です。開腹手術の場合、おなかの創(きず)は比較的大きくなり、退院後もしばらく痛み止めの内服薬を必要とすることがありますが、通常は1カ月程度で軽減し、社会復帰も可能となります。

2)肝移植

肝臓をすべて摘出して、ドナー(臓器提供者)からの肝臓を移植する治療法です。「肝細胞がん 治療の選択 1.肝障害度と治療 図2」にある通り、肝切除が適応にならないほど肝機能が低下した肝硬変(肝障害度C)の場合に選択肢となります。肝がんにおける適応は、転移がない場合に限られます。
【肝移植について、さらに詳しく】
肝がんに対する肝移植は、a.がんが1つなら5cm以下、またはb.3cm以下で3個以内、という基準(ミラノ基準)を満たす場合に考慮されます。日本では、脳死肝移植は法的には認められていますが、提供者の不足などの問題によって、実際にはほとんど行われていません。その代わり、主に近親者から肝臓の一部を提供してもらい、肝臓を移植する生体肝移植が大学病院を中心に行われています。肝移植の年齢制限は65歳以下とすることが多く、肝機能の面では肝硬変のために肝切除などの局所治療が困難な場合に、治療法のオプションとして考えられます。肝がんと肝硬変に対する最も根治的な治療となりますが、健常人から肝臓の一部の提供が必要となる点、肝切除と比べると、手術直後の合併症(拒絶反応、感染症など)のリスクが高い点、術後は免疫抑制剤の内服を原則一生継続する必要がある点、また、C型肝炎は術後も移植した肝に通常感染する点、などの課題もあります。したがって、適応については主治医と相談しつつ、慎重に決める必要があります。
閉じる
【手術に伴う合併症と対策について、さらに詳しく】
手術の場合、手術直後には、酸素マスクや手術の場所から出る血液や体液などを排出するドレーンという管、尿をためる尿道バルーンカテーテルという管が体につけられています。痛みや手術の創(きず)の状態によって、体の動きが制限されることがありますが、体の状態が改善するに従って、徐々に管が外されていきます。局所療法や肝動脈塞栓療法では治療後、数時間から半日程度の安静が必要です。
手術に伴う合併症には、出血、切除面から胆汁が漏れる胆汁漏(たんじゅうろう)、肝不全などがありますが、近年は手術方法の進歩によって出血量の少ない安全な手術が可能になっています。最も頻度の高いものは胆汁漏で、おおむね10%程度とされていますが、通常は自然に漏れが止まって治癒することがほとんどです。術後の肝不全も全国平均で約1%、手術による死亡率は全国平均で1~2%程度で、日本の手術の技術は世界でもトップレベルにあります。

(1)体の痛み

体の痛みには、手術創そのものだけではなく、おなかを切開したことによる皮膚の痛みや、手術のときに肋骨(ろっこつ)を持ち上げるため、筋肉が引っ張られたことで、肋骨の周りや肩、背中、腹部などの痛みやしびれなどがあります。通常、痛みは数カ月で治まってきます。

(2)対策

創の痛みは我慢しないで担当医や看護師に伝えましょう。痛みの度合いや体の回復状況に応じて、痛みを和らげる処置が行われます。骨や筋肉は動作をすると痛むので、急に動くことは避け、手のひらで痛む部分をおおってゆっくりと動くように心がけましょう。「よいしょ、こらしょ」と、自分自身に声をかけながらするとよいかもしれません。咳(せき)をするときも、傷口を手でそっと押さえると、傷口に響かなくてすみます。術後約1カ月は、ゆっくり過ごします。体に負担のかかることは避け、周りの人の手を借り、徐々に体を慣らしていきます。担当医と相談し、体が慣れてきたら積極的に体を動かすようにしましょう。
閉じる

2.穿刺〔せんし〕局所療法

体の外から針を刺し、がんに対して局所的に治療を行う療法をひとまとめにして経皮的局所療法と呼びます。穿刺療法ともいわれ、手術に比べて体への負担の少ないことが特徴です。この治療は一般に、がんの大きさが3cmより小さく、3個以下が対象とされています。がんの一部が残ってしまう危険もありますが、比較的手軽に行うことができ、副作用が少なく、短期間で社会復帰できるという長所があります。超音波検査や造影超音波検査などにより、がんの状態を観察しながら行います。

1)経皮的エタノール注入療法(PEIT)

無水エタノール(純アルコール)を肝がんの部分に注射して、アルコールの化学作用によってがんを死滅させる治療法です。エタノール注入時には痛みがあります。通常は腹部の皮膚に局所麻酔が用いられます。術後に発熱、腹痛、肝機能障害などの合併症が起こることもあります。

2)経皮的マイクロ波凝固(ぎょうこ)療法(PMCT)

体の外から特殊な針をがんに直接刺し、マイクロ波という高周波の電磁波をあてることで、がんを熱で凝固させる治療法です。

3)ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)

体の外から特殊な針をがんに直接刺し、通電してその針の先端部分に高熱を発生させることで、局所のがんを焼いて死滅させる治療法です。焼灼時間は10~20分程度で、腹部の皮膚の局所麻酔に加えて、焼灼で生じる痛みに対して鎮痛剤投与や軽い静脈麻酔を行います。発熱、腹痛、出血、腸管損傷、肝機能障害などの合併症が起こることもあります。

実際、ラジオ波焼灼療法は、エタノール注入療法や経皮的マイクロ波凝固療法に比べて、少ない治療回数で優れた治療効果が得られることから、最近ではラジオ波焼灼療法が主流となっています。
【局所療法に伴う主な合併症への対策について、さらに詳しく】
局所療法は、体への負担は少ないのですが、ラジオ波焼灼療法では、針を刺した場所に痛みややけどが起こることがあります。経皮的エタノール注入療法では、アルコールを注入するために、アルコールに弱い体質の人は、酔う感覚になることがあります。こうした症状のほとんどは一時的で、少しずつ回復していきます。
閉じる

3.肝動脈塞栓(そくせん)療法、肝動注化学療法

肝動脈塞栓療法(TAE)は、がんに栄養を運んでいる血管を人工的にふさいで、がんを“兵糧攻め”にする治療です。通常は、血管造影検査に引き続いて行われます。血管造影に用いたカテーテルの先端を肝動脈まで進め、塞栓物質(多孔性ゼラチン粒、球状塞栓物質(ビーズ)、ポリビニルアルコール(PVA)、2014年初旬から血管塞栓用ビーズも使用可能)を注入し、肝動脈を詰まらせます(図4)。
近年では、抗がん剤と肝がんに取り込まれやすい造影剤を混ぜてカテーテルを通じて投与し、その後に塞栓物質を注入する「肝動脈化学塞栓療法」(TACE)が施行されるようになってきています。TACE/TAEは、がんの個数に関係なく施行でき、他の治療と併用して行われることもあります。適応の幅が広いので、最近はたくさんの患者さんに対して行われています。
肝動注化学療法(TAI)は、血管造影に用いたカテーテルから抗がん剤のみを注入します。
治療経過やがんの状態によって治療法を使い分けます。
図4 肝動脈塞栓療法
図4 肝動脈塞栓療法
【肝動脈塞栓療法に伴う主な副作用と対策について、さらに詳しく】
発熱、吐き気、腹痛、食欲不振、肝機能障害、胸痛などの副作用が起こることがあります。副作用の程度は、腫瘍の大きさ、広がり、塞栓した程度、肝機能によりますので、予想される副作用について、あらかじめ担当医から十分な説明を聞いておきましょう。
閉じる

4.放射線治療

放射線治療は、骨に転移したときなどの疼痛(とうつう)緩和や、脳への転移に対する治療、血管(門脈、静脈)に広がったがんに対する治療などを目的に行われることがあります。肝臓に放射線をあてると正常な肝細胞に悪影響を与えるので、肝がん自体の治療が行われる場合には、細心の注意が払われます。最近は、陽子線、重粒子線など、放射線をあてる範囲を絞り込める放射線治療が肝がんの治療に有効と考えられています。

5.化学療法(抗がん剤治療)

肝がんの抗がん剤治療には、前述した「肝動注化学療法」と「全身化学療法」があります。抗がん剤治療は、局所的な治療で効果が期待できない場合などに行われます。肝がんへの適応が認可されている抗がん剤は複数ありますが、これらの薬剤のうち、最近、経口薬であるソラフェニブ(ネクサバール)が延命効果を示し、標準治療に位置付けられています。
【抗がん剤の副作用と対策について、さらに詳しく】
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を与えます。髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、その結果、吐き気が起こったり、白血球血小板の数が少なくなることがあります。それ以外に、肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。肝がんで使用する抗がん剤は、脱毛、口内炎、下痢や、心臓への影響はあまり多くはありません。副作用が著しい場合は、治療薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。
肝硬変や腹水の有無、肝臓や腎臓の機能などによって副作用の起こり方は異なります。担当医や看護師に治療の内容や副作用について確認しておきましょう。
閉じる

6.生活の質を重視した治療

骨などへの転移があって痛みが強い、腹水がたまっておなかが張る、足のむくみが強い、肝機能が悪いために肝臓に負担をかける治療を行うことが難しい、などの場合には、がんそのものへの治療よりも、つらい症状の原因に応じて生活の質を維持することに重点を置いた治療が行われます。
【参考文献】
  1. 日本肝臓学会編「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版」(金原出版)
  2. 日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 2009年6月(第5版補訂版)」(金原出版)
閉じる

【がんになったら手にとるガイド】
自分らしい向き合い方を考える
手術のことを知る
薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る
臨床試験のことを知る
経済的負担と支援について

肝細胞がん
104.肝細胞がん(PDF)


小児の肝腫瘍
183.小児の肝腫瘍(PDF)

手術療法を受ける方へ
化学療法を受ける方へ
薬物療法(化学療法)
がんの治療に使われる主な薬 肝細胞がん
さまざまな症状への対応
食生活とがん
お金と生活の支援
がんの療養と緩和ケア
心のケア
よりよいコミュニケーションのために
お探しの情報が見つからないときは…
がん情報サービスサポートセンター
がん相談支援センターを探す
アンケートにご協力ください
よりよい情報提供を行うために、アンケートへの協力をお願いいたします。
簡単な7問ほどのアンケートですので、ぜひ、ご協力ください。
アンケートページへ
用語集
このページの先頭へ