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卵巣胚細胞腫瘍(らんそうはいさいぼうしゅよう)

更新日:2006年10月01日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月20日
更新履歴
2006年10月01日 更新しました。
1996年09月20日 掲載しました。

1.卵巣胚細胞腫瘍とは

卵巣を構成する主な組織には、腹膜から由来する表層上皮と、ホルモンを産生する性索間質と、卵子のもとになる卵細胞(胚細胞)があります。このうち表層上皮から発生する卵巣がんが卵巣悪性腫瘍の90%以上を占めています。その次に多いのが胚細胞から発生する一群の腫瘍で、良性、悪性、その中間的な性質の腫瘍があります。この群に属する皮様嚢腫(ひようのうしゅ:成熟奇形腫)は最もありふれた卵巣の良性腫瘍のひとつです。

卵巣がんについては「卵巣がん」もご参照ください。

悪性卵巣胚細胞腫瘍は、1.未分化胚細胞腫、2.卵黄嚢(らんおうのう)腫瘍、3.未熟奇形腫、4.類皮嚢胞がん、5.その他の腫瘍、あるいは混合型に分けられます。全卵巣悪性腫瘍の約8%を占めるまれな腫瘍です。頻度は未分化胚細胞腫が最も多く、次いで卵黄嚢腫瘍、未熟奇形腫の順になっています。類皮嚢胞がんは、若いころにできた良性の成熟奇形腫が更年期前後に悪性化したもので、普通の卵巣がんと似ています。

類皮嚢胞がんの症状、治療などについては「卵巣がん」もご参照ください。

悪性胚細胞腫瘍はまれな腫瘍ですが、極めて強い特徴があります。それは10~20歳代の若年に発生し、悪性度の低いものから極めて高いものまでさまざまですが、抗がん剤が驚異的によく効くために現在ではほとんどの人が妊娠、出産の機能を失うことなく治癒するようになったことです。

2.症状

早期発見は困難です。腹部がはれる、しこりを触れる、不正性器出血(月経以外の出血)があるなどの自覚症状によって産婦人科医の診察を受け、見つかることがほとんどです。

3.診断

1)内診

主に産婦人科医が行う診察で、下腹部のしこりの有無や骨盤内臓器のいろいろな変化をとらえることができます。

2)血液検査

血液中の腫瘍マーカーを測定することにより、腫瘍の存在がわかります。腫瘍マーカーのうち、AFP(アルファ・フェトプロテイン)は卵黄嚢腫瘍の、βHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は絨毛性腫瘍の極めて特異性の高いマーカーです。若年者で下腹部にしこりを触れAFPが高値であれば、ただちにがん専門病院に紹介してもらうようにしなければなりません。

腫瘍マーカーについては「腫瘍マーカー」もご参照ください。

3)超音波、CT、MRI検査

卵巣腫瘍が疑われた場合、さらに超音波検査、CT、MRIなどの画像検査により、腫瘍の大きさ、性質、他の臓器との関係、転移の有無などがわかります。

4.病期(ステージ)

悪性卵巣胚細胞腫瘍の適切な治療のためには、腫瘍の広がりぐあいを正しく知る必要があります。開腹手術によって、がんの広がりやがん細胞の種類もわかり、その後の治療計画を立てることができます([治療]の項を参照してください)。病期分類は次のとおりです。

I期
病巣が片側あるいは両側の卵巣にある。

I期
病巣が片側あるいは両側の卵巣にあり、かつ/または、卵管、骨盤内のいずれかに広がっている。

III期
病巣が片側あるいは両側の卵巣にあり、リンパ節、または肝臓表面や腸管などに広がっている。

IV期
病巣が片側あるいは両側の卵巣にあり、腹腔以外の臓器に広がっている、あるいは肝臓の内部に広がっている。

5.治療

治療法には、外科療法、放射線治療、化学療法があります。

1)外科療法

卵巣胚細胞腫瘍の治療の中で、一般的に行われています。次に示す術式により、腫瘍を切除します。

(1)片側の付属器切除術(卵巣腫瘍を含め、片側の卵巣と卵管を切除する手術法)

卵巣の胚細胞腫瘍はほとんどが左右いずれか一方の卵巣にできますので、腫瘍のできた側の卵巣と卵管を切除します。婦人科では卵巣と卵管を一緒にして付属器といっています。もう一方の卵巣にも疑わしい病変がある場合は、もう一方の卵巣も部分的にとって検査することがあります。この場合は卵巣の機能障害はおこりません。

(2)単純子宮全摘出術、および両側付属器切除術(子宮、両側の卵巣・卵管を切除する手術法)

子宮およびもう一方の卵巣にも転移がある場合に行われます。

(3)大網切除術

大網とは胃から垂れ下がって大腸、小腸をおおっている大きな網のような脂肪組織です。大網は卵巣悪性胚細胞腫瘍の転移がよくおこる組織であり、切除しても実害はありません。

(4)転移腫瘍の摘出

子宮、卵巣、大網以外にも転移のある場合、その一部を切除することがあります。

2)放射線治療

高エネルギ−X線を用いてがん細胞を殺し、腫瘍の縮小をはかるもので、通常、外照射といって身体の外から放射線を照射する方法をとります。この方法は、未分化胚細胞腫に対しては非常に有効な方法です。転移した部位でも照射で治癒することがあります。しかし、照射は局所療法であり、不妊などの障害をおこす恐れがありますので、今日では抗がん剤を用いることが多くなっています。

放射線治療については「放射線治療」もご参照ください。

3)化学療法

抗がん剤によりがん細胞を殺す方法で、通常は点滴による静脈注射で行われます。これは全身療法で、卵巣のみならず身体のすみずみまで抗がん剤を行き渡らせます。卵巣胚細胞腫瘍には、3種類の抗がん剤を組み合わせた標準的化学療法があります。BEP(ブレオマイシンとエトポシドとシスプラチンの3剤の組み合わせ)という処方です。これら3種類の抗がん剤を3週間ごとに3~4回注射します。卵巣と子宮とが残存している場合、標準的化学療法で治癒させた後、妊娠し正常に出産することができます。BEP以外の抗がん剤でも同じ効果があるかどうかはまだよくわかっていません。

化学療法については「薬物療法(化学療法)」もご参照ください。

セカンド・ルック開腹術

外科療法とそれに続く放射線治療や化学療法の後に、セカンドルック開腹術という2回目の開腹手術をすることがあります。これは治療の成果はどうであったか、なお腫瘍が残存していないかどうかを確かめ、その後の追加治療の必要があるかどうかを確認するための手術ですが、今日ではほとんど行われなくなっています。

6.病期(ステージ)別治療

悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療方法は、病期、組織型、年齢、出産を希望するかどうかなどにより決定されます。未分化胚細胞腫は、比較的予後がよいため手術後の治療方法が異なります。未熟奇形腫は悪性度によって予後が異なりますので手術後の治療法も異なります。

I期

(1) 片側の付属器切除術+大網切除術

子供のいる婦人には子宮、両側付属器切除も行われます。

(2) 化学療法

極めて悪性度の高い腫瘍である卵黄嚢腫瘍と悪性度3の未熟奇形腫に対しては、I期で完全切除後でも標準的化学療法を行った方がよいとされています。

未分化胚細胞腫に対しては、転移がないことが確認された場合、化学療法や放射線治療をしないのが原則です。

II期

次のいずれかの方法で手術が行われます。

(1) 単純子宮全摘出術+両側付属器切除術(子宮ともう一方の卵巣に転移のある場合)+大網切除術

(2) 片側の付属器切除術(病巣が片側の卵巣・卵管に限局し、かつ将来子供が欲しい場合)

手術によって完全に腫瘍をとることができた場合でも、術後標準的化学療法を行った方がよいとされています。

III / IV期

次のいずれかの方法で手術が行われます。

(1) 片側付属器切除術(子宮ともう一方の卵巣に転移のない場合)+大網切除術

(2) 単純子宮全摘出術+両側付属器切除術(子宮ともう一方の卵巣に転移のある場合)+大網切除術

III、IV期では手術によって完全に腫瘍をとることはできませんので、残存した腫瘍に対して標準的化学療法が行われます。

再発例

主として化学療法が行われます。未分化胚細胞腫に対しては放射線治療も行われることがあります。脳に転移した腫瘍に対しては放射線治療が行われます。

7.治療の副作用

1)外科療法

切除した臓器の欠落による機能障害があります。子宮切除した場合は不妊になりますが、卵巣の片側だけを切除した場合は障害がありません。卵巣を両側切除した場合は、不妊と更年期症状がおこります。不妊の対応策は、転移していない正常な子宮や反対側の卵巣を温存することです。卵黄嚢腫瘍は残した卵巣に再発することはほとんどありませんが、未分化胚細胞腫の場合は、残した卵巣に再発する可能性はあります。

2)放射線治療

副作用は照射部位とその広さと線量によりますが、早期には放射線宿酔(二日酔い症状)、晩期には腸管のびらん(ただれ)や潰瘍などによる下血や通過障害の症状がみられます。照射部位と線量を適当に変更することにより、放射線治療による障害を少なくできます。放射線による不妊を防ぐには正常の卵巣と子宮に放射線がかからないように防護しなければなりません。未分化胚細胞腫には放射線治療がとてもよく効きますが、近年は放射線治療より化学療法が行われています。

3)標準的化学療法

早期には、白血球減少、貧血、吐き気などが必ずおこる他、まれに肺線維症などがおこる可能性があります。症状が強い場合は、抗がん剤の減量、延期などによって回復します。化学療法終了後の晩期障害では、手足のしびれ、歩行障害、難聴などの神経系の障害がおこることがありますが回復します。

8.生存率

生存率は、通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。
ここにお示しする生存率は、これまでの国立がんセンターのホームページに掲載されていたものです。生存率の値そのものでなく、ある一定の幅(データによって異なりますが±5%とか10%等)をもたせて、大まかな目安としてお考えください。
BEPという3種類の抗がん剤を組み合わせる標準的化学療法が行われるようになった1980年以後と以前では生存率は全く異なっています。1980年以前には卵黄嚢腫瘍のほとんどすべての人が2年以内に死亡していました。1980年以後、国立がんセンター(現国立がん研究センター)では13人の卵黄嚢腫瘍に初回治療が行われ、全員が再発することなく治癒しました。未分化胚細胞腫は、今日ではほとんどの人が治癒しているものと考えられます。
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