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有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)

更新日:2007年09月03日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
更新履歴
2007年09月03日 更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。
有棘細胞がんは、表皮の中間層を占める有棘層を構成する細胞から発生するがんで、日本人に多い皮膚がんのひとつです。正確な年間発生数は不明ですが、1997年に国立がんセンター(現国立がん研究センター)が中心となって行った全国の主要106病院に対するアンケート調査では、皮膚がんの中では後に述べる基底細胞がんに次いで多く、毎年日本人10万人あたり約2.5人がこのがんにかかっていると推定されています。

このがんの誘因として一番に考えられるのは紫外線の関与です。特に中波長紫外線(UVB)は皮膚がんの発生に大きな影響を与えています。短期間に大量の紫外線を浴びるのはもちろん、子供のころからの蓄積の影響でもがんが発生しますので、人口の高齢化に伴って、顔や首、手の甲など日光の当たる部分の有棘細胞がんは増えています。また、発症誘因として最近注目されているものに、ヒト乳頭腫ウイルスがあります。ヒト乳頭腫ウイルスは、子宮頸がんなどの発症誘因として知られていましたが、皮膚の有棘細胞がんの発症にもかかわっていることがわかってきました。その他に、有棘細胞がんには以前から知られている発生母地(ぼち)といわれるものがいくつかあります。やけどや外傷の瘢痕、慢性膿皮症といわれる完治しにくいおしりのおでき、膝から下にできる治りにくい皮膚潰瘍(かいよう)、長期間にわたる褥瘡(じょくそう:とこずれ)や、放射線治療後におこる慢性放射線皮膚炎などです。さらに、化学物質の砒素(ひそ)化合物、タール類、鉱物油(切削油)などが発生に関与する場合があります。

有棘細胞がんは1.7:1の割合で男性に多く、40歳未満では全体の2%程度にすぎませんが、加齢とともに増加し、通常のがん年齢よりも高い70歳以上がおよそ60%を占めています。

1.症状

有棘細胞がんの症状は、発生部位や発生原因によってさまざまです。一般に、比較的大きく、ふぞろいな形の紅色をした皮膚の盛り上がりで肉のかたまりのくずれたもののように見え、表面にびらんや潰瘍を伴って出血しやすく、つまむとしこりを触れるような場合は要注意です。大きくなると腫瘍の形はカリフラワーにたとえられることもあります。それ以外に自覚症状は特にありませんが、有棘細胞がんは腫瘍(がん)の表面が弱くなっているので一般細菌による感染をおこしやすく、膿をもったり悪臭を放ったりします。

2.診断

確定診断のためには、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切りとり、顕微鏡で調べる皮膚生検が必要です。他に腫瘍の浸潤(しんじゅん:周囲への広がり)の深さや転移など、病気の広がりを調べるために、胸部レントゲン、腹部の超音波検査をはじめ、全身シンチグラムと呼ばれるラジオアイソトープを使った検査や、CTやMRIと呼ばれる精密検査を必要に応じて行います。検査によってがんがどのくらい進行しているのかという時期(病期:ステージ)を確かめ、それぞれの病期に応じた治療法を行います。

3.病期(ステージ)

皮膚がん(悪性黒色腫を除く)の病期は、以下のように0期からIV期までの5つの時期に分けられます。
0期
悪性化した細胞(がん細胞)は出現しているものの表皮の中にとどまっている。
この時期を表皮内がんと呼ぶが、これはがんの一歩手前の状態。
本物のがんではない。

I期
腫瘍の大きさが2cm以下で、真皮だけ、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。

II期
腫瘍の大きさは2cmを超えているが、真皮、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。

III期
腫瘍の大きさにかかわらず、腫瘍の深さが皮下組織を越えて、さらに深い筋肉、軟骨、骨などにおよんでいる。
または腫瘍の大きさにかかわらず、所属リンパ節と呼ばれる首、わきの下、太もものつけ根のリンパ節に転移がある。
(注:同時にいくつもの腫瘍が多発している場合は、その中の最も進行した状態のものを代表と考えて病期分類を行う。)

IV期
所属リンパ節を越えて遠隔転移(内臓に転移)をしている。

4.治療

治療方法には、外科療法、凍結療法、放射線治療、化学療法があります。

1)外科療法

この有棘細胞がんは腫瘍そのものだけを切除しても、再発や転移をおこす可能性がありますので、腫瘍の周りの正常に見えるところを含めて、幅も深さも余裕をもって切除する必要があります。手術によって皮膚の欠損が大きくなった場合には、植皮術をはじめ、形成外科的な方法で傷を治します。

2)凍結療法

液体窒素を使ってがん組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、がん細胞を凍結壊死(えし)させる方法です。浸潤の浅いがんはこの方法で治療が可能です。凍結療法は治療時や治療後の身体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために身体のぐあいの悪い方にも適した治療法です。

3)放射線治療

有棘細胞がんは皮膚がんの中でも放射線治療がよく効くもののひとつです。放射線治療にはいくつかの方法がありますが、この場合、X線や電子線を専用の器械を使って身体の外側から照射する方法が一般的です。通常1回の照射は短時間で終わるため、放射線治療は通院しながら受けることも可能です。また、がんのできている部位によっては、がん細胞が正常細胞に比べて熱に弱いことを利用した温熱療法を併用して、さらに治療効果が上がるようにすることもあります。

放射線治療については、「放射線治療」もご参照ください。
温熱療法については、「温熱療法」もご参照ください。

4)化学療法

手術や放射線治療は局所療法といって、身体の一部分をねらって悪いところを治そうという治療ですが、ある程度がんが進行している場合には、全身療法である化学療法が治療の中心となります。また、有棘細胞がんは頭、顔、首など人目につく部位にできることが多いので、切除する部分が少なくて済むように、手術前に抗がん剤でがんをできるだけ小さくしておく治療を行う場合もあります。

化学療法については、「薬物療法(化学療法)」もご参照ください。

5)集学的治療

ある程度進行した有棘細胞がんは、上の1~1のうちからひとつを選んで治療を行うのではなく、これらのすべてをうまく組み合わせて最も効果が上がるような治療を行います。これを集学的治療といいます。

5.病期(ステージ)別治療

0期
腫瘍の辺縁から0.5cm離して、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除します。 凍結療法や放射線治療など、手術以外の治療法を選択できる場合もあります。

I期
腫瘍の辺縁から1~2cm離し、表皮、真皮、皮下脂肪組織を腫瘍とともに切除します。

II期
腫瘍の辺縁から2~3cm離し、表皮、真皮、皮下脂肪組織を腫瘍とともに切除します。一般に腫瘍が大きくなると、浸潤の深いものもあり、この場合には、皮下脂肪組織と筋肉の境界部にある筋膜という薄い膜も切除します。化学療法や放射線治療を併用することがあります。

III期
腫瘍の辺縁から2~3cm離して切除します。腫瘍は皮膚を越えて浸潤していますので、筋肉を含めて切除したり、骨を削ったり、ときには患肢(かんし)の切断術が必要になります。また、リンパ節に転移がある場合は、所属リンパ節郭清(かくせい)と呼ばれる手術方法によって、リンパ節を切除します。III期もII期と同様に化学療法や放射線治療を併用することがあります。

IV期
化学療法や放射線治療が中心となり、これに手術も組み合わせる集学的治療を行います。

6.治療の副作用

1)外科療法

I期、II期で行われる手術は身体の表面に近い部分の切除なので、通常は術後大きな機能障害はおこりません。手術によってできた傷跡そのものや、腫瘍を切除したためにおこる変形などの美容的な面も形成外科的な技術の進歩によって、かなりきれいに治るようになってきました。手足の指や、上肢、下肢の切断手術を受けた場合は、術後の機能訓練が必要です。上肢、下肢の場合は、切除してなくなったはずの部分に痛みを感じること(幻肢痛)がありますが、時間とともに薄らいでいきます。また、わきの下や太もものつけ根のリンパ節郭清を受けた場合は、手足がむくんだり、しびれたりすることがあります。首のリンパ節郭清を受けた場合には、肩の張りやこりが続いたり、一時的に顔面神経が麻痺をすることがあります。これらも時間とともに軽くなり、回復していきます。

切断・離断とリハビリテーションについては、「上肢切断・離断後のリハビリテーション」「下肢切断・離断後のリハビリテーション」もご参照ください。

2)化学療法

有棘細胞がんの治療に使われる抗がん剤の種類はごく限られているのですが、主な副作用は下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐、発熱、全身倦怠(けんたい)感、脱毛、呼吸機能障害、肝機能障害、腎機能障害、骨髄抑制(血液中の白血球、赤血球、血小板が減少すること)などがあり多彩です。いずれも抗がん剤によっておこる一時的なものですが、回復が遅れた場合には、それぞれの副作用を軽くするような治療を行います。

吐き気、嘔吐については「消化器症状:嘔気・嘔吐」もご参照ください。
脱毛については、「脱毛」もご参照ください。

3)放射線治療

放射線を照射する部位によって副作用は異なります。一般に、放射線を照射した部位の皮膚が一種のやけどの状態になりますので、皮膚の発赤、水疱、びらん、潰瘍、かゆみ、色素沈着や関節の拘縮(こうしゅく)、手足のむくみなどがおこることがあります。また温熱療法を併用する場合にも、熱によってやけどすることがあります。

7.有棘細胞がんの治療成績

生存率は、通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。
ここにお示しする生存率は、これまでの国立がんセンターのホームページに掲載されていたものです。生存率の値そのものでなく、ある一定の幅(データによって異なりますが±5%とか10%等)をもたせて、大まかな目安としてお考えください。
有棘細胞がんは身体の表面に出現するため、内臓がんに比べて早期発見、早期治療が可能な場合が多く治療成績は良好です。0期、I期のうちに治療を受けた場合、5年生存率はほぼ100%、II期の場合でも85%です。III期では所属リンパ節転移のない場合で5年生存率は65%、所属リンパ節転移のある場合は55%くらいとなります。IV期になり、内臓に転移していると治療は簡単ではありません。転移している部位によっても治療成績は異なるのですが、標準的な治療を行った場合の5年生存率は30%以下となります。このため、さらによりよい治療法を確立するための検討も行われています。
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