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有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)

更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
更新履歴
2016年12月20日 タブ形式への移行と、「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」より、内容の更新をしました。
2007年09月03日 更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。

1.有棘細胞がんとは

有棘細胞がんは、日本人に多い皮膚がんの1つです。

皮膚は表面に近い部分から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3つの部分に大きく分かれます(図1)。表皮はさらに表面側から順に、角質層、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層(きていそう)の4層に分けられます。表皮最下層である基底層は真皮と接しています。真皮には、血管、神経、毛嚢(もうのう)、脂腺、汗腺、立毛筋などの組織があります。

有棘細胞がんは、表皮の中間層を占める有棘層を構成する細胞から発生するがんです。

皮膚がん(皮膚悪性腫瘍)は、このような皮膚を構成する細胞から発生するがんのことで、発生した場所やがん細胞の種類によって区分されます。
図1 皮膚の構造
図1 皮膚の構造
図2 表皮の構造と細胞
図2 表皮の構造と細胞

2.有棘細胞がんの原因

有棘細胞がんの誘因として一番に考えられるのは紫外線の関与です。特に中波長紫外線(UV-B:ultraviolet B)は皮膚がんの発生に大きな影響を与えています。短期間に大量の紫外線を浴びるのはもちろん、子どものころからの蓄積の影響でもがんが発生しますので、人口の高齢化に伴って、顔や首、手の甲など日光のあたる部分の有棘細胞がんは増えています。

日本人の有棘細胞がんの約60%が日光露出部に発生するとされています。したがって、日焼け止め(サンスクリーン剤)を使用し、過度の日焼けを避けることが有棘細胞がんの予防につながる可能性があると考えられています。特に、色白で、色素沈着を起こしにくい人(日焼けで黒くなりにくい人)や小児は、こうした紫外線予防が推奨されます。

また、発症誘因の1つとして、ヒト乳頭腫ウイルスがあります。ヒト乳頭腫ウイルスは、子宮頸がんなどの発症誘因として知られていましたが、皮膚の有棘細胞がんの発症にも関わっている場合があることがわかっています。

その他に、有棘細胞がんには以前から知られている発生母地(ぼち)といわれるものがいくつかあります。やけどや外傷の瘢痕(はんこん)、慢性膿皮症といわれる完治しにくいお尻のおでき、膝から下にできる治りにくい皮膚潰瘍(かいよう)、長期間にわたる褥瘡(じょくそう:とこずれ)や、放射線治療後に起こる慢性放射線皮膚炎などです。さらに、化学物質の砒素(ひそ)化合物、タール類、切削油に用いられる鉱物油などが発生に関与する場合があります。

3.症状

有棘細胞がんの症状は、発生部位や発生原因によってさまざまです。

一般に、比較的大きく、ふぞろいな形の紅色をした皮膚の盛り上がりで肉のかたまりの崩れたもののように見え、表面にびらんや潰瘍を伴って出血しやすく、つまむとしこりを触れるような場合は要注意です。大きくなると腫瘍の形はカリフラワーに例えられることもあります。それ以外に自覚症状は特にありませんが、有棘細胞がんは腫瘍(がん)の表面が弱くなっているので一般細菌による感染を起こしやすく、膿をもったり悪臭を放ったりします。

4.有棘細胞がんを生じやすい前駆症・表皮内がん(日光角化症・ボーエン病)

放置すると皮膚がんへと変化する皮膚がん前駆症と呼ばれるものがあります。その中で、発生頻度の高く、放置すると有棘細胞がんになる病変として、日光角化症、ボーエン病があります。
【皮膚がん前駆症・表皮内がんについて、もっと詳しく】
皮膚科では、以前から皮膚がん前駆症という言葉は以下2つの意味で使われます。
1つ目は、悪性の細胞、つまりがん細胞をもってはいるのですが、これが表皮の中だけにとどまっている疾患を指す使い方です。これは皮膚がんの病期分類の0期と同じ状態で、表皮内がんと呼ばれるものです。これを皮膚がん前駆症・表皮内がんと記載しています。これを放置しているとがん細胞はやがて真皮の中へ入り、本物の皮膚がんになりますので、表皮内がんのうちに治療してしまうことが大切です。日光角化症、ボーエン病もこれに該当します。

2つ目は、もっと広い意味で皮膚がん発生の母地(ぼち)になるものを指します。この中には、慢性放射線皮膚炎や、熱傷瘢痕(ねっしょうはんこん)などが含まれます。現在はどこにもがん細胞はないのですが、正常の健康な皮膚に比べて将来がん細胞が出現しやすいため、注意深く皮膚を観察する必要のある状態のことです。すぐに治療をしなければならないわけではありません。

日光角化症、ボーエン病は表皮内がんですので、完全に切除すれば治ります。
しかしながら、ボーエン病は、内臓がんが体の中に潜んでいることを示すサインのひとつであるともいわれており、胃がんや肺がんなどの内臓がんが見つかることもあります。
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【日光角化症について、もっと詳しく】

1)日光角化症とは

日光角化症とは、慢性的に日光や紫外線を浴びることによって発生する上皮内がんです。中年以降、頭、顔、うなじ、手の甲、前腕などの日光(紫外線)のよくあたる部位に、大きさ1cm~数cmで、淡い褐色から紅褐色の表面ががさがさと乾燥したような、輪郭のぼやけた円に近い形の皮疹(ひしん)ができます。
老人性角化症とも呼ばれ、高齢になるほど発生頻度は高くなります。この腫瘍は近年増加傾向にありますが、その原因としては、社会の高齢化の他に、地球の環境破壊によるオゾン層の減少のためであるという説もあり、今後もさらに増え続けることが予想されます。
日光角化症を放置すると、進行して有棘細胞がんになります。

2)日光角化症の診断

肉眼的な所見に加え、組織診断が行われます。

3)日光角化症の主な治療法

日光角化症の治療法として、手術(外科治療)、薬物療法凍結療法、光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)があります。
がんが単発であれば、通常、外科療法や凍結療法が選択されます。多発している場合には、その他の治療法が選択されることが一般的です。また、角化が強い場合やほかの治療に反応しなかった場合、真皮内への浸潤(しんじゅん)が疑われる場合などには手術を選択するという方針が一般的です。

(1)手術(外科治療)

角化が顕著な場合や、真皮内への浸潤が疑われる場合、手術以外の治療で効果が得られなかった場合には、手術が行われます。手術で切除した組織を調べて、診断を確定します。
日光角化症では、腫瘍の辺縁から0.5cm離し、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除すれば十分とされています。

(2)薬物療法

手術や凍結療法を行いにくい場合や、多発する病変がある場合に行われます。以下に、日光角化症で用いられる薬の代表例を示します。
・イミキモド:外用剤で、手術や凍結療法を行いにくい病変などの治療として勧められます。1回約7時間塗布(とふ)、週3回、16週間にわたって外用することで、病変は5割くらいの確率で消えるといわれています。日本では顔面と禿頭部(とくとうぶ)のみに保険適応があります。
・フルオロウラシル(5-FU)軟膏:多発する薄い病変に対して用いられます。

(3)凍結療法

液体窒素(-196℃)を綿棒などに浸して病変に押しつけ、組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、細胞を凍結壊死(とうけつえし)させる方法です。凍結療法は治療時や治療後の体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために体の具合の悪い方にも適した治療法です。

(4)光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)

腫瘍親和性光感受性物質(がんに特異的に集まる物質)を投与した上で、光感受性物質の集積したがん細胞にレーザー光を照射し、がん細胞を選択的に攻撃する方法です。広範囲に存在する多発性の日光角化症に対する治療として勧められています。
ただし、PDTは2016年11月現在、日光角化症に対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。
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【ボーエン病について、もっと詳しく】

1)ボーエン病とは

形がふぞろいの斑状(はんじょう)、または軽く盛り上がった皮疹で、正常皮膚との境界がはっきりしています。色は淡い紅色から褐色調であることが多く、表面には白色や黄白色のがさがさと乾燥してはがれ落ちやすい皮膚が付着しています。一部にびらんがあったり、かさぶたがついていたりすることもあります。ボーエンというのは発見者の名前です。

日本人では約80%が胸、腹、背、上腕、太ももなどの日光にあたらない部位に発生し、がんこな湿疹と間違われることもしばしばあります。

ボーエン病も、日光角化症と同じように、進行すると有棘細胞がんになります。全身にこの皮疹ができる多発性ボーエン病は砒素の摂取と関連があることが知られています。

2)ボーエン病の診断

肉眼的な所見に加え、組織診断が行われます。

3)ボーエン病の主な治療法

ボーエン病の主な治療法として、手術(外科治療)、凍結療法、光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)、薬物療法があります。病変部位や個数によって、治療が選択されます。一般には、小型の病変に対しては手術および凍結療法が、大型もしくは多発する病変に対してはPDT、フルオロウラシル(5-FU)およびイミキモドによる薬物療法が勧められています。

(1)手術(外科治療)

ボーエン病に対する最も一般的な治療です。採取した組織について、病理学的な評価が行われます。
ボーエン病では、腫瘍の辺縁から0.5cm離し、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除すれば十分とされています。

(2)凍結療法

液体窒素(-196℃)を綿棒などに浸して病変に押しつけ、組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、細胞を凍結壊死(とうけつえし)させる方法です。凍結療法は治療時や治療後の体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために体の具合の悪い方にも適した治療法です。
軽症例を中心に広く実施されます。

(3)薬物療法

大型もしくは多発する病変に対しては、薬物療法が検討されます。以下に、ボーエン病で用いられる薬の代表例を示します。
・フルオロウラシル(5-FU)軟膏:多発する病変に対して用いられます。
・イミキモド:顔面などに限り用いられるクリーム状の塗り薬です。ただし、2016年12月現在、ボーエン病に対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。

(4)光線力学的療法(Photodynamic therapy:PDT)

腫瘍親和性光感受性物質(がんに特異的に集まる物質)を投与した上で、光感受性物質の集積したがん細胞にレーザー光を照射し、がん細胞を選択的に攻撃する方法です。
ただし、PDTは2016年12月現在、ボーエン病に対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。
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5.疫学・統計

正確な年間発生数は不明ですが、皮膚がんの中では基底細胞がんに次いで多く生じます。

また、男性に多く、加齢とともに増加し、通常のがん年齢よりも高い70歳以上が過半数を占めています。
【参考文献】
  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版
  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48
  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)
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更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
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2016年12月20日 タブ形式への移行と内容の更新をしました。
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1.がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

がんの疑い

  「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく受診しましょう。
   

受診

  受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
   

検査・診断

  検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。
   

治療法の選択

  がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。
   

治療

  治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。
   

経過観察

  治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

2.受診と相談の勧め

がんという病気は、患者さんごとに症状のあらわれ方が異なります。また、症状がなく検診でがんの疑いがあると言われることもあります。何か気にかかる症状があるときや、詳しい検査が必要と言われたときには、医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご自身で判断したり、何か見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、問題がないことを確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしていますので、お気軽に訪ねてみてください。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも相談することができますので、わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

詳しくは、「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」のページをご覧ください。

お近くのがん相談支援センターは「がん相談支援センターを探す」から検索することができます。

3.がんと言われたとき

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。

病気がどのくらい進んでいるのか、果たして治るのか、治療費はどれくらいかかるのか、家族に負担や心配をかけたくない…、人それぞれ悩みは尽きません。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。しかし、あまり思い詰めてしまっては、心にも体にもよくありません。

この一大事を乗りきるためには、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していく必要があります。そこで、まずは次の2つを心がけてみませんか。

1)情報を集めましょう

まず、自分の病気についてよく知ることです。病気によってはまだわかっていないこともありますが、その中で担当医は最大の情報源になります。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。
病気のことだけでなく、療養生活のこと、経済的なこと、薬のこと、食事のことのような身の回りに関しては、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士などが専門的な経験や視点であなたの支えになってくれます。

また、あなたが集めた情報が正しいかどうかを、あなたの担当医に確認することも大切です。

「知識は力なり」。正しい知識は、あなたの考えをまとめるときに役に立ちます。

2)病気に対する心構えを決めましょう

大きな病気になると、積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念を持って臨む人、なるようにしかならないと受け止める人などいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためには、あなたが自分の病気のことをよく知っていることが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医からよく説明を受け、いつでも率直に話し合い、その都度十分に納得した上で、病気に向き合うことに尽きるでしょう。

情報不足は、不安と悲観的な想像を生み出すばかりです。あなたが自分の病状について理解した上で治療に取り組みたいと考えていることを、担当医や家族に伝えるようにしましょう。

率直に話し合うことが、担当医や家族との信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。
更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
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1.検査

確定診断のためには、局所麻酔をして皮膚病変の一部を切りとり、顕微鏡で調べる皮膚生検が必要です。
このほかに必要に応じて、腫瘍浸潤(しんじゅん)の深さや転移など、病気の広がりを調べるために、超音波(エコー)検査をはじめ、CTやMRI、PETと呼ばれる画像検査を行うことがあります。検査によってがんがどのくらい進行しているのかという時期(病期:ステージ)を確かめ、それぞれの病期に応じた治療法を行います。

1)超音波(エコー)検査

体に超音波をあてて、その反響の様子で体内の状態を調べる方法です。原発巣の進行度の重要な指標である厚さを予測したり、リンパ節などへの転移の検索に役立ちます。

2)CT、MRI検査

CT検査は、X線を使って体の内部を描き出し、治療前に転移や周辺の臓器へのがんの広がりを調べます。MRI検査は、磁気を使用します。造影剤を使用する場合、アレルギーを起こすことがあります。アレルギーの経験のある人は医師に申し出てください。

3)PET検査

放射性フッ素を含む薬剤を注射し、その取り込みの分布を撮影することで全身のがん細胞を検出するのがPET検査です。

2.病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてStage(ステージ)とも言います。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることが多いかもしれません。

皮膚がん(悪性黒色腫を除く)の病期は、以下のように0期からIV期までの5つの時期に分けられます(UICC第7版2007年による)。
表1 有棘細胞がんの病期
0期 悪性化した細胞(がん細胞)は出現しているものの表皮の中にとどまっている。
この時期を表皮内がんと呼ぶが、これはがんの一歩手前の状態。
本物のがんではない。
I期 腫瘍の大きさが2cm以下で、真皮だけ、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
II期 腫瘍の大きさは2cmを超えているが、真皮、または真皮から皮下組織の中にとどまっている。
III期 腫瘍の大きさにかかわらず、腫瘍の深さが皮下組織を越えて、さらに深い筋肉、軟骨、骨などにおよんでいる。
または腫瘍の大きさにかかわらず、所属リンパ節と呼ばれる首、わきの下、太もものつけ根のリンパ節に転移がある。
(注:同時にいくつもの腫瘍が多発している場合は、その中のもっとも進行した状態のものを代表と考えて病期分類を行う。)
IV期 最大径が6cm以上のリンパ節転移がある。
または所属リンパ節を越えて遠隔転移をしている。
copyright
日本皮膚悪性腫瘍学会編「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版」(金原出版)より作成
【参考文献】
  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版
  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48
  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)
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更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
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1.臨床病期による治療

有棘細胞がんは、病期に基づいて治療法が決まります。次に示すものは、有棘細胞がんの病期と治療方法の関係を大まかに示した図です。
図3 有棘細胞がんの臨床病期と治療
図3 有棘細胞がんの臨床病期と治療
日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第1版」(金原出版)より作成

2.病期(ステージ)別治療

治療は主に病期により決定されます。同じ病期でも、病気の進行具合や全身状態によって、治療が異なる場合があります。

また、有棘細胞がんの再発リスクは、部位や大きさ、その他の臨床所見から、低リスク群と高リスク群に分類されます。手術の際には、リスクに応じて切除範囲が考慮されます。

0期
腫瘍の辺縁から5mm離して、深部は腫瘍が露出しない程度に皮下脂肪組織を含めて切除します。凍結療法や放射線治療など、手術以外の治療法を選択できる場合もあります。

I期
腫瘍の辺縁から6mm(低リスクの場合には4mm)以上離し、表皮、真皮、皮下脂肪組織を腫瘍とともに切除します。

II期
腫瘍の辺縁から6mm(低リスクの場合には4mm)以上離し、表皮、真皮、皮下脂肪組織を腫瘍とともに切除します。一般に腫瘍が大きくなると、浸潤(しんじゅん)の深いものもあり、この場合には、皮下脂肪組織と筋肉の境界部にある筋膜という薄い膜も切除します。化学療法や放射線治療を併用することがあります。

III期
腫瘍の辺縁から6mm(低リスクの場合には4mm)以上離して切除します。腫瘍は皮膚を越えて浸潤していますので、筋肉を含めて切除したり、骨を削ったり、ときには患肢(かんし)の切断術が必要になります。また、リンパ節転移がある場合は、所属リンパ節郭清と呼ばれる手術方法によって、リンパ節を切除します。III期もII期と同様に化学療法や放射線治療を併用することがあります。

IV期
薬物療法や放射線治療が中心となり、これに手術も組み合わせる集学的治療を行います。

3.治療成績

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

生存率は、通常、がんの進行度や治療内容別に算出しますが、患者さんの年齢や合併症(糖尿病などがん以外の病気)の有無などの影響も受けます。用いるデータによってこうした他の要素の分布(頻度)が異なるため、生存率の値が異なる可能性があります。

データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者さんに当てはまる値ではないことをご理解ください。
【有棘細胞がんの生存率について、さらに詳しく】
ここに示しているのは、1987年より1994年 まで厚生労働省の研究班で調査を行って得られた累積生存率です。少し古いデータですが、大まかな目安としてご覧ください。
表2 有棘細胞がんの累積生存率
病期 期間 累積生存率
I期 80カ月 92.0%
II期 80カ月 82.5%
IIIA期 80カ月 59.3%
IIIB期※※ 80カ月 48.0%
IV期 50カ月 10.0%
病期分類は、旧UICC分類による
※原発部のがんが深部組織に浸潤しているが、転移がない
※※リンパ節に転移がある
出典:石原和之,皮膚悪性腫瘍の統計 過去:Skin Cancer,2007;22巻3号:209-216
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4.自分に合った治療法を考える

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではありません。自分の生活や人生において何を大切にするのか、自分で考えることが大切です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、まず担当医に質問してみましょう。診断を聞くときには、病期(ステージ)を確認しましょう。治療法は、病期によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

担当医と話すときの助けとして「わたしの療養手帳 自分に合った治療法は?患者必携サイトへのリンクもご参照ください。「患者必携 わたしの療養手帳」はさまざまな場合で必要なことを書きとめることができる手帳になっています。印刷もできますので、自分で記入してみて、わからないことや聞いてみたいことを整理してみましょう。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。最初にかかった担当医に何でも相談でき、治療方針に納得できれば言うことはありません。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。セカンドオピニオンを聞きたいときは、担当医に話してみましょう。多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解していますので、快く資料を作ってくれるはずです。

セカンドオピニオンについては「セカンドオピニオンを求めるとき」もご参照ください。

担当医以外でも、看護師などの医療スタッフやがん相談支援センターのスタッフに相談することができます。あなたの抱えている問題点を整理し、一緒に考えてくれます。

がん相談支援センターについては「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」もご参照ください。
【参考文献】

  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版

  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48

  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)

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1.手術(外科治療)

1)手術について

有棘細胞がんの治療では、可能な場合にはまず手術が選択されます。腫瘍そのものだけを切除しても、再発転移を起こす可能性があるので、腫瘍の周りの正常に見えるところを含めて、幅も深さも余裕をもって切除する必要があります。手術によって皮膚の欠損が大きくなった場合には、植皮術をはじめ、形成外科的な方法で修復を行います。

2)手術(外科治療)に伴う主な合併症と対策

I期、II期で行われる手術は体の表面に近い部分の切除ですので、通常は術後大きな機能障害は起こりません。手術によってできた傷跡そのものや、腫瘍を切除したために起こる変形などの美容的な面も形成外科的な技術の進歩によって、かなりきれいに治るようになってきました。
手足の指や、上肢(じょうし)、下肢(かし)の切断手術を受けた場合は、術後の機能訓練が必要です。上肢、下肢の場合は、切除してなくなったはずの部分に痛みを感じること(幻肢痛)がありますが、時間とともに薄らいでいきます。また、わきの下や太もものつけ根のリンパ節郭清を受けた場合は、手足がむくんだり、しびれたりすることがあります。首のリンパ節郭清を受けた場合には、肩の張りやこりが続いたり、一時的に顔面神経が麻痺(まひ)することがあります。これらは多くの場合、時間とともに軽くなり、回復していきます。

上肢、下肢の切断手術後の機能訓練などについては、「上肢切断・離断後のリハビリテーション」「下肢切断・離断後のリハビリテーション」もご参照ください。

2.凍結療法

液体窒素(-196℃)を使って、がん組織内の温度が-20~-50℃になるように冷やし、がん細胞を凍結壊死(とうけつえし)させる方法です。浸潤(しんじゅん)の浅いがんはこの方法で治療が可能です。凍結療法は治療時や治療後の体への影響の少ない方法なので、高齢の方や持病のために体の具合の悪い方にも適した治療法です。

3.放射線治療

1)放射線治療について

有棘細胞がんは皮膚がんの中でも放射線治療がよく効くものの1つです。
発症部位や内科的理由から、手術ができなかった有棘細胞がんに対しても、治癒を目指して放射線で治療を行うことがあります。
また、手術を行った場合でも、再発の可能性が高いと考えられる場合には、術後に放射線治療を行うことがあります。
放射線治療にはいくつかの方法がありますが、この場合、X線や電子線を専用の機械を使って体の外側から照射する方法が一般的です。通常1回の照射は短時間で終わるため、放射線治療は通院しながら受けることも可能です。
また、がんが進んだ場合にも、痛みなどの症状を緩和し、生活の質を保つために放射線治療が行われることがあります。

2)放射線治療の副作用

放射線を照射する部位によって副作用は異なります。一般に、放射線を照射した部位の皮膚が一種のやけどの状態になりますので、皮膚の発赤、水疱、びらん、潰瘍、かゆみ、色素沈着や関節の拘縮(こうしゅく:関節が動きにくくなること)、手足のむくみなどが起こることがあります。

4.薬物療法(化学療法)

1)薬物療法について

手術や放射線治療は局所療法といって、体の一部分を狙って悪いところを治そうという治療ですが、ある程度がんが進行している場合には、全身療法である細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)が治療の中心となります。また、有棘細胞がんは頭、顔、首など人目につく部位にできることが多いので、切除する部分が少なくてすむように、手術前に抗がん剤でがんをできるだけ小さくしておく治療を行う場合もあります。
また、がんが進んだ場合に、痛みなどの症状を緩和し、生活の質を保つために化学療法が行われることがあります。

有棘細胞がんで用いられる抗がん剤の代表的な例として、以下があげられます。
・CA療法:シスプラチン(もしくは、カルボプラチン)+ドキソルビシン(もしくは、エピルビシン)
・FP療法:フルオロウラシル+シスプラチン
・塩酸イリノテカン
・PM療法:ペプロマイシン+マイトマイシン
・PEP療法:ペプロマイシン

2)薬物療法の副作用

主な副作用は下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、発熱、全身倦怠(けんたい)感、脱毛、呼吸機能障害、肝機能障害、腎機能障害、骨髄抑制などがあり多彩です。いずれも抗がん剤によって起こる一時的なものですが、回復が遅れた場合には、それぞれの副作用を軽くするような治療を行います。

5.集学的治療

ある程度進行した有棘細胞がんは、上の1~4のうちから1つを選んで治療を行うのではなく、これらのすべてをうまく組み合わせてもっとも効果があがるような治療を行います。これを集学的治療と言います。
【参考文献】
  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版
  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48
  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)
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更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
更新履歴
2016年12月20日 タブ形式への移行と、「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」より、内容の更新をしました。
2007年09月03日 更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。

1.生活上の注意

病院での検査だけでなく、皮膚のがんでは、自分で傷口や創の周囲の状態を観察することができます。手術を行った場合には、患者さんやご家族が定期的に鏡を利用して、手術後の傷口の様子や全身の皮膚の状態をチェックすることが、再発転移を早期に見つけるために役立つとされています。一般には、皮膚の色が変化したところはないか、急に盛り上がったり、しこりができたり、引きつれがないかどうか、などを観察します。普段の診察のときに、担当医に自分で気を付けておくべきことについて、確認しておきましょう。心配なことがあったら、自分で判断しないで必ず担当医や看護師に相談しましょう。

2.経過観察

治療を行ったあとの体調確認のため、また再発の有無を確認するために定期的に通院します。間隔は病状によって異なります。診察では、主に、手術後の傷口の様子や、所属リンパ節腫大の有無について確認します。再発の危険度が高いほど頻繁、かつ長期的に通院することになります。
【参考文献】
  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版
  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48
  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)
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更新日:2016年12月20日 [ 更新履歴 ]    掲載日:1996年09月13日
更新履歴
2016年12月20日 タブ形式への移行と、「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」より、内容の更新をしました。
2007年09月03日 更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。

1.転移

転移とは、がん細胞がリンパ液血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこで成長したものをいいます。がんを手術で全部切除できたように見えても、その時点ですでにがん細胞が別の臓器に移動している可能性があり、手術した時点では見つけられなくても、時間がたってから転移として見つかることがあります。有棘細胞がんの術後の転移はリンパ節転移を経て起きることが主で、その出現は、術後数年のうちにみられることが多いです。そのため、所属リンパ節腫大の有無について、定期的な経過観察が行われます。

2.再発

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することを言います。再発と言ってもそれぞれの患者さんで状態は異なります。転移が生じている場合には治療法も総合的に判断する必要があります。患者さんの状況に応じて治療やその後のケアを決めていきます。

3.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の改善を目的として、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族が自分らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透し始めています。

緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くするため、また、自分らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をします。
そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことなど、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

再発や転移、痛みが強いときの治療については、「患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版」の以下の項もご参照ください。

がんの再発や転移のことを知る患者必携サイトへのリンク
もしも、がんが再発したら 冊子
がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。
(Webサイトでもご覧になれます。「もしも、がんが再発したら [患者必携]本人と家族に伝えたいこと患者必携サイトへのリンク
【参考文献】

  1. 日本皮膚悪性腫瘍学会編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版

  2. 皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版,日本皮膚科学会誌,2015;125(1):35-48

  3. 日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);(金原出版)

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