概略
手術療法(外科療法)
手術のリスクと合併症
手術後の後遺症:小(無)胃症状とダンピング症候群
腹腔鏡下胃切除
内視鏡的治療
抗がん剤治療(化学療法)
抗がん剤治療の副作用
IV期の胃がんに対する治療
生存率
胃がんの治療は、病期にもとづいて治療法が決まります。次に示すものは、胃がんの病期と治療方法の関係を表す図です。日本胃癌学会の『胃がん治療ガイドライン』もご参照ください。担当医と最終的な治療方針について話し合う参考にしてください。

胃がんでは、手術治療が最も有効で標準的な治療です。胃の切除と同時に、決まった範囲の周辺のリンパ節を取り除きます(リンパ節郭清(かくせい))。胃の切除の範囲は、がんのある場所や、病期の両方から決定します。また、胃の切除範囲などに応じて、食物の通り道をつくり直します。リンパ節に転移している可能性がほとんどない場合には、手術ではなく、内視鏡による切除が行われることもあります。
胃の切除方法、切除範囲についてさらに詳しく
リンパ節郭清と周辺臓器の合併切除についてさらに詳しく
消化管の再建についてさらに詳しく
胃がんの手術で、合併症として最も多いものは、膵臓周辺のリンパ節を郭清することに付随した膵液瘻(すいえきろう:膵臓の分泌液である膵液が一時的に漏れる状態)です。次に問題となるのは、消化管をつないだ部分が漏れる縫合不全です。この合併症は手術後の死亡に最も結びつきやすいものです。胃全摘や噴門側切除後の食道・空腸吻合では、手縫い法が行われていた時代は縫合不全が4%程度ありましたが、器械を用いる方法が普及してからはほとんどなくなりました。幽門側胃切除後に、胃と十二指腸を直接つなぐ方法では縫合不全が2〜3%ありますが、胃と空腸をつなぐ方法ではほとんどありません。
その他、腹壁の感染、肺炎、出血、腸閉塞などの合併症が1〜2%みられます。また、いわゆる「エコノミークラス症候群」として知られる深部静脈血栓症とこれに続く肺塞栓(静脈に血の塊りが生じ、これが流れ出して肺の血管を塞ぐこと)が、最近少しずつ増えてきました。
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胃の手術を受けて一番大きく変わるのは食生活です。胃全摘や幽門側胃切除では、「速やかに相当量の食物を受けつけ、それらを一定時間蓄えて効率よく徐々に腸に送り出す」という胃の本来の役割が損なわれてしまいますので、食物を早く食べることが難しくなり、同時に早くおなかがすくようになります。胃の出口が開放状態なので、食べ物が食後どんどん小腸へ流れ込み、消化吸収されるので、血液中の糖分の値(血糖値)は食後急激に上昇します。それに反応して、血糖値を下げるホルモンであるインシュリンが大量に分泌され、一定時間後には血糖値が下がりはじめます。しかし、そのころには食べた食物の糖源はすでにほとんど吸収されたあとですから、血糖値はどんどん下がってしまいます。食後2〜3時間のころに突然脱力感、冷汗、倦怠感(けんたいかん)、集中力の途絶、めまい、手や指の震え、まれですが、ひどい場合は意識が遠のくようなことまで起こります。これを後期あるいは晩期ダンピング症候群と呼びます。
これに比べてまれにしかみられないのですが、食事中から食後30分以内に発現する動悸、発汗、めまい、眠気、腹鳴(おなかがごろごろはげしく鳴ること)、脱力感、顔面紅潮や蒼白、下痢などを、早期ダンピング症候群と呼びます。これは主として、糖分の濃い食物がそのまま腸に流れ込み、その浸透圧に反応して、多量の腸液が急激に分泌されたり、特殊なホルモンが分泌されて起こる現象とされています。
この他には、術後20〜30%の頻度で胆石が発生し、またカルシウムや鉄分の吸収が悪くなるといわれています。特に閉経後の女性では、胃全摘後に骨の変化が出やすいようです。
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腹腔鏡手術は、腹部に小さい穴を数ヵ所開けて、専用のカメラや器具で手術を行う方法です。通常の、開腹手術に比べて、手術による体への負担が少なく、手術後の回復が早いため、手術件数は増加しています。開腹手術と比べて、リンパ節郭清が難しいこと、消化管をつなぎ直す技術の確立が十分とはいえないことなどから、胃がんに対する腹腔鏡手術件数は全体としてはまだ少ないのが現状です。また、通常の手術に比べて合併症の発生率がやや高くなる可能性も指摘されています。腹腔鏡手術を検討する場合には、胃がんの腹腔鏡手術件数が多い施設を選ぶとよいでしょう。
2004年版の胃がん治療ガイドラインでは、胃がんの腹腔鏡手術はステージIの胃がんへの臨床研究として行うべき治療として位置づけられています。
おとなしいタイプのがん細胞の場合で、病変が浅く、リンパ節に転移している可能性が極めて小さいときは、内視鏡を用いて胃がん切除する、内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの方法があります。これらの治療では、内視鏡による切除が十分かどうかを病理検査で確認します。不十分な場合は胃を切除する手術治療が追加で必要になります。
胃がんの抗がん剤治療には手術と組み合わせて使われる補助化学療法と治療が難しい状況で行われる抗がん剤中心の治療があります。抗がん剤の副作用は人によって程度に差があるため、効果と副作用をよくみながら行います。
抗がん剤治療の種類に使われ方について
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を及ぼします。特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、その結果として、脱毛、口内炎、下痢、吐き気が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなることがあります。それ以外には、心臓への影響として動悸や不整脈が、また肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。副作用が著しい場合には治療薬の変更や治療の中断などを検討することもあります。
IV期の胃がんも、手術ですべてのがん巣(そう)を完全に取りきれると約15%の人が治癒します。切除しきれない場合には、抗がん剤が治療の中心となります。切除しきれない場合に、胃がんから出血していたり、食物の通りが悪くなっているときには、さらに切除したり、通り道をつくる手術をしたりします。また、標準となる抗がん剤治療(効果と副作用の評価が確立している)を受けることに加えて、開発中の抗がん剤の効果や副作用をみるための臨床試験に参加できることもあります。臨床試験に関する情報は定期的に更新されており、がん診療連携拠点病院にある相談支援センターで情報を聞くことができます。
がんの治療成績を示す指標として、生存率があります。生存率では、がんの治療後、ある一定期間の後に何パーセントの人が生存しているかを算出します。根治切除が行われたがんでは、深達度によって大きな予後の差があります。
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