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造血幹細胞移植を受ける方へ

更新日:2006年10月01日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2006年10月01日 掲載しました。

1.造血幹細胞移植とは

2.副作用および合併症とその対処法について

1)化学療法を受ける方

2)放射線療法を受ける方

3)感染予防

造血幹細胞移植を受けられる方は、もともとの病気による正常白血球数の減少、リンパ球の機能異常、移植前に行われる化学療法や全身放射線療法、免疫抑制剤の使用などにより、非常に感染しやすい状態にあります。

感染を予防するためには、感染しやすい部位や症状、好中球数などの検査結果を知り、予防をすることが大切です。また、感染症状があった場合には早めに医師や看護師に連絡し、適切な対処をしましょう。一般的な感染予防は、「骨髄抑制:白血球減少(感染しやすくなる)」を参考にしてください。造血幹細胞移植を受けられた方や血液疾患の患者さんの場合には、重度の免疫不全の状態にあり、日和見(ひよりみ)感染症への注意が必要になります。

日和見感染症とは

日和見感染症とは、健康な人には害のないような弱い細菌や真菌、ウイルスなどにより感染症を発症することです。重度の免疫不全状態である、造血幹細胞移植をした患者さんや血液悪性疾患の患者さんの場合などに起こりやすい感染症で、重症化し死に至る場合もあります。

人は幼少のころより、さまざまなウイルスや細菌、真菌などから感染を受け、体の中に持っています。このような微生物は、大腸菌のようによい働きをしているものもありますし、静かに身を潜めているものもあります。しかし、免疫不全が重症化すると、このような体内にいる弱い微生物の活動さえも抑えられないことにより、感染症を発症することもあります(内因性の日和見感染症)。また、「はしか」や「みずぼうそう」など、幼少のころに感染して免疫を獲得していた場合でも、免疫機構の混乱により、その記憶をなくして再び感染する場合もありますので、注意が必要です。

(1)予防投与

内因性の日和見感染症の予防のため、あらかじめ抗菌剤や抗真菌剤、抗ウイルス剤を使用して感染症を予防する場合があります。処方された薬剤は、必ず指示どおり内服しましょう。

代表的な微生物として、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、カリニ原虫、カンジダなどがあります。

(2)クリーンルームとは

「クリーンルーム」や「無菌室」と呼ばれている病室は、特別な空調設備(高性能フィルター)を使用して、きれいな空気を循環させている病室です。特に、カビの一種である「アスペルギルス」を除去し、アスペルギルス肺炎を予防する効果があります。「無菌室」という名前のため、誤解されやすいですが、決して菌のいない部屋ではありません。

※アスペルギルスは、土や埃(ほこり)などの中に多く、一般の環境に存在するカビです。

  • アスペルギルスは通常の空気中に存在しますので、治療中、特に好中球の低下している時期は、できるだけ空調管理された空間で過ごしましょう。病室(病棟)外へ出る際は、マスクをつけましょう。
  • 高性能フィルターで管理された病室は、窓を開けることによって浄化されていない外気が直接入ってしまいますので、このような病室では窓は開けないでください。空調機とエアコンのコントローラーが同じ場合には、エアコンのスイッチは常に入れたままにしておきましょう。スイッチを切ってしまうと、空調が停止して空気の浄化ができない場合があります。
  • 土や埃との接触をできるだけ避けましょう。病院周囲で工事をしている場合、アスペルギルス肺炎が増加するといわれています。工事現場には近づかないようにしましょう。埃の立ちやすい衣類や、汚れのひどいものは持ち込まないようにしましょう。生花やドライフラワー、鉢植えは避けてください。

(3)家族や面会者

ご家族や面会者など、周囲の方から感染症をもらってしまう場合もあります。健康管理には十分気をつけてもらいましょう。入院中の面会については、施設の規定に準じて行ってください。面会者は風邪などを引いていないこと、ウイルス疾患(はしかやみずぼうそう、インフルエンザなど)にかかっていないこと、手洗いを行えることがポイントになります。

家庭で同居する方、特に小さなお子様は、感染症にかかりやすい年代です。「はしか」、「みずぼうそう」、「風疹(ふうしん)」、「ムンプス」など予防接種により免疫を獲得できるものは、接種を行っておきましょう。生ワクチンを使用する「ポリオ」、「はしか」、「みずぼうそう」は接種した人がウイルスを排出し、免疫不全者が接触して感染する場合があります。ウイルスの排出は、予防接種後も数週間続く場合がありますので、予防接種を受ける際は担当医に相談しましょう。

インフルエンザワクチンは、毎年接種が必要です。アレルギーなどで接種できない場合を除き、ご家族全員で接種して予防しましょう。

インフルエンザの予防
  • 毎年、ワクチン接種を受けましょう。インフルエンザ流行前の、11月ころに接種するのがよいでしょう。ご家族全員で受けることをお勧めします。
  • 手洗い、うがいを行いましょう。特に外出の後は念入りに。
  • インフルエンザ流行期は人ごみを避けましょう。マスクをつけて出かけましょう。
  • 空気の乾燥により、感染しやすくなります。適度な加湿に努めましょう。加湿器を使用する場合は、こまめに掃除をしてください。
  • 過労は避け、十分に休息をとりましょう。栄養バランスのよい食事をとりましょう。
  • インフルエンザ症状(発熱、関節痛、頭痛など)があった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

(4)食事の注意

栄養バランスがよく、新鮮な食材を使用しましょう。入院中は、病院の規定に沿った食事をお召し上がりください。

注意する食品
  • 卵、魚介類、肉類などの動物性たんぱく質の生ものは、腐敗しやすいため、一定期間は避けましょう。十分に加熱すれば食べることができます。調理の際は中まで火が通っていることを確認しましょう。
  • カビの生えたチーズは避けましょう。
  • 井戸水や沢水、湧き水などの管理されていない水は、生で飲むことは避けましょう。必ず、沸騰させてから使用しましょう。
調理上注意する点
  • 食中毒対策がポイントです。
  • 食品は新鮮なものを選び、早めに使いましょう。冷蔵庫の過信は禁物です。調理後も早め(2時間を目安)に食べましょう。残った食品は、冷凍や冷蔵をして保存し、早めに食べましょう。
  • まな板やふきんなどの、調理器具の衛生状態にも気をつけましょう。よく洗い、乾燥させてください。漂白剤や熱湯をかけて消毒をしましょう。
  • 調理する方の健康状態も大切です。調理前には必ず手洗いをしましょう。下痢や嘔吐があり、感染症が疑われる場合には、調理を避けましょう。
外食をする場合には
  • 外食をする場合には、衛生状態のよいお店を選びましょう。
  • 調理済みの弁当などを食べる際は、賞味期限と保管状況に気をつけましょう。回転のよいお店を選びましょう。

(5)退院後の生活

治療が終了して退院した後も、感染予防行動は継続して必要になります。手洗いやうがいだけでなく、食事や掃除、自宅で飼っているペット、性生活などにも注意点があります。

4)移植片対宿主病(Graft-versus-host disease GVHD)

(1)皮膚ケア

移植の前処置(化学療法や放射線療法)により、皮膚は再生に必要な基底細胞や皮脂膜の機能が障害され、薄く乾燥して傷ができやすい状態となります。皮膚GVHDがない場合でも、皮膚は非常に弱い状態になっていますので、皮膚の健全性を維持していくために、予防ケアを継続的に行うことが大切です。

予防ケア(基本ケア)

(1)清潔
皮膚の表面は剥落(はくらく)した表皮や汗、埃などが混在して垢を形成しています。加えて、汗が放置されることで皮膚のpHが上昇し、細菌や真菌が増殖しやすい状態となるため、入浴やシャワー浴で汗や汚れを取り除きましょう。使用する洗浄剤(石鹸やシャンプー)は、皮膚のpHに近い弱酸性の洗浄剤を使用しましょう。

(2)化学的刺激を避ける
皮膚の表面は、アルカリに傾くと皮膚炎を起こしやすくなるため、常に弱酸性に保ちましょう。洗浄剤が皮膚に残ると化学刺激となってしまうため、すすぎは十分に行いましょう。皮膚常在菌には、皮脂を分解して皮膚の表面を酸性に保ち、他の病原菌の進入を阻止する働きがあります。常在菌を死滅させるような消毒薬や抗生物質を、習慣的に使用することは避けましょう。

(3)物理的刺激を避ける
圧力、摩擦などの刺激は皮膚を傷つけやすくするため、皮膚の洗浄時は、目の粗いガーゼやタオルによる摩擦は避け、柔らかいタオルを使用したり、手でやさしく包み込むように洗いましょう。洗浄剤は、十分に泡立てて使いましょう。
体毛の処理の際には、かみそりは避け、バリカンやはさみを使用しましょう。絆創膏は低刺激の製品を使用し、はがすときには力任せにせず、ゆっくりとはがすことが大切です。絆創膏をはがすときは、はがす方の皮膚を指で押し、絆創膏と皮膚の角度が90〜150℃にすることではがす力が最小になります。

(4)ふやけと乾燥予防
皮膚のふやけや乾燥は、刺激を受けて傷つきやすい状態となるため、避けることが必要です。皮膚の水分保持の役割をしているセラミドは、お湯の中に溶け出しやすいものです。入浴の際は、できるだけ38℃以下のお湯を使用し、入浴後は保湿・保護能力に優れた軟膏を塗って、乾燥を予防しましょう。特に放射線治療を受けた場合は、早期から皮膚の赤みや乾燥などの変化が起き、外的刺激に対して敏感になるため、治療開始時からのケアが重要です。
オムツを使用する場合は、皮膚がふやけやすいため、できるだけ空気があたるように工夫しましょう。

(5)日常生活上の注意
直射日光は皮膚の炎症を引き起こし、GVHDの誘因となる場合があります。外出の際は、帽子、長袖、すその長い衣服を着用しましょう。紫外線防止効果は、「コットン生地、黒色、厚地」がもっとも高いといわれています。日差しの強い場所へ行く際は、日焼け止めクリーム(SPF30以上、PA+++)を使用しましょう。
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紫外線は3月〜8月頃が強く(4月〜6月が最も強い)、10時〜12時に多く(11時〜12時が最大)なります。晴れの日を100とすると、曇りで70、雨で30といわれています。
室内や車の中でも紫外線を避けるようにしましょう。
皮膚のGVHDが出たときは

(1)皮膚が赤くなったとき
皮膚が炎症を起こし、さらに傷つきやすくなっているため、油性の軟膏(ワセリンや親水軟膏など)で積極的に保湿をします。場合により、ステロイド剤含有の軟膏を使用する場合もあります。

(2)かゆみ
皮膚に炎症が起きると、かゆみが生じてきます。皮膚をかいてしまうと傷つき、感染を併発するリスクが高まるため、皮膚をかいたり、皮をむかないようにしましょう。かゆみ止めの軟膏や内服薬を使ったり、水や氷で冷やすことも効果的です。夜間無意識にかかないように、つめは短く切り、綿手袋をつけると予防できます。

(3)痛み
皮膚に炎症を起こすとかゆみだけでなく、痛みを起こすこともあります。特に、手指や足の裏に痛みを伴う場合があります。皮膚刺激により炎症が悪化するので、できるだけ刺激を避ける工夫が必要です。手指は、軟膏をつけた後に綿手袋をつけましょう。手洗い回数が増えるだけでも刺激になる場合がありますので、手が汚れそうな場合は、綿手袋の上に使い捨ての手袋をつけて、手洗い回数を最低限にする方法もあります。靴やスリッパを履くだけでも痛くなる場合は、靴底にクッション性のある敷物を使用すると痛みが少なくてすみます。痛み止めを使用する場合もあります。

(4)水ぶくれや皮膚が破れたとき
小さな水ぶくれは、無理に破かず自然に吸収するほうが感染を起こさず、皮膚の再生も早いといわれています。無理に破かないように気をつけましょう。皮膚が破れてしまった場合は、油性の軟膏をつけ、刺激の少ないドレッシング剤で覆います。

専門的な皮膚ケアは、専門の看護師や皮膚科医と相談の上、行っていきましょう。

5)消化管GVHD(下痢、嘔吐(おうと)・嘔気(おうき))

消化管GVHDは、下部消化管(大腸や小腸など)の症状である腹痛や下痢、上部消化管(胃など)の症状である吐き気や食欲不振、嘔吐として現れます。診断は、内視鏡による組織検査で判断します。また、下痢は、GVHDの重症度や治療効果の評価に重要になるので、量を測定する場合があります。治療はステロイドなどの免疫抑制剤を使用しますが、下痢や嘔吐などにより食事が十分に摂取できなかったり、場合によっては食事を禁止し、消化管の安静を図るため、静脈栄養により栄養補給をする場合があります。

(1)下痢や腹痛など下部症状のある場合

1.腹痛
排泄(はいせつ)に関係なく腹痛が生じる場合があります。腹部の緊張を和らげるような体位(ひざを曲げて横になる)をとったり、湯たんぽなどでお腹を温めることでやわらぐ場合があります。下痢止めや鎮痛剤を使い、下痢を止めたり、痛みを緩和することもできます。

2.下痢
下痢は、多い場合には1日に2リットルくらい出る場合があります。頻繁な下痢により、肛門周囲が傷つきやすくなります。また、便はアルカリ性のため、皮膚が荒れやすくなります。排便後は洗浄により清潔に保ち、必要に応じて、撥水(はっすい)性のある軟膏をつけるなど、肛門周囲が荒れないように注意が必要です。水分や食事を摂取することにより下痢が悪化する場合は、経口摂取を制限する場合があります。水分がとれる際は、水よりもスポーツ飲料のほうが消化管に優しく、吸収しやすいため好まれます。冷えたものは刺激になりますので、室温に戻したものを飲むようにします。

3.食事
場合により、食事が禁止になる場合があります。

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