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血管外漏出

更新日:2006年11月30日 [ 更新履歴 ]    掲載日:2006年10月01日
更新履歴
2006年11月30日 更新しました。

はじめに

抗がん剤は正常な細胞にも細胞毒性を示すため、抗がん剤が血管内に投与されると、血管内の内皮細胞を傷害し、静脈炎や静脈血栓を起こしたりすることがあります。静脈炎とは、静脈内に留置したカテーテルと直接関連した静脈内の急性炎症です。静脈炎を起こした血管は(血管収縮性になり)血流が低下します。その結果、血栓形成を促進し、点滴の詰まりが起こります。また血管の外に漏れた場合は、皮膚や皮下組織を傷害し、後遺症を残してしまうことがあります。

組織障害の反応の強さは、抗がん剤の種類、溶液のpH、浸透圧、薬剤の濃度、漏出量が関係するのですが、引き起こされる皮膚障害の種類によって分類されています。

1.血管外漏出とは

静脈注射・輸液が、カテーテル(末梢に入っているチューブ)の先端の移動などによって、血管外の周辺組織に漏れたときに、組織の炎症や壊死をもたらすもので、静脈炎とは異なります。抗がん剤の場合、血管外漏出直後は、他の薬剤と同様に無症状あるいは、軽い発赤・腫れ・痛みの皮膚症状が出現しますが、数時間〜数日後にその症状が増悪し、水泡→潰瘍→壊死形成へと移行していきます。さらに重症化すると瘢痕(はんこん)が残ったりケロイド化してしまい、漏出部位によっては運動制限をきたして外科的処置(手術)が必要になることもあります。そのため、血管外漏出を起こさないような予防と、血管外漏出時の迅速で適切な処置が重要となってきます。

2.血管外漏出時の組織侵襲に基づく抗がん剤の分類

1)起壊死性抗がん剤

少量の漏出でも強い痛みが生じ、腫脹・水泡・壊死などの皮膚障害を起こし、結果として潰瘍形成に至ることがあるとされていて、早期の発見と処置が重要となります。

ドキソルビシン(アドリアシン(R))・ダウノルビシン(ダウノマイシン(R))・イダルビシン(イダマイシン(R))・エピルビシン(ファルモルビシン(R))・アムルビシン(カルセド(R))・マイトマイシンC(マイトマイシン(R))・ミトキサントロン(ノバントロン(R))・ビンブラスチン(エクザール(R))・ビンクリスチン(オンコビン(R))・ビンデシン(フィルデシン(R))・ビノレルビン(ナベルビン(R))・パクリタキセル(タキソール(R))・ドセタキセル(タキソテール(R))など

2)炎症性抗がん剤

漏出部位に発赤や痛みを生じることがありますが、潰瘍まで進展することは(ほとんど)ありません。

シスプラチン(ランダ(R)・ブリプラチン(R))・シクロホスファミド(エンドキサン(R))・ダカルバジン(ダカルバジン(R))・エトポシド(ベプシド(R)・ラステット(R))・フルオロウラシル(5-FU(R))・ゲムシタビン(ジェムザール(R))・チオテパ(テスパミン(R))・イホスファミド(イホマイド(R))・アクラルビシン(アクラシノン(R))・カルボプラチン(パラプラチン(R))・ネダプラチン(アクプラ(R))・イリノテカン(トポテシン(R)・カンプト(R))・ラニムスチン(サイメリン(R))・ニムスチン(ニドラン(R))など

3)起炎症性抗がん剤

皮下や筋肉への注射が可能な抗がん剤であり、ほとんど炎症症状は起こしません。

L-アスパラキナーゼ(ロイナーゼ(R))・ブレオマイシン(ブレオ(R))・シタラビン(キロサイド(R))・メトトレキサート(メソトレキセート(R))・ペプロマイシン(ペプレオ(R))・エノシタビン(サンラビン(R))など

3.自分でできる観察のポイント

静脈内に留置された(挿入された)針は、挿入部位の四肢を動かしても簡単に抜けたり、点滴が漏れてしまうことはほとんどありませんが、血管が細くなったり、もろくなっているようなときは、漏れに対する注意が必要です。特に、起壊死性抗がん剤を投与する場合は、針が挿入されている部位をできるだけ安静に保つように心がけてください。トイレなどは、投与前に済ませておいたほうが良いでしょう。血管外漏出の症状は静脈炎の症状と似ており、以下の症状に気づくことで早期の対応につながります。

  • 点滴の針が入っている所の周辺の発赤
  • 点滴の針が入っている所の痛み(ピリピリした感じ)
  • 点滴の針が入っている所の腫れ(違和感)
また、身体症状以外にも

  • 点滴の速度が遅い
  • 予定の輸液量が達成されていない
  • 血液の逆流がない
などの状況であれば、すぐに看護師に知らせてください。

また、点滴の針を抜いた後は、決してもまないで、しっかり押さえてください。押さえ方が不十分なときは、内出血を起こし、漏れはなくても腫れてしまうことがあります。針を抜いた後、5分間を目安に指でしっかり押さえて止血を行うようにしてください。

抗がん剤の漏出では、漏出直後に激痛がなくても2〜3日後に激痛や皮膚潰瘍などの障害症状が現れてくる(針が入っていた部分に赤み、痛み、腫れなどを生じてくる)ことがあります。針を抜いた後も、数日間は変化がないか観察するようにしてください。

4.予防法・対処法

血管外漏出に関与する要因として

  1. 薬剤の種類→起壊死性抗がん剤は、例え少量でも漏れると皮膚障害を起こします。
  2. 漏出量・漏出部位→部位がひじ関節に近いと、腕の動きに制限が起こります。
  3. 加齢・糖尿病・高血圧などの合併症により、血管がもろい状態であったり、手術などで片側に血流の障害が出て使用できる血管が限定されている状態であると、漏れに対する注意がより必要となります。
また、針を刺す部位の選定が重要となります。

  • 手首やひじ関節はできるだけ避けます。
  • もし、失敗して刺し替えるようなときは、反対側の腕か、もしくは失敗した穿刺部位より上側を刺します。
  • 採血後30分以内は、同一血管の下側からの挿入は避けます。
  • 繰り返し抗がん剤の投与を予定されている場合は、同一部位ではなく、左右交互に挿入するようにした方が良いでしょう。
血管外漏出は、以下の3点を行うことによって予防・軽症に止めることができます

  • 静脈炎の観察
  • 危険因子の把握
  • 迅速な事後処置

5.血管外漏出時の対処方法

抗がん剤の性質により対応が異なりますが、基本的には冷たい水や冷湿布などで冷やして、抗がん剤の限局化を図ります。

例外としてビンカアルカロイド系は、冷やすと逆に組織障害が増してしまうという報告もあり、温めた方が良いとされています。効果としては、血管を広げ薬剤の吸収を早めるといわれています。

抗がん剤投与中に血管外漏出を疑ったら

医療者に報告してください→点滴を止めますが、すぐには針を抜きません。

     留置針に残っている薬液を吸ってから、針も一緒に抜きます。
  漏出した場所のある手や足を高くあげます。
  抗がん剤の種類によって適切な処置を施します。
・ステロイド軟膏の塗布
・局所注射
・冷湿布の貼用
・(ステロイドの内服)
  新しくカテーテルを挿入する場合は、抗がん剤が漏れ出した部分のある手や足には挿入しません。

漏出後24〜48時間は観察と処置が必要となります。

自宅での対応としては、漏出部位を1回15〜20分間、1日4回以上は冷却し、できるだけ心臓より高くあげておきます。2〜3日過ぎても漏出部位の痛み、腫脹、発赤がおさまらない場合は、来院して再度診察が必要となります。
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