嘔気とは、胃のなかにあるものを吐き出したいという切迫した不快感を指し、嘔吐とは胃のなかの内容物が食道・口から逆流して外に吐き出される状態をいいます。
抗がん剤により、脳のなかにある嘔吐中枢が刺激されることで起こります。また、放射線療法と併用して抗がん剤治療を行うと、照射部位によっては、食道や胃に粘膜炎を起こすことで嘔気や嘔吐が起こることがあります。
抗がん剤による嘔気・嘔吐は、症状の現れ方によって、大きく以下の3つに分かれています。
抗がん剤開始後より24時間以内に出現するもの。
抗がん剤投与開始24時間以後に出現するもの。
以前の嘔吐した体験から、脳のなかにある大脳皮質を刺激することによって起こるといわれ、主に精神的要因により出現するもの。
| 高発現率グループ | 中発現率グループ | 低発現率グループ |
| シスプラチン カルボプラチン ネダプラチン シクロホスファミド ダカルバジン イリノテカン ドキソルビシン イダマイシン イフォスファミド |
ドセタキセル パクリタキセル フルオロウラシル ゲムシタビン エトポシド マイトマイシン C |
ブレオマイシン ブスルファン ビノレルビン ビンクリスチン ビンブラスチン アスパラキナーゼ |
嘔気・嘔吐は抗がん剤を開始してから数時間後から起きはじめ、3〜4日間ほどで症状は落ちつきます。また、全く嘔気・嘔吐がない場合や、3〜4日以上続く場合もあり、嘔気・嘔吐の起こる時期と期間はかなりばらつきがあります。それは使用する抗がん剤の種類・量、抗がん剤の組み合わせ方、治療する期間、個人差に大きく左右されるからです。
嘔吐によって、水分と胃液・十二指腸液などに含まれる電解質も体外に出てしまいます。電解質(カリウム、ナトリウムなど)は体内の水分量の調節、神経筋肉の興奮・伝達、体内の水分性状バランス保持(酸性、アルカリ性に傾き過ぎないようにする)などの働きがあります。そのため電解質や水分が多量に失われると、脱力感・倦怠感・手足のしびれなどの電解質異常症状や、口の渇き・皮膚の乾燥・尿量の減少・体重の減少などの脱水症状が出てきます。これらがさらに進むとだんだんと衰弱し、意識障害などを起こすこともあります。
また嘔吐することによって、消化・吸収の働きが低下し、体内に必要な栄養が行き届かなくなり、栄養状態の低下・体重の減少が起こります。他に吐物が誤って気道に入ると肺炎、ひどいときには窒息を起こすことがあります。
近年さまざまな制吐剤が開発され、それらを使用することで、嘔気・嘔吐の症状をかなり軽減することができるようになりました。病院で処方される制吐剤(嘔気を抑える薬)は、決められた指示どおりに内服してください。また、嘔気が強いときに使用していただくものもあります。嘔気が強く、内服が難しいときは、座薬を用いることも可能です。嘔気・嘔吐は我慢せず、担当医と相談しながら制吐剤をうまく使用していくことが大切になります。
吐物の性状や回数、嘔気・嘔吐の症状があらわれる時期は、身体の異常を知る大切な目安になりますので、メモを取っておくとよいでしょう。
嘔気・嘔吐が長く続き、食事や水分がほとんど取れないときは、医療者に連絡してください。