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膀胱を摘出した場合のリハビリテーション
更新日:2004年12月02日 掲載日:1997年12月10日
泌尿器がんには、膀胱がん、腎盂・尿管がん、前立腺がん、腎がん、精巣腫瘍などがあります。この中で、手術後に排尿リハビリテーションが必要となる代表的なものは、膀胱がんで膀胱を摘出した場合と、前立腺がんで前立腺を摘出した場合の2つです。
以下に、膀胱がんで膀胱を摘出した場合の排尿リハビリテーションについて説明します。
1.尿路変向術の選択
膀胱がんで膀胱をとってしまうと、必然的に尿路を再建する(尿路変向術)必要があります。尿路変向術としては、回腸導管造設術、導尿型新膀胱造設術、自排尿型新膀胱造設術の3つの方法があります。
がんの拡がりから尿道を温存することが危険と判断された場合は、尿道の摘出が必要であり、自排尿型新膀胱造設術の適応はありません。しかし、尿道を摘出する必要がないと判断された場合は、3つの尿路変向術の中から選択できます。尿路変向術は個人の将来の人生の生活の質に深くかかわってきます。それゆえ、それぞれの手術方法について十分理解した上で、個人の生活様式と希望に合わせて選択する必要があります。以下に、それぞれの手術方法の概略と特徴、ケアの方法、長所、短所について説明します。
1)回腸導管造設術
(1)手術方法の概略
回腸導管造設術の図
(画像をクリックすると拡大表示します:24.7KB)
小腸の一部(10〜15cm)を利用して、これに尿管をつなぎ尿を導く管とします。この導管を腹部の皮膚に縫いつけて尿を排出する出口(ストーマ)とします。
(2)特徴とケアの方法
- 腹部の右側に尿の出口(ストーマ)がつくられます。大きさは2〜3cmで、円形の梅干しのようなかたちをしています。
- ストーマからは断続的に尿が出てきます。そのため尿を受けとめる袋をつけて尿をため、200〜300mlたまったところでトイレに流します。
- 袋は皮膚保護剤によってストーマの周囲の皮膚に貼りつけられるようになっています。
(3)長所
- 歴史のある確立した手術方法で、比較的単純な手術です。
- かぶれなどの皮膚障害や見た目の違和感を除けば合併症が少ない手術です。
- 袋にたまった尿量がよくわかります。
(4)短所
- 腹部に装具を常時装着しておく必要があります。
- ストーマケア(ストーマ周囲の皮膚の手入れ)を自分で行い、できない場合は身近な人に行ってもらう必要があります。装具交換は週に2回くらいで、時間は30〜40分かかります。
- ストーマケアの方法が悪いとストーマ周囲はかぶれなどの皮膚障害がおこります。
- 装具代が必要です。申請すれば身体障害者に認定されます。ストーマ装具の一部を助成する制度があり、各自治体により助成制度の有無やストーマ装具の助成金額は異なりますので、各自治体の福祉窓口にお問い合わせ下さい。
2)導尿型新膀胱造設術
(1)手術方法の概略
導尿型新膀胱造設術の図
(画像をクリックすると拡大表示します:28.0KB)
小腸を約70cm切り離して、尿をためる袋(新膀胱)をつくります。これを腹部の中に置いて、定期的に尿を排出するための細い通り道(導尿管)を腹壁、またはへそにつなぎます。
(2)特徴とケアの方法
- 下腹部に尿を排出するストーマ(導入口)がつくられます。大きさは1cmほどです。そのストーマにやわらかい管(カテーテル)を入れて尿を排出します。この操作を導尿といいます。
- 3〜5時間に1回、新膀胱の中にたまった尿を導尿します。
- 新膀胱は生きている腸でつくられているため、腸粘液が尿に混じります。腸粘液がたまり過ぎると尿が出にくくなります。この腸粘液は導尿だけでは出しきれないため、1〜2日に1回、膀胱内をきれいに洗う必要があります。
- ストーマにはふだん小綿球か小さなガーゼをあてておきます。
(3)長所
- ストーマ(導入口)は1cmほどの大きさなので、目立ちません。
- ストーマ装具をつけておく必要がありません。
- 手術前と生活様式をかえる必要がありません。衣服・運動・職業などにはほとんど制限がありません。
(4)短所
- 一定時間ごとの導尿や洗浄など、膀胱の自己管理が必要です。
- ストーマ装具は装着しませんが、導尿の道具を常に持ち歩くことが必要です。手術後2〜3ヶ月は尿漏れがひどい場合があります。その時は回腸導管と同様に、ストーマ装具の装着が必要になります。
- ストーマからはわずかに尿が漏れることがあるので、ふだんは小綿球か小さなガーゼをあてておきます。
- カテーテルが入りにくく導尿が難しいことがあります。
- 夜間にも1〜2回起きて導尿する必要があります。
- 膀胱の管理が自分でできなくなった場合は、かわりに行ってくれる人が必要です。あるいはカテーテルを膀胱内に留置しておきます。
- 洗浄を行っていても、結石をつくりやすい傾向があります。
(1)手術方法の概略
約80cmの小腸を縫いあわせて袋をつくり、これを尿道につなぎます。
(2)特徴とケアの方法
- 少なくとも4〜5時間に1回、腹圧を利用して排尿する必要があります。
- 外見上は術前とかわりありません。
(3)長所
- 尿道より排尿が可能で、器具の使用やストーマ装具をつける必要がありません。
(4)短所
- 新膀胱の容量が安定するまでの期間(手術後1〜3ヶ月ぐらい)は、尿漏れがおこる場合があります。尿漏れのある間は、紙おむつや尿漏れ用パッドなどをあてておきます。
- 新膀胱は自分の力では収縮することはできません。このため、腹圧をかけて排尿することになります。
- 尿がたまり過ぎて膀胱が大きくなり過ぎると、尿が出にくくなったり、尿が残ったりするので、少なくとも4〜5時間に1回は排尿が必要です。就寝後も1〜2回起きて排尿する必要があります。
- もし排尿後、大量の尿が出きらずに膀胱内に残る場合は、カテーテルを使って導尿することが必要になります。
尿路変向術を選択する時、経験のないことをイメージし、判断することは困難です。そのため、理解し納得するまで担当医や看護師の説明を繰り返し聞く必要があります。また、術前に実物の装具やカテーテルなどを見たり直接触れたり、本やビデオを見たりしておくと術後の戸惑いが少なくなるでしょう。ときには尿路変向術を受けた人たち(患者会)の経験談を聞いてみることもお勧めします。
2.尿路変向術後の排尿リハビリテーション
尿路変向術後、新しい排尿管理法を習得するためには訓練を必要とします。以下に、導尿型新膀胱造設術と自排尿型新膀胱造設術の排尿リハビリテーションについて説明します。
1)導尿型新膀胱造設術の場合
(1)新膀胱訓練
術後3週間前後に新膀胱造影が行われます。吻合部に縫合不全がないことを確認した後、膀胱留置カテーテルが抜去され、自己導尿訓練を行い退院となります。
(2)自己導尿訓練
新膀胱にたまった尿をストーマ(導尿口)から出すために自己導尿を行います。
- 必要物品
導尿用カテーテル(3孔先穴カテーテル14〜16Fu)、尿カップ(社会復帰してトイレで排尿する場合は不要)、ガーゼまたは小綿球、潤滑ゼリー、絆創膏
- 方法
- 石鹸と流水で手指をよく洗います。
- カテーテルの先端に潤滑ゼリーをつけます。
- 導尿管の走行を確かめながら静かに挿入します。
- 尿が出てきたところで挿入を止め、尿を出しきります。
- カテーテルを少し先へ進めてすべての尿が出されたかを確認します。
- カテーテルを静かに抜きます。
- ストーマ(導尿口)周囲をふいて乾かします。
- ストーマ(導尿口)にガーゼ、または小綿球を軽くあてとめます。
- カテーテルは流水でよく洗い、陰干しで乾燥させて保管します。
- 必要物品は常に持ち歩きます。
(3)自己導尿の間隔
新膀胱に400ml前後の尿がたまったら自己導尿を行います。一般的には4時間ごとの間隔になります。ただし、水分摂取量や行動で変化してくるので、間隔は必ずしも一定ではありません。
(4)自己洗浄訓練
自己洗浄訓練の解説図
(画像をクリックすると拡大表示します:78.5KB)
新膀胱は腸でつくられているため、腸粘液が尿に混じります。腸粘液がたまり過ぎると尿が出にくくなったり結石を形成しやすくなります。腸粘液は自己導尿だけでは出しきれないため、1〜2日に1回程度、新膀胱内をきれいに洗う必要があります。
- 必要物品
カテーテルチップシリンジ、洗浄液(生理食塩水)、洗浄液を入れるコップ、その他自己導尿の必要物品を参照
- 方法
- 石鹸と流水で手指をよく洗い洗浄液をカップに入れ用意します。
- カテーテルの先端に潤滑ゼリーをつけ、カテーテルをストーマ(尿道口)から新膀胱に挿入し導尿します。
- カテーテルチップシリンジに洗浄水40〜50ml程度吸いあげ、これをカテーテルに接続します。
- カテーテルチップシリンジ内洗浄液を新膀胱内に注入します。
- カテーテルチップシリンジの内筒を引いて吸引します。
- 洗浄液中の腸粘液が少なくなりきれいになるまで繰り返します。
- 洗浄が終わったらカテーテルを静かに抜きます。
- カテーテル、その他の物品は流水で洗浄し、陰干しで乾燥させて保管します。
(5)ストーマ周囲の皮膚のケア
ストーマ(導尿口)からの尿漏れに対して、ストーマに軽くガーゼ、または小綿球をあてておきます。腸粘液やわずかな尿漏れによるストーマ周囲のかぶれなどの皮膚障害を予防するために、清潔で乾燥している状態を保つように心がけます。入浴やシャワー浴でストーマ周囲の皮膚を清潔にしておくことも大切です。
(6)日常生活
排尿法の変化の他に、日常生活への影響はほとんどありません。排尿のことを気にし過ぎて自ら外出や運動などを制限することのないようにしましょう。
定期的に外来受診をしましょう。また、良好な排尿管理法ができるまでは月に1回、その後は半年に1回程度の割合でストーマ外来を受診することをお勧めします。
2)自排尿型新膀胱造設術の場合
(1)新膀胱訓練
術後3週間前後に尿道膀胱造影が行われます。吻合部に縫合不全がないことを確認した後、膀胱留置カテーテルが抜去され、自排尿訓練を行い退院となります。
(2)自排尿訓練
- 尿意の感覚
尿意を感じないため、腹部膨満感や尿漏れを感じたら排尿します。
- 排尿間隔
新膀胱に400ml前後の尿がたまったら排尿します。一般的には4時間ごとの間隔になります。ただし、水分摂取量や行動で変化してくるので、間隔は必ずしも一定ではありません。
- 排尿姿勢
立位あるいは座位で、腹圧をかけて排尿します。
(3)尿漏れ対策
手術後2〜3ヶ月の間は尿漏れがあっても心配はなく、新膀胱の容量が増えるにしたがって少しずつ改善し、最終的には漏れはほとんどなくなります。尿漏れに対しては、紙おむつや尿漏れ用パッドをあてておきます。尿かぶれを予防するために、おむつなどの交換、シャワーや入浴を頻回に行います。
(4)巨大膀胱対策
尿がたまり過ぎて膀胱が大きくなり過ぎると、尿が残ったり、尿が出なくなったりする(巨大膀胱)ので、4〜5時間に1回、就寝後も1〜2回起きて排尿し、新膀胱に400〜500ml以上はためないようにします。また、排尿した後、新膀胱内に尿が残っていないか確認するために、毎月2〜3回カテーテルを使って自己導尿します。新膀胱内に尿が常に100ml以上残っている場合は1日4〜6回導尿が必要です。
(5)自己導尿法
- 必要物品
導尿用カテーテル(3孔先穴カテーテル14〜16Fu)、ガーゼ、潤滑ゼリー、絆創膏
- 方法
- 石鹸と流水で手指をよく洗います。
- カテーテルの先端に潤滑ゼリーをつけます。
- 尿道の走行を確かめながら静かに挿入します。
- 尿が出てきたところで挿入を止め、尿を出しきります。
- カテーテルを少し先に進めて、すべての尿が出されたかを確認します。
- カテーテルを静かに抜きます。
- カテーテル管理
カテーテルは流水でよく洗い、陰干しで乾燥させて保管します。
(6)外来受診
定期的に外来受診と検査を行う必要があります。排尿状態に変化があらわれた場合は、すぐに外来受診をして下さい。定期的な外来受診では、尿を腸の中にためることによって身体のバランスが崩れていないか、尿の再吸収が問題となっていないかを調べます。また、長い腸を膀胱に利用したため正常な腸内吸収が阻害されていないかなども検査します。
また、手技などについての指導は、ストーマ外来に専門の看護師が常駐していますので、お問い合わせ下さい。
(7)日常生活
排尿型新膀胱造設患者カード
導尿型新膀胱造設患者カード
(画像をクリックすると拡大表示します:57.6KB)
排尿法の変化の他に、日常生活への影響はほとんどありません。排尿のことを気にし過ぎて自ら外出や運動などを制限することのないようにしましょう。外出時は緊急事態に備えて術式と排尿方法が書かれたカード(排尿型新膀胱造設患者カード、導尿型新膀胱造設患者カード)を持ち歩くようにしましょう。
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