乳がんの手術の原則は、がんが拡がっている恐れのある部分を、全部切除することです。
かつては乳房と胸の筋肉、わきの下のリンパ節を切除する方法(定型的乳房切除術)が一般的でしたが、術後の生活が少しでも快適に過ごせるように、徐々に切除する部分を縮小する傾向にあります。現在の一般的な手術の方法は、胸の筋肉をとらずに乳房とわきの下のリンパ節を切除する方法で、これを非定型的乳房切除術といいます。この場合は定型的乳房切除術と違い、肋骨が浮き出るようなことはありません。がんの大きさや場所によっては胸の筋肉の一部を切除することもあります。最近では、乳房の一部とわきの下のリンパ節を切除して放射線を照射する乳房温存療法も行われています。手術の方法については、担当医から十分に説明を受け、納得された後に決められるのがよいでしょう。
わきの下のリンパ節をとるのは、治療として転移またはその可能性のあるリンパ節を切除するとともに、その中にがん細胞があるかどうか顕微鏡で調べ、手術後の治療の手掛かりとするためです。
手術の影響で筋肉やわきの下の皮膚が縮むので、少しでも動かすと肩関節が突っ張ったり痛んだりします。それにより意識的に運動を制限しがちになります。このまま腕を動かさずにいると筋力が低下し、動かせる範囲が狭くなります。そのために、関節や筋肉が硬くなり洋服を着る、髪をとかすなどの日常動作に不便が生じることがあります。ほんの少しずつでも動かしたほうが、あとの運動が楽になります。
手術後翌日からリハビリテーションをかねて少しずつ動かすようにしましょう。ふつう腕や肩の運動をすることで、およそ1ヶ月経過すると、たいていの人の腕や肩はもとに戻り正常に動かせるようになります。さらに6ヶ月ぐらいで元来の腕の力がとり戻せます。ただし手術によって、細い神経が何本か切れることがありますので、胸の皮膚、腕の内側に触れてもわかりにくい感じや、しびれ感が残ることがありますが、時間の経過とともに軽減していきます。
手術でわきの下のリンパ節をとり除いてしまうと、腕から流れてくるリンパ液が通路を失って皮下にたまるために、腕にリンパ浮腫と呼ばれるむくみがおこります。手術後、数日間のうちにおこるむくみは、ほとんどの場合、腕をあげたりマッサージをすることで軽減していきます。しかし、リンパの流れがどうしてもとどこおるので、腕は一生はれやすい状態が残ることもあります。
また、乳房の大きい人では、左右のバランス感覚に変化がおこり、不安定な感じを覚えることがあります。
容姿を整えバランスのよい姿勢を保つためには、バストラインを整えるための補整用のパッドや下着を着用したり、乳房再建という方法もあります。
毎日、午前と午後各10回行って下さい(約1週間)。
| 0日目 | 手術当日は、静かに過ごしましょう。 |
| 1日目 | 指の折り曲げ、肘の曲げ伸ばしをします。 |
| 2日目 | 肘を伸ばし、手首と肘を外側と内側に回します。 |
| 3日目 | 肘を90度に曲げ、腕を内側、外側へ回します。 |
| 4日目 | 肘を伸ばし、もう一方の手で腕を支え、前後左右に腕に力を入れます。 |
| 5日目 | 腰を90度に曲げ、自然に手を下げ、振り子のように腕を回します。 |
入っていた管(ドレーン)も抜け、いよいよ本格的な運動に取り組みます。皮膚を植皮している場合や手術創の状態によっては、運動の開始が遅くなることがあります。
運動中に筋肉がぴーんと張ったり、痛みのために気持ちが悪くなることがあります。その場合は、そのままの姿勢で深呼吸しましょう。筋肉の緊張をゆるめることができます。不快感がおさまれば再び運動を開始しますが、おさまらない時は無理せず一時休みましょう。
運動をはじめると腕のむくみが強くなることがありますが、一時的なもので心配はいりません。運動が終わったらマッサージをしたり、心臓より高めに腕をおいておくと徐々にむくみはとれてきます。
運動の一例としては、
入院中に行っていた運動は、筋力をつけるためにもさらに続けていきましょう。家事もリハビリテーションのつもりで積極的に行っていくと、自然に手のあげおろしが苦痛でなくなると同時に、筋力もついてくるでしょう。
※すべての人に同じ時期に同じ成果があがるわけではないので、成果があがらないからといって、あせって運動しすぎないように注意しましょう。運動を規則正しく行っていると、自然に運動範囲が広がっていきます。無理せず、休まず、少しずつが基本です。
外観やバランスをよくするとともに、外出時の人ごみや不意のショックの保護の役目もあります。
パッドには身近な素材でつくる手製と、各メーカーの既製のものがあります。
*手製パッドの例
抜糸(ばっし)は手術後約2〜3週間目にされますが、特に手術創の状態に問題がなければ、抜糸前から使用してもかまいません。ただ既製の下着は、創部のはれがひく3ヶ月以降の利用になります。
補整下着などでは十分な満足が得られない、肉体的バランスが悪いなどのために乳房再建術、乳頭乳輪の再建術を希望される方もいます。担当医にご相談してみてはいかがでしょうか。
性生活には、全く支障はありません。乳がんはホルモンと関係あるため、妊娠については避けたほうがよい期間もありますので、担当医とよく相談されるとよいでしょう。
また、経口避妊薬のような特殊なホルモン剤を飲む時も、担当医にご相談して下さい。
特に制限はありません。スポーツは、種類や運動の程度にもよりますが、今まで行っていたことを徐々に行ってかまいません。仕事への復帰の時期など心配な場合は、担当医にご相談下さい。まずは無理のない範囲から、徐々にもとの生活に戻すという方法がよいでしょう。
家に戻ると入院中と比べ、心細さが増したり、病気の不安や乳房がなくなったことなどで精神的に落ち込むこともあるかもしれません。
次のような方法をお勧めします。