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臨床試験(治験)とは何かを知りたい方へ

更新日:2009年05月21日    掲載日:2006年10月01日

1.新しい薬や新しい治療・診断法を評価するための方法:「臨床試験」

病気に対する新しい薬や治療・診断法は、その安全性や有効性が確認されて初めて標準的な治療として確立します。既存のものより有効であると期待される新しい薬や治療・診断法は、安全に実施できるのか、期待されたとおりの効果を発揮するのかを、多くの患者さんの協力を得て調べなければなりません。このような情報を集める継続的な取り組みによって、患者さん自身に、あるいは将来の患者さんに、より良い治療を提供できるようになります。

新しい治療法は、患者さんに使われた経験がまだあまり多くないために、思わぬ副作用が生じるかもしれません。あるいは、残念ながら思ったほどの効果がみられないこともあります。さらに、患者さんの体には一人一人個性があり、同じ治療を受けても効果がある方とそうでない方がいます。より多くの患者さんに効果が期待できる治療法、あるいは一人一人の患者さんの体に合うように調節した治療法を見つけることができれば、より多くの患者さんに、より良い治療を提供できるようになります。

そのような治療法を標準的な治療として確立していくためには、患者さんの経験した副作用や治療の効きめを正確に記録し、正しく分析しなければなりません。けれども患者さんの体には個性があるために、数人の患者さんの治療結果だけでは、新しい治療法の安全性や有効性を確認することはできません。

では、どうすればよいのでしょうか? このような新しい治療法の安全性や有効性を正しく調べるためには、治療法の選び方、治療により患者さんが経験したことの記録のしかた、集まった情報の分析のしかたを工夫する必要があります。

こういった複雑な状況を乗り越えるために、工夫を凝らして新しい治療法の安全性と有効性を科学的に調べる方法が、「臨床試験」です。

現在行われている多くの薬や治療・診断法も、国内および海外での臨床試験によって進歩してきました。現在の治療は、これまでに行われた臨床試験へ、患者さんが協力したことによってつくりあげられてきたといえるのかもしれません。

2.臨床試験の種類について

臨床試験には、大きく分けて「治験」と「研究者(医師)主導臨床試験」があります。「治験」とは、厚生労働省から新薬としての承認を得ることを目的とし、未承認薬を用いて主に製薬企業が行う臨床試験です。これまで患者さんに使われたことのない新しい薬、あるいはその病気では使われたことのない薬の安全性や有効性を調べます。厚生労働省による承認が得られると、企業が薬を販売し、認められた病気の範囲内で一般に使えるようになるのです。

一方、研究者(医師)主導臨床試験は、研究者(医師)が主体となって非営利で行うものです。これまで厚生労働省で承認された薬、治療法や診断法から最良の治療法や診断法を確立すること、薬のより良い組み合わせを確立すること等を目的としています。

「治験」が薬そのものの安全性や有効性を調べることを目的としているのに対し、「研究者(医師)主導臨床試験」は、時には手術や放射線療法等との組み合わせも考えて、治療法の安全性や有効性を調べることが目的であることが多いという違いがあります。

最近は、薬事法という薬に関する法律が改正され、医師自らが「治験」を実施することができるようになりました。これを「医師主導治験」と呼びます。これらの臨床試験の種類をまとめると、下の図のようになります。

図 臨床試験の種類

3.臨床試験(治験)の各段階

臨床試験は大きく3つの段階があり、各段階で安全性や有効性を確認しながら順番に進めていきます。この開発の段階のことを「相(あるいは、フェーズ)」、3つの段階のことを、第I相、第II相、第III相(あるいは、フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3)などと呼びます。第I相よりも第II相、第II相よりも第III相の方が治療法の開発が進んだ段階にあり、より臨床現場に近い状況にあると言えます。

がんの場合とその他の病気の場合では、臨床試験の進め方に若干異なる部分があります。ここではがんの場合の一般的な治療法開発の進め方について説明します。ただし、がんの臨床試験(治験)の場合であっても、薬や治療法によって違いが生じることがあります。

第I相(フェーズ1):
がん種を特定しないで、少数の患者さんに参加していただきます。
段階的に投与量を増やしていき、薬の安全性の確認、有効で安全な投与量や投与方法等を調べます。
第II相(フェーズ2):
がん種や病態を特定し、前の段階よりも多い数の患者さんに参加していただきます。
前の段階で有効で安全と判断した投与量や投与方法を用い、薬の有効性と安全性を確認します。
第III相(フェーズ3):
より多くの患者さんに参加していただきます。
新しい薬や治療法が従来の薬や治療法(標準的な治療)と比べ、有効性や安全性の面で優れているかどうかを比較試験で確認します。

現在国内で行われている臨床試験(研究者主導の臨床試験と製薬企業が実施する治験の一部)に関して、「がんの臨床試験一覧(医療関係者の方へ)」で、がんの種類別、開発段階別に情報を閲覧することができます。

4.臨床試験に参加することによって生じる有利な点と不利な点

臨床試験は、これまでの治療法よりも良い治療法を確立することを目指して実施されます。新しい治療法の効果が高いこともありますが、良いと思われていた新しい治療法が、実際にはそれほど効きめが高くないというケースや、副作用等が強いことがわかるというケースもあります。つまり、臨床試験に参加することが患者さんにとって有利になる場合もありますが、不利になる場合もあるということです。

このようなことが起きるのは、新しい治療法の有効性や安全性がわからず、必ずしも良い治療法であるとはかぎらないためです。そのために、新しい治療法を確立していく過程で多くの患者さんのご協力を得て、臨床試験を実施する必要があるのです。臨床試験を実施しないと、実際に有効なのか、安全性がどのくらいなのかがわからない新しい治療法が漫然と使われ、治療法の効きめや副作用等の情報が蓄積せず、問題を把握することができません。

臨床試験に参加する患者さんには、参加することで新しい治療法を受けられる可能性がある一方で、不利益を被る可能性があることも十分に理解していただく必要があります。臨床試験への参加を希望する患者さんは専門家から十分な説明を受け、十分に納得したうえで同意し、参加してください。

5.臨床試験を支える人たち

臨床試験は、患者さんの参加によって成立します。そこには、臨床試験を安全に、倫理的に、かつ科学的に行うために、患者さんと直接接する医師や臨床試験専門のスタッフ(臨床研究コーデイネーター(治験コーデイネーター):CRC(シーアールシー))をはじめとする医療従事者のほかにも、表からは見えないところで多くの専門家がかかわっています。

具体的には、新しい治療法を臨床試験の中で実施することが倫理的かどうか判断する倫理審査委員会のメンバー、患者さんがどのような治療を受けたか、どのような副作用が出たのか、治療の効果はどうであったかといった情報を正確に集めて記録する専門家、臨床試験から有益な情報を得られるようにデータの取り方を考える専門家、臨床試験の結果を分析する専門家等です。

このように、臨床試験は非常に多くの患者さん、医療関係者、専門家の協力によって動く大きなプロジェクトです。さらには、このプロジェクトをスムーズに運営するための専門家も加わって、臨床試験を支えています。

図 臨床試験を支える人たち

6.国内未承認薬を使った臨床試験について

海外では承認されていても、日本ではまだ厚生労働省から承認されていない薬(国内未承認薬)を使った臨床試験を行うためには、「研究者(医師)主導臨床試験」ではなく、薬事法という法律に従った「治験」を実施する必要があります。

「治験」とは、一般には薬を開発している製薬企業が医師に依頼をして実施する臨床試験のことを指しますが、薬事法が改正され、医師が自ら治験を実施できるようになりました。医師が自ら実施する治験のことを、特に「医師主導治験」と呼んで企業が行う治験と区別しています。

なお、海外で承認されていても日本ではまだ承認されていない薬のうち、一部の薬については、厚生労働省のウェブサイト「未承認薬使用問題検討会議での検討結果を受けて国内で治験準備中又は実施中の医薬品に関する情報」から情報を入手することができます。

また、現在開発中の薬やすでに国内で承認されている薬で、新たな効能・効果の追加を目指している薬については、財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)の「臨床試験情報」や社団法人日本医師会治験促進センターの「Clinical Trial Registration:臨床試験(治験)の登録と結果の公表について」、さらにIFPMA(International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations)による「臨床試験ポータルサイト」から情報を得ることができます。

※これらの情報は、臨床試験に参加する患者さんを募集するための情報ではありませんのでご注意ください。また、当サイトで紹介しているウェブサイトの内容について、お問い合わせ等はお受けできませんのでご了承ください。

― 未承認薬使用問題検討会議 ―

未承認薬使用問題検討会議とは、『欧米諸国で承認されているが、国内では未承認の医薬品(以下「未承認薬」という。)について、
・ 欧米諸国での承認状況および学会・患者要望を定期的に把握し、
・ 臨床上の必要性と使用の妥当性を科学的に検証する
とともに、
・ 当該未承認薬について確実な治験実施につなげる
ことにより、その使用機会の提供と安全確保を図ること』(外部サイトへのリンク未承認薬使用問題検討会議 会議資料)を目的として厚生労働大臣が設置する、学識経験者による会議です。

未承認薬使用問題検討会議で取りあげられた医薬品は、製薬企業による承認申請が行われた後、外部サイトへのリンク独立行政法人 医薬品医療機器総合機構による審査、薬事・食品衛生審議会への諮問を経て薬事法上の承認に至ります。

つまり、未承認薬使用問題検討会議での評価によって医薬品が承認されるわけではなく、その後に実施された治験の結果も含めて「総合機構の審査は厳正中立に」行われます(外部サイトへのリンク第4回未承認薬使用問題検討会議速記録)。

未承認薬使用問題検討会議で検討された医薬品についてまとめられた、「ワーキンググループ検討結果報告書」が外部サイトへのリンク検討会議の資料とともに公開されています。ただし、この文書は、報告書作成時点までの主として欧米での評価をまとめたものであり、国内で実施されている治験の結果などを詳細に記したものではありません。

未承認薬使用問題検討会議で取りあげられる欧米で承認された医薬品は、必ずしも生存期間を延長することが証明されているとは限りません。また、欧米で承認されているからといって重篤な副作用が無いわけではなく、致死的な副作用・有害事象が発現することもあります。

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構による審査の結果は、「外部サイトへのリンク医薬品医療機器情報提供ホームページ 新薬の承認に関する情報」で承認後、速やかに提供されます。


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