がんには多くの種類がありますが、中には腫瘍マーカーと呼ばれる、そのがんに特徴的な物質を産生するものがあります。そのような物質のうち、体液中(主として血液中)で測定可能なものが、いわゆる「腫瘍マーカー」として臨床検査の場で使われています。
現在、数多くの腫瘍マーカーが臨床の場で使われています。また、日々新しい腫瘍マーカーが開発され、臨床応用を待っています。さらに、すでに確立された腫瘍マーカーでも最新の研究の結果、別のがんに対してもマーカーとなりうることが明らかになる場合があります。このような多くの腫瘍マーカーについて、個別に解説することは無理です。そこで、臨床の場で認められ、確立された腫瘍マーカーの一部を図と表に示しますので、参考にしてください。

| 腫瘍マーカー名 | 省略名 |
| α-フェトプロテイン | AFP |
| 糖鎖抗原125 | CA125 |
| 癌胎児性抗原 | CEA |
| サイトケラチン19フラグメント | CYFRA |
| エラスターゼ I | ElastaseI |
| NCC-ST-439 | NCC-ST-439 |
| 神経特異エノラーゼ(NSE)精密測定 | NSE |
| PIVKAII | PIVKAII |
| ガストリン放出ペプチド前駆体 | ProGRP |
| 前立腺特異抗原 | PSA |
| 扁平上皮癌関連抗原 | SCC |
| シアリルLex-i抗原 | SLX |
| シアリルTn抗原 | STN |
| ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ分画コア定量 | βHCG |
腫瘍マーカーは、進行したがんの動態を把握するのに使われているのが現状で、早期診断に使えるという意味で確立されたものは、残念ながらまだありません。がんの動態を把握するとは、治療効果を判定するという意味です。例えば、進行したがんに対して化学療法や放射線療法が行われている場合、その治療がどれくらい効果があるかを判断することに使われます。また、腫瘍マーカー値が高いがんに対して手術によるがんの切除が行われると、多くの場合、腫瘍マーカー値は手術後低下、もしくは改善します。しかし、がんの再発に伴い、腫瘍マーカー値は再度上昇してくるので、術後の経過観察目的で使われることもあります。
腫瘍マーカーのカットオフ値(しきい値)は、多くの人(正常人および対象となるがんの患者さん)の測定値をもとに決められています。ところが、中には多くの人の動きとは異なる動きをする人もいます。すなわち、がんが存在しないにもかかわらず腫瘍マーカー値が上昇している場合や、がんが存在するにもかかわらず腫瘍マーカー値が上昇しない場合です。また、腫瘍マーカー値自体の動きも、正確にがんの動きを反映しているわけではありません。例えば、値が5上昇したからといって、5だけがんが進行したわけではありません。
腫瘍マーカー検査を依頼する医師は、漠然と検査を依頼しているのではなく、その患者さんの個々の状態に基づいて検査を依頼しています。腫瘍マーカー検査のどこに注目しているかは、患者さんごとに異なると考えたほうがよいといえます。
腫瘍マーカー検査は、他の検査と同じく、診断を最終目的とした多くの検査の1つとして行うもので、診断そのものは血液検査、画像を用いた検査、身体所見等を総合的に勘案して医師が行うものです。したがって、決して腫瘍マーカー値の上下のみでがんの存在、病態の悪化および回復を判断できるものではないことを理解してください。極端にいえば、医師がそこから情報を得られるならば、体重や顔色さえも広い意味ではがんのマーカーであるともいえるのです。
腫瘍マーカーについて疑問があるときは、その検査が患者さんにとってどのような意味があるかについて、検査をした医師との十分な話し合いが必要です。