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肺切除術のリハビリテーション

更新日:2013年09月18日 [ 更新履歴 ]    掲載日:2013年09月18日
更新履歴
2013年09月18日 掲載しました。

1.呼吸リハビリテーションの意義

手術前後の時期(周術期)に行われるリハビリテーション(以下リハビリ)は、治療に伴う合併症を予防し、後遺症を最小限に抑えてスムーズな手術後の回復を図ることを目的に、手術前から開始されます。

肺がんで開胸手術を行うと、痛みや麻酔の影響で呼吸が浅くなり、痰がうまく出せず、肺の奥にたまりやすくなるため、肺炎を起こす可能性が高くなります。この合併症を予防するために、手術の前に腹式呼吸法や痰の出し方を練習し、呼吸が浅くなっても自分でしっかり痰を出せるコツを習得することが大切です。また、喫煙をしていると手術後の痰の量が増えるため、できるだけ早くから禁煙することもとても重要です。そして、手術後は肺の奥に痰がたまらないように、早期離床(病状が落ち着いた状態の早い時期に寝たままではなく、ベッドから起き上がること)やベッドに座ったり、病室内を歩いたりするリハビリを行います。さらに、体力が低下した人にはトレーニングマシンなどを使って持久力訓練を行い、社会復帰が早くできるよう手助けします。

これらのトレーニングにより、痛みの無い手術前の時点から開始し、やり方に慣れるとともに、しっかりと筋力や体力をつけておくことが大切です。治療前にリハビリを受けた人とそうでない人で合併症の発症率や回復力の速さを比較すると、明らかな差があることが証明されているため、手術前からしっかりとトレーニングに取り組みましょう。

手術前の準備として行うことには、下記のようなことがあります。

  • 禁煙(喫煙をしていた場合)
  • 深呼吸(腹式呼吸)法を身につける
  • インセンティブスパイロメトリーを使ってトレーニングする
  • ストレッチ運動を行う
  • 筋力を強くする運動を行う
  • 全身の持久力をつける運動を行う
イメージイラスト

2.深呼吸(腹式呼吸)の方法

手術後の肺は、非常に合併症が起きやすい状態になっています。合併症を予防するために、人工呼吸器が外れた直後から、なるべく深く大きな呼吸を行うようにしましょう。また、手術後にうまく痰を出すためには、なるべく痛みを出さない方法で痰を出せるように工夫することが必要です。手術までの間に深呼吸や咳をする練習をしておき、手術後からすぐに取り組めるように準備しましょう。

1)深呼吸(腹式呼吸)の方法

鼻から大きく息を吸って、軽く息を止め、口から吐き出します。息を吸った時にはおなかが膨らみ、息を吐くとおなかはへこみます。息を吸う長さと息を吐く長さの割合を1:2ぐらいにして、ゆっくりと長めに息を吐きましょう。
深呼吸(腹式呼吸)の方法

2)自分で痰を出す方法

(1)痰を切る動作と咳について

咳は、痰を出す上では最も有効な手段の1つです。しかし手術後しばらくは、傷の痛みがあるため、上手に咳ができないことがあります。咳を上手に行い、痰を効率よく出すためには、まず傷口を手やクッションなどで圧迫すること、そして咳をする前には咳払いを行うことが大切です。

具体的には、はじめに傷口を手かクッションなどで押さえます。そして何度かゆったりと呼吸をしましょう。もう一度鼻から息を吸い、口を閉じたまま軽く息を止めます。その後、咳払いは口を閉じて行います。咳は口を開いて行いましょう。

(2)強く・速く息を吐く方法(ハフィング)

大きく息を吸い込んだ後、速く強く一気に息を吐く方法をハフィングといいます。最初に何回か深呼吸をして、その後に鼻から大きく息を吸います。息を止めて口を開いたら、「はっ」 と強く速く息を吐き出します。特大のため息を一気に強く吐き出すようにして息を吐いてみましょう。

(3)傷口の保護の方法

咳をする際は、手やクッションなどで傷口を包むように保護しましょう。手術の部位については、「7.手術後の注意点」をご覧ください。
傷口の保護の方法

3)痰をより出しやすくする方法

深呼吸やハフィング、咳を組み合わせて痰を出します。痰がでない場合は最初のゆっくりとした呼吸に戻り、繰り返して行います。

(1)最初にリラックスした呼吸を3回行います
(2)その後に深呼吸を5回繰り返します
(3)ハフィングを3回繰り返します
(4)最後に咳(咳払い)を行って痰を出します
痰をより出しやすくする方法

3.インセンティブスパイロメトリー

インセンティブスパイロメトリーとは、手術前後の呼吸訓練に使用される器具の1つです。呼吸訓練は、深呼吸を促し、息をしっかり吸うことで肺を広げる効果が期待でき、手術前後に行うことで、手術後の肺合併症の予防や、呼吸機能の回復に有効です。インセンティブスパイロメトリーには、患者さん自身が、目で効果を確認しながら訓練できる利点もあります。

入手方法につきましては、担当医、看護師、リハビリスタッフにお尋ねください。体調が悪い時(胸がドキドキする、息切れする、熱があるなど)は使用しないでください。
ワンポイント

1)器具について

インセンティブスパイロメトリーには、さまざまな種類があります。下記はその一例の説明です。
インセンティブスパイロメトリーについて

2)行う時の姿勢

呼吸訓練を行うときは、前かがみの姿勢にならないよう気をつけましょう。
行う時の姿勢

3)実施方法

(1)息を十分に吐き出します。
実施方法(1)息を十分に吐き出します。
(2)マウスピースをしっかりくわえ、できるだけゆっくり、深く吸います。
実施方法(2)マウスピースをしっかりくわえ、できるだけゆっくり、深く吸います。
(3)精一杯吸い込んだところで数秒(6秒程度)息を止めます。
実施方法(3)精一杯吸い込んだところで数秒(6秒程度)息を止めます。
(4)ゆっくりと息をはきます。
実施方法(4)ゆっくりと息をはきます。

4)回数

2〜3時間に10回行いましょう。または、医師から指示のあった回数を行いましょう。

5)注意点

目がチカチカする、頭がぼーっとする、ムセが強くなる、手術部の傷が痛くなるなどの症状が出た場合は、休憩を入れ、続けて行わないようにしましょう。
注意点

4.ストレッチ

しっかりとした呼吸を行うためには、首の関節・筋肉や、肺をおおっている背骨や肋骨などがつくる関節と、胸やおなか・腰の筋肉が十分に働くことが必要です。また、寝返りをしたり、起き上がったりする際には、腰が大きく動く必要があります。

手術中の体勢や、手術後の安静による制限から、痛みや不快感、息苦しさなどを来すことがあります。手術後には創の部位の保護のため、しばらくの間は大きく胸を張ったり、上半身をねじったりする動きができない場合があります。手術前から運動を行うことで、これらの筋肉をリラックスさせ、柔軟に動きやすく、呼吸をしやすくしておくことが大切です。

1)首のストレッチ

(1)首を曲げて伸ばす運動

あごを引くように首を曲げ、あごを真上に持ち上げるように首を伸ばしましょう。
首を曲げて伸ばす運動

(2)首を左右に倒す運動

両肩は動かさないように止めておきます。首はねじらないように真横に傾けましょう。
首を左右に倒す運動

(3)首を横に向ける運動

両肩は首と一緒に回らないように止めておきます。首が曲がらないようにして真横に顔を向けましょう。
首を横に向ける運動

 (4)首を回す運動

 首は痛みのない範囲でゆっくりと動かしましょう。左右両方向へゆっくりと回します。
首を回す運動

2)肩甲骨周囲のストレッチ

(1)両肩を大きく回す運動

肩甲骨の動きを意識して行いましょう。
両肩を大きく回す運動

(2)両手をあげて胸を張る運動

両手を上にあげる際には、胸を張って背中を伸ばすようにしましょう。
両手をあげて胸を張る運動

(3)体を左右に倒す運動

体を真っ直ぐに戻すときには息を吸いながら、体を傾けるときには息を吐きながら行いましょう。体を傾けるときにはなるべくねじれた動きが入らないように、真横に体を倒します。
体を左右に倒す運動

(4)両手を後ろに伸ばして胸を張る運動

両手を後ろ斜め下に伸ばす時には、胸を張って腰から背中を伸ばすようにしましょう。
両手を後ろに伸ばして胸を張る運動

3)腰のストレッチ

(1)体を左右に回す運動

手を横に伸ばすだけでなく、腰から、体を真横に向けて回しましょう。
体を左右に回す運動

5.筋力を強くする運動

手術後にはある程度の時間、安静を求められる場合があります。安静にすることは体の回復に必要なことですが、全身の筋力を弱くしてしまい、立ち上がったり歩いたりすることを難しくしてしまう原因にもなります。

手術後は翌日から体を起こし、立つ、歩くなどの運動を体調に合わせて行います。安静による筋力の低下を防ぎ、手術後の経過を順調に進めるためにも、手術までの間に十分な筋力をつけておきましょう。
ワンポイント

1)腹筋を強くする運動

頭を持ち上げる際には、同時に腰を床に押しつけるように意識しましょう。
腹筋を強くする運動
腹筋を強くする運動

2)背中側の筋力を強くする運動

最初に腰を持ち上げるときには、両手で床を支えながら行ってください。
背中側の筋力を強くする運動

3)脚の筋力を強くする運動

必ず反対側の膝は立てて行うようにしてください。
脚の筋力を強くする運動

4)立ち上がり運動

脚全体の筋力のために、立ち上がりを行います。反復して行いましょう。
立ち上がり運動

5)かかとあげ運動

かかとあげ運動

6)片脚立ち運動

バランスを取りながら、片脚立ちを行います。
※体がふらつく場合は、椅子や壁を触り安定させて片脚立ちを行いましょう。
片脚立ち運動

6.全身持久力をつける運動

手術に向けて心肺機能を高めましょう。 可能であれば20分以上の有酸素運動を行いましょう。

1)自転車エルゴメーター

実施する回数や時間などは体調に合わせて行いましょう。
自転車エルゴメーター

2)歩行(散歩)

散歩を習慣つけましょう。可能な時間から開始し、20分以上の散歩を目標としましょう。
歩行(散歩)

3)階段の昇り降り運動

膝に痛みがある場合は無理に行わないでください。
階段の昇り降り運動

7.手術後の注意点

1)手術の部位

(1)胸の側方から手術を受けた場合

胸の側方から手術を受けた場合
肺の手術を行う際に、胸の側方を切開する場合が多くあります。
手術中の姿勢や手術後の安静によって、手術後に肩や首に痛みや不快感が起こることがあります。また、手術創(手術によってできた傷)自体の痛みで体の動きが制限されることもあります。

例えば、寝返りや起き上がりなどの動作や、腕をあげたり、体をねじったりする際には痛みが出やすいので注意が必要です。手術創が落ち着いてくるまでの間は、できるだけ痛みを起こさないようにしながら、体を動かすようにしましょう。

(2)胸の前方から手術を受けた場合

胸の前方から手術を受けた場合
縦隔(左右の肺にはさまれた部分)の手術をされる場合には、胸骨正中切開を行います。胸骨正中切開後は、切開した骨がつくまで約3ヵ月の時間が必要です。この間は一定の運動が制限されます。その間、切開された胸骨に対して引っ張ったり、ねじれたりする力が加わることにより、骨の癒合用語集アイコンが遅れてしまう場合があります。片手だけを頭の上まであげる、片手で荷物を持つ、強く引っ張るなどの動作はなるべく控えましょう。

2)手術後の起き上がり方

手術後は翌日から積極的に座る、立つ、歩くなどの運動を行っていきます。そのためにも、なるべく痛みを感じないようにベッドから起き上がれることが重要になります。

ここでは胸を手術された直後で、まだ胸に管(ドレーン)などがついている状態を想定して、起き上がり方を説明します。基本的には痛みを起こしたり管が抜けたりしないように、手術部位を押さえて、管が伸びている方向へ起き上がります。この時、胸の正面を手術されている場合には、ベッド柵を引っ張ったり、片手でベッドを強く押して起き上がろうとしないようにしてください。また、起き上がる際はスタッフが手伝いますので、無理はしないでください。

(1)胸を手術されている場合の起き上がり方

胸を手術されている場合の起き上がり方

8.「肺切除術のリハビリテーション」のページの作成について

このWebページ「肺切除術のリハビリテーション」は、厚生労働科学研究費補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「国民に役立つ情報提供のためのがん情報データベースや医療機関データベースの質の向上に関する研究」(研究代表者 若尾文彦)の中の「がんクリニカルパスデータベース構築に関する研究」研究小班(研究分担者 河村 進)の研究成果をもとに作成されたものです。
【作成協力者についてはこちらをご覧ください】
平成24年度若尾班河村小班がんのリハビリテーションパスワークグループメンバー(施設五十音順)
一部表示できない漢字を常用漢字へ置き換えています
岡山大学病院 総合リハビリテーション部 教授 千田 益生
亀田総合病院 リハビリテーション科部長 宮越 浩一
亀田総合病院 理学療法士 彦田 由子
慶応義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室 准教授 辻 哲也
静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科部長 田沼 明
湘南郷部総合病院 副院長 がん治療センター長 新海 哲
国立がん研究センターがん対策情報センター センター長 若尾 文彦
国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科・リハビリテーション科 川井 章
国立がん研究センター中央病院 理学療法士 榊原 浩子
四国がんセンター 整形外科医長 杉原 進介
四国がんセンター 理学療法士 岩田 織江
四国がんセンター 理学療法士 重見 篤史
四国がんセンター 理学療法士 崎田 秀範
四国がんセンター 看護師 塩崎 真弓
四国がんセンター 看護師 松本 亜希子
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