造血幹細胞移植の各方法の比較:[がん情報サービス]
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造血幹細胞移植の各方法の比較

更新日:2015年07月06日 [ 更新履歴 ]    掲載日:2006年10月01日
更新履歴
2015年07月06日 移植の適応範囲に関する研究報告を一部削除しました。
2006年11月17日 更新しました。

1.骨髄移植

造血幹細胞移植は、もともと骨髄移植からはじまりました。1960年後半に、大量化学療法の後にHLAの一致する兄弟から骨髄を移植したところ、患者の血液細胞がすべてドナー由来の血液細胞となったことが、骨髄移植のはじまりです。その後、白血球を増やす薬(G-CSF)が開発され、G-CSFを注射すると血液中に造血幹細胞が出てくることが明らかになりました。これを用いた末梢血幹細胞移植が、1990年代から行われています。さらに同時期、臍帯血(さいたいけつ)には多くの造血幹細胞が含まれることがわかり、子供を中心に臍帯血移植が行われるようになりました。

2.末梢血幹細胞移植(PBSCT)

以前は、造血幹細胞は骨髄にしかないものと考えられていたので、麻酔を行って主に腸骨を繰り返し穿刺(せんし)して骨髄液を採取していました。このため、本来は「造血幹細胞移植」と呼ぶべきこのような治療を、「骨髄移植(BMT)」と呼んでいたわけです。ところが今では、末梢血中に含まれる造血幹細胞を移植に用いる末梢血幹細胞移植(Peripheral Blood Stem Cell Transplantation:PBSCT)や、分娩(ぶんべん)時の臍帯血中の幹細胞を用いる臍帯血移植が発達してきたため、もはや「骨髄移植」ではなく、「造血幹細胞移植」と呼び改められています。

BMTに比べ、PBSCTは移植する幹細胞の数が多いので、移植後に白血球や血小板の数が早く回復することが知られています。

1)末梢血幹細胞移植(PBSCT)とは

1980年代には、移植に用いることのできる造血幹細胞が、末梢血中にも存在することがわかってきました。その数は通常では極めて少ないのですが、「顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte Colony-stimulating Factor:G-CSF)」と呼ばれる白血球を増やす作用のある薬剤を5日間連続して皮下注射すると、造血幹細胞が骨髄から血液中に大量に流出することがわかってきました。この効果を「動員」、あるいは「mobilization」と呼びます。

注射後5日目と6日目に、血中に増加した幹細胞を麻酔を使わずに採取し、移植に用います。採取のタイミングは、血液の中に含まれる造血幹細胞のマーカーである、CD34抗原陽性細胞の数を測定して決めます。採取には、まず腕や大腿部の血管に少し太めの点滴を2本刺し、アフェレーシスと呼ばれる成分献血を行います。末梢血幹細胞はリンパ球によく似ているので、これにターゲットを合わせて採取機械(血液成分自動分離器といいます)のコンピューターを調整して採取します。つまり、一方の点滴から血液を抜いて、機械の中で幹細胞を含んだリンパ球層だけを採取し、残りのほとんどの血液をもう一方の点滴から返します。採取中は、機械に血液が絶え間なく流れ込むわけです。これを1回につき2~3時間、計2回ほど行います。

採取中には、全身倦怠感(ぜんしんけんたいかん)、手足のしびれ、めまい、吐き気や嘔吐(おうと)がよく発生します。これらは、機械の中で血液が固まらないようにするために用いるACDと呼ばれる薬剤の副作用や、血管迷走神経反射と呼ばれる自律神経の過剰反応によるものです。いずれも、適切な処置を行えばすぐに軽快します。しかし2000年に、血縁ドナーからの末梢血幹細胞採取のためのアフェレーシス中に、心停止が発生しました。このことから日本造血細胞移植学会と日本輸血学会が共同して、ドナーの方の安全性を確保する目的で、ドナーの適格基準や末梢血幹細胞の動員・採取に関するガイドラインを定めています。また、ドナーの方に長期にわたって発生する可能性のある副作用を検討するために、日本造血細胞移植学会が長期追跡調査を行っています。

採取した細胞は、PBSCTの場合には自家移植では全例、また同種移植でも多くが凍結保存されます。同種PBSCTは、わが国でもすでに保険承認されています。

(1)同種末梢血幹細胞移植と骨髄移植

PBSCTでは、全身の骨に分布した造血組織から、満遍なく大量の幹細胞を採取できます。このため、移植後の造血や免疫回復は早いのですが、骨髄と比較してより多くのリンパ球が輸注されるので、特に慢性GVHDが増えます。逆に、GVHDに伴う抗がん効果(Graft-versus-tumor:GVT効果)が増強されるので、より有効にがん治療を行えて都合が良いとの考えもあります。またBMTでは、全身麻酔をかけて腸骨領域を中心に骨髄穿刺を繰り返す必要がありますが、アフェレーシスに麻酔は不要です。その代わりに、ドナーの方にG-CSFを注射する必要があります。

(2)自家末梢血幹細胞移植

各種の難治がんを根絶する手段として、骨髄毒性を無視して抗がん剤の投与量を増やした「自家PBSCT」が行われます。造血器がんに関しては、再発悪性リンパ腫やホジキン病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫等への適応が確立しつつあります。しかし固形腫瘍に関しては、自家PBSCTの適応が定まった疾患は意外と少なく、小児がんの一部や精巣原発胚細胞腫瘍の再発例等にすぎません。すべてのがんが、超大量化学療法と移植療法で治癒するわけではないことは明らかです。現時点では固形腫瘍への適応は、通常量の抗がん剤治療に良好な反応を示して、臓器機能も一定に保たれている場合に限る必要があります。移植後再発を防ぐには、完全切除や放射線照射によって局所のがんを抑制することが最も重要で、体内にあるがん細胞の量が最少の状態でPBSCTを行わなければなりません。

(3)健常ドナーに対するG-CSF投与の安全性

G-CSFは、もともと細菌感染症などに際して体の中で自然に分泌される一種のホルモンですが、現在では医薬品として合成、市販され、一般の病院でも使用しています。その用途は、主に抗がん剤治療を行った後に生じる顆粒球(好中球)減少症や感染症の予防や治療です。G-CSFを投与すると、副作用として、骨痛、胸痛、頭痛、筋肉痛、発疹(ほっしん)や紅斑(こうはん)、全身倦怠、吐き気や微熱、脾臓(ひぞう)の腫大(しゅだい)、まれに血小板減少等が発生しますが、いずれも一過性です。海外の施設では、心筋梗塞、脳血管障害や脾臓破裂が生じた報告さえも、まれにあります。

G-CSFに対する副作用は、多くの場合一過性でありドナーにとって負担は少ないものと考えられますが、副作用に対して注意しながら投与を行います。

2)免疫療法としての同種移植

造血幹細胞移植療法による治療成果は、今までは超大量の抗がん剤、あるいは放射線治療ががん細胞を攻撃すると考えられてきましたが、移植片対白血病(GVL)効果や、ドナーリンパ球輸注療法(DLI)の経験を通じて明らかになった効果があり、特定の病気や病状の患者さんに対しては、ミニ移植と呼ばれる方法も行われています。

(1)GVL効果

同種移植では、ドナーの造血幹細胞と同時に、多くのリンパ球が患者さんの体の中に入ります。造血幹細胞とリンパ球は見た目にはよく似た形の細胞ですから、移植のために造血幹細胞を採取しても、どうしても多くのリンパ球も一緒に入ってしまいます。通常は体の中に他人の血液が入ると、その中に含まれるリンパ球は異物とみなされて、患者さんの免疫の力でたちまち殺されてしまいます。しかし移植術では、患者さんの体は「前処置療法」と呼ばれる大量の抗がん剤投与や放射線照射で前もって十分に痛めつけられていますから、他人の細胞に抵抗したり拒絶したりする免疫の力自体がなくなっています。このため、ドナーの造血幹細胞は患者さんの体にすみ着いて殖えることができ、やがてリンパ球がたくさんつくられます。これを「生着」と呼びます。ところで、リンパ球には外から入ってきた自分の体とは違う異物をやっつける働きがありますから、あとから入り込んできたはずのドナーのリンパ球が、今度は患者さんの体全体を異物だと思って攻撃をはじめます。これがGVHDです。重症になると、このGVHDが致命傷にもなりますので、従来は免疫抑制剤を用いてリンパ球の増加をしっかりと予防していました。

ところが最近になって、GVHDが起こった場合には、移植後のがんの再発が少なくなることがわかってきました。これを専門用語で「GVL効果」と呼びます。この効果は、他人のリンパ球を介した免疫反応なので、自家移植では発生しません。つまり、ドナーのリンパ球が患者さんの体を異物として認識する際に、ドナーのリンパ球が、患者さんの体の中に残っているがん細胞を真っ先に攻撃するのです。

(2)ドナーリンパ球輸注療法(DLI)

さらに、ドナーリンパ球にも強力な治療効果があることがわかってきました。白血病は、同種移植を行ったあとにも不幸にして再発することが多くあります。移植のように、超大量の抗がん剤の治療を行ってもまだ生き延びて再発するようながん細胞に対しては、もはやどんな抗がん剤も効果はありません。そういうときに、移植のときと同じドナーの方から採取したリンパ球を注射すると、抗がん剤を使わなくても白血病が消えていく現象が起こることがわかってきました。これを「Donor Lymphocyte Infusion(DLI)」といい、現在、造血幹細胞移植の世界では幅広く使われています。ただし、このDLIが効くタイプのがんは少数派にとどまります。

3.臍帯血移植

臍帯血移植は、骨髄移植や末梢血幹細胞移植と比べると、まだまだ移植症例数の少ない移植方法です。これは臍帯血に含まれる造血幹細胞の量が少ないため、大人への移植には細胞数が不十分であると考えられてきたためです。幹細胞数が少ないために生着が遅れたり、うまく生着しなかったりします。そのため、感染症の危険性が高まるといわれています。さらに、臍帯血に含まれる幹細胞は、骨髄由来のものと異なって、より未熟な細胞です。そのため、移植後の免疫力の回復が遅れ、生着後もウイルスなどの感染に弱いと考えられています。

しかしながら、臍帯血移植には骨髄移植や末梢血幹細胞移植にはない長所もあります。例えば、幹細胞がより未熟な細胞であるため、HLAが一致しない場合でも臍帯血からの移植が可能になり、ドナー候補が広がります。また、臍帯血はすでに凍結保存されているため、ドナーを探す必要もなく、早期の移植が可能です。

以上のように、各移植法にはそれぞれ長所、短所があります。担当医とよく相談して移植方法を決定していくことが大切です。
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