同種造血幹細胞移植:ミニ移植:[国立がん研究センター がん情報サービス]
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同種造血幹細胞移植:ミニ移植

更新日:2015年07月06日 [ 更新履歴 ]    掲載日:2006年12月11日
更新履歴
2015年07月06日 研究報告に関する内容(図)を一部削除しました。
2006年12月11日 掲載しました。

1.ミニ移植とは

1)ミニ移植の原理を教えて?

造血幹細胞移植というのは、自分の造血幹細胞を保存しておいて強い治療(前処置)のあと戻してやる「自家移植(図1上段)」と、血縁者を含む他人の幹細胞を移植する「同種移植」の2つに分けられます。

自家移植と同種移植については「造血幹細胞移植の種類 1.自家移植と同種移植」をご参照ください。

移植の前に行う治療を「前処置(ぜんしょち)」と呼びますが、従来の「同種移植」では、骨髄を空にするような超大量の抗がん剤や全身放射線照射を、前処置として使用するのが常でした。最近は、これから説明するミニ移植が増えているため、従来の移植法は「同種フル移植(図1中段)」とも呼ばれます。

前処置療法は、通常の抗がん剤治療では殺せないがん細胞を根絶やしにし、同時にドナーの細胞を患者さんの骨髄に根づかせる(“生着”といいます)ために、患者さん自身の免疫の力を弱める役割も果たします。フル移植では、最初の超大量の前処置療法により、患者さん自身の健全な臓器、例えば肝臓、心臓や腎臓等が障害を受けることが多くありました。このため、移植療法を受けることのできる年齢はせいぜい55歳までで、心臓や腎臓にすでに障害を持つ患者さんは、移植を受けることはできませんでした。しかも白血病細胞は、このように多量の抗がん剤を使えば絶滅できるというほど、生やさしいものではありません。

このような前処置療法の後も残った白血病細胞が、移植後に患者さんの体内で増えるドナーのリンパ球が持つ免疫力によって攻撃され、やがては完治(治癒)に導かれることがわかってきました。この効果のことを「移植片対白血病効果(いしょくへんたいはっけつびょうこうか):GVL効果」と呼びます。

このことを応用すれば、前処置として投与する毒性の高い抗がん剤や放射線の量を減らせ(「minimize」、ミニ移植(図1下段)の語源です)ます。抗がん剤や放射線の代わりに、患者さんの免疫を抑え、ドナーの造血幹細胞を根づかせる免疫抑制剤を注射してから幹細胞移植を行えば、少ない副作用で造血幹細胞を生着させることが可能になります(図2)。その後、白血病を根絶やしにするGVL効果が出るのを待ちます。ミニ移植は、「骨髄“非”破壊的移植」とも呼ばれます。今まで同種移植を受けられなかった高齢者、あるいは臓器障害のある患者さんでも、ミニ移植なら受けられる可能性が高まります。
図1:自家移植と同種移植(フル移植とミニ移植)の治療効果の比較
図1:自家移植と同種移植(フル移植とミニ移植)の治療効果の比較
図2:ミニ移植とは?
図2:ミニ移植とは?
同種フル移植のように大量の抗がん剤は使わないで、免疫抑制剤を中心とした前処置療法によって、ドナーの造血幹細胞やリンパ球を患者さんの体内に根づかせます(生着させます)。

2)どのくらいミニ移植が行われているの?

白血病やリンパ腫にかかる患者さんは、50~60歳代の方が多いです。従来行われてきた同種フル移植は治癒する可能性がある反面、合併症が非常に多かったため、通常は、55歳以下で全身状態の良い患者さんしか受けられませんでした。ミニ移植が行われるようになってからは、60歳代から70歳近くの患者さんでも同種移植を受けられるようになりました。

3)ミニ移植の実際の流れを教えて?

移植の適応になる患者さんであると判断した場合には、移植のための入院日を計画します。移植を安全に行うには、歯科受診と心臓や肺等の全身の検査を進める必要がありますが、これは入院前に外来で行う場合もあります。

血縁ドナーでHLAが一致した方からミニ移植を行う場合の、代表的な前処置療法を紹介します(図3)。

移植日の8日前からフルダラビンという薬を6日間点滴で投与し、続いてブスルファンという薬を2日間(計8回に分けて)投与します。

ミニ移植を受けてから、約2~3週間でドナーの細胞が増えてきます。このときに、ドナーのリンパ球が患者さんの体を異物とみなして攻撃する反応が、「移植片対宿主病(GVHD)」です。合併症がなく順調にいけば、多くの患者さんは移植後1~2ヵ月ごろまでには状態が落ち着いて退院できます。

移植片対宿主病(GVHD)については「造血幹細胞移植の副作用:移植片対宿主病」をご参照ください。
図3:ミニ移植の前処置療法の一例
図3:ミニ移植の前処置療法の一例

4)どの時点で、ミニ移植を考えたらいいの?

年齢や病気の種類、全身状態ごとに大きく変わりますが、ミニ移植を決断するタイミングは重要なポイントです。白血病やリンパ腫の治療を行う際には、「目標をどこに置くか」について、担当医や家族と十分に相談する必要があります。化学療法だけで完治(治癒)すれば、あえて危険な移植という治療法を選択する必要はありません。ただし、化学療法を継続しても完治(治癒)するのが難しい場合は、リスクを伴いますが「ミニ移植」で完治を目指すか、それとも安全性を優先して病気をコントロールしていくのかを、十分に考える必要があります(図4)。どの治療法を選ぶか個人の価値観によって大きく変わりますが、担当医と相談し、慎重に決めてください。

ミニ移植には、後ほど詳しく述べる特有の合併症があり、まだ完全に確立した治療法とはいえません。ミニ移植を受ける場合は、より良い治療法を開発している経験豊富な施設を選ぶことをお勧めします。
図4:治療の効果と安全性のバランス
図4:治療の効果と安全性のバランス

5)ミニ移植のドナーを探すにはどうしたらいいの?

「HLA」という白血球の型を調べるために、患者さん本人と、ドナー候補となる兄弟や家族等の採血を行う必要があります。ミニ移植を含めた同種移植を行うには、HLAがすべて一致した血縁者(兄弟、姉妹)が最適ですが、一致したドナーの方がいない場合、親子のHLAも調べてみる価値はあります。また、HLA-A、 B、DR各2つずつの計6個のHLAのうち1個だけが不一致の場合は、条件は少し落ちますが同種移植のドナーとなることができます。ただし、ドナーの方はあくまでも「ボランティア」です。幹細胞を採取する方法は100%安全というわけではありませんので、前もって問題となるような病気がないか検診を行う必要があります。特に、ミニ移植を受ける患者さんは高齢の方が多く、必然的にドナーの方も高齢者が多くなるため、慎重な対応が必要です。家族にドナー候補がいない場合は、骨髄バンクへの登録が考えられます。いずれにしても、このような点に関しては、ミニ移植も通常のフル移植と全く同じです。

ドナーの条件については「造血幹細胞移植の対象となる病気 3.ドナーの条件」をご参照ください。

骨髄バンクは、登録してから実際に移植するまでに最低でも3ヵ月はかかるため、同種移植が必要だとわかった時点で、早めに登録する必要があります。骨髄バンクでドナーの方が見つからない場合は、昔は同種移植を諦めていました。今では臍帯血(さいたいけつ)バンクで、ほとんどの患者さんがドナーの方を探すことができます。ただし、臍帯血バンクからの移植はまだ経験が浅く、合併症が多くなったり、GVL効果が十分に出ない可能性もあり、まだしっかりと確立した移植法とはいえません。同様に経験の浅いミニ移植と組み合わせる際には、慎重な対応が必要です。

2.ミニ移植の治療効果

1)ミニ移植の「適応」ってどういうこと?

「移植適応がある」というのは、「移植をやる価値がある」、「移植をお勧めする」ということです。もちろん、移植治療には完治(治癒)の可能性があるものの、一方では副作用も多く、容態が急に変わることもあります。ミニ移植であっても同じ危険が伴います。フル移植と同様に、治療に伴う危険性(移植関連死亡)とのバランスを見極めて、他の治療法とも比較しながら適応を考えていく必要があります。日本造血細胞移植学会から、2002年に移植適応に関するガイドラインが発表されています。しかし、その時点から現在までの移植分野での進歩は目覚しく、現状には合わない部分も多くみられます。ミニ移植の適応については、担当医とよくご相談ください。

2)ミニ移植と比較して、化学療法の効果はどうなの?

化学療法の場合は、治療に伴う合併症で命にかかわるもの(治療関連死亡)が少ないという利点があり、病気の種類や進み具合(病期)によっては、化学療法のみでも完治(治癒)が十分期待できる場合もあります。しかし、白血病細胞、リンパ腫細胞の中には、多量の抗がん剤を使っても絶滅させることが難しい場合もあります。化学療法後の治療不成功の原因は、ほとんどがもとの病気の再発であることが現実です。ミニ移植では「GVL効果」が継続しますので、再発を抑える効果が強くなり、完治(治癒)する可能性も高まります。一方、副作用も多く、短期的にみると成績は化学療法に劣ります。治療効果とのバランスを十分に考えて判断する必要があります。

3)ミニ移植と比較して、自家移植の効果はどうなの?

「自家移植」では、前処置として用いる非常に大量の化学療法(あるいは放射線照射)が治療の中心で、移植は正常な血液が回復するための補助手段にすぎません(図1上段)。自家移植では、自分自身の幹細胞をあらかじめ凍結して保存しておきます。前処置として非常に大量な抗がん剤や、全身に放射線をあてることで体の中にあるがん細胞をやっつけ、そのあとで自分の幹細胞を戻してやる治療法です。毒性のある抗がん剤や放射線をこれだけ大量に使うのですが、「ミニ移植」よりも命にかかわる合併症は少なく、全身状態によっては、60歳代の患者さんにも行うことができます。一般的に、化学療法の量を増やすことで抗がん効果の増強が期待できる病気、例えばびまん性大細胞型リンパ腫や多発性骨髄腫等に対して、自家移植はよく行われます。また、その他のリンパ腫や急性骨髄性白血病に対して自家移植を行う場合もあります。

一方、自家移植ではドナーの免疫力によるGVL効果はないため、再発が問題になります。いかに大量の抗がん剤を用いたとしても、がんの種類や状態によっては全滅させることが困難な場合があります。また、戻す幹細胞の中に混じったがん細胞があとから殖えて、再発する場合もあります。

4)ミニ移植と比較して、(従来型の)同種フル移植の効果はどうなの?

「同種フル移植」は、非常に大量の抗がん剤や全身に放射線をあてる「前処置」の効果と、移植後の「GVL効果」の両方が期待できるため、再発を抑える効果からみると最強の治療法になります(図1中段)。しかし、患者さん自身の健全な臓器、例えば肝臓、心臓や腎臓等が障害を受けることも多く、命にかかわる合併症(移植関連死亡)の頻度もミニ移植よりもはるかに多いため、若くて全身状態が良い患者さんにしか行えません。

5)ミニ移植だと、移植後の再発が増えてしまうの?

移植の直前に投与する抗がん剤(放射線)の量が少ないので、増殖スピードが速いがんでは、ミニ移植後に再発が多くなる可能性があります。そのため、同種フル移植が可能な全身状態の良い若い患者さんでは、ほとんどの場合はミニ移植よりも同種フル移植を、まずお勧めしています。ただし病気の種類によっては、年齢が若くてもフル移植ではなく、ミニ移植を選択する場合もあります。

6)HLAが一致する兄弟以外がドナーの場合、ミニ移植の効果はどうなの?

「ミニ移植」の経験の多くは、HLAが一致した兄弟からの末梢血幹細胞を用いたものです。骨髄バンクや臍帯血バンク、あるいはHLAが不一致のドナーの方からのミニ移植は効果が出る可能性はありますが、まだ十分に確立したものではありません。

HLAが不一致の移植の場合は、GVHDやGVL効果がより強く出ると考えられています。また、骨髄バンクドナーからの移植の場合は、HLAが一致していても他の細かな部分(マイナー抗原とも呼びます)の違いのために、HLA一致血縁ドナーの場合よりもGVL効果が強くなる可能性があります。GVL効果が強くなるというのは、再発が減るという点では喜ばしいのですが、その分GVHDも強くなるため、感染症や移植関連死亡も増加してしまいます。特に高齢の患者さんでは、GVHDもより強くなってしまいます。

また、幹細胞の種類によって、輸注されるドナーのリンパ球の量も大きく異なる(末梢血>骨髄>臍帯血)点も、ドナーのリンパ球によるGVL効果に依存しているミニ移植では、大きな問題となります。

移植方法による違いについては「造血幹細胞移植の各方法の比較」をご参照ください。

7)どんな病気に対して、ミニ移植は有効なの?

病気の種類ごとに、ドナーの免疫力によるGVL効果の強さは大きく異なります。一般的には、ゆっくり増殖するタイプの白血病やリンパ腫に対して、「ミニ移植」は特に有効です。

ミニ移植の適応については、従来の同種フル移植とは異なる場合も多いため、以下に簡単にまとめます。ただし、年齢や全身状態、病気の種類や進行のスピード、ドナーが血縁者かどうか等、患者さんの状況によって大きく異なりますので、担当医とご相談ください。

自家移植や同種フル移植の適応については「造血幹細胞移植の対象となる病気 1.適応となる病気についての考え方」をご参照ください。

<急性骨髄性白血病:AML>

HLAが一致した血縁ドナーあるいは骨髄バンクドナーがいれば、高齢でも移植は可能です。特に2回目以降の寛解期や、予後不良(たちの悪い)染色体異常がある第一寛解期のAMLは、ミニ移植の非常によい適応になります。白血病細胞が残っている状態(非寛解)でも、白血病細胞の増殖スピードに勢いがなければ、ミニ移植も可能かもしれません(ミニ移植の前に、弱めの化学療法を追加することもあります)。

急性骨髄性白血病については「急性骨髄性白血病」をご参照ください。

<急性リンパ性白血病:ALL>

ALLはGVL効果が最も効きにくいため、ミニ移植では再発の可能性が高く、非寛解の場合は可能な限り同種フル移植をお勧めします。ただし、ALLでもGVL効果が全くないわけではないので、移植前にしっかりと寛解を維持している場合にのみ、ミニ移植を行います。

急性リンパ性白血病については「急性リンパ性白血病」をご参照ください。

<骨髄異形成症候群:MDS>

MDSの患者さんは高齢者が多く、化学療法では完治(治癒)が望めないため、ミニ移植が最も期待されている病気です。しかしミニ移植では、MDSの再発や生着不全・拒絶の危険性が最も高く、難しい移植になります。病気の種類やIPSSという進行度、輸血が必要か否かで移植適応が決められています。
がんの量を減らすために、弱めの化学療法を行った後にミニ移植を行う場合もあります。

骨髄異形成症候群については「骨髄異形成症候群」をご参照ください。

<慢性骨髄性白血病:CML>

CMLは「ドナーリンパ球輸注」が最も効果がある白血病で、GVL効果が現れやすいためミニ移植の良い候補とされています。しかし、グリベック登場後は移植の数が激減し、十分なデータはありません。今後は、グリベックが効かなくなった移行期や、急性転化の状態で移植に紹介される患者さんが増えてくるかもしれません。しかしそういう状況では、白血病細胞をミニ移植のみでコントロールするのは難しいでしょう。したがって、グリベック(や他の新規薬剤)の効きが悪そうな患者さんで、移行期、急性転化の状態になる前の慢性期に移植することが期待されます。

慢性骨髄性白血病については「慢性骨髄性白血病・骨髄増殖性腫瘍」をご参照ください。

<悪性リンパ腫>

濾胞性リンパ腫は化学療法による完治(治癒)は困難で、GVL効果が十分期待できるため、ミニ移植の非常に良い適応です。しかし進行は非常にゆっくりで、化学療法やリツキシマブなども一時的には有効であるため、すぐにミニ移植を行う必要はありません。ただし「びまん性」に形質転換したあとでは、GVL効果が現れにくくなる(移植の成功率が低下する)可能性もあります。したがって、タイミングを逃さずにミニ移植を行えるように早めにHLA検査を行い、ドナーの有無を確認しておくことをお勧めします。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫は、化学療法+リツキサンのみでも完治(治癒)の可能性があります。再発して化学療法(サルベージ療法)が有効なときには、まず自家移植を行うことが多いようです。

濾胞性リンパ腫と比較するとがんの増殖スピードが速いためか、GVL効果が弱い傾向にあります。ミニ移植を行う場合は、化学療法などによりがんの増殖をある程度コントロールしておく必要があります。

特殊なタイプのリンパ腫として、成人T細胞白血病リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫の3つがあります。化学療法や放射線療法のみでは完治(治癒)の可能性が低く、GVL効果もある程度現れるのではないかと報告されていて、ミニ移植の適応がある可能性はあります。診断がついた時点で早めにHLA検査を行ってドナーの有無を確認しておくことをお勧めします。

悪性リンパ腫については「悪性リンパ腫」の各ページをご参照ください。

3.ミニ移植の副作用

1)ミニ移植にはどんな副作用があるの?

ミニ移植は高齢者に可能な移植法といわれていますが、移植治療である以上、命にかかわる合併症(移植関連死亡)があります。合併症の中でも移植片対宿主病(GVHD)と感染症が最も重要な副作用です。

移植片対宿主病(GVHD)については「造血幹細胞移植の副作用:移植片対宿主病」、感染症については「造血幹細胞移植の副作用:免疫抑制」をご参照ください。

ミニ移植では、白血病をやっつけるためにGVL効果に頼っているので、同種フル移植の場合よりもGVHDとGVL効果(図5)のバランスをとるのが難しくなります。また、GVHDや感染症等の合併症の出方が同種フル移植と異なる点も多いため、その違いに重点をおいて説明していきます。
図5:GVHDとGVL効果
図5:GVHDとGVL効果

2)ミニ移植の「移植前処置」では、どんな副作用があるの?

同種フル移植と比べると、ミニ移植では使用する抗がん剤の種類や量が異なるため、副作用は少なくなります。

フルダラビン

患者さんの免疫力を落としてドナーの幹細胞を生着させるために、ほとんどのミニ移植で用いられる注射剤です。吐き気などの副作用もほとんどなく、これ自体では白血球数はあまり減らないほどです。

ブスルファン

痙攣(けいれん)を起こす可能性があるため、痙攣予防の薬も一緒に使います。投与時には吐き気、時間がたってからは肝臓の障害や脱毛等を来す可能性があります。

メルファラン

特に、臍帯血バンクや骨髄バンクのドナーの方からのミニ移植のときなどに用いられる注射剤です。口内炎や下痢などの粘膜障害が出てくる可能性があります。

シクロホスファミド

ミニ移植では、同種フル移植のときよりも減量して用いることが多い注射剤です。吐き気、出血性膀胱炎(しゅっけつせいぼうこうえん)、心不全を合併する危険があるため大量の点滴が必要で、体重や尿量をみながら利尿剤(おしっこを出す薬)を用います。

全身放射線照射

同種フル移植では、全身放射線照射を1日2回で3日間(計6回)に分けて行います。骨髄バンクや臍帯血バンクからのミニ移植のときには、きちんと生着させるように1日だけ(計1〜2回)全身放射線照射を用いることがあります。

3)ミニ移植後にドナーの細胞が「生着」するまでには、どんな副作用や合併症があるの?

同種フル移植と比べて、ミニ移植は移植後早期に血液培養で細菌が検出される頻度は少なくなります。しかし、ドナーの白血球が増えてくる(生着してくる)までは感染症の危険性が高く、注意が必要です。(白血球の中で細菌などをやっつける役目がある)好中球がゼロになる時期は、特に緑膿菌(りょくのうきん)などのグラム陰性桿菌(いんせいかんきん)が血液に感染すると、1〜2日の経過で命にかかわることもあります。熱が出たときには、すぐに血液培養や抗生剤点滴を開始するなど、素早く対処する必要があります。

フル移植と比べると少ないのですが、ミニ移植後でも口の中やのどの粘膜が荒れて痛みがあったり、貧血や血小板減少に対して輸血を行ったり、下痢、腹痛等に対して痛み止めの点滴を用いることがあります。また、白血球が増えてくる時期に、発熱、皮膚の赤み、息苦しさ、下痢、体重増加等の症状が出るときがあります(まれに白血球が増えてくる前に出現することがあります)。ドナーのリンパ球による免疫反応と考えられ、広い意味での急性GVHDですので、症状に応じてステロイドホルモンで治療します。

4)「生着」からミニ移植後100日ごろまでには、どんな副作用・合併症があるの?

「急性GVHD」は、皮膚の赤みや皮疹(ひしん)、下痢(1~2L以上になることもあります)、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、体のだるさ、黄疸(おうだん)、発熱等の症状がみられます。通常の移植の場合には、白血球が増えてから(移植後1ヵ月ごろ)出てくることが多いのですが、ミニ移植の場合は、免疫抑制剤の減量を開始した移植2~3ヵ月後に起こることもあります。ミニ移植で非常に大切なことは、がん細胞をやっつけるドナーの免疫の力(GVL効果)と、副作用としてのGVHDのバランスをうまくとりながら治療することです。(図6)。

シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制剤は、採血で血液の中の濃度を確認しながら投与していきますが、免疫抑制をあまり強くかけすぎると、ミニ移植後にもとの病気が再発しやすくなります。逆に、GVL効果を無理に誘導するためにミニ移植後1~2ヵ月で免疫抑制剤を中止してしまうと、コントロール困難なGVHDを起こし、合併症で命を落としてしまうことになります。ミニ移植を受ける患者さんの大半は高齢のため、急性GVHDやその治療の過程で合併してくる感染症に耐え切れない場合も多く、注意が必要です。
図6:同種(ミニ)移植後のGVL効果とGVHD
図6:同種(ミニ)移植後のGVL効果とGVHD
感染症に関して、とかくミニ移植は安全と誤解されやすいのですが、「サイトメガロウイルス感染症」と「アスペルギルス感染症」は従来の同種フル移植とミニ移植では頻度が変わりませんので、特に注意が必要になります。

5)「生着不全」や「混合キメラ」というのはミニ移植で多いの?

ドナー由来の細胞と、もとの患者さん由来の細胞の割合を調べる遺伝子検査のことを、“キメリズム検査”と呼びます。95%以上がドナー由来のときを「完全キメラ」、ドナーの細胞と患者さんの細胞が混在している状態を「混合キメラ」と呼びます。キメリズム検査では、最も大事なTリンパ球だけに純化してから調べるほうが、より正確な情報が得られます。

ミニ移植では通常の移植よりも前処置が弱く、ドナーの細胞が患者さんの骨髄へ根づかずに拒絶されること(生着不全と呼びます)や、両者の細胞が混在する「混合キメラ」となる場合が多くなります。ただし生着不全の場合でも、ミニ移植ではもともとの自分の細胞が徐々に増加してくることもあります。また、いったん生着して「混合キメラ」となっていたのに、ドナー細胞が徐々に減少して最終的に拒絶される「二次性生着不全」もよくみられます。

以前は、ミニ移植後に「混合キメラ」になった場合に、早めに「ドナーリンパ球輸注」を行って「完全キメラ」にしようとしていましたが、その後のGVHDなどの合併症が多すぎることがわかりました。現在では、明らかな再発がない限り「ドナーリンパ球輸注」は行わず、免疫抑制剤の調節のみで経過をみることが増えてきています。

6)ミニ移植後100日以降は、どんな長期的な副作用があるの?

ミニ移植後100日以降も、慢性GVHDを合併する可能性があります。特に、肺の慢性GVHDを合併すると重症になりやすいため、定期的に肺機能検査を行ったり、息苦しさやせき等の症状があるときには詳しい検査をする必要があります。

慢性GVHDの治療は、プレドニゾロンというホルモン剤が治療の中心です。症状が良くなった後も慎重にゆっくりと減量していく必要があり、数ヵ月から1年近く服用しなければならないこともあります。特にミニ移植では、GVL効果を強く出したいがためにプレドニゾロンを急速減量してしまい、肺の慢性GVHDなどで苦労する場合が増えています。慢性GVHDに対する治療中は、細菌、真菌、ウイルスに対する抵抗力が弱くなっています。特に、肺炎球菌が血液に感染する敗血症やカリニ肺炎等は命にかかわってくることもありますので、免疫抑制剤を服用している間は「バクタ」という予防薬の内服を続けます。
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