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免疫療法

更新日:2004年12月02日 [ 更新履歴 ]    掲載日:2000年11月30日
更新履歴
2004年12月02日 更新しました。

1.概要

幼児期にポリオ、ジフテリアあるいは破傷風等のワクチンを接種を受けたり、インフルエンザが流行する前に予防接種を受けたりします。これは、人為的に弱毒化した細菌やウイルス等の病原体をあらかじめ接種することにより、たとえ病原体が侵入しても病気にかからなかったり、たとえその病気にかかっても軽くすませるためです。また、おたふくかぜ、風疹、はしか等のように、一度かかるともう二度とかからない病気もあります。このように、生体には病気になるのを防いだり、一度かかった病気になりにくくする仕組みがあります。この仕組みを「免疫」と呼びます。

体を構成する細胞にはさまざまなものがありますが、免疫を担当しているのはリンパ球、マクロファージ、好中球等の細胞です。リンパ球は、B細胞とT細胞に大別されます。B細胞は抗原※注1に対して特異的に結合することのできる抗体(免疫グロブリン)を産生します。もう一方のT細胞には、さらに大別して2種類が存在します。1つは、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を殺傷する能力を持っている細胞傷害性(またはキラー)T細胞です。もう1つは、種々のサイトカイン※注2を産生してB細胞の抗体産生を活性化したり、他のT細胞を活性化させる働きを持つヘルパーT細胞です。その他、ナチュラルキラー(Natural Killer:NK)細胞はウイルス感染細胞や、がん細胞を殺傷する働きがあります。マクロファージは細菌などの異物を貪食(どんしょく)し、殺菌したりする作用があります。好中球もマクロファージと同様に細菌を貪食し、殺菌する作用を持っています。このように多くの種類の細胞が、免疫現象にかかわっています。
※注1—免疫現象を起こさせる物質:病原体の成分やタンパク質等
※注2—免疫担当細胞がつくる物質:免疫反応を調節したり、免疫担当細胞を活性化あるいは増加させる
免疫反応の主役的な役割を果たしているT細胞が抗原を認識するには、抗原をT細胞に提示する機能を持った抗原提示細胞と呼ばれる細胞が必要です。この抗原提示細胞の表面には、主要組織適合性抗原(Major Histocompatibility Complex:MHC)が提示されます。ヒトの場合は、これを特にヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen:HLA)と呼び、大きく分けてクラスI(HLA-A、B、C)とクラスII(HLA-DR、DP、DQ)があります。また、HLAは他人からの臓器移植の生着率に影響します。このHLAに抗原がペプチド(アミノ酸がいくつか結合したもの)の形で結合し、T細胞に提示されると、T細胞はその表面にあるT細胞レセプターと呼ばれる受容体(抗原とぴったり凹凸が合致するようになっている)によって、これは抗原だと認識します。ただし、T細胞が活性化するにはこれだけでは不十分で、抗原提示細胞上にあるいくつかの補助分子(細胞表面に存在し、細胞と細胞の接着に関与する分子や細胞内に刺激を伝える分子等)を介する作用が必要となります。すべての条件がそろうと、例えばHLAクラスIに結合した抗原ペプチドは、特にCD8陽性T細胞と呼ばれるT細胞に提示され、これを認識したT細胞は、活性化してキラーT細胞に変身します。また、HLAクラスIIに結合したペプチドはCD4陽性T細胞に提示され、ヘルパーT細胞を活性化させます。抗原提示細胞としては、マクロファージ、B細胞、あるいは樹状細胞(Dendritic Cell:DC)がありますが、その中でも特に樹状細胞は、最も強い抗原提示機能を持っています。

免疫療法とは、免疫担当細胞、サイトカイン、抗体等を活性化する物質を用いて免疫機能を目的の方向に導く治療法です。がんの治療では、現在広く行われている外科療法、化学療法、放射線療法に続き、免疫療法が第4の治療法として期待されています。

免疫担当細胞を用いたがんの治療は、T細胞を増殖、活性化させる因子であるインターロイキン2(Interleukin-2:IL-2)と呼ばれるリンフォカイン(サイトカインの中で特にリンパ球が産生するもの)の発見により、発展してきました。がん患者さん自身のリンパ球を体外でIL-2と培養して、がん細胞を殺傷する作用の強いリンパ球を大量に増やして、この活性化したリンパ球を患者さんに戻す治療法は「リンフォカイン活性化キラー細胞(Lymphokine Activated Killer cells:LAK)療法と呼ばれています。

リンフォカイン活性化キラー細胞療法については「2.細胞免疫療法」をご参照ください。

一方、宿主(患者さん)の免疫が、病原体と同じようにがん細胞を特異的に認識し、排除することができるのかどうかは不明でした。しかし1991年に、がん細胞に特異的な抗原が存在することが明らかになりました。それ以降、数十個のがん特異的抗原が同定されました。これらの発見により、がん細胞も病原体と同様に、宿主(患者さん)の免疫によって排除されることが明らかになってきました。これらの研究成果をもとにして、がんのワクチン療法や樹状細胞を用いた細胞療法が試みられるようになってきました。

各療法については「3.ワクチン療法」、「2.細胞免疫療法 2)樹状細胞(Dendritic Cell:DC)療法)」をご参照ください。
T細胞が抗原提示細胞の存在下にがん抗原を認識し、がん細胞を殺すメカニズムを模式的に表したものが下の図です。

この他に、免疫担当細胞を活性化したり、それ自身でがん細胞を殺す作用のあるサイトカインを用いた治療法(サイトカイン療法)や、B細胞が産生する抗体を用いた治療法(抗体療法)、免疫力を賦活(ふかつ)するような薬物を用いた治療法(BRM療法)等が行われています。

各治療法については「4.サイトカイン療法」、「5.BRM療法」、「6.抗体療法」をご参照ください。

免疫療法の説明図

免疫療法の説明図

図中用語の説明
CD2、B7、CD40、CD40L等は、T細胞や樹状細胞などの抗原提示細胞の膜表面上にある補助刺激分子です。補助刺激分子については「7.遺伝子治療 2)ワクチン療法 (1)腫瘍ワクチン療法」をご参照ください。

IL-2Rは、T細胞などのリンパ球表面上にあるIL-2に対する受容体です。IL-2は、この受容体を通してリンパ球の増殖、活性化刺激を伝えます。

パーフォリンは、キラーT細胞やNK細胞などの細胞障害性リンパ球がつくるタンパク質です。これらのリンパ球ががん細胞などの標的細胞に接触するとリンパ球から放出され、標的細胞に穴が開き、標的細胞は破壊されます。

2.細胞免疫療法

1)非特異的免疫療法

(1)リンフォカイン活性化キラー細胞(LAK)療法

インターロイキン2(IL-2)は、1970年代にT細胞の増殖を促進する因子として見出されたサイトカイン(あるいはリンフォカイン)の一種です。IL-2は、T細胞のほかにも、がん細胞を殺傷する作用のあるナチュラルキラー(NK)細胞も活性化と増殖させる作用があります。1980年代前半に、患者さんのリンパ球を体外に取り出して高濃度のIL-2とともに培養すると、がん細胞をよく殺傷するようになることが報告されました。これをリンフォカイン活性化キラー細胞(Lymphokine
Activated Killer Cells:LAK)療法と名づけました。わが国でも、このLAK細胞を大量に培養し、増殖あるいは活性化させた後に生体内に戻す治療法がすでに試みられています。この方法は、一度リンパ球を体外に取り出し、培養増殖してから再び体内に戻すので、養子免疫療法とも呼ばれています。

[効果、副作用、問題点]
LAK細胞を維持するために、患者さんの体内にLAK細胞を戻すと同時に、大量のIL-2を静脈注射することが行われました。しかしその結果、血管壁から血液が漏れ出たり、発熱、悪寒(おかん)、震え等IL-2によると思われる副作用が多くみられました。またその後の検討で、LAK細胞はがん内部への集積性が悪いことが明らかになりました。ばくだいな経費と人手がかかることや、期待されたほどの効果が確認されなかったため、広く普及するには至りませんでした。しかし、手技が比較的煩雑(はんざつ)ではないので、高度先進医療の一環として続けている施設があります。このような反省から、対象症例を絞って他の薬剤や治療法と併用したり、がん内部への高い集積性を期待して、次項に述べるような腫瘍組織浸潤リンパ球(しゅようそしきしんじゅんりんぱきゅう:Tumor-infiltrating Lymphocyte:TIL)を用いた養子免疫療法へと引き継がれていきました。

(2)腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)療法

がんに対する特異性を高める(がんだけにより強く作用させる)ために、末梢(まっしょう)の血液ではなく、がん組織そのものに集まっているリンパ球を採取します。それを、LAK療法と同じようにIL-2とともに数日間培養した後に、再び患者さんに投与する治療法です。LAK療法と比べ、がん細胞をより特異的に認識して攻撃するのではないかと期待されました。実際の臨床での成績はまだはっきりしませんが、TILの中にはがんを特異的に攻撃するT細胞も実際に含まれていて、これらの細胞の利用が、後のがん特異的抗原の発見に結びついた側面もあります。手技が比較的煩雑ですが、高度先進医療の一環として続けている施設があります。

[効果、副作用]
Rosenberg博士らは、悪性黒色腫20例中11例で有効であったと報告しています。乳がんの局所再発、がん性胸水、腹水の制御に有効であったとする報告や、肝細胞がん、大腸がん、非ホジキンリンパ腫に有効とする報告もみられます。副作用はLAK療法と同様です。

[問題点]
手術で取り出したがん組織からリンパ球を回収する方法が煩雑であり、長期間培養することでがんへの集積性、抗腫瘍活性が低下してしまうことや、抗がん効果を逆に抑制してしまう細胞が出現するなどの問題が指摘されています。有効性を改善するために、種々の工夫がなされています。TIL細胞を患者さんのがん細胞と一緒に培養したり、抗がん剤と併用したり、あるいはある種の抗体(例えば、がん細胞とリンパ球を同時に認識できる双特異性抗体)と併用することによって、TIL細胞ががんにより強く集積するようにする方法が試みられています。また、サイトカイン遺伝子を導入する遺伝子治療との組み合わせも試みられています。

2)樹状細胞(Dendritic Cell:DC)療法

抗原に特異的なT細胞が活性化してキラーT細胞になるためには、抗原提示細胞と呼ばれる細胞によって刺激される必要があります。抗原提示細胞は抗原をペプチドに分解して、HLAクラスI、あるいはクラスIIに結合させて提示します。また、T細胞を活性させるのに必要な補助分子と呼ばれるものを発現しています。抗原提示細胞の中で、特に抗原を提示する能力が高い細胞は樹状細胞と呼ばれています。1個の樹状細胞で数百から数千個のリンパ球の刺激が可能なことから、従来免疫療法で用いられてきたリンパ球よりも、むしろ樹状細胞を用いるのが効果的ではないかと考えられるようになっています。樹状細胞は生体内の臓器に広く存在しているものの、末梢血には白血球の0.1〜0.5%程度と少数しか存在せず、治療に必要な量を採取するのは困難であると考えられてきました。しかし、血液中から樹状細胞を大量に採取する技術が発達し、さらに樹状細胞を増殖、活性化させる培養方法も進歩したため、がんの治療に樹状細胞を使用できる環境が整ってきています。また、がん細胞に対して免疫反応を引き起こすがん特異的抗原なども明らかとなってきていて、これらの知識や技術を利用した樹状細胞療法が、最近の話題となっています。

このがん特異的抗原については「3.ワクチン療法 2)がん特異的抗原ペプチドによる免疫療法」をご参照ください。

患者さん本人から採取した樹状細胞を、体外でがん特異的抗原ペプチド、あるいは破壊したがん細胞とともに培養し、樹状細胞のがんに対する免疫誘導能力を増強します。その後に患者さんの体内に戻し、患者さんの体内でがんを攻撃するリンパ球を誘導し、がんを排除する免疫力を高めることを期待するものです。動物実験では悪性リンパ腫、悪性黒色腫、前立腺がん、大腸がん等でがんの発育を抑える効果や生存期間の延長等が報告されています。欧米をはじめとして、わが国でもヒトの悪性黒色腫、前立腺がん、悪性リンパ腫等で臨床試験がはじまっています。

樹状細胞の採取方法は、患者さん本人の血液から血液成分分離装置を用いて樹状細胞そのものを採取する方法と、まず未熟な細胞を採取し、それをサイトカインの一種であるGM-CSF、IL-4やTNF等を用いて樹状細胞へ分化させる方法とがあります。どちらの方法で採取した細胞がより有益であるかは、今のところ不明です。

この治療法は、免疫能力の保たれていると思われる患者さんが対象として想定されています。また、外科的な療法で病巣を除去した後の再発を予防する効果も期待され、従来の治療法と併用した臨床試験も検討されています。

[効果、副作用、問題点]
樹状細胞療法は欧米でも前立腺がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫等で臨床試験がはじまったばかりです。一部の患者さんでがんの縮小を認めたとの報告がありますが、今のところその効果と副作用についての評価は定まっていません。また、患者さん自身に対して不利益な免疫反応を引き起こす可能性が指摘されています。

3.ワクチン療法

1)腫瘍細胞ワクチン

患者さんのがん細胞そのものを破壊したり、あるいは殖えないように処理してから本人に接種し、がんに対する特異的な免疫を誘導する治療法です。しかし、がん細胞のみではT細胞の活性化に必須である分子が存在しないので、がん特異的抗原に対する免疫反応の誘導が十分に行われない可能性があります。最近では、がん細胞に免疫反応に必要な補助分子などの遺伝子やサイトカインの遺伝子を導入し、治療に用いる試みが行われています。

この試みについては「7.遺伝子治療」をご参照ください。

2)がん特異的抗原ペプチドによる免疫療法

患者さん本人の免疫ががんを排除できるかどうかは、長い間わかりませんでした。しかし、TIL中にがんを認識するキラーT細胞が存在することが明らかになり、続いて、このキラーT細胞が認識することのできるがん細胞に特異的な抗原のあることが明らかになりました。現在までに、数十種類のがん特異的抗原が見つかっていて、その遺伝子も明らかとなってきました。最近では、さらにがん特異的抗原の中でHLAに結合しやすいペプチドや、がん特異的抗原そのものを用いた新しい免疫療法が行われるようになってきました。先に述べたような樹状細胞を用いてがんに特異的なキラーT細胞を誘導する方法や、がん特異抗原あるいはそのペプチドを、免疫反応を増強させる補助物質(アジュバントと呼びます)とともに皮下に投与する治療法もあります。

[効果]
主に、悪性黒色腫を対象にしています。がん特異的抗原による治療によって、肺にあった転移巣が消失した例や、IL-2の併用によってがんが消失した例等が報告されています。しかし、臨床的有用性に関する結論はまだ得られていない状況です。

[問題点]
がん特異的抗原ペプチドはHLAクラスIによって提示されるために、HLAクラスIを発現していないがんに対しては効果が期待できません。また、HLAの種類によって結合するペプチドが限られているために、特定のHLAを持つ患者さんにしか使用できないという問題点があります。

4.サイトカイン療法

サイトカインは、免疫を担当する細胞がつくる物質です。免疫応答を調整するものや、免疫担当細胞を活性化、あるいは増殖させる作用のあるもの等があります。また、直接がん細胞を殺傷する作用を持つものもあります。

1)インターロイキン2(Interleukin-2:IL-2)によるサイトカイン療法

IL-2は、T細胞を増殖させる物質として最初に発見されました。しかしそれだけでなく、ナチュラルキラー細胞ががん細胞を破壊する作用を強めることも明らかとなっています。このような効果を期待し、IL-2によるがん治療が試みられてきました。実際には、IL-2を直接患者さんに投与し、生体内でがん細胞を殺傷する作用を高めようとする試みと、患者さんのリンパ球を生体外でIL-2とともに培養して、がん細胞を殺傷する能力のあるLAK細胞を誘導して体内に戻す方法(LAK療法)があります。

LAK療法については「2.細胞免疫療法 1)非特異的免疫療法 (1)リンフォカイン活性化キラー細胞(LAK)療法」をご参照ください。

[効果]
悪性黒色腫や、腎がんを対象として行われてきました。IL-2単独あるいはLAK細胞と併用することにより、若干の効果が認められたとの報告があります。大量のIL-2をがんの患者さんに持続的に投与するIL-2単独療法は、がん性胸膜炎などへの局所投与や、悪性血管内皮腫等で有用性を示唆する成績が得られています。

[副作用、問題点]
副作用として、IL-2の投与量によって血管壁の透過性の増進(血管から体液が漏れることです)による体液貯留と臓器機能不全、体重増加、低血圧、肺浮腫(はいふしゅ)、呼吸困難等があり、重篤(じゅうとく)な場合は死亡例の報告もあります。

2)インターフェロン(IFN)によるサイトカイン療法

IFNはウイルスに感染した細胞が産生する物質で、ウイルス増殖抑制因子として発見されました。IFNにはα、β、γの3種類があります。IFNの作用には、直接がんに作用する場合と、免疫担当細胞を介した間接作用があります。IFN-αの効果については、特に慢性骨髄性白血病に対して有効だという結果が得られ、その治療薬として注目されています。

[効果]
慢性骨髄性白血病に関しては上記のとおりです。また、これまで腎がんや悪性黒色腫を対象に多くの治験が行われてきていますが、効果は弱く、化学療法との併用が検討されています。現在では、慢性骨髄性白血病に対するほどの効果は期待されていない状況です。

[副作用、問題点]
IFN治療による副作用として、発熱、感冒様症状があります。このほかに無気力、抑うつなどの精神障害などが認められる場合があります。IFNは慢性骨髄性白血病に対する効果が高いのですが、その作用機序については明らかになっていません。今後の検討課題です。

3)腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor:TNF)によるサイトカイン療法

TNFは主としてマクロファージにより産生され、がんに出血性壊死を起こさせたり、がん細胞に直接的に働いて殺傷するなどの作用があります。動物実験ではTNFを投与すると短期間でがんが縮小するため、抗がん効果のあるサイトカインとして臨床応用が注目されました。

[効果、副作用]
全身投与では、発熱、血圧低下等の重篤な副作用のために有効な量を投与できないので、臨床応用が進んでいない状況です。そこで、悪性黒色腫ではがん局所への注入が試みられました。全身投与の場合と比較して、より高い効果が認められたなどの報告もあります。

[問題点]
TNFは抗がん作用を持つ反面、がん末期の患者さんに悪液質(患者さんが衰弱した状態です)を引き起こす作用を持つことや、副作用が非常に強いなどの問題点があるために、副作用を軽減した製剤の開発が進められています。

4)インターロイキン12(Interleukin-12:IL-12)によるサイトカイン療法

活性化した単球や樹状細胞からつくられるIL-12は、がん細胞を殺傷するような免疫反応を誘導するのに重要であることが報告され、注目されています。IL-12はNK細胞やキラーT細胞の増殖を促したり、がん細胞を殺傷する能力を高めます。マウスでは、がんの転移抑制や移植がんの縮小等、劇的な効果が認められています。

[効果、問題点]
臨床でも抗がん効果が期待されましたが、現時点では第I相試験が終了した段階で、有効かどうかの結論はまだ出ていません。

5.BRM療法

BRM(Biological Response Modifiers)療法の日本語訳は生体応答調節剤療法です。BRMは、1980年代になって新しくつくられた言葉です。米国立がん研究所のBRM委員会によれば、BRMとは「腫瘍細胞に対する宿主(患者さん)の生物学的応答を修飾することによって、治療効果をもたらす物質または方法」と定義されています。このBRM療法は患者さんの免疫系をはじめとして、体全体の働きを調節することにより、治療効果を得ようとする治療です。つまり、がんを治そうとする患者さん自身の持つ力を応援し、手助けし、強めるものです。このように、BRMは通常の抗がん剤とは基本的に考え方が異なっています。この治療法は単独で行われるよりも、むしろ免疫能が低下してしまう外科療法や放射線、化学療法等と併用することによって、患者さんの防御能力が低下するのを予防したり、より高めることを目的に行われます。したがって、その効果は従来の化学療法とは異なった観点から評価すべきと考えられています。実際に米国では、他の確立された治療法と併用することによって効果が認められれば、そのBRMは有効であると評価されています。しかしわが国での臨床評価は、今までの化学療法と同じように、BRM単独での抗がん効果で評価されています。より客観的、科学的、倫理的な評価法を確立すべきと考えられます。

(1)BCG(ビー・シー・ジー)

BRMが注目されるようになったのは、1970年に行われた悪性黒色腫に対するBCG生菌による治療以来のことです。非特異的免疫療法の草分けであり、現在に至っても多くの報告が出されています。膀胱(ぼうこう)がん、悪性黒色腫で有効であったとする報告がありますが、その他の固形がんでは有効例はほとんど認められていません。

(2)OK-432(オーケー-432)

ある種の細菌(溶連菌)からつくられたもので、好中球、NK細胞、マクロファージ等を活性化します。わが国で広く用いられてきましたが、現在では胃がん、肺がん、がん性胸腹水、他剤無効の頭頸部(とうけいぶ)がん、甲状腺(こうじょうせん)がん等に用いられています。

(3)PSK(ピー・エス・ケー)

担子菌(たんしきん)カワラタケ(サルノコシカケ)の菌糸体より抽出精製した物質(タンパク多糖複合体)です。内服で用いられます。副作用がほとんどない反面、作用は弱いのが特徴です。適応は胃がん(手術例)、治癒切除例の結腸直腸がんへの化学療法との併用に限定されています。

(4)Lentinan(レンチナン)

シイタケより抽出されたものです。キラーT細胞、マクロファージ、NK細胞等を誘導、活性化すると考えられています。がん患者さんの悪液質やQOL(クォリティ・オブ・ライフ:生活の質)を改善するという報告がありますが、適応は手術不能または再発胃がんにおけるテガフール(抗がん剤の1つ)との併用に限定されています。

(5)Bestatin(ベスタチン)

細菌(放線菌)由来です。適応は成人非リンパ性白血病に対する完全寛解導入後の維持、強化で、化学療法剤と併用されます。

(6)Sizofiran(SPG:シゾフィラン)

スエヒロタケより抽出されました。適応は、子宮頸がんにおける放射線療法との併用に限定されています。

(7)Levamisole(レバミゾール)

本来、駆虫薬として開発された物質(イミダゾール化合物)で、免疫増強効果があることが判明しました。肺がんや大腸がんの術後において、フルオロウラシル(抗がん剤の1つ)との併用で延命効果が得られたとの報告がありますが、臨床効果は確立されていません。

[効果]
上記のとおりで、一部のがんで有効性が認められています。

[副作用]
一部のBRM療法で発熱や白血球増多が認められますが、重篤な副作用は報告されていません。

[問題点]
特定の免疫担当細胞にのみ作用するわけではないので、作用機序が必ずしも明確でありません。作用機序の科学的な解明や、評価法の見直しが必要と考えられます。

6.抗体療法

抗体とは、抗原に対して特異的に結合できるタンパク質で免疫グロブリンと呼ばれ、B細胞が産生します。多種多様の抗原に対して、特異的な抗体が存在します。ある抗原に対して特異的な単一の抗体を、モノクローナル抗体と呼びます。近年、モノクローナル抗体を作製する方法が確立され、この技術は医学や生物学の分野で多大な貢献をもたらしました。がんに特異的な抗原に対するモノクローナル抗体なども多数つくられ、がんの研究、治療に広く用いられてきています。

抗体は一般に、補体(抗体の反応を補って、殺菌や溶血反応を起こす血清中の因子)を介して抗体が結合した細胞や細菌等を破壊したり、マクロファージやキラー細胞による細胞の破壊を助けるなどの働きがあります。モノクローナル抗体は、ある特定のがん細胞にだけそうした作用を及ぼすわけです。また、がん細胞のモノクローナル抗体を用いた治療としては、増殖を抑える働きのあるモノクローナル抗体も存在します。

がん細胞に特異的なモノクローナル抗体に細胞毒、抗がん剤あるいはアイソトープを結合させ、がん細胞を殺してしまおうという治療(ミサイル療法)が試みられています。また、ある種の白血病や乳がんに対する抗体療法も行われています。さらにがん組織にがん細胞を殺す作用のあるT細胞やNK細胞を集結させるため、T細胞やNK細胞とがん細胞の両方に対する抗体(双特異性抗体)なども開発されています。

[効果]
造血系がんである白血病に対し、細胞表面抗原に対する抗体療法が行われています。その中の報告で、成人T細胞白血病において、IL-2レセプターα鎖に対する抗体療法によって、一部の症例が完全寛解したというものがあります。また、大腸がん細胞由来のがん抗原に対するモノクローナル抗体(17-1A)を用いた、大腸がんおよび膵臓(すいぞう)がんの治療例も報告されています。そして、大腸がん手術後の補助療法として有効であったとの報告もあります。最近、がん遺伝子の1つであるErb-B2に対するモノクローナル抗体を用いた臨床応用がはじまり、注目されています。わが国でも、臨床試験が現在進行中です。

[副作用、問題点]
モノクローナル抗体は、全身投与すると肝臓などの臓器に集積し、がん組織への特異的な集積の低下が認められています。また、モノクローナル抗体はマウスなどの動物を使って作製されるので、これを患者さんに投与すると、異種由来のモノクローナル抗体に対する患者さん自身の抗体(ヒト抗マウス抗体)が産生されてしまいます。2回目以降の投与ではモノクローナル抗体が体内から除去されやすくなるために効果が激減したり、アナフィラキシーショック(異種のタンパクを投与することによるショック症状)が起こる可能性がある等の問題点があります。そこで、ヒト型抗体の作製などの試みがなされています。

7.遺伝子治療

近年、遺伝子治療が難治性疾患に対する新たな治療法として、注目を浴びてきています。免疫療法の分野でも、抗がん免疫にかかわる遺伝子を用いて抗がん免疫を誘導、増強することを目的とした研究が盛んに行われ、欧米ではすでに臨床応用も開始されています。ここでは、欧米における免疫遺伝子治療の現状を紹介します。

現在までに、研究および臨床に応用されている免疫遺伝子治療は、大きく2つに分けられます。1つは、抗がん活性を持つリンパ球に、その効果を高める遺伝子を導入して生体内に戻す受動免疫強化療法です。もう1つは、がん細胞にサイトカインなどの遺伝子を導入したり、がん特異的抗原の遺伝子を正常細胞に導入して、がん抗原特異的な免疫を誘導するワクチン療法です。

1)受動免疫強化療法

リンパ球からがんに特異的リンパ球(TILなど)を取り出して増やし、そこに抗がん効果を増強する遺伝子を導入して患者さんの体内に戻すことによって、抗がん免疫の効果を増強する試みがなされています。現在までに、TILにTNFやIL-2等の遺伝子を導入した後に患者さんに戻すという遺伝子治療が行われてますが、現時点では臨床的に意義のある治療効果は得られていません。

2)ワクチン療法

がん細胞に、免疫反応を増強するような遺伝子を導入してそれを接種する腫瘍ワクチン療法と、がん特異的抗原の遺伝子を直接、体内に接種するDNA(RNA)ワクチン療法に分けられます。

(1)腫瘍ワクチン療法

がん細胞にサイトカインや接着分子等の遺伝子を導入し、がん細胞が増殖しないように放射線を照射した後に患者さんの体内に戻す方法です。現在までに悪性黒色腫、腎がん、線維肉腫等で数多く試みられていますが、T細胞のがん内への浸潤、がん細胞特異的免疫担当細胞の誘導あるいは遅延型過敏反応等は確認されているものの、臨床的有用性が確認されたものはまだありません。また、補助刺激分子(T細胞受容体からのシグナルを増強するのを助ける補助分子)の1つであるB7遺伝子を、がん内部に直接接種する遺伝子治療も行われています。これに関してもほぼ同様の結果で、治療効果は確認されていません。

(2)DNA(RNA)ワクチン療法

がん細胞に、免疫反応を増強するような遺伝子を導入してそれを接種する腫瘍がん特異的抗原の遺伝子を患者さんの体内(その多くは筋肉細胞内)に接種し、その抗原に対する抗原特異的免疫反応を誘導する試みで、臨床応用が進められています。しかし、現時点ではその臨床的有効性は証明されていません。

また、樹状細胞にがん特異的抗原遺伝子を導入することによって、抗がん活性が高まることが期待されています。

樹状細胞については「2.細胞免疫療法 2)樹状細胞(Dendritic Cell:DC)療法)」をご参照ください。

動物実験では、腫瘍ワクチン、DNA(RNA)ワクチンを上回る治療効果が報告されていて、臨床試験が計画されています。

[効果]
他の遺伝子治療と同様、これら免疫遺伝子治療の臨床応用も現在第I相試験を終了した段階で、有用性の有無を結論づけるには至っていません。

[副作用]
腫瘍ワクチンあるいはDNA(RNA)ワクチン接種部位に痛みが認められる以外に、重篤な副作用は報告されていません。

[問題点]
第I相試験から期待されている効果を得ることは難しいと予想されていますが、免疫遺伝子治療は研究の段階で、その治療効果を期待するにはさらなる解析が必要と思われます。
アンケートにご協力ください
よりよい情報提供を行うために、アンケートへの協力をお願いいたします。
簡単な7問ほどのアンケートですので、ぜひ、ご協力ください。
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