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TOP冊子・ビデオ・用語集がんに関するQ&A > 痛み止めの薬の知識Q&A

痛み止めの薬の知識Q&A

更新日:2005年12月01日    掲載日:1996年03月01日

 Q1なぜ、時間ごとに薬をのまなければならないのですか?
 Q2痛みを伝える方法にはどのようなものがありますか?
 Q3薬をのむと、すぐに痛みがなくなりますか?
 Q4「痛み止めの薬」の量はどのようにして決めるのでしょうか?
 Q5「痛み止めの薬」を使ってから、夜はぐっすりと眠ることができるようになりましたが、昼間の痛みがとれないので、困っていますが?
 Q6今使っている薬が効かなくなってきましたが?
 Q7「痛み止めの薬」にはどんな種類がありますか?
 Q8薬がどのように作用して痛みを和らげるのですか?
 Q9痛みがとれると、すべての感覚がなくなってしまいませんか?
 Q10モルヒネはどのように使うのですか?
 Q11オキシコドンはどのように使うのですか?
 Q12フェンタニルの貼り薬はどのように使うのですか?
 Q13モルヒネはいつ頃から病気の治療に使われているのですか?
 Q14「モルヒネなどの痛み止め」を使うと聞けば、麻薬中毒が心配ですが?
 Q15なぜ、麻薬中毒にならないのですか?
 Q16「モルヒネなどの痛み止め」はどれくらいの時間効きますか?
 Q17モルヒネはどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
 Q18オキシコドンはどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
 Q19フェンタニルの貼り薬はどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
 Q20「モルヒネなどの痛み止め」は効果が強い分、副作用も強いのでしょうか?
 Q21毎食後に薬をのむ方がのみ忘れがないように思いますが?
 Q22下痢をしているときでも時間ごとにのんでよいのでしょうか?
 Q23モルヒネやオキシコドンは空腹時にのんでも、胃を荒らしませんか?
 Q24「モルヒネなどの痛み止め」と他の薬を一緒にのんでもよいのでしょうか?
 Q25「モルヒネなどの痛み止め」をのんでいますが、お酒を飲んでもよいでしょうか?
 Q26「モルヒネなどの痛み止め」を使用しながら、車を運転しても大丈夫でしょうか?また、夫婦生活はどうなのでしょうか?
 Q27「モルヒネなどの痛み止め」を使い始めると、使っているうちに量が増え、中毒のようになったりしませんか?
 Q28「モルヒネなどの痛み止め」の量はどこまで増やすことができるのですか?
 Q29「モルヒネなどの痛み止め」を使い続けると、からだが弱ったり、いのちを縮めたりすることはありませんか?
 Q30「モルヒネなどの痛み止め」でも痛みがとれなくなったら困るので、痛みを我慢していたいのですが?
 Q31モルヒネ・オキシコドン・フェンタニルの副作用にはどんなものがありますか?
 Q32「モルヒネなどの痛み止め」で幻覚がでることがありますか?
 Q33長期間「モルヒネなどの痛み止め」を使っていると、肝臓、腎臓や脳に新たな副作用が出てくることはありませんか?
 Q34「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、仕事ができますか?
 Q35「モルヒネなどの痛み止め」を使って常に痛みがない状態にしてしまうと、病気の具合がどうなっているのか分からなくなってしまいませんか?
 Q36「モルヒネなどの痛み止め」を長期間にわたって使っていても、痛みの原因がなくなったときなどには、「モルヒネなどの痛み止め」をやめることができますか?
 Q37自分の判断で「モルヒネなどの痛み止め」を急にやめてもよいのでしょうか?
 Q38「モルヒネなどの痛み止め」をほかの人の歯痛や腹痛に使ってもよいのでしょうか?またフェンタニルの貼り薬をしっぷ薬の代わりに使えますか?
 Q39「痛み止めの薬」を子供が間違ってのんでしまったのですが?
 Q40フェンタニルの貼り薬をしっぷ薬と間違えてほかの人が使ってしまったのですが?
 Q41別の病院に入院しましたが、余ってしまった「モルヒネなどの痛み止め」は?
 Q42「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、海外旅行できますか?
 Q43口から錠剤の「痛み止めの薬」をのみ込むことがつらくなったときは?
 Q44「痛み止めの薬」をのんで、すぐに吐いてしまったときは?
 Q45おしりから坐剤を入れて、すぐにお通じがあったときは?
 Q46痛みをとめる方法はのみ薬や坐剤や貼り薬の他にどんなものがありますか?
 Q47故郷に行って、しばらく静養してきたいと思っていますが、1ヶ月分の薬を一度にもらうことはできませんか?
 Q48薬を使うと、必ず痛みはすべてなくなりますか?
 便秘の予防対策について

ここからは今までに私たち医師や看護師、薬剤師が患者さんとそのご家族のみなさんから尋ねられたことを中心に『「痛み止めの薬」への疑問と答え』の形でまとめました。

Q1
なぜ、時間ごとに薬をのまなければならないのですか?
「痛み止めの薬」はなるべく使いたくないので、痛くなってから薬をのんでもよいのでしょうか?
A1
「痛み止めの薬」を決められた時間ごとにのむと、痛みのない状態が続きます。薬をのんでも、薬が吸収されるまでには少し時間がかかり、すぐには痛みをとめることができません。薬の効き目が切れる前に次回分の薬をのむようにした方がよいのです。痛みをとめるためには、からだの中にある程度の量の薬があることが必要です。薬の量が少ないと、痛みはとまらないのです。

図2図3の縦軸はからだの中にある「痛み止めの薬」の量を表しています。横軸は時間の経過を表し、薬をのんだ時間を示しました。時間ごとに薬をのんだ場合(図2)と、痛くなってから薬をのんだ場合(図3)の違いを示してあります。

決められた時間ごとに薬をのむことが大切なのは、なにも「痛み止めの薬」だけではありません。例えば、高血圧の患者さんは血圧が上がるのを待ってから、「血圧を下げる薬」をのむようなことはしていないでしょう。糖尿病の患者さんも血糖が上がってから、薬をのむようなことはしていないのです。血圧や血糖が高くなるのを防ぐために、毎日定期的に薬をのんでいるので、健康な人々と同じような生活を送ることができているのです。それらと同じように、「痛み止めの薬」も担当医が決めた時間(薬の袋に書いてあります)を守って使ってください。担当医に説明されたとおりにのむことによって痛み止めの効き目がずっと続くのです。痛くなってから使ったり、またのんだり、のまなかったりするのはやめていただきたいと思います。

◆ここがポイント◆


とにかく、痛みを我慢しないことが大切です。どのような時に痛いのか、どのような痛みなのか、からだのどこの部分が痛いのかなどを話してください。痛みやからだの具合を紙に書きとめておくとよいと思います。来院なさるときにその紙を持っていらっしゃると担当医に正確に伝えることができるでしょう。

「痛み止めの薬」を使った後に、痛みが軽くなったかどうか、またからだの具合などを含めて、服薬確認表(図1)にお書きになり、担当医に伝えるようにしてください。また、薬の使い方などを問い合わせたい場合にも、書きとめた用紙があれば、忘れずに担当医や看護師、薬剤師にお尋ねになれるでしょう。

Q2
痛みを伝える方法にはどのようなものがありますか?
痛みを伝える時には、どのように話したらよいのでしょうか?特別な言い方や表し方がありますか?
A2
感じていらっしゃるとおりに、伝えていただければよいのです。痛みを伝えるときの方法は、言葉で表す方法と数字で表す方法が考えられています。

●言葉で表す方法

  • 痛くない
  • 少し痛い(なんとか、我慢できる痛み)
  • かなり痛い(できれば、痛みをもっととめたい)
  • 非常に痛い(我慢できないほどの痛み)

●数字で表す方法

「痛くない時を0」とし、「今までに一番痛かった時を10」として、現在の自分の痛みの程度を数字で表していただくと、私たち医師や看護師、薬剤師がよく分かると思います。図4の数字を参考にして書いてみてください。例えば、8点の痛みとか、8cmの痛みとかのように表していただくと分かりやすいのです。

◆ここがポイント◆


痛みの性質も痛みの治療におおいに役立ちますので、例えば、ピリピリした痛み、ズキンズキンした痛み、電気が走るような痛み、鈍い痛みなど、ご自分が感じるとおりに表してください。

また、痛みの場所や種類が1つではなくて、いくつもある場合は、例えば「おなかの痛みは鈍い感じで、5cmくらいです。太ももの痛みはピリピリした感じで、3cmくらいですが、歩くと痛みは強くなって、6cmに増えます」というように具体的に伝えてくださると、あなたの痛みの治療効果を十分にあげるのに大変役立ちます。

Q3
薬をのむと、すぐに痛みがなくなりますか?
「痛み止めの薬」といわれたのですが、1〜2回のめば、すぐに痛みがなくなりますか?
A3
「痛み止めの薬」をのんで、すぐに痛みがとまる場合もありますが、薬がからだになじむまでに、2〜3日かかることもあります。薬を繰り返してのんだときに、からだの中の薬の量がどのように変わるかを図5で見てください。普通ですと、「痛み止めの薬」を3〜5回のむと、からだの中の薬の量はいつも痛くないところになります。

「痛み止めの薬」を最初にのんだときは、からだの中にある薬の量は痛みをとめるためには不十分です。2回目、3回目とのみ続けていくうちに、「いつも痛みを感じない」状態が続くことになります。

説明したり、理解していただくことは少し難しいことですが、どんな薬でも担当医が決めたように定期的に3〜5回のむと、最高血中濃度は一定になり、それ以上にからだの中の薬の量が多くなることはありません。

◆ここがポイント◆


痛みをとめるのに必要な薬の量を決めるためには、少し時間がかかることがありますので、担当医や看護師、薬剤師とよく相談してください。

Q4
「痛み止めの薬」の量はどのようにして決めるのでしょうか?
A4
痛みが軽くなった状態になるまで少しずつ量を増やしていきます。例えば、1日に2回、1回1錠を数日間のんでいても、痛みがとれない場合は、1回の量を2錠に増やします。また、痛みが激しい場合には、最初に「痛み止めの薬」の注射を行ない、その効き方をみてから、2〜3日をかけ、必要な量を決めていくこともあります。

Q5
「痛み止めの薬」を使ってから、夜はぐっすりと眠ることができるようになりましたが、昼間の痛みがとれないので、困っていますが?
A5
「痛み止めの薬」を使い始めて、すぐにからだを動かしても、痛くない状態をつくり出すことは難しいことがあります。ですから、痛みの治療の目標を次のように考えてください。

●痛みの治療の目標

第1目標:夜間ぐっすり眠ることができるようになる
(痛くて目が覚めることがない状態)

第2目標:静かにしていれば、痛くないようになる
(テレビを見ていて笑ったりできるし、クシャミや咳をしたとき、たいして痛くない状態)

第3目標:歩いたり、からだを動かしたりしても、痛くない
(痛みがなく、普通の社会生活ができる状態)
あなたの場合、「痛み止めの薬」を使い始めたその日からよく眠ることができるようになったのですから、同じように薬を使い続けていけば、4〜5日すると、昼間の痛みも必ず軽くなると思ってよいでしょう。

Q6
今使っている薬が効かなくなってきましたが?
今使っている「痛み止めの薬」が、あまり効かなくなってきたのですが、どうすればよいのでしょうか?
A6
今使っている薬の量を増やすか、もっと強い「痛み止めの薬」に変えると、痛みがなくなるでしょう。痛みが強いときに、効き目の弱い薬を使っても、痛みはなくなりません。「痛み止めの薬」はいろいろな種類があり、強い痛みには効き目の強い薬を使えば、痛みはなくなります。

Q7
「痛み止めの薬」にはどんな種類がありますか?
「痛み止めの薬」にもいろいろな種類があるのですか?
A7
「痛み止めの薬」は作用の強さによって、三段階に分けられます。第一段階の弱い「痛み止めの薬」は歯の痛みや頭痛などによく使われているアスピリンに代表される薬です。

アスピリンなどを定期的に使っても、なお痛みが残ったり、強くなった場合は、第二段階として、咳止めにも使うコデインなどを使います。

コデインをのんでも、痛みがなくならない場合には、第三段階として効き目が一番強い「モルヒネなどの痛み止め(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)」を使います。

ただ、必ずしもこの順番で使うのではなく、耐えられないような強い痛みには、最初から痛みをとめる作用が一番強い「モルヒネなどの痛み止め」を使います。また、「モルヒネなどの痛み止め」を使うときでも、アスピリンなど第一段階の薬を一緒に使うと、痛みをとめる作用が強くなることがあります。

◆ここがポイント◆


「痛み止めの薬」の種類はたくさんありますし、痛みをとめる方法もいろいろあります。我慢しないで、担当医と相談していただければ、痛みをとめるのに一番合った薬を早く見つけることができるでしょう。

Q8
薬がどのように作用して痛みを和らげるのですか?
どの薬も同じような作用で痛みをとめるのですか?
A8
第一段階のアスピリンに代表される薬は、主として痛んでいる場所に直接作用し、痛みを取り除きます。

痛みをとめる作用がアスピリンより強いコデインや「モルヒネなどの痛み止め」は痛みを伝える神経や痛みを感じる中枢、つまり脳や脊髄の疼痛中枢に作用して、痛みを少なくしたり、なくしたりするのです。

Q9
痛みがとれると、すべての感覚がなくなってしまいませんか?
「モルヒネなどの痛み止め」が脳や脊髄の疼痛中枢に作用して痛みを和らげると聞きましたが、痛み止めとして「モルヒネなどの痛み止め」を使うと、すべての感覚がなくなってしまうことはありませんか?
A9
そのような心配は全くいりません。「モルヒネなどの痛み止め」を使って痛みを取り除いても、からだをつねれば、いつものように痛みを感じます。熱さ、冷たさ、味覚などの他の感覚も全く変わりがありません。

Q10
モルヒネはどのように使うのですか?
A10
口からのむモルヒネには粉薬、細粒、水薬、錠剤、カプセルなど多くの薬のタイプがあります。粉薬、オプソ(R)内服液のような水薬、一部の錠剤は早く効きますが、効いている時間が短いので4時間ごとにのむのが原則です。このように早く効きますが、効いている時間が短い薬を速放剤といいます。

モルヒネの薬の中にはゆっくり長く効くタイプのもの(徐放剤)もあります。硫酸モルヒネ徐放剤であるMSコンチン(R)錠やMSツワイスロン(R)カプセルは12時間ごとに、カディアン(R)カプセルは24時間ごとにのむのが原則です。これらの徐放剤はかみ砕いたり、つぶしたりしてのむと薬が急激に吸収され、思わぬ副作用が出ることがあります。危険ですので絶対におやめください。もしも、MSコンチン(R)錠やMSツワイスロン(R)カプセルがのみにくいときには同じように12時間ごとにのむ薬としてモルペス(R)細粒がありますので担当医にご相談ください。徐放性のモルヒネはからだに入ってから腸の中で徐々に溶けるので効果が長く続きます。またおしりから入れる薬として塩酸モルヒネ坐剤(アンペック(R)坐剤)があります。アンペック(R)坐剤は8時間ごとにおしりから入れるのが原則です。

最近はこれらの薬の特徴を活かして2種類の薬を使用することもあります。例えば、MSコンチン(R)錠などの徐放剤を使っているときに突然の痛みが現れた場合は、すぐに効くモルヒネの水薬や粉薬を使います。

その他の方法での使い方についてはQ&A46をお読みください。

*MSコンチン(R)錠とアンペック(R)坐剤などについている(R)は商品名のときに使用するマークです。

Q11
オキシコドンはどのように使うのですか?
A11
塩酸オキシコドンという麻薬を成分としたオキシコンチン(R)錠があります。オキシコンチン(R)錠は1日2回、12時間ごとに時間を決めてのみます。オキシコンチン(R)錠はからだに入ってから腸の中で徐々に溶ける徐放剤です。かみ砕いたり、つぶしたりしてのむと薬が急激に吸収され、思わぬ副作用が出ることがあります。危険ですので絶対におやめください。

徐放剤のオキシコンチン(R)錠を使用中に突然の強い痛みが現れた場合にはすぐに効くモルヒネの水薬などを追加して使います。

なお、大便中に錠剤の「抜け殻」がでてくることがありますが、薬の成分はすでに吸収されているので心配いりません。あわてて新しい薬を追加してのまないようにしましょう。

Q12
フェンタニルの貼り薬はどのように使うのですか?
A12
フェンタニルという麻薬を成分とした貼り薬のデュロテップ(R)パッチがあります。フェンタニルが皮ふからゆっくり吸収され、痛い場所に直接貼らなくても痛みを取り除くことができます。デュロテップ(R)パッチは3日間ごとに時間を決めて貼り替えます。

なお、デュロテップ(R)パッチ使用中の突然の強い痛みには、すぐに効くモルヒネの水薬などを追加して使います。

Q13
モルヒネはいつ頃から病気の治療に使われているのですか?
A13
明治時代の俳人・歌人、正岡子規も脊椎カリエスという病気で、からだ中がひどく痛んでいました。その痛みの治療のために、子規は1年6ヶ月以上にわたってモルヒネをのんでいました。モルヒネをのんで痛みを軽くしながら、俳句や和歌を詠んだり、文章を書いたりしていたのです。このように、モルヒネは使用法を守れば、ふつうに生活できる安全な薬です。モルヒネは19世紀よりもずっと昔から使われていた薬なのです。

また、現在でも多くの患者さんが、大きな手術の後の痛みや心臓発作のときの痛みにモルヒネを必要としているのです。今では、モルヒネを上手に使うようになったので、手術を受けた患者さんは、手術をしたための痛みをほとんど感じないですむようになりました。

Q14
「モルヒネなどの痛み止め」を使うと聞けば、麻薬中毒が心配ですが?
モルヒネと聞けば、麻薬中毒を思い浮かべますが、「使用法を守れば、大丈夫」とは、具体的にどんなことでしょうか?
A14
モルヒネは痛みをとめる効果が最も強い薬です。あなたの痛みの治療のために担当医が決めた量と使う時間を守って、使っていただければ、麻薬中毒にはなりません。

Q15
なぜ、麻薬中毒にならないのですか?
なぜ担当医が決めたとおりにモルヒネを使うと、麻薬中毒にならないのですか?昔と比べて、なにが進歩したのですか?
A15
昔は、痛くて我慢できなくなってから、大量のモルヒネを一気に注射していましたので、ちょうどお酒の一気飲みに似た状態でした(図6)。痛くなってからモルヒネを注射することを繰り返す方法ですと、からだの中のモルヒネの量が痛みをとめるために必要な量よりはるかに多くなります。このからだの中の多いモルヒネの量が脳細胞に悪い影響を与えると、麻薬中毒になってしまうのです。

現在の使い方は、いつも痛みのない状態を続けていくことを目標に、薬の効き目が切れて次の痛みが起こってくる前に薬を使う方法です。つまり定期的な使用をポイントとしています。時間ごとにのむので、モルヒネが一度にからだの中に吸収されないのです。

麻薬(コカイン、ヘロインなど)の乱用が社会的な問題になっていますが、乱用というのは健康な人が痛みがないのに、多めの薬を用いることです。この場合はからだに悪い影響を与えます。

痛みが強い患者さんにモルヒネを使うときには、その患者さんの痛みを取り除くのに必要な量とのみ方を担当医が決めて説明しています。担当医が説明したとおりにのめば、モルヒネを「痛み止めの薬」として長期間にわたって安全に使えるのです。

事実を示しましょう。日本で痛みをとるために使ったモルヒネは、昭和61年65kg、昭和63年121kg、平成2年232kg、平成4年383kg、平成6年555kg、平成8年852kg、平成13年1117kgと急速に増加していますが、麻薬中毒患者は増えていません。

Q16
「モルヒネなどの痛み止め」はどれくらいの時間効きますか?
A16
薬が効いている時間は薬の成分や薬の形(のみ薬、坐剤、貼り薬など)によっても異なりますが、大きく分けて、早く効きますが効き目が短いタイプと効いてくるまでに時間はかかりますが効き目が長く続くタイプがあります。これらを痛みの状況に応じて使います。

どの形を使うにしても痛み止めの効き目が切れる前に、定期的に次回分の薬を使うようにして、痛みのない状態が続くようにします。それでもおきてしまった突然の痛みには早く効くタイプの薬を追加して痛みをすぐにとります。

モルヒネについてはQ&A17、オキシコドンについてはQ&A18、フェンタニルについてはQ&A19、にまとめましたので、そちらもご覧ください。また薬が効いている時間をまとめた表1があります。

Q17
モルヒネはどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
A17
早く効くタイプとしては塩酸モルヒネの水薬(オプソ(R)内服液と薬局で調製した水薬があります)や粉薬、一部の錠剤があります。これは10分ほどで効き始め、効き目が4時間ぐらい続きます。

長く効くタイプとしてはMSコンチン(R)錠やMSツワイスロン(R)カプセル、モルペス(R)細粒があります。これは効き始めるまでに1.5〜2時間ぐらいかかりますが、効き目が8〜12時間続きます。常に痛みのない状態を保てるように12時間ごと(人によっては8時間ごと)に時間を決めて薬をのみます。また1日1回のむことで効果が24時間続くカディアン(R)カプセルもあります。

これらはからだの中でゆっくり溶け出し、効果が長く続くことから徐放剤と呼ばれます。

おしりから入れるアンペック(R)坐剤は効き始めるまでに30分ほどかかり、効き目が8〜12時間続きます。このため普通は8時間ごと(人によっては12時間ごと)に使います。

Q18
オキシコドンはどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
A18
長く効くタイプとしてオキシコンチン(R)錠があります。効き始めるまでに1時間ほどかかりますが、効き目は12時間続きます。常に痛みのない状態を保てるように12時間ごとに時間を決めて薬をのみます。

Q19
フェンタニルの貼り薬はどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
フェンタニルの貼り薬(デュロテップ(R)パッチ)はどのくらいの時間、痛み止めとして効きますか?
A19
皮ふに貼って使用するフェンタニルの貼り薬(デュロテップ(R)パッチ)は効いている時間がとても長く、3日間(72時間)ごとに貼り替えて使う徐放剤です。

Q20
「モルヒネなどの痛み止め」は効果が強い分、副作用も強いのでしょうか?
「モルヒネなどの痛み止め」は強い「痛み止めの薬」ですから、副作用の種類が多かったり、副作用が強いのではないでしょうか?
A20
強い痛み止めのモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルでも、担当医が決めた量と薬を使う時間を守って正しく使う限り、副作用が多くなることはありません。副作用の内容と対策はQ&A3132をお読みください。

Q21
毎食後に薬をのむ方がのみ忘れがないように思いますが?
MSコンチン(R)錠を8時間ごとに(1日3回)のむようにいわれましたが、毎食後にのむ方がのみ忘れがないと思いますが?
A21
最初に「痛み止めの薬」を使い始める時間はご自分で決めていただいてよいのですが、その後は8時間ごとにのんでください。時間ごとにのむと、痛みを和らげるのに必要な量の薬がいつもからだの中にあるので、痛みのない状態が続きます(図2)。

毎食後にのむようにすると、夕食後から翌日の朝食後までの間隔が長くなるため、夜明け頃に痛みが出てきます。

薬をのんだら、すぐに服薬確認表(図1)に書きとめるようにすれば、薬ののみ忘れをチェックできると思います。のみ忘れに気がついた場合には、すぐに1回分の薬をのんでください。分からないことがありましたら、担当医または薬剤部(病院の薬局)に連絡してお尋ねください。

上手に痛みを取り除くために、薬をのんだ時間と量、痛みの程度、からだの具合、行動範囲などを服薬確認表に書きとめて次に病院にいらっしゃったときに担当医に渡してください。

Q22
下痢をしているときでも時間ごとにのんでよいのでしょうか?
コンチン(R)錠と一緒に出された便秘を予防するための下剤をのんでいたら、下痢気味になりました。新しくもらったMSコンチン(R)錠は12時間ごとにのむように言われましたが、下痢をしている場合でも、12時間ごとでよいのでしょうか?
A22
1日に4〜5回も下痢をしているときは、MSコンチン(R)錠の痛み止めの作用が12時間続かないこともありますので、担当医に連絡してください。脱水状態にならないように、温かい飲物をのんだり、消化の良いものを食べてください。

Q23
モルヒネやオキシコドンは空腹時にのんでも、胃を荒らしませんか?
一般的に薬は胃を荒らすと言われていますが、モルヒネやオキシコドンはおなかがすいているときにのんでもよいのでしょうか?
A23
モルヒネやオキシコドンは胃から吸収されずに、腸にいってから吸収されますので、胃を荒らすことはありません。おなかがすいているときにのんでも、胃を悪くするようなことはありません。

しかし、便秘になると、食欲がなくなってきたり、胃がもたれたりしてきますので、胃を悪くしたように感じることもあります。ですから、モルヒネやオキシコドンを使う場合には、モルヒネやオキシコドンを使い始める前と同じようなお通じがあるように、下剤も一緒にのんでください。

Q24
「モルヒネなどの痛み止め」と他の薬を一緒にのんでもよいのでしょうか?
かぜをひいたので、近くの病院にいって、かぜ薬をもらってきました。「モルヒネなどの痛み止め」と一緒にかぜ薬、あるいは他の薬をのんでもよいのでしょうか?
A24
同時に出された他の薬と一緒にのんでも、また「モルヒネなどの痛み止め」をかぜ薬や他の薬と一緒にのんでもかまいません。

また、モルヒネやオキシコドンをお茶やコーヒーあるいは牛乳と一緒にのんでもかまいませんから、好みの飲物でのんでください。

Q25
「モルヒネなどの痛み止め」をのんでいますが、お酒を飲んでもよいでしょうか?
「モルヒネなどの痛み止め」を使っているので、痛みは全くありません。少しお酒を飲んでみたいのですが、よろしいでしょうか?
A25
お酒を飲んでもかまいませんが、「モルヒネなどの痛み止め」を使っていますと、お酒のまわりが早くなることが考えられます。お酒をお飲みになる場合には時間をかけて少しずつ飲み、お酒の量も控えめにしたほうがよいでしょう。

Q26
「モルヒネなどの痛み止め」を使用しながら、車を運転しても大丈夫でしょうか?また、夫婦生活はどうなのでしょうか?
A26
「モルヒネなどの痛み止め」を使うと、眠くなることがありますので、車の運転はやめた方がよいでしょう。夫婦生活に関しては何も制限はありません。

Q27
「モルヒネなどの痛み止め」を使い始めると、使っているうちに量が増え、中毒のようになったりしませんか?
「モルヒネなどの痛み止め」を使い始めると、使っているうちに量が増え、中毒のようになったり、また使い続けていると、癖になったり、効かなくなることはありませんか?
A27
担当医が決めた量と時間を守って「モルヒネなどの痛み止め」を使っていれば、痛みのある患者さんが「モルヒネなどの痛み止め」を使っても、心配していらっしゃるようなことは全くありません。

もっと強い痛みが出たときでも、効かなくなることはありません。痛みが強くなると、痛みに合わせて「モルヒネなどの痛み止め」の量も増えるので、癖になったような気持ちになるかもしれませんが、痛みが強くなったので、痛みをとめるための「モルヒネなどの痛み止め」の量が多くなっただけなのです。

Q28
「モルヒネなどの痛み止め」の量はどこまで増やすことができるのですか?
痛いと言っていたら、「モルヒネなどの痛み止め」の量がだんだん増えてきましたが、どこまで量を増やせるのですか?
A28
お酒に強い方と弱い方がいらっしゃるように、「モルヒネなどの痛み止め」の効き具合も個人差があります。例えばMSコンチン(R)2錠で痛みがとれる方もいらっしゃいますし、10錠のんでも痛みが十分にとれず、15錠にしたら痛みがなくなるということもあります。「モルヒネなどの痛み止め」の副作用がない限り、痛みがなくなるまで量を増やしても、安全に使えるのです。

今までに一番多くモルヒネをのんでいた方の1日量は粉薬で5000mgを越えています。MSコンチン(R)30mg錠に換算すると、160錠以上にもなります。また、アンペック(R)20mg坐剤なら、250個にもなります。

Q29
「モルヒネなどの痛み止め」を使い続けると、からだが弱ったり、いのちを縮めたりすることはありませんか?
A29
痛みが続くと、からだも心も疲れきってしまいます。痛みを我慢している方よりも「モルヒネなどの痛み止め」を使って痛みがない方のほうが、元気に生活していくことができるのです。痛みがなければ、よく眠ることができるようにもなり、したがって体力も回復しますから、生き生きしてくるのです。いのちを縮めるようなことは決してありません。

Q30
「モルヒネなどの痛み止め」でも痛みがとれなくなったら困るので、痛みを我慢していたいのですが?
「モルヒネなどの痛み止め」は強い「痛み止めの薬」と言われましたが、「モルヒネなどの痛み止め」でも痛みがとれなくなったら困るので、痛みを我慢していたいのですが?
A30
今使っている量の「モルヒネなどの痛み止め」が効かなくなったときには少し量を増やすと、また痛みがなくなりますので、痛みを我慢する必要はありません。痛みの原因によっては「モルヒネなどの痛み止め」が効きにくい痛みのこともあります。痛みをとめる方法はたくさんありますので、担当医とよく相談してみてください。

Q31
モルヒネ・オキシコドン・フェンタニルの副作用にはどんなものがありますか?
--吐き気、ねむけ、便秘とそれらの予防法について--
痛みがなくなっていくのは大変うれしいのですが、薬には副作用がありますよね。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使うと、どんな副作用が出ますか?
A31
モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使い始めた最初のころに吐き気とねむけを訴える方がいらっしゃいますが、「吐き気止めの薬」を一緒にのむと、吐き気はなくなります。「吐き気止めの薬」が必要なのは初めの2〜3週間の間だけです。その後は「吐き気止めの薬」をのまなくても、吐き気はなくなります。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使うと、痛みはとれてくるが、眠くて仕方がないと感じる方も確かにいらっしゃいます。その原因としては、痛くて眠れなかった日が続いていたことが多いようです。4〜5日続けてモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使っているうちに痛みがなくなり、ねむけも消えます。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルには痛みを抑える以外にもいろいろな作用があり、病気の治療に利用されています。モルヒネですと痛みを抑える作用以外にも咳を軽くする作用や腸の動きを抑える作用(下痢をとめる作用)があります。例えば痔の手術後の少しの間お通じをとめるために、昔からモルヒネを使ってきました。痛みをとめるためにモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使ったときは、副作用として便秘が出てくることが多いわけです。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを長い間使っていても、痛みをとめる作用がなくならないのと同じように、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使っている間は腸の動きを抑える作用がずっと続きます。

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルを使っていても、下剤(お通じをよくする薬で、錠剤、水薬、粉薬、坐剤などがあります)を一緒に使えば、便秘にならないようにできます。モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルと一緒に下剤も使用してください。今までと同じようにお通じがあることが大切です。担当医や看護師、薬剤師と相談しながら、ご自分で下剤の適切な(自分に合った)量を探しましょう。便秘の詳しい対策については[便秘の予防対策について]をお読みください。

モルヒネからオキシコドンやフェンタニルに切り換えることにより、吐き気が楽になったり、下剤の量が減ったりする方もいらっしゃいます。担当医や看護師、薬剤師と相談してご自分にあった「痛み止めの薬」を探しましょう。
大切なことは自分のからだの具合をどんなことでも担当医に伝えることです。服薬確認表(図1)に書きとめたものを担当医や看護師、薬剤師にお見せください。

Q32
「モルヒネなどの痛み止め」で幻覚がでることがありますか?
その他にも副作用がありませんか?「モルヒネなどの痛み止め」で幻覚がでることがあると聞いていますが、大丈夫でしょうか?
A32
「モルヒネなどの痛み止め」を使った場合に幻覚が現れることがときにありますが、痛みを取り除くのにふさわしい量の「モルヒネなどの痛み止め」を使えば、幻覚はめったに現れません。

幻覚は「モルヒネなどの痛み止め」だけによるものではなく、病状の変化や痛み、便秘、臥床(ベッドで休んでいること)、高熱などのからだの苦しみ、およびそれらによる心の苦しみ、不安や暗い気分などの心理的要因でも現れます。もし、幻覚が現れた場合には、担当医に連絡してください。

その他、めずらしい副作用ですが、口渇(のどがかわくこと)、めまい、かゆみなどが出る方もまれにはいらっしゃいますので、疑問がありましたら、遠慮なさらずに担当医に相談してください。

Q33
長期間「モルヒネなどの痛み止め」を使っていると、肝臓、腎臓や脳に新たな副作用が出てくることはありませんか?
A33
そのようなことは全くありません。長期間の使用でも、新たな副作用が出てくることはありませんので、心配いりません。最近は「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、長期間にわたって痛みのない生活を送っていらっしゃる方が非常に多くなっています。

例えば、交通事故や戦争または腫瘍の手術で手足をなくした方が、その失った手足(実際には存在しない)が痛む話を聞いたことがあるでしょう。そのような痛みは、あたかも失った手足があるように感じ、痛むので、幻肢痛と呼ばれています。幻肢痛に悩まされて、勤めに出ることができない方々が、モルヒネと同じような薬を定期的にのみ続けた結果、長期間にわたり、痛みがなく、社会生活を楽しむことができるようになり、また副作用は全くなかったとの報告が医学の論文にありました。

失った手足があたかもあるように痛むということは、理解に苦しむことでしょう。このように、痛みの原因をはっきりさせることが難しいこともありますが、痛みの原因が分からなくても、安全に痛みを取り除くことができるようになりました。お分かりにならないことがありましたら、ぜひ担当医にお尋ねください。

Q34
「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、仕事ができますか?
「モルヒネなどの痛み止め」を使うようになると、いよいよダメかと思っていましたが、仕事もできるのですか?
A34
会社の勤務も、自営の仕事も可能ですが、担当医と具体的に相談してください。Q&A42に書いてありますように、「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、海外旅行もできるのです。

実際に、「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、1時間以上の通勤時間をかけ、会社に勤務し、また仕事で外国へ何回も出張されている方もいらっしゃいます。

Q35
「モルヒネなどの痛み止め」を使って常に痛みがない状態にしてしまうと、病気の具合がどうなっているのか分からなくなってしまいませんか?
「痛み止めの薬」は病気そのものを治しているのではないから、「モルヒネなどの痛み止め」を使って常に痛みがない状態にしてしまうと、化学療法や放射線治療がどのくらい効いたのかが分からなくなってしまうことはないでしょうか?
A35
痛みがあると、眠ることができない日が続いて、食欲がなくなり、からだ全体が弱ってしまいます。痛みの原因を取り除くための放射線治療を受けるにしても、痛みがあるために治療に必要な体位(最も良い姿勢)がとれないこともあります。

また、手術前の患者さんが痛みのためにベッドに寝てばかりいると、手足の筋肉の力が弱くなってしまいます。手術後の回復も悪くなります。

痛みを我慢していても、患者さんにとって得になることは何もないのです。痛みがなくなれば、よく眠ることができるし、よく食べることができるようにもなり、よくしゃべることができ、楽しい毎日になることでしょう。

治療や検査に痛みがないことが分かると、お子さんでも進んで、検査や治療を受けてくれることからも、痛みがないということがどんなに大切なことであるかを分かっていただけると思います。

「モルヒネなどの痛み止め」を続けて使っていても、痛みの原因となった病気の経過の判定に困ることはありません。担当医は注意深く観察していますので、治療の効果の判定には困りません。大切なことは、患者さんが痛みやからだの調子(体調)など、どんなことでも、遠慮なさらずに正確に担当医に伝えてくださることです。

Q36
「モルヒネなどの痛み止め」を長期間にわたって使っていても、痛みの原因がなくなったときなどには、「モルヒネなどの痛み止め」をやめることができますか?
A36
急にやめるのではなく、少しずつ量を減らしていくやり方で、「モルヒネなどの痛み止め」を約3週間で安全にやめることができます。実際に、手術、放射線治療、化学療法などがよく効いて、痛みの原因がなくなった患者さんのなかにはモルヒネの必要がなくなり、やめた方がいらっしゃいますが、副作用も後遺症も全く出ていません。

例えば、がんは痛みが出るために見つかることもあります。手術でがんを取り除いてしまえば、痛みがなくなる訳ですが、手術を安全かつ正確に行なうためには、いろいろと検査をする必要があります。手術前の期間に痛みを我慢する必要はありません。「モルヒネなどの痛み止め」で痛みをとめて、手術後に少しずつ量を減らしていく方法で、安全にやめることができています。


Q37
自分の判断で「モルヒネなどの痛み止め」を急にやめてもよいのでしょうか?
A37
いろいろな病気に広く、一般的に使われている「ステロイドホルモン」や「血圧を下げる薬」なども急に使うのをやめれば、生命に危険な症状が出てきます。

「モルヒネなどの痛み止め」を急に使うのをやめれば、汗をかいたり、下痢がとまらないなどの退薬症状(昔は禁断症状といっていました)が現れます。しかし、痛みがおさまってきてから、担当医と相談しながら、少しずつ「モルヒネなどの痛み止め」の量を減らしていけば、薬を減らしたことによる症状は絶対に現れません。必ず、担当医と相談してください。

◆ここがポイント◆


外来通院中で、「モルヒネなどの痛み止め」を使っている患者さんが、かぜをひいたりして、予約した日に病院にいらっしゃることができなくなった場合には、電話で担当医と相談してください。

Q38
「モルヒネなどの痛み止め」をほかの人の歯痛や腹痛に使ってもよいのでしょうか?またフェンタニルの貼り薬をしっぷ薬の代わりに使えますか?
外来でもらったモルヒネやオキシコドン、フェンタニルをほかの人の歯痛や腹痛に使ってもよいでしょうか。また、フェンタニルの貼り薬(デュロテップ(R)パッチ)はしっぷ薬の代りに使えますか?
A38
病院でお渡ししている薬は、その患者さんのからだの具合や痛みの強さに合わせて、担当医が薬の種類や量を決めています。ご家族の歯痛や腹痛に使うことは、歯痛や腹痛が治らないばかりか、危険なことにもつながりますので、絶対にご家族の痛みには使わないでください。このような使い方は法律で禁止されていることも知っておいてください。また、フェンタニルの貼り薬をしっぷ薬の代りに使うことも絶対におやめください。

Q39
「痛み止めの薬」を子供が間違ってのんでしまったのですが?
冷蔵庫に入れておいた水薬(モルヒネ)を子供が間違ってのんでしまったのですが、どうすればよいのでしょうか?
A39
できるだけ早く、近くの医療機関を受診してください。その時にのんだ薬の内容が分かるものを持参してください。お子さまがのんでしまった薬の量や時間などを、できるだけ詳しく説明してください。また、このようなことが起こらないように、薬の保管場所には普段から、十分注意してください。

分からないことがありましたら遠慮なく担当医または薬剤部へご連絡ください。

◆ここがポイント◆


モルヒネの水薬に限らず、薬はお子さまの手が届かないところにしまっておきましょう。

Q40
フェンタニルの貼り薬をしっぷ薬と間違えてほかの人が使ってしまったのですが?
しっぷ薬と間違えてフェンタニルの貼り薬(デュロテップ(R)パッチ)をほかの人が使ってしまったのですが、どうすればよいでしょうか?
A40
間違えて貼ったフェンタニルの貼り薬をすぐにはがして、近くの医療機関を受診してください。その時に、はがしたフェンタニルの貼り薬をお持ちになり、何時に貼り、何時にはがしたかを説明してください。また、担当医または薬剤部へもご連絡ください。

Q41
別の病院に入院しましたが、余ってしまった「モルヒネなどの痛み止め」は?
処方が変更になったり、別の病院に入院したなどの理由で、余ってしまった「モルヒネなどの痛み止め」はどうしたらよいのですか?
A41
「モルヒネなどの痛み止め」をしまっておいて、本人以外の方に使うことは、法律(麻薬及び向精神薬取締法)によって行なってはいけないことになっています。必要がなくなり、残ってしまった「モルヒネなどの痛み止め」は、他に利用できないように廃棄(捨てること)する必要があります。廃棄には手続きが必要なため、病院や薬局に持ってきていただければ、残った「モルヒネなどの痛み止め」の廃棄をお手伝いいたします。

患者さんの痛みを取り除くためのモルヒネの使い方を簡単に、しかも便利にするための法律改正が平成2年度に行なわれました。例えば、痛み治療のためにモルヒネを使っている患者さんも、国の許可を受ければ、モルヒネを使いながら海外旅行ができるようになりました(Q&A42)。厚生労働省や医療機関、医療従事者は患者さんの痛みを取り除くことに一生懸命になっています。分からないことがありましたら、担当医にどんなことでもお問い合わせください。

Q42
「モルヒネなどの痛み止め」を使いながら、海外旅行できますか?
「モルヒネなどの痛み止め」を使うようになると、旅行なんてとんでもないと思っていましたが、海外旅行もできるのですか?自分で使っている「モルヒネなどの痛み止め」の携帯許可をもらうためには、具体的にどうすればよいのですか?
A42
ご自分の痛みの治療に必要な「モルヒネなどの痛み止め」の携帯許可をもらうための窓口は、携帯許可をもらう方の住所を管轄する地方厚生(支)局麻薬取締部です。医師の診断書(病名、薬の名前と量などが明記されています)を添えて申請します。申請書には、旅行先の国名、旅行期間などを書く必要があります。申請する人は本人ではなくても、ご家族の方や旅行業者の担当の人でもかまいません。詳しくは担当医あるいは薬剤部にお尋ねください。

ただし、時間的に、ゆとりを持って(出発予定の1ヶ月以上前)申請するのがよいでしょう。

Q43
口から錠剤の「痛み止めの薬」をのみ込むことがつらくなったときは?
MSコンチン(R)錠をのみ込むことがつらくなった時は、どうすればよいのでしょうか?
A43
モルヒネにはMSコンチン(R)錠だけではなく、おしりから入れる坐剤やのみやすい水薬、粒の細かい粉薬などがありますので、錠剤がのめない場合にもこれらの薬に切り換えることで痛みのない状態を続けることができます。また、皮ふに貼るフェンタニルの貼り薬(デュロテップ(R)パッチ)もありますので、口から薬をのめなくなった場合でも貼り薬により痛みをとめることができます。

早めに担当医と相談していただければ、一番合った痛みをとめる方法を考えます。もし、強い痛みがあるにもかかわらず、急に薬がのめなくなった場合には、すぐ担当医に連絡して相談してください。

Q44
「痛み止めの薬」をのんで、すぐに吐いてしまったときは?
「痛み止めの薬」をのんだ後に、吐いてしまったときは、どうすればよいのですか?
A44
「痛み止めの薬」と一緒に受け取った「吐き気止めの薬」を先にのみ、その30分後に、もう一度同じ「痛み止めの薬」1回分をのんでください。

Q45
おしりから坐剤を入れて、すぐにお通じがあったときは?
おしりに坐剤を入れて、すぐにお通じがあったときは、どうすればよいのですか?
A45
あったときも、同じようにもう1回使ってください。服薬確認表(図1)に、このことを書きとめておくことも、忘れないようにしてください。

Q46
痛みをとめる方法はのみ薬や坐剤や貼り薬の他にどんなものがありますか?
のみ薬も坐剤も貼り薬も使えない場合は、どうやって痛みをとめるのですか?
A46
その場合は、持続皮下注射という方法があります。この方法は細い注射用の針をからだの表面に刺し、その針と細い管でつないだ携帯用のポンプから24時間、少しずつ「痛み止めの薬」をからだの中に入れる方法です。針を抜けばお風呂にも入れますし、ポンプも小さいので、自由にからだを動かして生活することができます。

この方法は細い注射用の針を刺すので、痛いのではないか、恐いのではないかと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、インシュリンの注射が必要な糖尿病の患者さんも、毎日ご自分で皮下に注射をしています。そのときに使っている注射の針と同じ太さの針なのです。最初に針を刺すときだけ痛みがありますが、その後は針を固定している部分の痛みはありません。毎回注射するより簡単で、痛みが少ない方法です。

また、もしその患者さんが点滴を受けていらっしゃる場合は、点滴の袋の中に「痛み止めの薬」をまぜて使うこともできます。

持続皮下注射や点滴の方法では、モルヒネが一定の速度で入るために、痛くなってから注射をする昔の使い方(Q&A15)とは異なり、麻薬中毒を起こすような高い濃度にはなりません。

このほか手術後の痛みを抑えるために、国立がん研究センター中央病院ではモルヒネを脊髄硬膜外(せきずいこうまくがい:脊髄の外側)に、非常に細い管で注入する方法を、昭和56年から行なっています。痛みを感じないので、患者さんには大変喜ばれています。今までに3万人以上の患者さんにこの方法を使ってきましたが、痛みがとれてしまっても、モルヒネをずっと欲しがるような薬の精神依存の患者さんは一人もいらっしゃいませんでした。

そのほか、脳や脊髄の中(髄腔内:ずいくうない)にモルヒネを注入する方法もありますが、この方法がいつも必要な患者さんは決して多くはありません。

薬以外にも、痛みを伝える神経をブロック(薬で麻痺させる)する方法などがあります。みなさんが「痛みをなくして欲しい」と担当医に伝えれば、痛みの治療はさらに進むことでしょう。ご自分の痛みの強さや場所を正確に担当医に伝えてくだされば、それだけ痛みを早く取り去ることができるのです。

Q47
故郷に行って、しばらく静養してきたいと思っていますが、1ヶ月分の薬を一度にもらうことはできませんか?
A47
規則で一度に最高2週間分の薬をお渡しすることしかできません。今では、強い「痛み止めの薬」でも、全国のほとんどの病院で用意できるようになりました。つまり、痛みがあることを伝えれば、痛みの治療は全国どこの病院でもできるようになりました。必要でしたら、紹介状を書きますので、近くの病院から薬をもらってください。

Q48
薬を使うと、必ず痛みはすべてなくなりますか?
「痛み止めの薬」を使うと、すべての痛みがなくなりますか?
A48
感覚的な痛みはとれます。しかし、「心が痛む」とか「胸が痛む」という表現があるように、痛みには情動的な因子も関係しています。楽しみ、微笑み、親しみ、馴染みの人間関係が痛みを和らげてくれると思います。苦しみ、悩み、ねたみ、悲しみ、ひがみ、暗い気分などは痛みを増強させるでしょう。

便秘の予防対策について

  1. 「モルヒネなどの痛み止め」を使っているほとんどすべての患者さんが便秘になります。「モルヒネなどの痛み止め」を使い始める前と同じようにお通じがあるように気をつけないと、痛みがなくなっても、便秘がつらいことになります。

  2. 「モルヒネなどの痛み止め」には痛みを取り除く作用だけでなく、腸の動きを抑える作用もあるから便秘になるのです。「モルヒネなどの痛み止め」はのみ薬だけでなく、坐剤を使った場合や注射した場合でも、同じように便秘になります。「モルヒネなどの痛み止め」を使い続けている間、痛みがとれるのと同じように、便秘も続きます。したがって、痛みを取り除くために「モルヒネなどの痛み止め」を定期的に使うときには、便秘にならないように必ず下剤を一緒にのんで、便秘を予防します。

  3. 下剤をのんでも、すぐにいつも通りの、お通じになるとは限りません。下剤の量が多ければ下痢になり、少ないと便秘になります。これらを繰り返すこともあります。

  4. 下剤の効き目には、個人差(ある方は2錠のむと下痢になるが、別の方は10錠のんでもまだ便秘気味である)が大きいので、ご自分に合った下剤の量を探しましょう。水分も多めにとりましょう。下剤が粉薬や水薬の場合にも同じ要領で使います。

  5. 「モルヒネなどの痛み止め」を使い始めた日に、寝る前に下剤をコップ1杯の水(お茶やジュースでもよいです)と一緒にのんでください。下剤を1〜2錠のんでも、お通じがないようでしたら、3〜4錠に増やしてください。それでも、お通じがないようでしたら、5〜6錠に増やします。2〜3日ごとに調節するのがよいでしょう。下剤の量が多くなったら、1日に2〜3回に分けてのむようにしてください。普段と同じようにお通じがあるように努力しましょう。下剤が粉薬や水薬の場合にも同じ要領で調節します。

  6. 「モルヒネなどの痛み止め」の量と下剤の必要量との間にはあまり関係がありません。つまり、少ない量の下剤で便秘を防ぐことができる方もいらっしゃいますし、下剤がたくさん必要な方もいらっしゃいます。「モルヒネなどの痛み止め」を使い始める前と同じようなお通じがあるように、努力しましょう。

  7. お通じを良くするためには、食事の量や種類も大切になります。なるべく野菜などの繊維の多い食べ物を十分に食べるようにしてください。

  8. それでも、お通じの調節がうまくいかないときは、お通じの具合とのんだ下剤の量を記録しておき、担当医や看護師、薬剤師に相談してください。


お願い


これは、「痛み止めの薬」をよく理解し、痛みのない生活を送っていただくために、「痛み止めの薬」についてやさしく解説したものです。

今までに、痛みで苦しんだ患者さんやご家族の方々から私たち医師、看護師、薬剤師が尋ねられた「痛み止めの薬」についてのいろいろな疑問を中心に、『「痛み止めの薬」についての疑問と答え』としてまとめてあります。私たちへの質問は、「痛み止めの薬」をのみ始めたときの場合もありますし、また長期間おのみになってからの質問もあります。

最初から全部お読みになる必要はありません。[はじめに知っていただきたいこと]では、「痛み止めの薬」を使い始める前に、ぜひ知っていただきたいことが書いてあります。[「痛み止めの薬」への疑問(Q)一覧]には、いろいろな疑問が書いてあり、[「痛み止めの薬」への疑問(Q)と答え(A)]の項では疑問に対する答えの形式で、詳しく書いてあります。疑問を持ちながら、「痛み止めの薬」をお使いになられても、痛みを取り去ることは難しいことと思います。疑問をお持ちになられたら、そのたびにお読みください。

できる限り、分かりやすくしたいと思いますので、お気づきの点やご意見がありましたら、積極的に教えていただきたいと思います。改訂する時の参考にさせていただきます。匿名でもかまいませんので、ご意見をお寄せください。

宛先は
 〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
 国立がん研究センターがん対策情報センター
 FAX:03-3542-3495


ここに書かれている内容は、厚生労働省がん研究助成金、がん克服戦略研究、科学研究費等の支援を受けて進められた研究の成果がもとになっています。無断転載・複製は、固くお断りします。

なお、『「痛み止めの薬」のやさしい知識』の本が発行されております。
監修:国立がんセンター(現国立がん研究センター)
発行:財団法人 がん研究振興財団
TEL:03-3543-0332
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1

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