がんの部位や進行の状況により、直腸局所切除術・前方切除術・直腸切断術・括約筋間直腸切除術の中から選びます。
がんがある場所によって、肛門を残す場合とストーマを作る場合があります。また、直腸の周囲には排尿機能や性機能を調節する自律神経があります。そのため、がんが自律神経の近くに及んでいなければ、手術後に機能障害が最小限ですむよう、自律神経を残す手術を行います(自律神経温存術)。
(1)直腸局所切除術
早期のがんなどで、がんとその近くの部分だけを切除すればよい場合には、がんが肛門のすぐ近くにあれば、がんを直接または内視鏡で見ながら切除する経肛門的切除を行います。それ以外には、経仙骨的切除や経括約筋的切除と呼ばれる方法があります。
(2)前方切除術
おなか側から切開し、がんがある腸管を切除して、縫い合わせる方法です。腸管の切り口を上部直腸(腹膜反転部より上)で縫い合わせるのが高位前方切除術で、下部直腸(腹膜反転部より下)で縫い合わせるのが低位前方切除術です。16ページ低位前方切除術では、一時的なストーマを作る場合があります。
(3)直腸切断術
肛門に近い直腸がんでは、がんを完全に治すことを目指して、直腸と肛門を一緒に切除し、永久的なストーマを作ります。高齢の人では肛門を締める筋肉(肛門括約筋)の力が低下していることが多く、がんが肛門から離れていても、ストーマの造設を勧められることがあります。
(4)括約筋間直腸切除術(ISR)
肛門に近い下部直腸がんでも、がんを切除でき、手術後に肛門の機能が保てることが見込めるときは、肛門括約筋の一部のみ切除して肛門を温存し、永久的なストーマを避ける手術ができる場合があります。ただし、がんの深達度が深くなるにつれ再発率が高くなるという報告や、手術後に排便機能が低下する可能性もあるため、この手術が可能かどうかは、担当医とよく相談して決める必要があります。
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