1の2.神経膠腫(グリオーマ)とは

神経膠腫は、悪性の脳腫瘍の1つです。グリオーマとも呼びます。神経膠腫は、神経膠細胞から発生します。

脳腫瘍には、他のがんのようなTNM分類やステージ分類がありません。代わりに悪性度(グレード)として1から4までの数字を用いて分類されています。グレード1の腫瘍は手術で全摘出できれば再発のおそれがほとんどない良性腫瘍です。グレード1の神経膠腫としては、子どもの小脳や視神経に発生することが多い毛様細胞性 星細胞腫があります。 

神経膠腫の中で最も多いのは、びまん性星細胞腫や乏突起膠腫で、グレード2〜4に分類されます(表1)。組織型やグレードによって治療方針が異なります。

【表 1.神経膠腫 と悪性度】

神経膠腫

【表終わり】

乏突起膠腫は星細胞腫に比べてややおとなしく、薬物療法の効果が得られやすい腫瘍です。また、神経膠腫の中には主に脳室の壁の近くに発生する上衣腫(エペンディモーマ)という腫瘍もあります。4ページ


神経膠腫をはじめ、脳腫瘍の診断は世界保健機関(WHO)2016年分類に基づいて行われます。

これまで、脳腫瘍の分類は、主に顕微鏡で観察した組織学的検査に基づいていましたが、この分類では、腫瘍組織の遺伝学的検査がほぼ必須となっています。

神経膠腫では、IDHやp53と呼ばれる遺伝子変異の有無や、染色体1p/19q共欠失(1番染色体短腕と19番染色体長腕が共に欠失している)の有無をもとに、表1の分類がさらに細分化されます。また、薬物療法(テモゾロミド)の効果が期待されるかは、腫瘍細胞のMGMTという遺伝子の一部の領域におけるメチル化が関係していることがわかっています。

しかし、神経膠腫の遺伝子検査は、2018年5月現在、保険適用ではありません。また、すべての施設で行うことができず、現在は一部の大学病院やがんセンターのみで実施が可能です。腫瘍の遺伝子診断などについては、主治医によく尋ねて、場合によっては大学病院やがんセンターなどでセカンドオピニオンを受けてください。

脳腫瘍は、神経膠腫のほかにも、中枢神経系悪性リンパ腫や髄芽腫などの悪性脳腫瘍や、髄膜腫や神経鞘腫などの良性脳腫瘍に分類され、細かく分けると150種類以上にもなります。このため″脳がん″という言葉はほとんど使われることはありませんが、表にある神経膠腫は脳から発生した悪性腫瘍であり、″脳がん″にあたります。