薬物療法の1つである化学療法は、細胞障害性抗がん薬を用いて、がん細胞の増殖を抑える治療法です。手術の後に病期に応じて、化学療法が行われます。ただし、成熟奇形腫や未熟奇形腫のような良性腫瘍では化学療法は行われません。また、悪性胚細胞腫瘍でも精巣あるいは卵巣に発生したもので、かつ完全に切除できたI期の腫瘍については、化学療法を行わずに経過をみます。
一方前述のように、初回の手術は腫瘍の一部を採るだけの生検にとどめ、化学療法で腫瘍を縮小させた後に残った腫瘍の切除を行う場合もあります。U〜W期の悪性胚細胞腫瘍および精巣、卵巣以外の部位にできたすべての病期の悪性胚細胞腫瘍に対しては、化学療法が必要です。ただし、卵巣腫瘍のうち性腺胚細胞腫瘍では、I期であっても術後に化学療法を行います。
標準的な細胞障害性抗がん薬の組み合わせは、シスプラチン(あるいはカルボプラチン)とエトポシド、ブレオマイシンの3剤によるものです。放射線治療は原則として行われませんが、化学療法後に腫瘍が残っている場合には検討します。
●化学療法による副作用
細胞障害性抗がん薬による合併症として、骨髄抑制(白血球など血球の減少)に伴う感染症、シスプラチンやカルボプラチンによる腎障害、聴力障害、ブレオマイシンによる肺障害、エトポシドによるアレルギー反応があります。また、細胞障害性抗がん薬のすべてに共通するものとして、二次がん(治療のための抗がん薬、放射線により生じるがん)、不妊があげられます。骨髄抑制以外は必ず生じるというものではありませんが、治療から時間が経過してから生じるものもあり、注意が必要です。