静脈から点滴で投与された抗がん剤は、血液の流れで運ばれて全身に行き渡り腫瘍細胞を死滅させます(全身投与)。
手術後に再発転移が起こる場合、検査では発見できない小さな転移(微小転移)が手術の時点ですでにあったことが考えられます。このような微小転移を治療するため、術前や術後に補助的に抗がん剤の全身投与を行うことを補助化学療法と呼びます。
また、肺転移巣やそのほかの転移巣の治療あるいは手術ができない場合に、薬物療法を行うこともあります。
使用する抗がん剤は、細胞障害性抗がん薬のドキソルビシン、イホスフアミド、トラベクテジン、エリブリン、分子標的薬のパゾパニブなどです。トラベクテジン、エリブリン、パゾパニブは国内で小児に対する安全性が確認されておらず、原則的には16歳以上での使用となります。ドキソルビシンとイホスフアミドは併用する場合があります。
乳児線維肉腫の治療では、初回手術での機能温存切除が困難である場合の薬物療法として、細胞障害生抗がん薬(ビンクリスチン十アクチノマイシンD)を用いる化学療法や分子標的薬のトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害斉りの使用が選択肢として考慮されることがあります。
従来、薬物療法は副作用が強く、つらい治療の1つでしたが、最近は副作用を軽減する新しい薬剤やいろいろな支持療法が行われ、安全に行うことができるようになっています。