ヒント3 家族が自分自身も大切にする

●ご家族ならではのつらさと対処法を知る

がんと告げられたとき、誰もが驚き、大きなストレスを感じます。病名を耳にした後の数日間は、「まさかがんのはずがない」「何かの間違いに決まっている」と、認めたくない気持ちが強くなる人がほとんどです。これは、大きな衝撃から心を守ろうとするごく自然な反応です。

ご家族ならではのつらさもあります。「気が付いてあげられなかった」とご自分を責めたり、「家族を失うのではないか」といったつらさを感じながらも、「自分がしっかりしなければ」と追いつめられてしまう方もいます。また、「代わってあげたい」などと、葛藤することもあります。

治療を受けるご本人を案じるあまり、多くのご家族は、ご自身のことを後回しにしてしまう傾向があるようです。がんの治療は一般にはある程度の長い期間がかかります。ご本人を支えるためにも、あなた自身の気持ちや体をいたわること、生活も大切にすることが大事です。家族全体のコンディションを整えることが、ご本人の支えにもなります。

つらい気持ちが続いたり、ご本人の看病とご自身の仕事や家事などの両立で困ってしまったときには、誰かに聞いてもらったり、利用できるサポートを探すのも1つの手です。そんなときは、「がん相談支援センター」へ相談をしましょう。最初は漠然とした不安や疑問でも、話をする中で問題が明確になったり、ご自身が大切にしたいことに気が付くことがあります。

※参考:p23 「がん相談支援センター」とは

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つらい気持ちへの対処として特効薬があるわけではありませんが、図5に、この状況から歩みを進めるための対処の例を示します。

例えば、これまでご本人と一緒に歩んできた道のり、家族として培ってきた関係を振り返ることも役立つかもしれません。これまでにも、きっとたくさんの困難を乗り越えてきたことと思います。そして、その中に、ご家族ならではの「強さ」があったことと思います。

また、ご本人の病状や、先が見えないことも、あなたのつらい気持ちと密接に関連します。治療や今後の見通しなどについて、担当医や看護師などの医療者に尋ねて情報を得ることで、不安が軽減することもあります。

【図5 日常生活でのつらい気持ちへの対処の例】

1 自分の強さを思い起こす

過去に困難を乗り切ってきた。

方法を思い出してみる。

2 身体を休める

温かいお風呂に入る。

早めに布団に入る。

睡眠時間をしっかりとる。

3 リラックスできるように工夫する

深呼吸する。

適度な運動をする。

趣味の時間を大切にする。

音楽を聞いてゆっくりする。

4 人に話す

信頼できる人に打ち明ける。

医療者に気持ちを打ち明ける。

同じ立場の人に相談する。

5 優先順位を付ける

一度に解決をしようとせず、最も大切なことから徐々に手を付ける。

6 対人関係で工夫する

無理をしない。

断る勇気を持つ。

7 その他

自分を責めない。

自分の一番ほっとできる時間を大切にする。

【図終わり。】

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