●自分らしさを保つためのリハビリテーション医療もあります
症状緩和を中心とした医療が行われるときには、がんの進行とともに体力が低下し、自分で動くことが難しくなってくることもあります。
そのような時期に、ご本人の要望を十分に尊重し、残っている能力をうまく生かしながら、身体的、精神的、社会的に生活の質を高く保つことを目指して、リハビリテーション医療が行われることがあります(緩和的リハビリテーション)。リハビリテーション医療を受けることで、自分で動いたり、食べたり、排泄したり、話したりするなど、自分らしく生活することを目指します。
そのためには、早めにリハビリテーション医療を取り入れることが大切です。ベッド回りの環境を整えたり、補助具を利用したり、姿勢を工夫したり、リハビリテーション科のスタッフや看護師から定期的な運動について指導を受け、横になっている時間が増加しないような予防策をとるとよいでしょう(表 2)。
【表2. 日常生活に必要な動作(ADL)の低下に対する予防策】
【表終わり】
痛みによって活動が制限される場合には、我慢せずに医師や看護師に伝え、痛み止めを処方してもらうことも大切です。手足の関節のストレッチやマッサージ、温熱療法や寒冷療法などの物理療法が痛みの緩和に有効なこともあります。
また、この時期に半数以上の人にみられるのが呼吸困難の症状です。リハビリテーション医療を活用することで、つらい症状を和らげられる場合があります。例えば、(1)横になるより座ったほうが、横隔膜が下がって呼吸しやすくなるため、体位を工夫し、楽な姿勢を上手にとる、(2)呼吸が苦しいため、早く息を吸い込もうとして浅い呼吸(胸式呼吸)になるが、悪化の一因にもなるので、深い呼吸(腹式呼吸)をするように意識をする、(3)歩行や足踏みのような軽い運動をすると、気管支が拡張され、のどに絡んだ痰も出やすくなり、呼吸が楽になる、などがあります。
ホスピスや緩和ケア病棟などでも、リハビリテーション医療を受けることができます。どんなリハビリテーションが自分に必要か担当医やリハビリテーション科のスタッフに尋ねてみましょう。