出生コホート効果について(肝臓がんと肺がんの例)

出生年を横軸としたグラフの再構成

肺がんと肝臓がんは、生まれた年代によって死亡率・罹患率が異なることが知られています。このような場合、年齢階級別の死亡率・罹患率をそのままグラフにするのではなく、生まれた年代を横軸に再構成してグラフにすると、その死亡率・罹患率の違いが見やすくなります。

例えば、西暦2000年に80〜84歳で死亡した人は、

  2000年 - 84歳 = 1916年
2000年 - 80歳 = 1920年
ですので、西暦1916年〜1920年生まれです。では、この人たちは、5年前の西暦1995年には何歳だったでしょうか。西暦2000年に80〜84歳ですから、西暦1995年には5を引いて75〜79歳です。同じように、1990年、1985年、1980年とさかのぼっていくと、各暦年での年齢は次のようになります。

表1. 1916年〜1920年に生まれた人の年齢推移
暦年 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年
年齢 60〜64歳 65〜69歳 70〜74歳 75〜79歳 80〜84歳

図1

図1の上のグラフ(a)は、5歳ごとの年齢階級別の死亡率を、死亡した年(=調査年)を横軸にグラフにしたものです。表1のそれぞれの点は、図1(a)では黒丸のように斜めに並びます。では、これらの点が縦に一直線上に並ぶように再構成するとどうなるでしょうか。それが図1の下のグラフ(b)です。これらの点は同じ出生年代(1916年〜1920年)の人たちですので、横軸は生まれた年に変わります。これが出生年を横軸にとったグラフです。このように、年齢階級別の死亡率・罹患率を出生年を横軸にとったグラフにすることで、出生年による死亡率・罹患率の違いを見ることができます。なお、同じ年代に生まれた集団は、「出生コホート」と呼ばれます。

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肝臓がん死亡率・罹患率の出生年代による違い

図2は、男性の肝臓がんの年齢階級別死亡率を、出生年代を横軸にグラフにしたものです。45歳〜69歳では1930年代前半生まれに死亡率のピークがあるのがわかります(図2の濃い網掛け)。この年代生まれは、日本の肝臓がんの主な要因であるC型肝炎ウィルスの陽性割合が高い世代とほぼ一致しています。また、40歳代では1940年代生まれでも死亡率がやや高い傾向があります(図2の薄い網掛け)。この年代生まれはB型肝炎ウィルスの陽性割合が高い世代とほぼ一致しています。死亡率ほどはっきりとはしていませんが、罹患率でも同様の傾向があります(図3)。

図2
図3


一方、女性では、男性ほどはっきりとはしていませんが、死亡率、罹患率とも55歳〜64歳で1930年代前半生まれ付近にピークが見られます。(図4, 図5の網掛け)。C型肝炎ウィルスの陽性割合に大きな男女差はないことが知られていますが、女性より男性で肝臓がんの死亡率・罹患率のピークがはっきり現れるのは、喫煙・飲酒習慣または男性ホルモンの影響で肝臓がんのリスクが上昇した可能性が考えられます。

図4
図5

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肺がん死亡率・罹患率の出生年代による違い

図6は男性の肺がんの年齢階級別死亡率を出生年代を横軸にグラフにしたものです。45歳〜69歳では1930年代後半〜40年代前半に死亡率の谷があるのがわかります(図6の網掛け)。また、罹患率でも40歳代〜50歳代で同じ年代生まれに谷が見られます(図7の網掛け)。この谷は、肺がんの主な要因である喫煙率と関連しています。図10は男女別の生涯喫煙率(喫煙習慣を持ったことのある人の割合)を出生年代を横軸にグラフにしたものです。男性では、1930年代後半〜40年代初めに生涯喫煙率の谷が見られます(図10の矢印)。この年代に生まれた男性は、第2次大戦後の物資不足の時代に喫煙を開始しやすい年齢を経験しているため、その前後の世代より生涯喫煙率が低く、それが肺がんの死亡率・罹患率が低いことの原因だと考えられています。

図6
図7

図8
図9

図10


一方、女性では、死亡率、罹患率ともに男性ほどはっきりとした谷が見られません(図8, 図9)。生涯喫煙率でも、1930年代〜40年代生まれで低い傾向がありますが、男性ほどはっきりとした谷ではありません(図10)。日本では女性の喫煙率が男性より低いため、喫煙率の動向が肺がんの死亡率・罹患率の動向へ影響を及ぼす程度は、男性ほど大きくないと考えられています。

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