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がんと食事について

更新日:2006年10月01日    掲載日:2006年10月01日

1.はじめに

「がんの再発を防いだり、がんの進行を抑えるには、どんなものを食べればよいのか」

こうした関心を背景に、さまざまな情報がはんらんしています。中には、劇的な効果をうたった食事療法や健康食品などが宣伝されていることも少なくありません。けれども実際には、がんになってからの食生活の効果についての研究は、世界的にも始まったばかりです。はっきりとわかっていることは、とても少ないのが現状です。

とはいえ、これまでの限られた研究成果をもとに、ある程度参考になる指針を示すことはできます。

2.ひとつの指針――米国対がん協会の第二版報告書

ここにご紹介する表(表1)は、米国対がん協会(American Cancer Society)の報告で、食事療法などの生活習慣とがん患者の健康の関係について、それまでに報告された研究論文をまとめたものです(2003年出版の第二版報告書)。米国対がん協会は、民間の立場でがん対策に取り組む公益法人で、がんの情報源としては、米国民から最も信頼されている団体の1つです。がん患者が栄養や運動について考えるとき、この報告書が1つのガイドとして参考になるでしょう。
この報告書では、乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がんの4種類を取り上げ、判定しています。それぞれのがんについて、判定は3種類の効果別に行っています。1つは「再発」に対する効果、2つめは心臓病などがん以外の病気も合わせた「生存」に対する効果、そして最後は「生活の質」に対する効果です

表1 米国対がん協会専門委員会による、有効性と害に関するグレード判定(2003年)

  乳がん 大腸がん
肺がん
前立腺がん
再発
生存*
生活
の質
再発
生存*
生活
の質
再発
生存*
生活
の質
再発
生存*
生活
の質
健康体重の維持
                       
治療中
A3
B
B
A3
B B A3 A2 A2 B B B
  治療後
A2
A2
A2
A3
A2 A2 A3 A2 A3 B A2 A3
運動の増加
                       
  治療中
B
B
A2 B
A3 A2 B B B B B A3
  治療後
A3 A3 A2 A3 A2 A2 B A2 A3 B A2 A2
摂取量を減らす
                       
  総脂肪
B B B B B B B B B B B B
  飽和脂肪酸
B A2 A3 A3 A3 B B A3 B A3 A2 B
摂取量をふやす
                       
  野菜と果物
A3 A3 B A3 A3 B A2 A3 B A3 A2 A3
  食物繊維
B B B B A3 B B B B B B B
  n-3系脂肪酸
B B B B B B B A3 B B B B
  大豆
B B B B B B B B B B B B
* 心臓病による死亡も含む。

グレード判定
A1 がん生存者における有効性を示す、確実な科学的根拠がある。
  A2 がん生存者において、おそらく確実に有効性がある。
  A3 がん生存者において、有効な可能性がある。
  B がん生存者における有効性と害について結論するだけの、十分な科学的根拠がない。
  C がん生存者において、有効性がないことを示す科学的根拠がある。
  D がん生存者において、害があることを示す科学的根拠がある。

出典: Brown JK, et al. Nutrition and physical activity during and after cancer treatment: an American Cancer Society guide for informed choices. CA Cancer J Clin 2003;53:268-291.

3.グレード判定の読み方

表では、食事、運動などの要因とがん患者の健康について、A1からDまでのグレード判定をしています。このグレード判定の読み方について、少しくわしく説明します。

<A1、A2――取り入れる価値がある>

A1は「がん生存者における有効性を示す、確実な科学的根拠がある」という判定です。A2はこれよりグレードが下がり、「がん生存者において、おそらく確実に有効性がある」ということです。A1とA2の2つは、現時点でも一定の科学的根拠があるので、生活に取り入れるだけの価値があると考えてよいでしょう。しかし、この報告書では、最高のA1と判定した要因は、1つもありません。

<A3――有効な可能性がある>

A3は「がん生存者において、有効な可能性がある」という判定です。これは、A1やA2より弱い判定で、あくまで「可能性」にとどまるものです。ということは、A3の要因を積極的に取り入れた場合に期待している効果があるかどうかについては、A1やA2ほど十分な科学的根拠はないことになります。

もっとも、たとえA3の判定にとどまる要因であっても、「健康体重の維持」「運動量の増加」「摂取量を減らす」などの項目は、日常の生活習慣やふだん口にする食べ物や栄養素に関することですから、積極的に取り入れたからといって、特別な害があるわけではありません。むしろ、別のがんや、がん以外の病気を予防する点でも、効果が期待できるものが多くあります。ですから、A3の「可能性」にとどまるという弱い判定であっても、生活に取り入れる意味があるでしょう。

「摂取量をふやす」項目についても、ふだんの食物を通して摂取量をふやす限りにおいては、特に問題はありません。ですから、A3の「可能性」にとどまるという弱い判定であっても、生活に取り入れる意味があるでしょう。ただし、サプリメントなどを通して、特定の栄養素や化学物質を、ふだん口にする食物からとる量を超えて、大量に摂取することには、慎重になったほうがよいでしょう。

<B、C、D――お勧めできない>

Bのグレードは、「がん生存者における有効性と害について結論するだけの、十分な科学的根拠がない」、Cは「がん生存者において、有効性がないことを示す科学的根拠がある」、Dは「がん生存者において、害があることを示す科学的根拠がある」という判定です。つまり、これらのBからDに当てはまる項目については、現時点で、生活に取り入れるだけの科学的根拠がないか、またはかえって有害な可能性があるということです。したがって、お勧めできないということになります。

4.表の活用の仕方

がんの体験者が、科学的根拠に基づいて食生活や生活習慣を見直すのであれば、A1、A2、A3の項目を取り入れればよいことになります。ただし、「摂取量をふやす」際に、サプリメントを使って大量にとることには、慎重になったほうがよいでしょう。

例えば、「乳がん」の「再発」の予防を望む女性であれば、次のような生活が望ましいことになるでしょう。治療中(A3)と治療後(A2)は「健康体重の維持」につとめ、肥満を避ける。治療後には「運動の増加」を心がける(A3)。また、「野菜と果物」の「摂取量をふやす」ようにする(A3)。

なお、米国対がん協会では、がん患者の食事療法についてのまとめを、2001年に第一版として出版しています。この報告では、第二版では取り上げていない食品やサプリメントについての判定も掲載していますので、ご参考までにご紹介します(表2)。

表2 がん患者の食生活指針(米国対がん協会、2001年)

要因
前立腺がん
乳がん
消化器がん
肺がん
食品衛生(調理時の衛生や冷蔵保存など)
A1
A1
A1
A1
治療期間中の意図的な減量(肥満の場合)
E
E
E
E
回復後の意図的な減量(肥満の場合)
B
A2
A3
B
脂肪を減らす
A3 A2 A3
B
野菜と果物をふやす
B A3 A2 A2
運動量をふやす
A3 A2 A2 B
アルコールを減らす
B A3 A3 B
断食療法
D
D
D
D
ジュース療法(野菜果物ジュース中心の食事)
B A3 A3 A3
マクロバイオティック療法(穀類・野菜・豆類・海藻を中心とする東洋風の食事)
C
C
C
C
ヴェジタリアン(菜食主義者)の食事
A3
A3
A2
A3
ビタミンとミネラルのサプリメント
A3
B
B
C
亜麻仁油
B
B
B
B
魚油
B
B
A3 B
しょうが
B B B B
大豆食品
C C B B
お茶
B B B B
ビタミンEのサプリメント
A3 B B B
ビタミンCのサプリメント
B B B B
β-カロテンのサプリメント
C C C E
セレン
A3 B A3 A3

A1 利益が証明されている
  A2 おそらく利益があるが、証明はされていない
  A3 利益の可能性があるが、証明はされていない
  B 利益やリスクについて結論するだけの、十分な知見がない
  C 利益の可能性を示す知見と、有害な可能性を示す知見が、両方ある
  D 利益がないことを示す知見がある
  E 有害なことを示す知見がある

出典:Brown J, et al. Nutrition during and after cancer treatment : a guide for informed choices by cancer survivors. CA Cancer J Clin 2001;51:153-187.

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