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手術後の痛みの治療

掲載日:2007年04月02日
更新日:2007年04月02日

1.手術後の痛みとは

手術が終わって麻酔から醒めると、手術をした部分に痛みを感じます。痛みの程度は傷の場所や大きさによっても異なります。腹部(開腹術)や肺の手術(開胸術)のあとでは、例えば咳をするときによく力の入るところの痛みが強くなります。一方、関節の手術や体表面の手術など、しっかりと固定できる場合や、傷が浅い場合はそれほど強くはないこともありますが、動かせば強く痛みます。痛みの種類も「重たく強い」「圧迫されたような」「刺されたような」「ちくちくした」など多彩です。
手術後の痛みは、3日から5日くらいで弱くなっていきます。もし、手術の傷が2週間たっても非常に強いまま変わらなかったり、再び強い痛みを感じる場合には、手術後の神経痛に移行する可能性や、感染などの可能性があります。異常を感じた場合には、早く担当医に相談してください。

2.手術後の痛みを治療することの意味

手術後の痛みが続けば、それが数日間であっても寝返りも、咳も、深呼吸もできず、眠ることもできません。寝返りができなければ床ずれ(褥創:じょくそう)ができます。息をすることで傷がひどく痛めば、深呼吸ができなくなり、咳き込むこともできません。手術後には体を動かすことができない分だけ淡がたまりやすく、肺炎などの危険性を減らすためにも、深呼吸や咳をして淡を出すことが大切です。痛みのために眠れないと精神的にまいってしまいます。つまり手術後の痛みは、残しておいていいことは何もありません。
患者さんの中には、手術のあとの痛みをとってしまうと傷が治っているのか、治っていないのかがわかりにくいのではと思う方もいるでしょう。以前はそのような時代もあったようですが、今では手術の痛みをなるべく取り除くことで、早く身体の傷を早く癒して社会生活に復帰することが目標となっています。手術後の「痛み」は、原因も場所もわかっている以上、一刻も早く取り除いてあげることが患者さんの体力回復に寄与すると考えて差し支えありません。

3.手術後の痛みの治療法と使われる鎮痛薬

手術後の鎮痛法には点滴で痛み止めを投与する方法、痛み止めの筋肉注射、神経ブロック(脊髄・硬膜外ブロック)、内服薬、坐薬などがあります。手術した部位や、手術後の時期によってその方法や使用する薬は違ってきます。また、術後鎮痛法を十分に使いこなせる医師(麻酔科医やペインクリニック医)がその施設にいるかどうかによっても、選択できる方法は変わってきます。手術直後は薬の内服はできませんから、点滴や坐薬、あるいは神経ブロックで鎮痛治療を行います。薬を内服薬が飲めるようになれば可能となれば内服薬に切り替えます。

手術後の鎮痛法と使われる痛み止め

  鎮痛法 使用薬剤
手術後の鎮痛法
硬膜外ブロック 医療用麻薬(モルヒネ、フェンタニルなど)
局所麻酔薬
点滴 医療用麻薬(モルヒネ、フェンタニルなど)
消炎鎮痛剤
皮下注射 医療用麻薬(モルヒネ、フェンタニルなど)
筋肉注射 拮抗性鎮痛薬(ペンタゾシン、ブプレノルフィンなど)
坐薬 消炎鎮痛剤
内服薬 消炎鎮痛剤

(1)硬膜外ブロック

硬膜外ブロックとは、脊髄の近くにある、硬膜外腔という場所に、細くやわらかいカテーテル(チューブ)を入れて痛み止めを投与することにより、薬を入れた位置によって付近の痛みが弱くなったり、なくしたりさせることです。局所麻酔を入れた場合には、麻酔としての効果が強くなり、感覚がなくなります。また、カテーテルが腰の低い位置の場合には、脚に力が入らなかったり、尿や便の感覚が鈍くなります。モルヒネなどの医療用麻薬の場合には、脚の動きや感覚は保たれますが、動いたりした場合の鎮痛は十分でないこともあります。両者を組み合わせて治療を行うこともあります。手術のときの麻酔方法が、硬膜外麻酔や脊椎麻酔の場合には、手術前にカテーテルを入れて、手術後にそのカテーテルを手術後の鎮痛治療に使います。

(2)点滴や皮下からの鎮痛薬の投与

点滴から使用される手術後の痛み止めは、消炎鎮痛剤です。比較的手術の範囲が小さく浅い場合には、消炎鎮痛剤を定期的に使うだけで十分な場合もあります。手術後の鎮痛に用いる消炎鎮痛薬は、皮下注射として使うことはありません。
痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤単独での鎮痛は十分にはできません。強い痛みの場合には、モルヒネやフェンタニルの注射剤を点滴や皮下注射で使うことがあります。一時的に注射剤を使う方法では、薬の効果が途切れて痛みが強くなることを繰り返します。そのため安定した鎮痛効果を得るためには、持続的に鎮痛薬を使いながら、それでも痛みが強くなった場合には、臨時に痛み止めの追加を行う方法がとられます。患者さんが痛みを感じた場合に、自分でボタンを押して痛み止めを使って鎮痛する方法(PCA:Patient Controlled Analgesia)も一部の施設で行われています。

(3)筋肉注射

手術後の痛みに対して、拮抗性鎮痛薬という種類の痛み止め(ペンタゾシン、ブプレノルフィンなど)を使うことがあります。以前は多くの施設で使われていました。注射の直後の作用が強く、時間の経過とともに必ず効果が切れて、注射をその都度繰り返す必要があります。鎮静薬を混ぜて使うこともあります。医療用麻薬に比べて安全性が高いということはありません。方法としては比較的簡単なために現在でも多くの施設で行われています。

(4)坐薬

坐薬で使用する痛み止めには、消炎鎮痛剤が最も一般的で多くの施設で行われています。3時間から6時間ほど鎮痛効果があるので、手術後の痛みには臨時で使う方法がとられます。効果の限界や腎臓などへの影響のため、使うことができる量には限界があります。

(5)内服薬

体の表面の手術(例:整形外科や乳がん手術など)では、手術後に麻酔から完全に覚醒したと確認できたら少量のお水から開始してすぐに内服が可能となります。またそうでない手術でも経過とともに内服が可能になって、手術後の痛みが弱くなっている場合は、坐薬と同様に消炎鎮痛剤を使用します。ただし、長期間飲み続けると消化器や腎臓への影響が起こりやすく注意が必要です。

医療用麻薬を手術後の痛みに対して、正しく使用することで薬が止められなくなったり、効かなくなるなどの副作用は決して生じません。消炎鎮痛薬は市販薬も多く、一般的な薬ですが、副作用や一緒に使うことで副作用が起こる可能性がある薬剤などについては、各病棟の薬剤師にお尋ねください。

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