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肝腫瘍〈小児〉(かんしゅよう)

更新・確認日:2019年06月20日 [ 履歴 ]
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2019年06月20日 タイトルに〈小児〉を追記し、本文に「肝細胞がん」へのリンクを追加しました。
2014年04月22日 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

肝腫瘍とは

原発性肝腫瘍は肝臓にできる腫瘍です。小児の肝腫瘍は小児の悪性腫瘍の中で1%程度のまれな病気です。国際的な発生頻度は、14歳以下10万人当たり2.4人程度であり、わが国の全国規模の登録でも年間50~70例程度となっています。

小児の肝腫瘍の80%以上は、肝芽腫(かんがしゅ)と呼ばれる肝細胞になるはずの未熟な細胞から発生した悪性腫瘍です。発症年齢は低く、多くの場合3歳までに発症します。肝芽腫は、肝臓の外に広がることは少なく、70%程度の生存率が期待できます。

一方、成人の肝細胞がんに近い小児の肝細胞がんは、通常は14歳を過ぎた子どもに発症します。全肝腫瘍の登録例中3~5%程度と発生頻度は少ないのですが、生存率は25%程度となります。成人の肝細胞がんについては「肝細胞がん」をご参照ください。

肝芽腫の発生リスクが高くなる場合として、次の3つがあげられています。

●先天的な腹壁異常と大きな舌を主症状とするBeckwith-Wiedemann症候群
●家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)
●出生体重1500g未満の低出生体重児

肝細胞がんの発生リスクが高くなる要因として、次の2つがあげられています。

●B型肝炎ウイルス陽性
●胆汁性肝硬変やチロシン血症などの特定の疾患により肝臓に損傷を受けている

小児の肝腫瘍にはこの他にも肝未分化胎児性肉腫のような比較的まれな悪性腫瘍や、血管腫、巣状結節性過形成(そうじょうけっせつせいかけいせい)のような良性の病変があります。

小児の肝腫瘍にはこの他にも肝未分化胎児性肉腫のような比較的まれな悪性腫瘍や、血管腫、巣状結節性過形成(そうじょうけっせつせいかけいせい)のような良性の病変があります。



更新・確認日:2017年02月03日 [ 履歴 ]
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2017年02月03日 「がんといわれたとき」の項目を「子どもががんと言われた親の心に起こること」「小児がんと言われた子どもの心に起こること」に変更しました。
2014年04月22日 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

小児がんの診療の流れ

この図は、はじめて小児がんを疑われたときから、「受診」そして「経過観察・長期フォローアップ」に至るまでの流れです。今後の見通しを確認するための目安としてお使いください。
がんの疑い      「風邪のような症状が治らない」「顔色が悪い」「いつもと様子が違う」などと感じたら、まず、病院や医院で医師に相談しましょう。
 
受診   受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。伝えたいことはあらかじめメモにまとめておくとよいでしょう。検査の予定や次の診察日が決まります。
 
検査・診断   検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかったりすることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。治療法を選択する際には、検査や診断についての理解が必要となります。不安や疑問に思ったことは医療者に尋ねましょう。
 
治療の選択   担当医が、がんや体の状態に合った治療の方針について説明します。治療の目的や効果、治療に伴う副作用について整理しておきましょう。信頼できる情報を集め、お子さんやご家族、医療者と話し合い、お子さんの希望に沿う方法を見つけましょう。
 
治療   治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、気が付いたことはいつでも医療者に相談しましょう。お子さんにとって、よりよい方法を一緒に考えていきましょう。
 
長期フォローアップ   治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。治療が終わって長い時間が経過してからあらわれる副作用や成長への影響に対応するために、長期のフォローアップを行います。

受診と相談の勧め

がん(腫瘍[しゅよう])という病気は、患者さんごとに症状のあらわれかたが異なります。また、はっきりした症状がみられない場合もあります。お子さんに何か気に掛かる点がある場合や、健康診断などで詳しい検査が必要と言われたときには、きちんと医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご家族が判断したり、病気が見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、病気ではないことが確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

全国の国指定の小児がん拠点病院がん相談支援センターでは、小児のがんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしています。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で、また対面だけでなく、電話などでも相談できます。わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

小児がん拠点病院は「小児がん拠点病院を探す」から検索することができます。

子どもががんと言われた親の心に起こること

がん(腫瘍)という診断を受けることは、わが子を失うかもしれない恐怖で心がいっぱいになる方が多いでしょう。何がいけなかったのだろうかと思い悩み、早く気付けなかった罪悪感にさいなまれたり、見守ることにつらさを感じたりすることもあるかもしれません。精神的な衝撃を受ける中で、治療の説明を理解し、子どもに伝え、判断していく必要があります。

子どもが命に関わるかもしれない病気になることは、親にとってもトラウマ(心的外傷)体験になると考えられています。ご家族も気分が悪くなったり、体調を崩したりすることがあります。

ご家族に心がけていただきたいこと

子どものがんと大人のがんとでは、その性質がまったく異なります。小児がんについての情報はいろいろなところから得ることができますが、正確でないものもあります。できるだけご家族そろって専門家の話をよく聞いて、現状を正しく理解することが大切です。わからないことは遠慮せずに質問するようにしましょう。

子どもの入院生活はどのようになるのか、検査や治療に子どもは耐えられるのだろうか、入院が始まるときに家族はどのような態勢を取ればよいのだろうか、ほかのきょうだいの生活はどのように維持していけばよいのだろうか、と頭の中は大混乱となることがあるかもしれません。
病院内にも、多方面からサポートするスタッフがいます。ささいなことと思ってもひとりで悩まないで、医療者に伝えて適切な相談者を紹介してもらいましょう。

一方、ご家族の関心が、病気の子どもに集中してしまうと、きょうだいは寂しい思いをします。きょうだいにも理解できる範囲で、病気のこと、今後の見通しについて説明をしておくことが大切です。面会に年齢制限があるなど、きょうだいを会わせるのが難しい場合もありますが、できれば会わせたり、電話で話したりする機会をつくるとよいでしょう。

小児がんと言われた子どもの心に起こること

小学生以上の子どもたちの中には、親と同様に「がん(腫瘍)」という言葉から、命に関わるかもしれない病気であると感じる子もいます。また、幼児期の子どもたちは大人たちの反応を非常によく観察していますので、周囲のただならぬ雰囲気から大変なことが起こっているのだということを感じ取ります。

治療を受けるには、「治したい」という本人の自覚が必要です。今起きていることや、これからのことがわからない上に、体調も悪いとなると、子どもはとても不安になります。不安が高まると、いろいろなことに敏感になります。例えば痛みに敏感になったり、寝付きが悪くなったりします。納得して治療に臨めるように子どもにどのように伝えるか、医療スタッフとしっかり話し合いましょう。周囲から支えられていることを感じながら、この試練を乗り越えることができると、子どもは自分に自信を持ち、発病前以上に成長できることが知られています。これからの入院生活の中で本人が孤立しないように、家族と医療スタッフの間の信頼が築けるような態勢をまず整えましょう。



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

検査と診断

肝臓の腫瘍は、おなかの大きな膨らみや、腹部腫瘤に偶然触れて気が付くことが多く、小さな腫瘍のうちに発見されることはまれです。

画像検査

腹部超音波(エコー)検査やCT、MRI検査などで腫瘍の大きさや手術によって切除できるかどうかなどの可能性を詳しく調べます。

肝腫瘍は肺に転移しやすく、初めて病院を受診したときにすでに肺転移がある場合も多いため、肝臓とともに肺の検査(単純X線検査、CTなど)も行います。また、全身の臓器への広がりを調べるために、核医学検査(骨シンチグラフィーなど)を行います。

血液検査

肝芽腫や肝細胞がんの多くは、腫瘍により産生される血液中のAFP(アルファフェトプロテイン)という腫瘍マーカー(腫瘍に特徴的にふえる物質)の値が高くなります。

病理検査

画像検査などで、1回の手術で切除することが困難と判断した場合は、手術で腫瘍の一部分を採って(生検)、採取した腫瘍組織を顕微鏡で診断(病理診断)し、腫瘍の性質を詳しく調べます。

病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいいます。

小児では、肝細胞がんも肝芽腫と同じ分類が用いられます。術前分類として、PRETEXT分類が用いられ、術後分類として、COG分類が用いられます。

従来わが国では、日本小児外科学会の病期分類が用いられていましたが、最近では国際分類に準ずるようになってきました。術前のPRETEXT分類と、術後のCOG分類の詳細について、以下を参照してください。
表1 PRETEXT分類
表1 PRETEXT分類の図
※肝門部:門脈、肝動脈、胆管の3種類の脈管が出入りする肝下面中央付近の部位
図1 PRETEXT分類の概略図
図1 PRETEXT分類の概略図
表2 COG分類
表2 COG分類の図



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

手術(外科治療)

図2 肝臓と周囲の臓器
図2 肝臓と周囲の臓器
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肝臓の悪性腫瘍では、手術により腫瘍を全部切除することが長期生存のための必須条件と考えられています。

肝臓は胆のうと下大静脈を結んだ線を境に左葉と右葉に分かれ、さらにそれぞれが4つの区域に分かれています。肝臓の手術はどこでも切り込めるわけではなく、これらの区域やそこに向かう血管の枝分かれを考えて、左外側区域切除、左葉切除、右葉切除、拡大右葉切除、三区域切除といった標準術式の中から選択されます。多くの場合、はじめは腫瘍がいくつかの区域にまたがっており、手術の後に残さなければならない重要な血管を巻き込んでいます。そこで抗がん剤治療により腫瘍を小さくして、上記のうちどれかの手術で腫瘍が切除可能と判断されたところで手術を行います。

切除は基本的に区域ごとに行い、定型的に切除した方が、腫瘍摘出率が高く局所再発率が低くなります。そして、肝芽腫では腫瘍の完全摘出率が高いほど生存率も高くなります。肝細胞がんについても腫瘍を完全に取りきれるかどうかが予後に大きく影響します。
抗がん剤治療を徹底的に行っても、腫瘍のできた位置や進展度によっては切除が不可能な場合もありますし、大事な血管と腫瘍が接していて、血管を残せば腫瘍細胞が血管のまわりに残ってしまう可能性が高いと考えられる場合もあります。近年ではこのような場合、遠隔転移がなければ、近年では肝移植も1つの選択肢と考えられるようになりました。再発例を除けば80%以上の生存率が得られたとする報告もみられますが、世界中で数百例が行われているのみであり経過観察期間も短く有効性は確立されていません。将来的な治療の選択肢として期待されています。

肝臓は血管豊富な臓器のため、肝切除術の合併症として出血が大きな問題となることがあります。そのため、輸血の準備が必須となります。また、手術後には肝臓の断端にしみ出した胆汁がたまったり、範囲の大きい肝切除では、時に残した肝臓に向かう胆管の枝が狭くなったりして、黄疸(おうだん)が出ることがあります。

手術の合併症や術後の副作用について、担当医に確認しておきましょう。

抗がん剤治療(化学療法)

肝芽腫では、抗がん剤の投与で腫瘍が小さくなり、その結果として、当初は切除不能と考えられていても、切除が可能となる場合も多くみられます。また、切除した後にわずかながん細胞が残った場合にも、抗がん剤治療である程度はその腫瘍を縮小させることができると考えられています。したがって肝芽腫では抗がん剤の投与が必須です。シスプラチンとアドリアマイシンを用いた化学療法、抗がん剤の動脈注入療法、動脈塞栓(そくせん)療法などが試みられます。

肝芽腫において大量化学療法は、有用である可能性は高いのですが根拠はまだ不十分であり、今後のさらなる検討が必要とされています。

一方、肝細胞がんでは、抗がん剤の効果が限られているため、外科的切除が主体となります。

副作用としては、骨髄抑制(白血球の減少)に伴う感染症、シスプラチンによる腎障害、聴力障害、アドリアマイシンによる心筋障害、抗がん剤のすべてに共通するものとして二次がん、不妊があげられます。これらは骨髄抑制を除けば、必ず生じるものではありませんが注意を要します。

いずれにしろ、小児腫瘍を専門にした小児科医と小児外科医、さらに病理医や放射線科医の連携がしっかりとれている専門病院で治療を行うことが不可欠です。
図3 小児の肝腫瘍の治療と臨床診断
図3 小児の肝腫瘍の治療と臨床診断
日本小児がん学会*編「小児がん診療ガイドライン 2011年版」(金原出版)より作成 *現日本小児血液・がん学会



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

経過観察

手術後の肝機能や黄疸の程度、抗がん剤治療後の晩期合併症の有無、また、再発の有無を調べるために、定期的な通院が必要となります。

手術を行った場合には、その部位によって後遺症は異なります。そのため小児科あるいは小児外科、または原発臓器の専門科など複数の科の受診が必要な場合もあります。



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年6月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

転移

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って別の臓器に移動し、そこでふえることをいいます。

最も転移が多い場所は肺転移で、初発時10~20%の患者さんに認められます。まれですが、骨、中枢神経、卵巣などにも転移を来すことがあります。遠隔転移がある場合、治癒は難しくなります。それでも、原発巣である肝腫瘍と転移巣を抗がん剤治療(大量化学療法を含む)によりできるだけ縮小させたうえで、手術により摘出できれば、治癒を期待できる場合もあります。

再発

再発とは、治療によって目に見える大きさのがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。転移がなく腫瘍を完全に切除でき、抗がん剤投与が終了し、完全に寛解かんかい(一時的に腫瘍が縮小または消失し、見かけ上治ったようにみえる状態)となった場合でも、わずかな頻度で再発することがあります。最初にがんが発生した肝臓だけでなく、肺に転移巣として再発することもあります。完全寛解を得たと考えられた肝芽腫の再発の治療は、抗がん剤治療だけでなく、可能な限り外科的切除をもう一度目指すことで、治癒を期待できるようになってきています。

晩期合併症

晩期合併症は治療後しばらくしてから起こる問題のことです。

晩期合併症は疾患そのものの影響よりも、抗がん剤、放射線治療、手術、輸血などの治療が原因となっていることが多く、本人やご家族にも、晩期合併症について現在どのようなことがわかっているのかを知っていただくことはとても大切です。どのような晩期合併症が出やすいかは、病気の種類、受けた治療内容、治療を受けた年齢によって異なります。

小児の肝腫瘍では、腎障害、聴力障害(特に高音域の聴力低下)、不妊、内分泌障害(ホルモン分泌の低下)、心筋障害が晩期合併症として現れる可能性があります。しかし、障害の程度には大きな個人差があります。不妊、内分泌障害については、生じる頻度は明らかになっていません。心筋障害や聴力障害は、その発生が生じにくい程度に薬の投与量が制限されていますが、その障害が全く派生しないとはいえません。このような障害について定期的なチェックを行うことが重要です。