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神経芽腫〈小児〉(しんけいがしゅ)

更新・確認日:2019年06月20日 [ 履歴 ]
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2019年06月20日 タイトルに〈小児〉を追記しました。
2017年11月09日 「小児がん診療ガイドライン 2016年版」より、内容の更新をしました。
4タブ形式に変更し、印刷用抜粋版PDFを追加しました。
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。
診療の流れやご家族に心がけていただきたいことなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については「治療にあたって」をご参照ください。

はじめに — 神経芽腫を理解するために —

神経芽腫は、交感神経節や副腎髄質などから発生することがわかっています(図1)。
交感神経節は、脊椎(せきつい)に沿ってあり、頭蓋骨(ずがいこつ)の底部から尾骨まで縦に連なる神経線維の束(交感神経幹)の中に並んでいる交感神経の集まりです。内臓の働きを調節したり、血管を収縮させたりする自律神経の1つです。
副腎髄質は、左右の腎臓の上にある副腎の中心部で、アドレナリンやノルアドレナリンという物質を分泌して、体のストレス反応などの調節を行っています。なお、副腎の表層部は副腎皮質といいます。
図1 神経芽腫の発生に関連する主な部位と臓器
図1 神経芽腫の発生に関連する主な部位と臓器

神経芽腫とは

神経芽腫は、小児がんの1つであり、体幹(手足を除いた体の軸となる部分)の交感神経節や副腎髄質などから発生します。約65%が腹部でみられ、その半数が副腎髄質であり、頸部(けいぶ)、胸部、骨盤部などからも発生します(図1)。
腫瘍には、悪性度の高いものや、自然に小さくなっていくもの(自然退縮)など、さまざまな種類があります。
神経芽腫の患者さんの約70%は診断時に転移がみられますが、1歳半未満の乳児では、進行期でも予後が良好であることが多く、一部の腫瘍では自然退縮することも知られています。

症状

初期の段階では、ほとんどが無症状です。進行してくると、おなかが腫(は)れて大きくなったり、おなかを触ったときに硬いしこりが触れてわかる場合もあります。
幼児では骨・骨髄に転移のある進行例が多く、発熱、貧血、血小板減少、不機嫌、歩かなくなる、眼瞼(がんけん:まぶた)の腫れや皮下出血など、転移した場所によってさまざまな症状があらわれます。縦隔(じゅうかく:左右の肺に挟まれた場所)から発生すると咳や息苦しさ、肩から腕の痛みなどがみられることがあります。
腫瘍が脊柱管の中に進展して、脊髄(せきずい)を圧迫する場合、下肢麻痺(まひ)を生じることもあります。また、特異的な症状として、眼球クローヌス/ミオクローヌス症候群(OMS:opsoclonus-myoclonus syndrome)といって、目をきょろきょろさせたり、自分の意志とは無関係な目の動きをしたりすることがあります。

統計

神経芽腫は0~4歳で診断されることがほとんどであり、この年齢層でかかる割合は10万人に約2人です(0歳が最も多い)。小児がんの中では白血病、脳腫瘍、リンパ腫に次いで多い腫瘍で、小児がん全体の10%弱を占めます。

発生要因

神経芽腫の発生要因は、多くの場合は不明であり、遺伝ではありません。ごくまれに、ある遺伝子の突然変異が親から子へと受け継がれることが原因の場合があります。しかし、この突然変異がなぜ起こるのかは、まだよくわかっていません。
この遺伝子突然変異を有する患者さんでは、神経芽腫が低年齢で発生することが多く、副腎髄質に複数の腫瘍がみられる場合があります。

「小児の神経芽腫」参考文献

  1. 日本小児血液・がん学会編.小児がん診療ガイドライン 2016年版, 金原出版
  2. JPLSG長期フォローアップ委員会 長期フォローアップガイドライン作成ワーキンググループ編. 小児がん治療後の長期フォローアップガイドライン 2013年, 医薬ジャーナル社



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小児の神経芽腫の検査

視診と触診に加え、尿検査・血液検査が行われます。そして、腫瘍発生部位の確認や病期分類のために超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査、遠隔転移巣の診断のためにMIBGシンチグラフィ、骨転移の確認のためにX線写真撮影、骨シンチグラフィなどの画像検査が行われます。骨髄転移の有無を調べるために、骨髄検査も行われます。また、病理診断と分子生物学的診断のために組織生検(腫瘍の一部を切り取ること)が行われます。

検査の種類

尿検査・血液検査

神経芽腫の腫瘍細胞は、神経伝達物質であるカテコールアミンを産生します。カテコールアミンは、体内で代謝されると、バニリルマンデル酸(VMA)とホモバニリン酸(HVA)となって尿中に排泄されるため、尿検査でこれらの値を調べます。ただし、一部の神経芽腫ではVMA、HVAの量が増えないことがあります。
ほかに血液中の腫瘍マーカーである神経特異エノラーゼ(NSE)、乳酸脱水素酵素(LDH)、フェリチンなどが高値を示すこともあるため、血液検査が行われます。骨髄に転移している場合は、貧血や血小板減少が認められることがあります。

画像検査

超音波(エコー)検査やCT検査、MRI検査は腫瘍発生部位を見極めることや病期分類に役立ちます。またMIBGシンチグラフィは、ノルアドレナリンと似た性質を持つメタヨードベンジルグアニジン(MIBG)という物質が腫瘍部位に集まることから、発生部位の確認だけでなく、遠隔転移巣の診断にも役立ちます。ごくまれに、MIBGが腫瘍部位に集まらないこともありますが、その際にはPET検査が有用な場合もあります。骨転移の確認のためにX線写真撮影や骨シンチグラフィなども行われます。

骨髄検査

診断された当初は、骨髄まで腫瘍細胞が浸潤(しんじゅん)しているかを調べるために、左右の腸骨(腰の骨)から骨髄液を吸引して、顕微鏡による診断を行います。

病理診断

確定診断は、腫瘍摘出や生検により採取した腫瘍組織を顕微鏡で診断(病理診断)して決定します。病理組織は、国際神経芽腫病理分類(INPC:International Neuroblastoma Pathology Classification、詳細後述:表3)に従って分類され、神経芽腫が治癒する確率(予後)の判定に重要です。



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リスク分類と治療の選択

リスク分類

神経芽腫の治療法は、リスク分類に従って選択されます。一般的には、国際神経芽腫リスク分類(INRGリスク分類)が用いられます。この分類では、以下1)~6)の組み合わせにより、超低リスク、低リスク、中間リスク、高リスクの4つのリスクグループに決定されます(表1)。

1)病期(腫瘍の進行の程度)
2)診断時年齢(月齢)
3)病理分類(組織分類)
4)MYCN遺伝子の増幅
5)染色体異常
6)核DNA量(腫瘍細胞の染色体数)
表1 国際神経芽腫リスク分類(INRGリスク分類)
INRG
病期
診断時年齢
(月齢)
INPC
組織分類
MYCN
増幅
染色体異常
(11q欠失)
核DNA量
(染色体数)
治療前
リスクグループ
病期
L1/L2
神経節腫 成熟型;
神経節芽腫 混在型
超低リスク
病期L1 神経節腫 成熟型;
神経節芽腫 混在型を除くすべて
なし
あり 高リスク
病期L2 18カ月
未満
神経節腫 成熟型;
神経節芽腫 混在型を除くすべて
なし なし 低リスク
あり 中間リスク
18カ月
以上
神経節芽腫 結節型
または
神経芽腫
分化型 なし なし 低リスク
あり 中間リスク
低分化型
または
未分化型
なし
あり 高リスク
病期M 18カ月
未満
なし 高2倍体 低リスク
2倍体 中間リスク
あり 高リスク
18カ月
以上
病期MS 18カ月
未満
なし なし 超低リスク
あり 高リスク
あり
copyright
日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016年版」(金原出版)より作成
用語集
表1に示したINRGリスク分類で検討される内容は以下の通りです。

1)病期(腫瘍の進行の程度)

国際神経芽腫リスクグループ病期分類(INRG病期分類、表2)によって、病期L1、病期L2、病期M、病期MSの4つに分類されます。原発腫瘍の広がり、画像検査所見から推定する手術(外科治療)のリスク(IDRF※)の有無、骨・骨髄などの転移巣の有無から決められます。病期MSは乳児に限定された分類です。

※IDRF(image-defined risk factor)とは、局所のみの神経芽腫について、画像検査所見から手術のリスクを推定し、初期手術として摘出を行うか、生検のみで留めるのかを決める指標です。
表2 INRG病期分類
病期L1 遠隔転移のない局所性腫瘍で、IDRFを有さない
病期L2 遠隔転移のない局所性腫瘍で、IDRFを有する
病期M 遠隔転移を有する腫瘍(病期MSを除く)
病期MS 月齢18カ月未満で、皮膚、肝、骨髄にのみ転移を有する腫瘍
copyright
日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016年版」(金原出版)より作成

2)診断時年齢(月齢)

一般的に、1歳半未満の乳児期に発症した患者さんは比較的よく治りますが、1歳半以上で発症した患者さんは治りにくく、強力な治療が必要となります。そのため、INRGリスク分類(表1)では18カ月未満と18カ月以上で分けられています。

3)病理分類(組織分類)

病理分類(組織分類)は、治療前に採取した腫瘍組織を顕微鏡で観察して行います。国際神経芽腫病理分類(INPC:International Neuroblastoma Pathology Classification、表3)に従って、主に4つのグループに分けられます。
表3 INPC組織分類(Shimada System)
以下の4つのグループとそれぞれの亜分類に分ける(亜分類の記載は省略)
1.神経芽腫(シュワンストローマ減少型)、ストローマ減少型
2.神経節芽腫、混在型(シュワンストローマ豊富型)、ストローマ豊富混在型
3.神経節腫(シュワンストローマ優位型)
4.神経節芽腫、結節型(シュワンストローマ豊富型/ストローマ優位型およびストローマ減少型の複合)
copyright
日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016年版」(金原出版)より作成

4)MYCN遺伝子の増幅

腫瘍細胞が持つ特徴の中で、治りやすさ(予後)との関係が一番強い因子です。腫瘍組織の遺伝子検査の結果、MYCN遺伝子が増えている場合は腫瘍の悪性度が高いといわれています。しかし、高リスクの神経芽腫に対する治療が強力になった現在では、MYCN遺伝子の増幅があるからといって、必ずしも、治りにくいというわけではありません。

5)染色体異常

腫瘍細胞の染色体の形を見ると、1番染色体短腕(1p)や11番染色体長腕(11q)が欠失している場合や、17番染色体長腕(17q)が増えている場合は治りにくいことが明らかになってきました。INRGリスク分類(表1)では、11番染色体長腕(11q)欠失を目安として採用しています。

6)核DNA量(腫瘍細胞の染色体数)

人間の体細胞は、23本の染色体を2セット持つ2倍体です。神経芽腫の腫瘍細胞は、2倍体腫瘍と、染色体数がそれ以上存在する高2倍体腫瘍に分類されます。進行期の患者さんでは2倍体腫瘍が多くみられ、治りにくくなると考えられています。

リスクグループによる治療の選択

図2は、神経芽腫に対する治療アルゴリズムを示したものです。INRGリスク分類を用いて治りやすさに関連する判定(予後因子判定)を行い、リスクグループに基づいて治療法が決められます。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図2 神経芽腫の治療アルゴリズム
図2 神経芽腫の治療アルゴリズム
日本小児血液・がん学会編「小児がん診療ガイドライン 2016年版」(金原出版)より作成
※分化誘導療法、免疫療法(抗GD2抗体)、大量MIBG治療は、わが国ではいずれも臨床試験などの研究段階の医療であり、保険の適用がされていません(2017年10月現在)。

低リスク群では、手術(外科治療)で腫瘍をすべて摘出できた場合は、治療としては手術のみで、その後は経過観察を行います。手術で腫瘍をすべて摘出できない場合には、低用量の化学療法が行われます。また、1歳未満で発症した患者さんでは自然退縮(腫瘍が自然に小さくなっていく)することもあるため、無治療経過観察が選択される場合もあります。

中間リスク群では、生検後に中等度の化学療法(薬物療法)を行ってから、原発腫瘍を摘出するための手術を行う治療法が一般的ですが、標準治療は確立していません。

高リスク群では、腫瘍が周囲の臓器や血管を巻き込んでいることや、転移がある場合が多くあります。治療としては、化学療法を先行し、周囲の臓器をできるだけ温存した手術と局所の放射線治療、大量化学療法と自家造血幹細胞移植を行います。多施設での臨床試験として治療を行うことも多く、経験のある医療機関で治療を行う必要があります。

また、神経芽腫が再発した場合には、まだ推奨される治療法は確立していません。臨床試験に基づく試験的治療を行うこともあります。

手術(外科治療)

手術の概要

手術はその目的から、大きく2つに分けられます。1つは、神経芽腫の確定診断とその悪性度判定のために、腫瘍の一部を切除して調べる手術(生検)で、もう1つは腫瘍(手術部分)を目で見ながら切除する手術(腫瘍摘出術)になります。

なお、神経芽腫は必ずしも手術で腫瘍すべてを摘出しなくてもよい場合があり、リスクや病状に応じて適切な手術方針が立てられます。神経芽腫の集学的治療(化学療法、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた治療)に精通している医療機関で、神経芽腫における外科治療の経験が豊富な外科チームによる治療を受けることが勧められます。

1)開腹または開胸による腫瘍摘出術

腹壁や胸壁を大きく切開して広げ、手術部分を目で見ながら腫瘍を摘出する手術のことです。
この摘出術は、腫瘍を切除するときに最も多く用いられる方法で、特に化学療法(薬物療法)後の2回目の手術で腫瘍周囲のリンパ節などを一緒に切除するときには、必ず用いられます。

また、側腹部あるいは背部から腹壁を切開する後腹膜経路の腫瘍摘出術もあり、副腎に発生した早期の神経芽腫で、周囲臓器や血管などの巻き込みがなく、比較的容易に腫瘍が摘出できると考えられるときなどに用いられることがあります。

2)内視鏡(腹腔鏡または胸腔鏡)による腫瘍摘出術

内視鏡処置用の手術器具を挿入するために、1cm程度の穴(孔)を3~4カ所空けて、その小さな穴を通して行う手術です。腫瘍の部位や大きさ、血管への浸潤(しんじゅん)の有無によって、実施が検討されることがあります。

乳児(1歳半未満)神経芽腫の手術(外科治療)

尿検査(VMA・HVAの上昇の検出)から神経芽腫が見つかった患者さんは、転移のない早期である場合が多く、大部分は腫瘍自体の悪性度も高くありません。そのような場合の治療の主体は、手術で腫瘍を切除することになります。
摘出した腫瘍自体の悪性度が高くなければ、手術後に化学療法(薬物療法)や放射線治療を追加する必要はありません。しかし、脊髄(せきずい)圧迫症状や肝臓への浸潤に続いて起こる呼吸障害などがある場合には化学療法(薬物療法)を行います。
また、尿検査で発見された一部の腫瘍に対しては、手術や化学療法(薬物療法)も行わず、自然退縮(腫瘍が自然に小さくなっていく)を期待して経過観察のみ(無治療経過観察)を行う場合もあります。担当医からの十分な説明と親の理解、その後の注意深い観察が必要となります。
無治療経過観察の場合を除いて生検を行い、腫瘍の悪性度を判定することが必要です。

術後合併症

開腹手術の場合、術後に癒着(ゆちゃく)性腸閉塞の合併症を起こすことがあります。また、頸部や縦隔(じゅうかく:左右の肺に挟まれた場所)の交感神経節から発生した神経芽腫では、手術をした側の縮瞳(瞳孔の縮小した状態)、眼瞼(がんけん:まぶた)の垂れ下がり、顔面の発汗の減少を主な特徴とするホルネル症候群がみられることがあります。さらに、副腎や腎臓近くの後腹膜から発生した腫瘍を摘出した場合、手術によって腎動脈(腎臓に血液を送る動脈)が傷つくことで腎萎縮を合併することがあります。

放射線治療

進行期の神経芽腫(高リスク群)に対しては、手術後に微細に残っている腫瘍をなくすため、および骨転移部位への局所療法として、放射線治療を行います。
放射線を照射する範囲や放射線の量は、それまでの治療に対する反応や、手術の結果などを基に決められます。多くの場合、治療期間は2~3週程度になります。一般的にはX線による治療が行われていますが、陽子線という放射線を用いることもあります。また、病気が再発したときに、対症的な治療として、放射線治療を行うこともあります。

化学療法(薬物療法)

INRGリスク分類(表1)によって分けられた低リスク群(超低リスクを含む)、中間リスク群、高リスク群ごとに、次のような化学療法が行われます。

低リスク群(超低リスクを含む)

低リスク群でも、手術で腫瘍をすべて摘出できない患者さんには低用量の化学療法が行われます。 手術で腫瘍をすべて摘出できない一部の患者さんや、脊髄(せきずい)圧迫症状、肝臓への浸潤による呼吸障害などがある患者さんについては、ビンクリスチン、シクロホスファミドなどを用いた低用量の化学療法を短期間行い、腫瘍を縮小させてから手術により摘出を試みる場合があります。

中間リスク群

中間リスク群に対する標準治療は確立していませんが、生検後に中等度の化学療法を実施し、腫瘍を縮小させてから、原発腫瘍の摘出術を行う治療法が一般的に行われています。

高リスク群

化学療法、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた集学的治療が行われます。
高リスク群では、寛解導入療法(大量化学療法を行うまでの化学療法)として、一般的にシスプラチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチンなどからなる多剤併用療法が行われます。その後、自家造血幹細胞移植(あらかじめ保存しておいた自分の造血幹細胞を移植する方法)を併用した大量化学療法が検討されます。腫瘍摘出術は、大量化学療法の前ないし後で行います。また、放射線治療は、一般的に大量化学療法後に行います。
海外では大量化学療法後の治療として、分化誘導療法や免疫療法(抗GD2抗体)、併用療法として大量MIBG治療などが行われていますが、わが国ではいずれも研究段階であり、保険の適用がされていません(2017年10月現在)。

臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、多施設での臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

小児がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で情報を閲覧することができます。

小児がんは、患者数が少なく、臨床試験として治療が行われることもあります。参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

転移・再発

転移とは、腫瘍細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。再発とは、治療の効果により腫瘍がなくなった後、再び腫瘍が発生することをいいます。
原発部位の再発だけでなく、骨などの転移巣として再発することもあります。再発した場合に推奨される特定の治療法は定まっていませんが、骨に転移した場合は放射線治療を行います。

再発は、それぞれの患者さんで状態が異なりますので、症状や体調あるいは患者さんやご家族の希望に応じて治療やケアの方針を決めていきます。
診断時に低リスク群または中間リスク群であった場合は、再発の状況によって治療法はさまざまですが、それに見合った治療を行うことにより、ある程度良好な予後が期待されます。一方、診断時に高リスク群であった場合の再発では、確立した救援療法はありませんが、個別の状況に応じた治療法が検討されます。



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4タブ形式に変更し、印刷用抜粋版PDFを追加しました。
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

経過観察

神経芽腫の治療には、低リスク群で無治療経過観察の患者さんや、高リスク群で化学療法(薬物療法)、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた強力な集学的治療を行う患者さんなど、患者さんごとにいろいろな治療が行われていますので、それぞれの患者さんに応じた経過観察が必要になります。
治療終了後も体調の変化や晩期合併症の有無、再発していないかの確認のため、定期的に通院して経過観察を行いますが、治療終了後の経過が長くなるにつれて通院の間隔は延びていくのが一般的です。治療終了5年以降は1年に1回程度の通院となることが多いようです。

晩期合併症

晩期合併症は、患者さんの成長や、治療終了後の時間の経過に伴って治療の影響によって起こる症状のことです。どのような晩期合併症が出現するかは、病気の種類、受けた治療、治療を受けた年齢などに関連し、症状の程度も異なります。

神経芽腫は、比較的低年齢の患者さんが多く、進行期の神経芽腫(高リスク群)では放射線治療や大量化学療法が行われるため、晩期合併症には特に注意が必要と考えられます。
化学療法(薬物療法)としてシスプラチンを用いることが多く、シスプラチン特有の晩期合併症である腎障害、高音域聴覚障害(鈴虫の鳴き声など高い音が聞きづらくなること)などに注意が必要です。シクロホスファミドは、性腺障害の大きな原因となります。また、高リスク群では、大量化学療法を行うため、成長障害や歯牙の発育障害などにも注意が必要です。二次がん(神経芽腫とは別の種類のがんや白血病を生じること)の発症にも、注意しなければなりません。

さらに、放射線治療では、原発部位や転移部位に対して10Gy(グレイ:放射線の吸収線量の単位)以上の照射を行った場合に、その部位の臓器の形態や機能についての経過観察が必要になります。

また、副腎髄質の原発腫瘍を手術で摘出した場合、手術によって腎動脈(腎臓に血液を送る動脈)が傷つくことで、遅れて腎動脈に狭窄(きょうさく)が起こり、腎萎縮を合併することがあります。その場合、高血圧や腎機能障害を併発するため、注意が必要です。腎臓の機能が低下している場合、腎臓で産生されるエリスロポエチン(赤血球をつくるのを助けるホルモン)の分泌(ぶんぴ)が減少し、貧血となることがあります。