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網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)

更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

網膜と眼のしくみ

網膜とは眼底(がんてい)と呼ばれる眼の奥一面に広がっている薄い膜状の組織であり、眼球をカメラに例えると、網膜はフィルムのような役割を果たしています。角膜を通って瞳孔(どうこう)から眼球内に入った光は、レンズの働きをする水晶体(すいしょうたい)により屈折した後、硝子体(しょうしたい:卵の白身のような粘り気のある透明の物質)を通り、網膜に映し出されます。このとき網膜で感じ取った光の刺激が視神経を通って脳に伝わり、「見える」と認識されます。
図1 眼の構造と物が見えるしくみ
図1 眼の構造と物が見えるしくみ

網膜芽細胞腫とは

網膜芽細胞腫は網膜に発生する悪性腫瘍(しゅよう)で、網膜芽腫と呼ばれることもあります。乳幼児に多い病気であり、出生児15,000~16,000人につき1人の割合で発症しています。

網膜に腫瘍ができると視力が低下しますが、乳幼児はまだ、ものが見える、見えないという状態がよくわからず、その状態を伝えられないことから、発見されたときには進行している場合も少なくありません。ある程度進行すると、光が腫瘍に反射して夜のネコの眼のように白く光って見えたり、左右の眼球の向きが合っていない状態(斜視:しゃし)になったりします。その他、まぶたの腫(は)れがみられることもあります。こうした症状に家族が気付いて受診する場合が多く、95%が5歳までに診断されます。早く治療が行われれば生命に関わることは少なく、治癒(ちゆ)させることができます。全国登録の結果では、約9割の患者が、がんの治癒の目安である治療後5年の経過以降も生存しています。

遺伝・遺伝子について

この腫瘍は、特定の遺伝子(RB1遺伝子)の異常と関連していることがわかっています。たまたま網膜の細胞の遺伝子が傷ついて腫瘍が発生したときは、必ず片眼性(へんがんせい:片方の眼球だけに発症)であり遺伝することはありません。

体の全ての細胞にこの遺伝子の異常がある場合は原因となる遺伝子が子どもに引き継がれることがあり、その子どもも網膜芽細胞腫にかかる可能性があります。両眼性(りょうがんせい)網膜芽細胞腫の全てと片眼性の10~15%が相当します。またRB1遺伝子の異常は、将来、骨肉腫など別の悪性腫瘍を引き起こす可能性もあるため、注意深く観察する必要があります。

家系に1人しか網膜芽細胞腫の患者がいない場合で両眼性の場合にはその患児の子どもには49%、片眼性の場合には5%で網膜芽細胞腫が発生するとされています。現在、遺伝子解析技術が進歩しており、血液検査により、ある程度遺伝子異常を検出できるようになってきました。遺伝子検査の目的、限界を十分理解していただくために、遺伝相談外来などでカウンセリングも行われています。相談の方法については担当医にご相談ください。
【遺伝・遺伝子について、もっと詳しく】
網膜芽細胞腫の発症頻度は15,000人の出生につき1人の割合で、性別、人種、地域による違いはありません。現在、わが国では毎年約80人が発症しています。両眼に生じる場合と片眼だけの場合とがあり、その比率は両眼1に対し片眼2.6です。この腫瘍は13番染色体長腕の13q14という部位にあるがん抑制遺伝子であるRB1遺伝子の異常によって発生することがわかっています。

身体の1つの細胞には23対の染色体があり、同じ遺伝子が2個あります。もともと身体の細胞に遺伝子の異常がなく、網膜の一部の細胞だけで一対のRB1遺伝子の両方が働かなくなり、その結果、腫瘍が発生することがあります。この場合は必ず片眼性であり、遺伝性はありません。

一方、親の精子か卵子にRB1遺伝子の異常があると、これから発生した胎児の身体のすべての細胞はRB1遺伝子の一方に異常をもつことになります。この状態でも細胞は正常に働きますが、網膜がつくられる過程で、他方のRB1遺伝子に異常が生じると、網膜芽細胞腫が発生すると考えられています。両眼性の症例すべてと、片眼性の症例の10~15%がこの状態とされています。RB1遺伝子は細胞分裂に重要な働きをもつため、将来骨肉腫など別の種類の悪性腫瘍の発生頻度が高いので注意が必要です。

すでに網膜芽細胞腫の子(患児)がいる場合、次に生まれる子や患児の子に網膜芽細胞腫が発生する確率は、以下のように計算されています。家系に1人しか網膜芽細胞腫の患者がいない場合、両眼性の場合はその患児の子には49%、その患児の弟や妹には3%の確率で発生し、片眼性の場合はその患児の子には5%、その患児の弟や妹には2%の確率で発生します。

遺伝子解析技術の進歩により、血液検査で遺伝子異常を検出できるようになってきました。しかしながら、現在の技術では60~80%しか発見できません。着床前診断、羊水検査などの技術もありますが、網膜芽細胞腫は現在の倫理指針では対象になりません。遺伝子検査の目的、限界を十分理解していただくために、遺伝相談外来などでカウンセリングも行われています。
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更新・確認日:2017年02月03日 [ 履歴 ]
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2017年02月03日 「がんといわれたとき」の項目を「子どもががんと言われた親の心に起こること」「小児がんと言われた子どもの心に起こること」に変更しました。
2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

小児がんの診療の流れ

この図は、はじめて小児がんを疑われたときから、「受診」そして「経過観察・長期フォローアップ」に至るまでの流れです。今後の見通しを確認するための目安としてお使いください。
がんの疑い      「風邪のような症状が治らない」「顔色が悪い」「いつもと様子が違う」などと感じたら、まず、病院や医院で医師に相談しましょう。
 
受診   受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。伝えたいことはあらかじめメモにまとめておくとよいでしょう。検査の予定や次の診察日が決まります。
 
検査・診断   検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかったりすることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。治療法を選択する際には、検査や診断についての理解が必要となります。不安や疑問に思ったことは医療者に尋ねましょう。
 
治療の選択   担当医が、がんや体の状態に合った治療の方針について説明します。治療の目的や効果、治療に伴う副作用について整理しておきましょう。信頼できる情報を集め、お子さんやご家族、医療者と話し合い、お子さんの希望に沿う方法を見つけましょう。
 
治療   治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、気が付いたことはいつでも医療者に相談しましょう。お子さんにとって、よりよい方法を一緒に考えていきましょう。
 
長期フォローアップ   治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。治療が終わって長い時間が経過してからあらわれる副作用や成長への影響に対応するために、長期のフォローアップを行います。

受診と相談の勧め

がん(腫瘍[しゅよう])という病気は、患者さんごとに症状のあらわれかたが異なります。また、はっきりした症状がみられない場合もあります。お子さんに何か気に掛かる点がある場合や、健康診断などで詳しい検査が必要と言われたときには、きちんと医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご家族が判断したり、病気が見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、病気ではないことが確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

全国の国指定の小児がん拠点病院がん相談支援センターでは、小児のがんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしています。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で、また対面だけでなく、電話などでも相談できます。わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

小児がん拠点病院は「小児がん拠点病院を探す」から検索することができます。

子どもががんと言われた親の心に起こること

がん(腫瘍)という診断を受けることは、わが子を失うかもしれない恐怖で心がいっぱいになる方が多いでしょう。何がいけなかったのだろうかと思い悩み、早く気付けなかった罪悪感にさいなまれたり、見守ることにつらさを感じたりすることもあるかもしれません。精神的な衝撃を受ける中で、治療の説明を理解し、子どもに伝え、判断していく必要があります。

子どもが命に関わるかもしれない病気になることは、親にとってもトラウマ(心的外傷)体験になると考えられています。ご家族も気分が悪くなったり、体調を崩したりすることがあります。

ご家族に心がけていただきたいこと

子どものがんと大人のがんとでは、その性質がまったく異なります。小児がんについての情報はいろいろなところから得ることができますが、正確でないものもあります。できるだけご家族そろって専門家の話をよく聞いて、現状を正しく理解することが大切です。わからないことは遠慮せずに質問するようにしましょう。

子どもの入院生活はどのようになるのか、検査や治療に子どもは耐えられるのだろうか、入院が始まるときに家族はどのような態勢を取ればよいのだろうか、ほかのきょうだいの生活はどのように維持していけばよいのだろうか、と頭の中は大混乱となることがあるかもしれません。
病院内にも、多方面からサポートするスタッフがいます。ささいなことと思ってもひとりで悩まないで、医療者に伝えて適切な相談者を紹介してもらいましょう。

一方、ご家族の関心が、病気の子どもに集中してしまうと、きょうだいは寂しい思いをします。きょうだいにも理解できる範囲で、病気のこと、今後の見通しについて説明をしておくことが大切です。面会に年齢制限があるなど、きょうだいを会わせるのが難しい場合もありますが、できれば会わせたり、電話で話したりする機会をつくるとよいでしょう。

小児がんと言われた子どもの心に起こること

小学生以上の子どもたちの中には、親と同様に「がん(腫瘍)」という言葉から、命に関わるかもしれない病気であると感じる子もいます。また、幼児期の子どもたちは大人たちの反応を非常によく観察していますので、周囲のただならぬ雰囲気から大変なことが起こっているのだということを感じ取ります。

治療を受けるには、「治したい」という本人の自覚が必要です。今起きていることや、これからのことがわからない上に、体調も悪いとなると、子どもはとても不安になります。不安が高まると、いろいろなことに敏感になります。例えば痛みに敏感になったり、寝付きが悪くなったりします。納得して治療に臨めるように子どもにどのように伝えるか、医療スタッフとしっかり話し合いましょう。周囲から支えられていることを感じながら、この試練を乗り越えることができると、子どもは自分に自信を持ち、発病前以上に成長できることが知られています。これからの入院生活の中で本人が孤立しないように、家族と医療スタッフの間の信頼が築けるような態勢をまず整えましょう。



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。
網膜芽細胞腫の診断は眼底検査を基本とし、必要に応じて画像検査を組み合わせて行います。また、全身の状態を把握するための診察も行います。検査に対する恐怖心を和らげたり、動きを制限するために、薬や麻酔を使用して眠った状態で検査をすることがあります。

検査と診断

医師の診察

全身の状態を把握するために、問診、聴診、血液検査などを行います。

前眼部・眼底検査

点眼薬で瞳孔(どうこう)を開き、網膜の状態と、硝子体や前房(ぜんぼう)に腫瘍が広がっていないかどうかを調べます。この検査で、1mm以下の小さな病変も見つけ出すことができます。

また、硝子体、前房への浸潤の有無、腫瘍に伴う網膜剥離の有無などもあわせて確認することが治療法の決定に重要です。

画像検査

超音波(エコー)検査

閉じたまぶたの上に測定用のプローブ(探触子:たんしょくし)を置き、眼球に超音波(エコー)を当てて、腫瘍の大きさを測定します。網膜芽細胞腫は腫瘍の内部が石灰化するという特徴があり、超音波検査でこの様子をみることができます。

超音波検査は被曝などの危険がなく、角膜混濁などで眼底検査が十分できない場合にも有用です。

頭部のCT、MRI検査

CTではX線を、MRIでは磁気を用いて、腫瘍の性質や広がりを調べます。CTでは眼球内の腫瘍の石灰化の様子を、MRIでは眼球外への腫瘍の広がりをより鮮明に確認することができます。

CTは、X線被曝による二次がんの危険があるため、複数回の撮影を必要とする場合はMRIを選択します。

MRIは、両眼性網膜芽細胞腫に脳腫瘍を併発する三側性網膜芽細胞腫の検出に有用です。石灰化の検出はできません。

全身検査

一般的ながんでは、治療前に全身への転移があるかどうかを確認するために、薬を投与してがん細胞に目印を付けてPETやシンチグラフィ、全身CTなどを行うことがあります。これらの検査には放射線が用いられます。網膜芽細胞腫では腫瘍が眼球外に広がっていない場合は、転移がみられることは非常にまれであり、一方で、網膜芽細胞腫の患者さんでは放射線によって別の悪性腫瘍(2次がん)を生じやすい傾向があることがわかっています。ですので、転移する危険性を低くするために、眼球外への広がりがみられる場合以外は、放射線を用いるこれらの検査は行われません。なお、眼球外への広がりがみられる場 合には、これらの検査に、骨髄検査、脳脊髄(せきずい)液検査なども組み合わせて行います。

病期(ステージ)

病期とはがんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいいます。

網膜芽細胞腫では眼球を残すかどうかの基準として、現在は下記の国際分類が広く使われています。
表1 眼球内網膜芽細胞腫の国際分類(概略)
A 3mm以下の網膜腫瘍
B 3mm以上、黄班部、視神経近傍の網膜腫瘍
C 限局性播種(硝子体・網膜下)
D びまん性**播種(硝子体・網膜下)
E 摘出を要する進行例
*播種:発生部位から腫瘍がこぼれ落ちて、散らばった状態
**びまん性:腫瘍が広範囲に広がっている状態
A Linn Murphree. Ophthal Clin N Am 2005; 18: 41-53より作成



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。
治療法は腫瘍が眼球内にとどまっているか、眼球外に広がっているかによって大きく異なります。 眼球内にとどまっている場合、眼球をなるべく摘出(てきしゅつ)しないで、可能な限り残す方針で治療するという考え方が最近では多くなってきています。 眼球を摘出することによる治療効果や、眼球を残せる可能性について、担当医とよく相談しましょう。

腫瘍が眼球内にとどまっている場合

視力の温存が期待できない場合や緑内障などを合併している国際分類E群の場合には、眼球摘出が行われます。摘出した眼球の病理検査で眼球外にも腫瘍の広がりが認められた場合は、転移の危険性を減らすために抗がん剤治療を行います。

視力の温存が期待できる場合には眼球を残す方法で、腫瘍の治療を行います。局所治療、抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせて行いますが、標準治療**はまだ確立していないのが現状です。

治療の効果は眼底検査で判断します。画像検査では腫瘍の残存と瘢痕(はんこん)化組織の判断は困難です。

*病理検査:採取した組織に腫瘍細胞があるかどうか、あるとすればどのような種類の細胞かなどについて顕微鏡で詳しく調べる検査。
**標準治療:治療効果・安全性の確認が行われ、現在利用できる最良の治療。

転移や眼球外への広がりがみられる場合

手術(外科治療)

可能な限り腫瘍を切除します。術後は全身に対する抗がん剤治療や放射線治療を行いますが、患者数が少ないため、標準治療は確立していません。

手術治療では、腫瘍を眼球ごと摘出します。眼球内の腫瘍だけを切除することは、転移の危険性が高いため行いません。そのため、網膜芽細胞腫では、腫瘍切除が眼球摘出と同等の意味になります。全身麻酔をして行われる手術は、1時間程度で終わります。手術後はまぶたの腫れや皮下出血が見られる場合がありますが、1~2週間でおさまり、傷が落ち着けば、義眼(ぎがん)を入れることができます。

手術後は眼臉腫脹や皮下の出血斑が生じることがありますが1週間から2週間で消えます。手術直後に有窓義眼と呼ばれる透明なプラスチックの義眼を入れておき、結膜嚢の形成を助けます。術後2週から4週で角膜の描いてある仮義眼を装用します。その後義眼を調整し、本義眼をつくることになります。

義眼について

義眼は正面を向いたときの見た目はよく、まばたきもできますし、涙も流れます。横を見るときに動かすことはできませんが、顔を視線の方向に向けて見るようにすればさほど目立ちませんし、人前で義眼がずれることはほとんどありません。ゴーグルを着用すれば水泳を楽しむこともできます。義眼は毎日はずして結膜(白目の部分)をきれいに洗い、清潔にしておかなければいけません。また、成長に合わせて義眼を変える必要があります。めやにが多いときには、眼の軟こうや点眼剤を使います。

なお、義眼台という台を入れておくと少しは眼を横に動かすことができますが、後に義眼台が外に飛び出してしまい取り除かなければならないこともあります。義眼台を入れるかどうかは、担当医とよく話し合って決めましょう。

局所治療

温めたり凍らせたりすることで、腫瘍を破壊します。

レーザー照射(温熱療法)

比較的小さな腫瘍に対してはレーザー単独で、大きな腫瘍に対しては化学療法と併用して行います。

冷凍凝固

-80℃に冷却した専用の器具を眼球の壁に当て、腫瘍を凍らせて破壊します。網膜の周辺部(眼球の前方)にある比較的小さな腫瘍に対して行います。術後に結膜の充血や腫れがみられます。

抗がん剤治療(化学療法)

抗がん剤を用いて腫瘍を小さくします。

全身化学療法

腫瘍の眼球外への広がりや転移がみられる場合には可能な限り腫瘍を切除しますが、切除できない場合や、切除できた場合でも再発の危険性を低くするため、強力な抗がん剤による治療を行います。これは生命維持のための化学療法です。

これとは別に、眼球温存のための全身化学療法があります。局所治療では治癒が難しい大きな腫瘍(国際分類B~D群)に対しては、まず全身化学療法を行います。この治療により、眼球内の腫瘍は小さくなりますが、この治療だけで眼球の腫瘍を治癒させることは難しいため、局所治療とともに行います。また、抗がん剤は腫瘍だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすため、毛が抜けたり、吐き気がしたり、白血球や血小板が減るなどの副作用が出る場合があります。

局所化学療法(眼のみの治療)

局所化学療法は、全身化学療法もしくは放射線を照射したにも関わらず残っている腫瘍(残存腫瘍)や、再発した大きな眼内腫瘍に対して行います。眼球に流れる眼動脈(がんどうみゃく)に抗がん剤を少量注入する方法(選択的眼動脈注入法)で行われ、眼の腫瘍のみに対する治療となるため、正常なほかの細胞を傷つけることが少なく、副作用が比較的軽い治療法です。また、結膜や眼球に抗がん剤を注入する方法もあります。いずれも標準治療ではなく研究的な治療法であり、現在は効果を評価している段階です。

放射線治療

X線などの放射線によって腫瘍を破壊する治療です。

外照射

週に5日間、約4週間にわたり、主に顔の側方からX線を当てます。1回の照射時間は短く麻酔の必要もないため、主に外来で行われます。治療効果は高いのですが、放射線の影響が周囲の組織にも及ぶため副作用(後述)が起こりやすく、現在はほかの治療が困難な場合に限り、行われています。 側方から照射する理由は、水晶体の被曝による白内障を避けるためです。 放射線治療により約60%の症例で腫瘍が寛解し、治療効果は最も期待できますが、放射線による二次がん、眼部の骨の成長障害など副作用も多く、現在は治療困難な進行例に限り行われます。 陽子線治療(陽子線という放射線を用いて腫瘍のみに効率よく集中的に当てる治療)や、定位放射線治療(放射線を腫瘍の形に一致させて集中的に当てる治療)という新しい方法も開発されていますが、眼球の固定が難しい上に、小児の場合は腫瘍に正確に放射線を当てるためには全身麻酔が必要であることから、限られた施設でのみ行われているのが現状です。

小線源治療(内照射)

放射線を発生する金属(ルテニウム)の板を眼球の外から腫瘍部に固定して、腫瘍にのみ放射線を当てる治療です。周辺の組織への放射線の影響を減らすことができます。手術後はものが二重に見えることがあります(複視)。この治療は鉛でおおわれた特殊な病室で行われますので、家族でも限られた時間しか入室できません。

眼球を残すにあたって

腫瘍の大きさや場所により視力への影響は異なるため、眼球が残せても良好な視力が保てるとは限りません。また、眼球を残すことで、見た目は義眼よりもよくなる可能性がありますが、考慮すべき問題もあります。
●再発や転移の可能性、抗がん剤による副作用の可能性は残ります。
●眼球を残すことにより、治療の回数が増えると、体への負担が大きくなります。
●眼球を残す治療によって眼球が小さくなったり、斜視や白内障などが起こり、外見的に目立たなくすることが望めなくなる場合があります。特に放射線治療を行った場合、眼の周りの骨の成長が悪くなってしまいへこんだり、顔の骨や筋肉に2次がんが発生する可能性があります。また、下垂体への照射により、全身の成長障害も考えられます。

予後

生命予後は、全国登録の結果から5年生存率93.1%、10年生存率90.6%と報告されています。眼球外に腫瘍が広がっている場合には、5年生存率71.2%、10年生存率66.0%に低下します。

眼球保存率は、全体で約50%程度です。国立がんセンターの5年眼球保存率は非進行例(国際分類のA~C)で83%、進行例(国際分類のD~E)で33%でした。



更新・確認日:2014年04月22日 [ 履歴 ]
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2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

経過観察

手術後の部位の機能や状態を確認したり、抗がん剤治療後の体調の変化や再発があるかどうかを調べるために、経過観察を行います。特に、体内の全ての細胞にRB1遺伝子の異常がある網膜芽細胞腫では、片眼性であっても健康なもう1つの眼に腫瘍が発生することがあるため、定期的な通院が必要です。

網膜芽細胞腫では、最初の治療終了後、1年から2年間は、1ヵ月から3ヵ月ごとの眼底検査、年に1、2回の頭部MRI検査を行います。3年から5年経過しても再発がみられない場合、通院の間隔は長くなります。

就園や就学については、患者さんの状態や受け入れ側の態勢によって異なります。担当医やソーシャルワーカーとよく話し合いながら、就園先や就学先を決めていきます。

日常生活について

退院後の日常生活では、感染予防に努めましょう。受けた治療にもよりますが、治療後しばらくの間は予防接種を受けられないことがあります。詳しくは担当医に確認してください。

学校生活について

就園・就学や復学については、お子さんの状態や受け入れ側の態勢によって状況が異なります。担当医やソーシャルワーカーと、時期や今後のスケジュールについてよく話し合いながら決めていきましょう。

学校生活ではお子さんの希望を聞きながら、担任の先生や養護教諭などと相談し、できることから徐々に慣らしていきましょう。

水ぼうそうやはしかなどの特別な感染症が流行した場合は、学校から早めに連絡してもらうようにしてください。その際には対応について担当医に相談してください。



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2014年04月22日 2013年7月発行の冊子とがん情報サービスの情報を再編集し、掲載しました。

再発と転移

再発とは、治療により目に見える大きさのがんがなくなった後、再びがんが出現することをいいます。また、転移とは、腫瘍細胞がリンパ液や血液の流れで運ばれて別の臓器に移動し、そこでふえたものをいいます。網膜芽細胞腫は強膜という硬い膜の中にある腫瘍なので、眼球付近の組織や体内の別の部位に広がることは少ないのですが、視神経から脳に転移することがあります。その他にも、リンパ節や骨髄などに転移することもあります。

再発や転移はそれぞれの患者さんで状態が異なりますので、腫瘍の広がりや、これまでの治療なども含め総合的に判断し、治療法を決めていきます。

晩期合併症

小児の腫瘍では、病気そのものが治癒した後時間が経過してから、抗がん剤、放射線治療、手術、輸血などの治療の影響により生じる合併症がみられる場合があります。これを「晩期合併症」といいます。

具体的な晩期合併症には、成長や発達への影響、生殖機能への影響、臓器機能への影響、二次がんなどがあります。ほとんどの晩期合併症は年齢を重ねるとともに発症しやすくなり、治療終了後何十年も経過してから症状があらわれることもあります。

本人やご家族が、晩期合併症について現在どのようなことがわかっているのかを知ることはとても大切です。どのような晩期合併症が出やすいかは、病気の種類、受けた治療、また治療を受けた年齢により異なります。その症状の程度も軽いものから重いものまでいろいろです。

晩期合併症に適切に対処するためには、定期的な診察と検査によって、治療の記録を残しながら経過観察を続けることが必要です。転居や結婚などにより生活環境や通院する医療機関が変わったときにも継続していきましょう。