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がん専門相談員のための「小児がん就学の相談対応の手引き」作成の背景について

『がん専門相談員のための「小児がん就学の相談対応の手引き」』は、がん専門相談員が、小児がんの子どもたちの就学の支援を行うときに、知っておくとよい背景知識や具体的な支援の基本的な考え方をまとめたものです。

小児がん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられるような環境の整備を目指して、平成25年2月に全国で15の小児がん拠点病院(以下、拠点病院とする)が指定され、相談支援センターが置かれることになりました。相談支援センターでは、「院内外の小児がん患者およびその家族ならびに地域の住民および医療機関等からの相談等に関する体制を整備すること」が求められています(小児がん拠点病院の整備に関する指針 平成24年9月7日)。

相談支援センターのがん専門相談員の役割は、標準治療法等に関する一般的な情報の提供、地域の医療機関や医療従事者に関する情報収集や提供、小児がん患者の発育や教育、療養上の相談など、非常に多岐にわたります。中でも学校教育は、子どもにとってとても大切な生活の一部となるとともに、育ちの場となります。がん専門相談員は、どのように小児がんの子どもたちの就学に関する支援をしていくか、支援することができるのかを知っておくことが大切です。

小児がんの就学の支援が必要な理由

病気の子どもたちの就学の支援は、がん専門相談員だけでなく、多くの医療関係者にとって難しいと感じられることの1つでしょう。それには、いくつかの理由があります。

1つ目に、地域の教育の体制はそれぞれの自治体ごとに定められていますが、病気療養児に対する教育の考え方や対応も、その自治体によってさまざまであることです。さらに学校によって、病院によっても異なります。

2つ目に、小児がんの疾患の特徴があげられます。小児がんの場合には、入院当初から療養が長期になることが想定されます。そのため、入院した時点で、速やかな療養と教育のコーディネートが求められることになります。

3つ目に、本人にとっても保護者にとっても、がんという疾患の診断を受けたことは大きな衝撃であることです。治療できる医療機関が近くにない場合は、それまでの生活環境と異なる地域で治療や生活を送ることになります。そのため、本人だけでなく家族全体の生活は大きく影響を受けます。

就学について適切な支援を行うには、こうした揺れ動く多様な状況の中で、疾患の状態、治療の状況、通常の生活環境とは違う地域で治療をするという不安や不慣れな状況に子どもや家族がおかれていることも考慮して、その子どもの発達段階に合わせた速やかな対応が求められます。そのため多くの場合、就学の支援は、ケースバイケースで対応することになります。

がん専門相談員が就学の支援のために基本として押さえておくこと

ケースバイケースの対応が求められるからこそ、支援する側は、基本的なことを押さえておくことが大切です。基本的なことを押さえておくことで、その子どもに必要な就学の支援に応用することができます。その基本的な要素には、少なくとも3つのことがあると思われます。1つ目は、病気の子どもにとっての学校の意義や意味を理解すること、そして2つ目は、基本的な教育の制度や体制(病弱教育とその対応を誰がどこでどのように対応してくれるのかなど)を理解し、活用できるようになること、そして3つ目に、教育側の就学の相談窓口やコーディネーターとうまく連携することです。

就学の支援は、地域のさまざまな関係者とともに進めることが大切です

小児がんの就学の支援は、相談員だけ、あるいは、病院の関係者だけで対応できることではありません。また小児がん拠点病院だけ整備すれば、対応できることでもありません。

小児がん拠点病院の整備に関する指針は、都道府県知事に対して出されています。つまり、患者が全人的な質の高い小児がん医療および支援を受けることができる体制をつくるために、小児がん拠点病院を整備することが各都道府県に求められているのです。今回の拠点病院の指定は、地域ブロックごとの体制づくりを考慮して行われました。したがって都道府県単位だけでなく都道府県を越えた連携やそのための体制をつくっていくことも必要になります。

小児がんの就学のための支援の拠点となる小児がん拠点病院の相談支援センターとして、地域内のさまざまな関係者とともにあるべき方向を見極めながら、地域の就学の支援を充実させていくためのきっかけとして、この「手引き」がお役に立てば幸いです。

平成26年7月
独立行政法人 国立がん研究センターがん対策情報センター

更新・確認日:2015年12月24日 [ 履歴 ]
履歴
2015年12月24日 掲載しました。
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