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多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)

更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
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2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の診断」を掲載しました。

1.多発性骨髄腫とは

血液中には酸素を運搬する赤血球、出血を止める働きがある血小板、免疫をつかさどる白血球リンパ球などの血液細胞があります。これらはそれぞれ体を守るために大切な役割をもっており、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)と呼ばれる細胞から、それぞれの形態・機能をもつ血液細胞に成熟していきます。この過程を分化といいます(図1)。
図1 造血幹細胞から血液細胞への分化
図1 造血幹細胞から血液細胞への分化
多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)は、これら血液細胞の1つである「形質細胞(けいしつさいぼう)」のがんです。形質細胞は、骨髄と呼ばれる「血液の工場」でつくられる血液細胞のうち、白血球の一種であるB細胞から分かれてできる細胞です。この細胞は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守ってくれる「抗体」をつくる働きをもっています。この形質細胞ががん化して骨髄腫細胞になり、多発性骨髄腫を発症します。骨髄腫細胞は骨髄の中で増加し、異物を攻撃する能力がなく、役に立たない抗体(これをMタンパクと呼びます)をつくり続けます。これらの骨髄腫細胞やMタンパクが、さまざまな症状を引き起こします。

●多発性骨髄腫と関連する疾患について

形質細胞腫瘍の中で、最もよくみられる疾患が多発性骨髄腫です。その他にも、形質細胞腫瘍にはさまざまな病型があります。

詳しくは、「多発性骨髄腫 検査・診断-2.病型分類」をご覧ください。

2.症状

多発性骨髄腫は、「骨髄腫細胞」が主に骨髄でふえ続け、体にいろいろな症状があらわれる病気です。

多発性骨髄腫では、骨髄の中で増殖した骨髄腫細胞によって、正常な血液細胞をつくり出す過程(造血)が妨げられるために、貧血による息切れ・だるさや、白血球減少に伴う感染症血小板減少による出血傾向などが生じます。また、骨髄腫細胞が正常な形質細胞の居場所を占拠してしまうために、免疫機能の低下(正常な抗体産生の減少)を来します。さらに骨髄腫細胞が無制限に産生するMタンパク(異常免疫グロブリン)による症状として、腎障害や血液循環の障害(過粘稠度症候群:かねんちょうどしょうこうぐん)が起こります。免疫機能が低下すれば肺炎や尿路感染症などの感染症が起こりやすくなります。また、骨髄腫細胞によって刺激された破骨細胞(はこつさいぼう:骨を溶かす細胞)が骨の組織を破壊してしまい、骨痛や病的な骨折、脊髄(せきずい)圧迫による麻痺(まひ)などに加えて、血液中にカルシウムが溶け出すことにより高カルシウム血症が起こることがあります。さらに、各臓器の機能も低下するなど、さまざまな症状を引き起こします。図2は主な症状をまとめたものです。

しかし、多発性骨髄腫は無症状の場合もあり、血液検査、尿検査で異常を指摘されてはじめて発見されることも少なくありません。

一般的には慢性の経過をたどりますが、まれに急激に進行する場合もあります。また、症状についても個人差が大きく、個々の患者さんの病状に合った適切な治療を選択することがとても重要になります。
図2 多発性骨髄腫の症状
図2 多発性骨髄腫の症状
*1 過粘稠度症候群:血液中のMタンパクが大量に増加することにより、血液の粘性が高くなり、血液の循環が悪化する状態。
*2 アミロイドーシス:Mタンパクの一部がさまざまな組織に沈着して、臓器機能を低下させる状態。
*3 圧迫骨折:脊椎(せきつい)の強度が弱まり加重によって押しつぶされること。多発性骨髄腫では骨髄腫細胞の影響で骨が弱くなり、骨折しやすくなる(病的骨折)。
*4 脊髄圧迫症状:脊椎が変形して神経が圧迫されるために生じる疼痛(とうつう)・手足のしびれ・麻痺、排尿・排便の障害などの症状を指す。

3.原因

骨髄腫細胞にはさまざまな遺伝子や染色体の異常が生じていることが知られていますが、その原因ははっきりしていません。

40歳未満での発症は非常にまれで、年齢が進むにつれて発症数が増加し、性別では男性にやや多い傾向があります。わが国では1年間に人口10万人あたり5人発症するといわれています。最近では、健診や人間ドックの血液検査で異常が発見され、精密検査で多発性骨髄腫と診断されることが増えています。
【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
  2. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版);日本血液学会
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更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
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2017年04月12日 「3.がんと言われたとき」を更新しました。
2015年05月26日 タブ化に伴い「診療の流れ」を掲載しました。

1.がんの診療の流れ

この図は、がんの「受診」から「経過観察」への流れです。大まかでも、流れがみえると心にゆとりが生まれます。ゆとりは、医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう。あなたらしく過ごすためにお役立てください。

がんの疑い

  「体調がおかしいな」と思ったまま、放っておかないでください。なるべく受診しましょう。
   

受診

  受診のきっかけや、気になっていること、症状など、何でも担当医に伝えてください。メモをしておくと整理できます。いくつかの検査の予定や次の診察日が決まります。
   

検査・診断

  検査が続いたり、結果が出るまで時間がかかることもあります。担当医から検査結果や診断について説明があります。検査や診断についてよく理解しておくことは、治療法を選択する際に大切です。理解できないことは、繰り返し質問しましょう。
   

治療法の
選択

  がんや体の状態に合わせて、担当医は治療方針を説明します。ひとりで悩まずに、担当医と家族、周りの方と話し合ってください。あなたの希望に合った方法を見つけましょう。
   

治療

  治療が始まります。治療中、困ったことやつらいこと、小さなことでも構いませんので、気が付いたことは担当医や看護師、薬剤師に話してください。よい解決方法が見つかるかもしれません。
   

経過観察

  治療後の体調の変化やがんの再発がないかなどを確認するために、しばらくの間、通院します。検査を行うこともあります。

2.受診と相談の勧め

がんという病気は、患者さんごとに症状のあらわれ方が異なります。また、症状がなく検診でがんの疑いがあると言われることもあります。何か気にかかる症状があるときや、詳しい検査が必要と言われたときには、医療機関を受診してください。疑問や不安を抱きながらも問題ないとご自身で判断したり、何か見つかることを怖がって、受診を控えたりすることのないようにしましょう。受診して医師の診察を受け、症状の原因を詳しく調べることで、問題がないことを確認できたり、早期診断に結び付いたりすることがあります。

がん診療連携拠点病院がん相談支援センターでは、がんについて知りたい、話を聞きたいという方の相談をお受けしていますので、お気軽に訪ねてみてください。その病院にかかっていなくても、どなたでも無料で相談できます。対面だけでなく、電話などでも相談することができますので、わからないことや困ったことがあったらお気軽にご相談ください。

詳しくは、「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」のページをご覧ください。

お近くのがん相談支援センターは「がん相談支援センターを探す」から検索することができます。

3.がんと言われたとき

がんという診断は誰にとってもよい知らせではありません。ひどくショックを受けて、「何かの間違いではないか」「何で自分が」などと考えるのは自然な感情です。

病気がどのくらい進んでいるのか、果たして治るのか、治療費はどれくらいかかるのか、家族に負担や心配をかけたくない…、人それぞれ悩みは尽きません。気持ちが落ち込んでしまうのも当然です。しかし、あまり思い詰めてしまっては、心にも体にもよくありません。

この一大事を乗りきるためには、がんと向き合い、現実的かつ具体的に考えて行動していく必要があります。そこで、まずは次の2つを心がけてみませんか。

1)情報を集めましょう

まず、自分の病気についてよく知ることです。病気によってはまだわかっていないこともありますが、担当医は最大の情報源です。担当医と話すときには、あなたが信頼する人にも同席してもらうといいでしょう。わからないことは遠慮なく質問してください。
病気のことだけでなく、療養生活のこと、経済的なこと、薬のこと、食事のことのような身の回りに関しては、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士などが専門的な経験や視点であなたの支えになってくれます。

また、あなたが集めた情報が正しいかどうかを、あなたの担当医に確認することも大切です。

「知識は力なり」。正しい知識は、あなたの考えをまとめるときに役に立ちます。

2)病気に対する心構えを決めましょう

がんに対する心構えは、人それぞれです。積極的に治療に向き合う人、治るという固い信念を持って臨む人、なるようにしかならないと受け止める人などいろいろです。どれがよいということはなく、その人なりの心構えでよいのです。そのためには、あなたが自分の病気のことをよく知っていることが大切です。病状や治療方針、今後の見通しなどについて担当医からよく説明を受け、いつでも率直に話し合い、その都度十分に納得した上で、自分なりの病気に対する向き合い方を探していきましょう。

自分自身の気持ちを伝えることは、自分らしく病気と向き合い、過ごしていくための第一歩です。あなたが自分の病状について理解した上で治療に取り組みたいと考えていることを、担当医や家族に伝えるようにしましょう。率直に話し合うことが、担当医や家族との信頼関係を強いものにし、しっかりと支え合うことにつながります。
更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
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2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の診断」を掲載しました。

1.検査

多発性骨髄腫の診断と治療方針を決めるために、尿検査、血液検査、骨髄検査、骨のX線検査やCT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査などが行われます(表1)。検査の目的は骨髄腫細胞を確認するだけでなく、全身の臓器について合併症の有無などを確認することにあります。
表1 診断に必要な検査項目
尿 ベンスジョーンズタンパク(BJP)、尿タンパク量
血液 赤血球数、ヘモグロビン、白血球数、血小板数、
LDH、BUN、クレアチニン、カルシウム、
アルブミン、タンパク分画
免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM、IgD)、
免疫電気泳動、免疫固定法、
β2ミクログロブリン、CRP
骨髄 骨髄腫細胞(形態、表面マーカー、染色体)
画像 全身骨X線、CT、MRI、PET

1)尿検査

多発性骨髄腫の患者さんの尿には、骨髄腫細胞がつくり出すMタンパクの1つであるベンスジョーンズタンパク(BJP)が排出されるため、このタンパクの有無を調べます。併せて腎機能の状態などを調べます。24時間中の尿を集めて尿中のMタンパクの量などを調べる全尿検査も行われます。

2)血液検査

赤血球、ヘモグロビン、白血球血小板などの数値を測定し、造血機能の障害の程度を調べます。また骨髄腫の進行度や腎臓の障害を調べるために、免疫グロブリンの量、Mタンパクの量、LDH(乳酸脱水素酵素)、BUN(血液尿素窒素)、クレアチニン、カルシウム、アルブミン、β2ミクログロブリンなども測定します。

3)骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)

診断を確定するには、骨髄液を採取(骨髄穿刺[こつずいせんし])もしくは骨髄組織を採取(骨髄生検[こつずいせいけん])し、顕微鏡で骨髄腫細胞の存在や形を調べます。骨髄穿刺は皮膚を消毒し、局所麻酔のあとに腸骨(骨盤の後ろの骨)に細い針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引して採取します(図3)。この骨髄液中に含まれる細胞の形を顕微鏡で調べます。骨髄液を吸引する際に痛みがあり、この痛みは局所麻酔では抑えられませんが、通常は一時的な痛みにとどまります。骨髄生検では、腸骨にやや太い針を刺し、骨髄組織を少量採取します。細胞の表面に出ているマーカー(腫瘍の存在や特徴を表す印)の検査では腫瘍細胞の種類と成熟度を、染色体検査では悪性度についても判定します。また、骨髄以外の組織に腫れ(はれ)がみられる場合には、その組織の細胞を採取して検査する必要があります。
図3 骨髄穿刺の様子
図3 骨髄穿刺の様子

4)X線、CT、MRI、PET検査

多発性骨髄腫と診断されると、全身への病気の広がりや骨の状態を確認するための検査を行います。最も一般的ものはX線検査で、全身の骨病変や病的骨折の有無などを調べます。最近はCT検査やMRI検査によって、より小さな骨の病変や骨髄腫細胞の広がりについても診断できるようになりました。CTは、X線を使って体の内部を描き出します(図4)。MRIは磁気を使用します。造影剤を使用する場合はアレルギーが起こることがあります。造影剤アレルギーの経験のある人は医師に申し出てください。

さらに骨髄外に存在する病変を評価するためPET検査が行われることもあります。PET検査は、ブドウ糖ががんに集まる性質を利用して、ブドウ糖に似たFDGという物質と放射性同位元素(18F)を結合した薬剤を用いて、がん病変の有無や位置を調べます。
図4 CT検査の様子
図4 CT検査の様子

2.病型分類

多発性骨髄腫は、「骨髄腫細胞」が主に骨髄でふえ続け、体にいろいろな症状があらわれる病気です。骨髄腫細胞による病気は、多発性骨髄腫のほかにもさまざまな病型があります。それぞれの疾患を区別し病気のタイプ(病型)を知ることは、治療を進める上でとても重要です。

病型の分類には、国際骨髄腫作業部会(IMWG:International Myeloma Working Group)による診断基準が広く用いられています。骨髄の中の異常な形質細胞(骨髄腫細胞)の有無、血液・尿中のMタンパクの有無、臓器障害(高カルシウム血症、貧血、腎不全、骨病変など)の有無などによって分類され、治療開始時期などを見極めます。代表的な病型には、次のようなものがあります。

1)意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症
   (MGUS:Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance)

「エムガス」と呼ばれるタイプの形質細胞腫です。Mタンパクや骨髄内の骨髄腫細胞が少ない型で、臓器の障害がなく、治療の必要はありません。骨髄腫に進展する可能性があり、定期的な検査を行います。

2)くすぶり型多発性骨髄腫(無症候性骨髄腫)

骨髄腫細胞やMタンパクが一定量以上に増加していますが、症状はほとんどなく臓器障害も伴いません。積極的な治療は行わず、定期的な検査を行います。

3)多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)

血液や尿中のMタンパクと骨髄腫細胞が増加し、骨髄腫による臓器障害がある場合は、多発性骨髄腫と診断されます。最も多いタイプであり、薬物療法造血幹細胞移植(自家移植)などの治療を行います。一般に、多発性骨髄腫と診断された場合の治療は、自家移植ができる65歳以下の患者さんと、66歳以上あるいは重要な臓器の障害などのために移植を行わない患者さんでは、異なった治療方針が選択されます。

4)孤立性形質細胞腫

骨や骨以外の組織に骨髄腫細胞のかたまり(腫瘍)ができますが、臓器障害はありません。腫瘍がある場所に放射線治療が行われます。

5)形質細胞白血病

末梢(まっしょう)の血液中で骨髄腫細胞が増殖するものです。リンパ節や臓器腫大など骨髄以外の病変が高頻度にみられ、臓器障害などが進行した状態であることが多く認められます。治療は多発性骨髄腫の治療方針に準じて行います。
【関連する疾患について】

(1)全身性アミロイドーシス

アミロイドーシスとは、Mタンパクが分解されてアミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が生じ、これがさまざまな組織や器官に蓄積して臓器障害を起こす病気です。全身性アミロイドーシスでは、元々異常な形質細胞の増加がみられ、さらに心臓、肺、皮膚、舌、甲状腺(こうじょうせん)、腸管、肝臓、腎臓、血管など、全身の臓器にアミロイドが蓄積します。そこで、アミロイドタンパクの産生を断つため、腫瘍性の形質細胞を減少させる治療が必要となります。65歳以下で移植条件を満たす場合には、末梢血造血幹細胞移植併用メルファラン大量療法を行います。移植条件に満たない場合や66歳以上の場合には、MD療法(メルファラン+デキサメタゾン)や、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミドを用いた治療を行います。

(2)POEMS症候群(Crow-Fukase [クロウ・フカセ] 症候群、高月病)

POEMS症候群は、主な症状である多発神経炎(Polyneuropathy)による末梢神経障害、臓器腫大(Organomegaly)、内分泌異常(Endocrinopathy)、Mタンパク血症(Monoclonal Protein)、皮膚症状(Skin Changes)の頭文字を集めた症候群で、ほかに浮腫(ふしゅ)、胸腹水(きょうふくすい)などがみられる全身性の疾患です。わが国に比較的多く、経過は慢性で生命予後は10年以上とよいのですが、多彩な症状があらわれ、特に末梢神経障害が患者さんの日常生活動作(ADL)を著しく低下させます。POEMS症候群は世界的にもまれな疾患であり、治療のガイドラインが存在しませんが、無治療であれば病状は進行するため、状況に応じて、放射線照射、細胞障害性抗がん剤(抗がん剤:アルキル化剤)の投与、造血幹細胞移植を行います。今後、骨髄腫に準じた薬物療法(ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド)による治療例の集積が期待されています。
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3.病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いて「Stage(ステージ)」ともいいます。説明などでは、ステージという言葉が使われることが多いかもしれません。病期の段階はローマ数字で表されます。

多発性骨髄腫の病期は、腫瘍の量、その後の経過を左右する要因(予後因子)により、I~IIIの3段階に分けられます。特に血清アルブミンと血清β2ミクログロブリンは重要な予後因子で、血清アルブミンの値が低い場合や血清β2ミクログロブリンの値が高い場合には、その後の経過(予後)がよくないと考えられています。これに基づいた国際病期分類(ISS:International Staging System)が、国際骨髄腫作業部会から提唱されています(表2)。この分類では多発性骨髄腫はI~III期に分けられ、正常に近い場合は病期I、進行するに従ってII期、III期と進みます。
表2 多発性骨髄腫の国際病期分類(ISS:International Staging System)
病期 基準
血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L
血清アルブミン≧3.5g/dL
ⅠでもⅢでもないもの
血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L
注:病期Ⅱには以下の2つが含まれる
(1)血清β2ミクログロブリン<3.5mg/Lで血清アルブミン<3.5g/dLのもの
(2)血清アルブミン値に関わらず、血清β2ミクログロブリン≧3.5mg/Lかつ<5.5mg/Lのもの
注:最近では、上記のISS病期に骨髄腫の活動度を表す血清LDH値と、骨髄腫細胞の性質を反映する染色体異常を含めた新たな改定国際病期分類(R-ISS: Revised ISS)も用いられています。
日本血液学会編「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」(金原出版)より作成

4.予後因子

多発性骨髄腫の経過には、年齢や合併症の有無、病型、病期などが影響します。その他にも予後因子と呼ばれている指標があり、治療に対する反応性やその後の経過(予後)を推測する方法として用いられています。

国際病期分類によると、血液検査でアルブミンの値が低い場合やβ2ミクログロブリンの値が高い場合には、その後の経過がよくないと考えられています。また、染色体の異常がある場合、特に13番染色体や17番染色体の異常、4番と14番染色体の転座(染色体の一部が組み替えられること)などがある場合は、その後の経過がよくないということが知られています。

実際の治療方針を決定する上では、このような予後因子についても考慮することが重要です。経過がよくないと推測される場合にはより積極的な治療法を選ぶなど、患者さんごとに最適な治療法を決定することが大切になります。

【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
  2. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版);日本血液学会
  3. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版(第1.0版);金原出版
  4. 日本血液学会 日本リンパ網内系学会編:造血器腫瘍取扱い規約 2010年3月第1版;金原出版
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更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
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2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の診断」を掲載しました。

1.治療方針

多発性骨髄腫に対する治療は、骨髄腫細胞に関連する臓器障害(腎機能障害、骨折など)や疼痛(とうつう)などの症状が出現した場合に検討されます。このような臓器障害や自覚症状を有する骨髄腫を「多発性(症候性)骨髄腫」と呼びます。骨髄腫と診断された場合であっても、症状があらわれない「くすぶり型(無症候性)骨髄腫」や「意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)」と呼ばれる病態の場合は、直ちに治療を行う必要はありません。定期的に検査を行い、経過を観察し、「多発性(症候性)骨髄腫」に移行した時点で治療の対象となります。

骨髄腫は血液細胞に由来する悪性腫瘍であり、治療は薬物療法が中心となります。現在では、従来用いられているメルファランなどの細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)とステロイド剤に加えて、さまざまな薬剤(ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、ポマリドミドなど)が保険承認されており、これらを適切に組み合わせた薬物療法を行います。

骨髄腫の病態によっては、治療開始前から重大な合併症(骨折による脊髄[せきずい]圧迫や、腎不全など)を併発していることがあり、骨髄腫そのものに対する治療よりも合併症への治療を先行させることもあります。

図6は、症状のある多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)に対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図6 症状のある多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)に対する治療方法
図6 症状のある多発性骨髄腫(症候性骨髄腫)に対する治療方法
日本骨髄腫学会編「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」(文光堂)より作成

2.初期治療

多発性骨髄腫とはじめて診断された場合には、骨髄腫細胞を減少させるために薬物療法を行い、条件が合う場合には大量抗がん剤投与を併用する造血幹細胞移植(自家移植)を行います。

1)移植ができる患者さん(65歳以下)の場合

一般に、重要な臓器の機能が保たれている65歳以下の患者さんに対しては自家移植を考慮します。自家移植を行う前に、骨髄腫細胞を減らす目的で薬物治療が行われます。これを導入療法と呼びます。導入療法を施行後、各種検査によって、治療効果を判定し、自家移植が行えるかどうかを検討します。

治療効果の判定には、骨髄腫細胞が産生する「Mタンパク」を指標とします。治療開始前と比較して、血液中あるいは尿中のMタンパクが一定程度以上減少した場合には、「奏効した」と判定されます。導入療法が奏効した場合は、造血幹細胞採取という処置を行い、造血幹細胞を十分量採取した上で、自家移植を行います。自家移植ではメルファランという抗がん剤を大量に使用(大量メルファラン療法)することで、高い抗腫瘍効果が期待されます。
初期治療によっても奏効状態に至らなかった場合には、他の導入療法に切り替えます。
【移植ができる患者さん(65歳以下)の場合の治療について、さらに詳しく】

(1)導入療法

導入療法にはさまざまな種類があり、どの導入療法を選択するかは、患者さんの全身状態や合併症の有無、予後不良な染色体異常の有無などを考慮して決定します。推奨される導入療法としては、高い奏効割合が期待できるボルテゾミブとデキサメタゾン(ステロイド剤)併用の導入療法(BD療法)を3~4コース施行したあとに、シクロホスファミド大量療法にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という白血球をふやす薬を併用、またはG-CSFのみを使用して、患者さんの末梢(まっしょう)血から造血幹細胞を採取します。より高い効果を期待できる導入療法として、前述のBD療法にシクロホスファミドやドキソルビシンを加えた治療もありますが、同時に毒性も増強することに留意する必要があります。レナリドミドとデキサメタゾンを用いた併用療法も選択可能ですが、4コースを超えて使用すると造血幹細胞の採取が難しくなる場合があります。

(2)自家造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、大量の抗がん剤を投与して(大量化学療法)可能な限り骨髄腫細胞を殺し、そのあとで患者さん自身の造血幹細胞(血液細胞のもととなる細胞)を点滴することにより、正常な骨髄細胞の機能を取り戻すという方法で、患者さんの生存期間を延ばす効果が期待できます。造血幹細胞移植には、自分の組織を移植する自家(じか)移植と、他の人の組織を移植する同種移植がありますが、骨髄腫に多く行われる移植は安全性の高い自家造血幹細胞移植(特に自家末梢血幹細胞移植)です。

寛解導入療法後、早期に自家造血幹細胞移植を行うことが勧められています。移植の前処置として、2日間にわたり大量メルファランの投与を行い、その翌々日に凍結しておいた自家造血幹細胞を急速解凍して静脈から体内に注入します。

(3)維持療法

初期治療での効果を維持するための治療として、サリドマイドやレナリドミドなどを用いた「維持療法」の効果と安全性が検討されています。骨髄移植をした場合には、サリドマイドによる維持療法の有用性が報告されており、長期投与による末梢神経障害を考慮し投与期間を1年未満とすることと、高齢者には慎重に投与することが推奨されています。また、レナリドミドによる維持療法の有効性も報告されていますが、二次性発がんの可能性が示されており、実際の治療に際してはメリットとデメリットに関する説明を十分に受けることが望まれます。
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2)移植を行わない患者さん(66歳以上)の場合

一般に、66歳以上の患者さん、および65歳以下で重要な臓器の障害などのために自家移植を行わない患者さんには、ボルテゾミブやレナリドミドなどの薬剤を中心とした多剤併用療法が行われます。患者さんの年齢や末梢神経障害、血栓症などのリスクや肺の合併症などにより、これらの薬剤が使用できない場合には、従来のMP療法(メルファラン+プレドニゾロン)などの選択肢もあります。

3.再発・難治性骨髄腫に対する治療

再発した場合や進行・治療抵抗性の骨髄腫の治療においては、ボルテゾミブやレナリドミド、サリドマイドに加えてカルフィルゾミブやポマリドミドなどの薬剤が保険承認され、一定程度の治療効果が報告されています。一般的に、これらの薬はデキサメタゾンと併用して用いられます。
【再発・難治性骨髄腫に対する治療について、さらに詳しく】

1)初回治療終了時から6カ月以上経過したあとに再発・再燃した場合

この場合には、初回導入療法が奏効する場合もあり、初回導入療法を再度試みるか、初回療法で用いられていない薬剤(ボルテゾミブ、レナリドミド、カルフィルゾミブ、サリドマイドなど)を含む治療に変更します。1回目の自家造血幹細胞移植後2年以上経過してから再発した場合には、2回目の自家移植も選択肢となります。移植が適応とならない患者さんが再発した場合には、再発前の治療による奏効期間(効果持続期間)が1年以上であれば、同じ治療法、または同じ治療法に他の薬剤を1種類追加した治療法の効果が期待できます。

2)初回治療終了後6カ月未満の再発・再燃や治療中に進行した場合

このような難治性骨髄腫の場合、また、予後不良な染色体異常を伴う場合には、ボルテゾミブやサリドマイド、レナリドミド、カルフィルゾミブなどを含む救援化学療法(救援療法)が優先されます。前に行った治療内容や患者さんのもつ合併症、臓器機能障害の有無などを考慮して、薬剤が選択されます。救援化学療法が奏効してHLA(ヒト白血球抗原)が適合するドナーがいる場合には、同種造血幹細胞移植という選択肢もありますが、移植後早期の死亡率が高く、再発・再燃も高頻度であることから、臨床試験の範囲で行われることが望ましいとされています。
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4.自分に合った治療法を考える

治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではありません。自分の生活や人生において何を大切にするのか、自分で考えることが大切です。

まずは、病状を詳しく把握しましょう。わからないことは、担当医に何でも質問してみましょう。診断を聞くときには、病型分類と病期を確認しましょう。治療法は、病型や病態によって異なります。医療者とうまくコミュニケーションをとりながら、自分に合った治療法であることを確認してください。

担当医と話すときの助けとして「わたしの療養手帳 自分に合った治療法は?患者必携サイトへのリンクもご参照ください。「患者必携 わたしの療養手帳」はさまざまな場合で必要なことを書きとめることができる手帳になっています。印刷もできますので、自分で記入してみて、わからないことや聞いてみたいことを整理してみましょう。

診断や治療法を十分に納得した上で、治療を始めましょう。

担当医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くこともできます。ここでは、(1)診断の確認、(2)治療方針の確認、(3)その他の治療方法の確認とその根拠を聞くことができます。聞いてみたいと思ったら、「セカンドオピニオンを聞きたいので、紹介状やデータをお願いします」と担当医に伝えましょう。担当医との関係が悪くならないかと心配になるかもしれませんが、多くの医師はセカンドオピニオンを聞くことは一般的なことと理解しています。納得した治療法を選ぶために、気兼ねなく相談してみましょう。

セカンドオピニオンについては「セカンドオピニオンを活用する患者必携サイトへのリンクもご参照ください。

担当医以外でも、看護師など他の医療スタッフやがん相談支援センターのスタッフに相談することができます。あなたの抱えている問題点を整理し、一緒に考えてくれるでしょう。

がん相談支援センターについては「がんの相談窓口『がん相談支援センター』」もご参照ください。

【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
  2. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月);文光堂
  3. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版);日本血液学会
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更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版)」より内容を更新しました。
2015年05月26日 タブ形式に変更しました。「多発性骨髄腫の診療指針 第3版(2012年10月)」「造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版」より内容を更新しました。
2006年11月14日 「多発性骨髄腫の治療」を掲載しました。

1.薬物療法

骨髄腫細胞を破壊し減少させ、病気の進行を遅らせるために、薬物療法を行います。患者さんの体の状態、効果と副作用のバランスを考慮し、分子標的薬(参照:分子標的治療)や細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)、ステロイドなどを組み合わせて治療を行います。治療に使用される主な薬剤は以下の通りです。

1)ボルテゾミブ(ベルケイド)

ボルテゾミブは、不要となったタンパク質を分解する酵素であるプロテアソームの働きを阻害することにより、骨髄腫細胞の増殖を抑制する分子標的薬です。保険診療上、再発・難治性多発性骨髄腫だけでなく、はじめて治療を受ける多発性骨髄腫の患者さんも使用できます。皮下注射または静脈内注射にて投与されます。
【ボルテゾミブについて、さらに詳しく】
重要な副作用として、肺障害(間質性肺炎、肺水腫など)があります。治療前には胸部のX線検査などで異常の有無を確認した上で、投与が可能かどうかを判断します。投与後に息切れ、息苦しさ、咳および発熱などの症状がみられた場合には、担当医に相談することが必要です。

注意を要する副作用として、末梢(まっしょう)神経障害と骨髄抑制白血球減少血小板減少貧血)があります。末梢神経障害は、特に足の疼痛(とうつう)を伴う知覚異常としびれがあり、疼痛を伴う場合にはボルテゾミブの減量や休止が勧められています。骨髄抑制では、定期的な血液検査を行い、必要に応じてG-CSF製剤(白血球をふやす薬)などの投与や輸血などを行います。その他に、発熱、発疹、胃腸障害(便秘、下痢、悪心)などが起こることがあります。また、副作用としてボルテゾミブの投与中に帯状疱疹(たいじょうほうしん)※1を発症することがあるため、予防のために抗ウイルス薬(アシクロビル)を内服します。


※1帯状疱疹:水痘(水ぼうそう)を引き起こすウイルスが体内に潜伏し、免疫力が低下したときに再び感染症を引き起こす疾患で、神経痛や水ぶくれを伴う。症状があらわれるのは体の片側だけであり、発症後早期の治療介入が重要。
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2)レナリドミド(レブラミド)

レナリドミドは、体内の免疫の働きを調整する免疫調節薬という種類の薬剤で、骨髄腫細胞を抑制します。通常、成人はデキサメタゾンと併用し、1日1回、21日間連続で内服したあと、7日間休薬します。この28日間を1サイクルとして繰り返します。なお、患者さんの状態により適宜減量されます。
【レナリドミドについて、さらに詳しく】
この薬はサリドマイドの同類薬であり、催奇形性(さいきけいせい:胎児に奇形を生じること)があります。妊婦または妊娠している可能性のある女性は使用できず、男性患者では避妊を徹底することが必須です。また、この薬の使用にあたっては、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「RevMate(R) (レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)」と称する安全管理システムが定められており、患者さん、医師、薬剤師などのすべての関係者がこの手順を遵守することが必要です。

重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)および肺塞栓症があります。この副作用はデキサメタゾンやドキソルビシンと併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリンなど)を投与することがあります。その他の副作用として、骨髄抑制(好中球減少、血小板減少)、皮膚障害、疲労、めまいがあります。
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3)サリドマイド(サレド)

サリドマイドは、レナリドミドと同じく免疫調節薬であり、骨髄腫細胞の増殖を抑制します。1950年代に催眠鎮静薬として販売されましたが、妊娠中の女性が服用することにより胎児に重度の先天異常を引き起こしたため、世界各国で販売中止と回収が行われました。その後、サリドマイドが多発性骨髄腫に対する治療薬として有効であることが米国より報告され、日本では、2008年に多発性骨髄腫に対する治療薬として再承認されました。承認条件として、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「サリドマイド製剤安全管理手順(TERMS(R))」という安全管理システムの遵守が医療機関に義務付けられ、厳重な安全管理の下、使用する必要があります。妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用できず、男性患者では避妊を徹底することが必須です。
【サリドマイドについて、さらに詳しく】
よくみられる副作用に、末梢神経障害があります。手足の指先からしびれが広がり、進行すると筋力低下を来すこともあります。その一部は、薬を止めても長期に症状が持続する場合もあります。日常生活に支障が出る場合には、投与量を減らすか、それでも改善しない場合には投与の中止を検討します。また、眠気、便秘、口の渇きも頻度が高く、投与開始数日後から出現します。その他、好中球の減少、肝機能障害がみられることがあります。

重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)が起こることがあります。この症状は、デキサメタゾンやドキソルビシン、経口避妊薬と併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリンなど)を投与することがあります。
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4)ポマリドミド(ポマリスト)

この薬はサリドマイドと同じく免疫調節薬です。ボルテゾミブとレナリドミドの治療経験がある場合に使用できます。通常、成人はデキサメタゾンと併用し、1日1回、21日間連続で内服したあと、7日間休薬します。この28日間を1サイクルとして繰り返します。なお、患者さんの状態により適宜減量されます。また、この薬の使用にあたっては、胎児への薬剤の影響を防ぐために、「RevMate (R)(レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)」と称する安全管理システムが定められており、患者さん、医師、薬剤師などのすべての関係者がこの手順を遵守することが必要です。

主な副作用には、骨髄抑制や発疹などがあります。重篤な副作用として、深部静脈血栓症(肺や足の静脈が詰まること)および肺塞栓症があります。この副作用はデキサメタゾンやドキソルビシンと併用する場合に発症しやすいとされており、患者さんによっては予防的に血栓を防ぐ薬(アスピリン)を投与することがあります。

5)カルフィルゾミブ(カイプロリス)※2

不要となったタンパク質を分解する酵素であるプロテアソームの働きを阻害することにより、骨髄腫細胞の増殖を抑制する分子標的薬で、点滴により投与します。主な副作用には、骨髄抑制や高血圧、心不全、発疹などがあります。

※2 カルフィルゾミブ:この薬剤は、造血器腫瘍診療ガイドライン第3版(2013年;金原出版)には掲載されていません。承認されて間もない薬のため、副作用について特に慎重に検討がなされています。

6)その他の薬剤

上記のほかにもさまざまな薬剤があり、患者さんの状態にあわせて使用されます。診断時にさまざまな合併症や既往症があるために、ボルテゾミブやレナリドミド、サリドマイドなどの薬剤を使用できない場合には、従来の標準治療であったMP療法(メルファラン+プレドニゾロン)やデキサメタゾン大量療法などを行います。造血幹細胞移植(自家移植)を予定する患者さんであれば、末梢血幹細胞採取に影響の少ない抗がん剤が選択されます。その他、新しい治療薬の開発を目指した臨床試験が行われています。臨床試験にはいろいろな種類があり、参加できる条件も異なっていますので、検討できる臨床試験があるかどうかに関しては担当医と相談してください。

2.放射線治療

骨髄腫細胞は一般に放射線に感受性が高く、腫瘍縮小や疼痛(とうつう)緩和のために放射線治療が用いられます。

1)疼痛緩和を目的とする場合

限局的な骨病変による疼痛に対しては、多くの場合、少量の局所放射線照射(20Gy[グレイ]程度)で十分な効果が得られます。

2)腫瘤の消失・縮小を目的とする場合

腫瘤(しゅりゅう)の消失や縮小を目的とする場合、必要な放射線総量は疼痛緩和よりも多い35~40Gyが用いられます。骨髄腫による脊髄圧迫(知覚障害や運動麻痺[まひ]など)がある場合には、MRIなどによる診断と、放射線照射・ステロイドによる治療をできるだけ速やかに(48時間以内に)開始する必要があります。

3.合併症に対する治療

多発性骨髄腫に伴う症状や合併症に対して、次のような治療が行われることがあります。

1)腎障害

多発性骨髄腫では、Mタンパクや高カルシウム血症、骨髄腫細胞の浸潤(しんじゅん)などが原因となり、腎障害が起きることがあります。また脱水や検査時に用いられる造影剤の使用、痛みを抑えるための非ステロイド系消炎鎮痛剤の投与などでも、腎障害が悪化することがあります。このようなときは、点滴による水分補給をはじめとした治療が行われ、緊急の場合には血液透析が行われることもあります。

2)過粘稠度症候群(かねんちょうどしょうこうぐん)

血液中のMタンパクの増加による血液粘度の上昇により、出血症状(鼻出血、眼底出血、口腔[こうくう]内出血)、視力障害、意識障害、腎障害を来すことをいいます。緊急を要する場合には、患者さんの血漿(けっしょう:血液の液体成分)を、健康な人から採取した血漿と交換すること(血漿交換)が有効ですが、同時に骨髄腫の治療も行う必要があります。

3)感染症

多発性骨髄腫の患者さんは免疫力が低下しているため、帯状疱疹(たいじょうほうしん)※1に代表されるような、ウイルス、細菌、真菌などの感染症にかかりやすくなっています。そのため治療中だけでなく、日常生活でも感染には十分注意する必要があります。

※1帯状疱疹:水痘(水ぼうそう)を引き起こすウイルスが体内に潜伏し、免疫力が低下したときに再び感染症を引き起こす疾患で、神経痛や水ぶくれを伴う。症状があらわれるのは体の片側だけであり、発症後早期の治療介入が重要。

4)骨病変による症状

骨髄腫細胞による骨病変に対しては、放射線治療や、ビスホスホネート製剤(骨を溶かす細胞を抑制する作用がある)が有効です。鎮痛薬は上手に活用すれば効果的に痛みを抑えることができます。

ビスホスホネート製剤の使用中に歯科治療を受けたり、歯科治療を要する状態(虫歯、歯槽膿漏[しそうのうろう]など)があったりすると、まれに歯肉(しにく)や下顎骨(かがくこつ)の壊死(えし)が生じることがあります。したがって、この薬を使用する場合には事前に歯科のチェックを受け、治療開始後は口腔内のケアを行うとともに、歯科にかかるときは必ず担当医の許可を得て歯科治療を受けるようにしてください。

また、骨に病変がある部位は軽微な力でも骨折が起きやすくなるため、その部位に大きな力が加わらないよう気をつける必要があります。脊椎(せきつい)圧迫骨折により痛みがある場合には、痛みを起こりにくくし圧迫骨折の進行を防ぐために、コルセットを装着することがあります。また、骨折による疼痛を抑えるために、手術を行うことがあります。

5)高カルシウム血症

骨髄腫細胞により骨の組織が破壊されることで高カルシウム血症が起こり、吐き気や食欲不振、意識障害や口の渇きなどの症状があらわれることがあります。高カルシウム血症は腎障害を引き起こす原因となるため、患者さんの状態にあわせて生理食塩水の速やかな輸液および利尿剤の投薬に加えて、ビスホスホネート製剤の点滴が行われます。

4.支持療法

支持療法とは、がん細胞そのものを減らしたり、がんを小さくしたりする治療ではありませんが、がんあるいはそのがんによって起こる合併症、治療に伴う副作用を予防または軽減する治療で、血液のがんの治療を進めていくに当たって極めて重要です。

具体的には、治療に伴う白血球減少で生じる感染症を予防するために、感染しやすい場所(口の中、気道、肛門周囲など)の治療やケア、白血球減少の状況での感染症の予防や治療のための抗生物質・抗ウイルス薬・抗真菌(カビ)薬の投与、貧血に対する輸血、血小板減少に対する血小板の輸血、その他血液製剤の補充、吐き気止めの使用、骨痛や神経痛に対する薬物療法などです。長期にわたることの多い治療の間の精神的な支援を含めて、幅広い内容の支持療法が行われます。

【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
  2. 日本血液学会編:造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年WEB版(第1.2版);日本血液学会
  3. Rev Mate(R)(レブラミド(R)・ポマリスト(R)適性管理手順)ver. 4.0(2015年3月改訂);セルジーン
  4. サリドマイド製剤安全管理手順 第4‐2版(2014年6月改訂);藤本製薬
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更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2017年04月12日 「1.経過観察と検査」を更新しました。
2015年05月26日 タブ化に伴い「生活と療養」を掲載しました。

1.経過観察と検査

治療を行ったあとは、副作用による体力の低下に気をつける必要があります。細胞障害性抗がん剤(以下、抗がん剤)の副作用は、吐き気・嘔吐(おうと)、食欲不振、口内炎、下痢、便秘、だるさ、末梢(まっしょう)神経障害(手足のしびれ)、脱毛など自覚症状のあるものだけではありません。白血球減少貧血血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、心機能障害、肺障害など、検査をしなければわからない副作用もありますが、適切な支持療法によって軽減することが可能です。治療終了後も定期的に通院して、担当医とよく相談することが大切です。

治療後の通院の間隔は、病気の種類、病型や病期、治療の内容とその効果、継続して行う治療の有無、合併症や副作用の内容、治療後の回復の程度など、患者さんの状態によって異なります。担当医によく確認しておきましょう。

検査としては、診察、血液検査、尿検査のほか、X線検査CT検査MRI検査などの画像検査があげられます。症状や検査の結果によっては、骨髄検査PET検査が行われます。

2.日常生活を送る上で

治療を終えたあとでも、特に注意したいのが感染症です。手洗い、うがいを心がけるとともに、寒い日は1枚余分に上着を羽織るなどして、体を冷やさない工夫も必要です。急に発熱したり、胸が痛んだり、しつこい咳や息切れなどを感じたら、すぐに担当医に連絡しましょう。
【日和見(ひよりみ)感染症について】
日和見感染症とは、健康な人には害のないような弱い細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどにより感染症を発症することです。血液がんにより、あるいは治療中に起こりやすい感染症で、重症化する場合もあります。

人はさまざまなウイルスや細菌、真菌などから感染を受けながら、体の中の状態を維持しています。このような微生物は、大腸菌のようによい働きをしているものもありますし、静かに身を潜めているものもあります。しかし、免疫機能が非常に弱くなると、体内にいるこのような弱い微生物の活動さえも抑えられなくなり、感染症を発症することがあります。また、「麻疹(ましん:はしか)」や「水痘(すいとう:水ぼうそう)」など、幼少のころに感染して免疫を獲得していた場合でも、免疫機能が弱まることで再び感染する場合もあります。「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」にも注意が必要です。
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3.社会復帰

これまでの仕事や生活リズムにもよりますが、一般的には体力がついて副作用による症状も改善されれば、通常に近い生活リズムに戻すことが可能です。ただし、感染を防ぐために、マスクを着用し、人の多い場所への外出は控えるようにしましょう。

外出の回数を増やす、軽い運動をしてみるなど、少しずつ行動範囲を広げていきます。職場に復帰するときは、会社の人たちに大まかな治療の予定や生活上の注意点などを伝えておき、無理のない業務や就労時間でスタートしましょう。

社会復帰については「社会とのつながりを保つ患者必携サイトへのリンクもご参照ください。

4.家族や親しい人の理解を得る

治療前

病気の状況や治療内容について担当医の話を聞くときは、家族など周りの人に付き添ってもらうようにしましょう。特に治療に関しては、副作用も含め、治療の予定や見通しについてもよく確認しておくことが大切です。納得して治療が受けられるように、担当医や看護師に尋ねたいことはあらかじめメモに書いて聞くようにしましょう。疑問や納得できないことがないように、担当医や看護師に確認しましょう。

血液のがんは治療期間が長くなることが多く、また抗がん剤や支持療法に必要な輸血・血液製剤の費用などで、医療費が高額になることがあります。病気や治療の説明、今後の予定、経済的なことなど、わからないことはがん相談支援センターに相談することができます。

治療後

治療のあとも、多くの場合感染予防のためにマスクをしたり、こまめに手洗い・うがいをしたりするなど、日常生活の過ごし方に注意する必要があります。とはいえ、余りに何もしないで過ごしていると、筋力や体力を低下させてしまうことがあります。できる範囲で家事や趣味、今までの生活を維持するように心がけ、家族や周りの人に支援をお願いしてみるとよいでしょう。

感染予防には家族や周りの人の理解や協力も必要です。手洗い・うがいをこまめに行う、部屋を清潔にする、予防接種を受ける、などについて話し合っておきましょう。
更新日:2017年04月12日 [ 更新履歴 ]
更新履歴
2017年04月12日 「多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月)」より「1.再発」を更新しました。
2015年05月26日 タブ化に伴い「転移・再発」を掲載しました。

1.再発

再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。多発性骨髄腫は、治療によって状態がよくなっても、病気が再発したり、病気の進行が止まっていたものが再び進行し始めたりする可能性が高いがんです。造血幹細胞移植(自家移植)がうまくいった場合でも再発する場合があります。

このような場合には、今までの治療内容や患者さんの臓器機能障害、合併症の有無などを考慮して、薬物療法が行われます。この時期の治療は救援療法(救援化学療法)と呼ばれます。治療効果が得られない場合は、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持しながら病気と付き合っていくことを目指した治療を行います。

治療方法については「多発性骨髄腫 治療の選択-3.再発・難治性骨髄腫に対する治療」をご参照ください。

2.生活の質を重視した治療

近年、がんと診断されたときから、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)の改善を目的とし、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげたり、患者さんとご家族がその人らしく過ごしたりするための緩和ケアが浸透し始めています。

緩和ケアは、がんが進行したときだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものです。痛みや吐き気、食欲不振、だるさなど体の症状や、気分の落ち込みや孤独感など心のつらさを軽くすること、また、その人らしい生活を送ることができるように、緩和ケアでは医学的な側面に限らず、幅広い対応をしていきます。

そのためにも、治療や療養生活について不安なこと、わからないことがあれば、ご自身の思いを積極的に担当医に伝えましょう。十分に話し、納得した上で治療を受けることが大切です。

詳しくはこちらの「緩和ケア」もご参照ください。

再発のことについては、「患者必携がんになったら手にとるガイド 普及新版」の以下の項目もご参照ください。
がんの再発や転移のことを知る患者必携サイトへのリンク
緩和ケアについて理解する患者必携サイトへのリンク
痛みを我慢しない患者必携サイトへのリンク
がんの再発に対する不安や、再発に直面したときの支えとなる情報をまとめた冊子です。がんの再発という事態に直面しても、「希望を持って生きる」助けとなりたいという願いを込めて、再発がんの体験者、がん専門医らとともに検討を重ねて作成されたものです。
(Webサイトでもご覧になれます。「もしも、がんが再発したら [患者必携]本人と家族に伝えたいこと患者必携サイトへのリンク
もしも、がんが再発したら 冊子
【参考文献】
  1. 日本骨髄腫学会編:多発性骨髄腫の診療指針 第4版(2016年9月);文光堂
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