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基底細胞がん(きていさいぼうがん)

更新・確認日:2018年02月13日 [ 履歴 ]
履歴
2018年02月13日 「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年)」より、内容の更新をして再掲載しました。4タブ形式に変更しました。
2017年08月21日 掲載準備中として、公開を中止しました。
2007年09月03日 内容を更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。
診療の流れ、セカンドオピニオンなど、本格的に治療を始める前に知っておいていただきたい情報については以下の「治療にあたって」をご参照ください。

1.皮膚について

皮膚は表面に近い部分から表皮、真皮、その深部の皮下組織の3つの部分に大きく分かれます(図1)。

表皮はさらに表面側から順に、角質層、顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層(きていそう)の4層に分けられます(図2)。表皮の最下層である基底層は真皮と接しています。真皮には、血管、神経、毛包(毛穴)、脂腺、汗腺、立毛筋などの組織があります。
皮膚は、人の体全体を覆っており、人体において最も多い面積と重量を持つ臓器です。外界からのさまざまな刺激(微生物や紫外線、外力、異物など)から体を保護することや、水分の喪失防止、体温調節、感覚器としての役割など、生命の維持に欠かせないさまざまな機能を持っています。
図1 皮膚の構造
図1 皮膚の構造
図2 表皮の構造と細胞
図2  表皮の構造と細胞

2.基底細胞がんとは

基底細胞がんは皮膚がんの一種で、表皮の最下層である基底層や毛包などを構成する細胞から発生するがんです。

多くは高齢者に発生し、7割以上が顔面、特に顔の中心寄り(鼻やまぶたなど)に発生します。
基底細胞がんは、放置すると局所で周囲の組織を破壊しながら進行することがありますが、転移をすることは非常にまれです。
用語集
転移 

3.症状

初期症状として最も多いのは、黒色から黒褐色の軽く盛り上がった皮疹で、ほとんどの人がほくろと勘違いします。その後、通常は数年かかってゆっくりと大きくなり、次第に硬い腫瘤(しゅりゅう)を形成します。
進行すると中心部は陥没して潰瘍となり、かさぶたが繰り返しできたり、出血しやすい状態となることがあります。これが、「結節型」と呼ばれる日本人に多いタイプの基底細胞がんです。
まれに「斑状(はんじょう)強皮症型」といって、やや光沢のある薄い紅色や白色で瘢痕(はんこん:きずあと)に似た状態のものや、「表在型」という、境界が鮮明な紅斑で表面にかさぶたのようなポロポロと落ちる皮膚のついた状態のものなど、がんには見えないようなものもあります。
通常、痛みやかゆみなどの症状はありません。
今までなかったほくろや黒いしみができてだんだん大きくなってきたなど、気になる部分ができたときは自己判断したり、取ろうと思っていじったりせずに、皮膚科専門医を受診しましょう。早期の受診が、早期治療につながります。
用語集
腫瘤 

4.組織型分類(がんの組織の状態による分類)

基底細胞がんの組織型は、病理検査の所見から、主に結節型、表在型、浸潤型、斑状強皮症型(硬化型を含む)、微小結節型の5つに分類されます。実際には、これらの混合型が多くみられます。また、これらに当てはまらない型もあります。
斑状強皮型はがんと正常な皮膚との境目がわかりにくく、思ったよりも手術が広い範囲に及ぶことがあるため、注意が必要です。

5.統計

基底細胞がんは、日本人の皮膚がんにおいて最も多いがんで、皮膚がん全体の約24%を占めます。皮膚の基底細胞がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり約4人です1)

6.発生要因

基底細胞がんの明らかな原因はわかっていませんが、発症の要因として、紫外線や外傷、やけどの瘢痕、放射線による慢性皮膚障害などがあげられています。

基底細胞がんの発生予防にサンスクリーン剤(日焼け止め)などによる紫外線防御が有効かどうかは、まだ明確な根拠が示されていません。しかし、過度の日光浴を避けることは、白内障や感染症など他の健康障害を防ぐ上でも必要とされています。

7.予防と検診

日本人を対象とした研究結果では、がん予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。
がん検診の目的は、がんを早期発見し、適切な治療を行うことでがんによる死亡を減少させることです。わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針(平成28年一部改正)」で検診方法が定められています。

しかし、基底細胞がんについては、現在、指針として定められている検診はありません。気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することが勧められます。

なお、検診は、症状がない健康な人を対象に行われるものです。がんの診断や治療前後の検査は、ここでいう検診とは異なります。

8.「基底細胞がん」参考文献

1)Tamaki T, Dong Y, Ohno Y, et al. The burden of rare cancer in Japan: Application of the RARECARE definition. Cancer Epidemiology 2014; 38: 490-495.
2)日本皮膚悪性腫瘍学会 編:皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年8月);金原出版
3)日本皮膚科学会.皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版.日本皮膚科学会雑誌.2015年;125(1):5-75
4)日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第1版(2007年);金原出版
5)日本皮膚科学会/日本皮膚悪性腫瘍学会編:科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年);金原出版
6)UICC日本委員会TNM委員会 訳:TNM悪性腫瘍の分類 第8版日本語版(2017年);金原出版
更新・確認日:2018年02月13日 [ 履歴 ]
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2018年02月13日 「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年)」より、内容の更新をして再掲載しました。4タブ形式に変更しました。
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2007年09月03日 内容を更新しました。
1996年09月13日 掲載しました。

1.基底細胞がんの検査

日本人では、大部分が色素を持つタイプの基底細胞がんであるため、同じように色素を持つ他の皮膚疾患(悪性黒色腫や他の良性疾患)と見分けることが必要となります。多くの場合はダーモスコピーという検査によって診断が可能です。それでも確定診断が難しい場合は、生検を行います。
その他必要に応じて、病気の広がりを調べるために、画像検査(超音波、CT、MRI、X線など)を行います。

2.検査の種類

1)視診・触診

視診とは目で見て病変を調べることです。視診では、色、表面の性状(凹凸があるか、潰瘍はないかなど)を確認し、腫瘍(しゅよう)の最大径(幅)や盛り上がっている部分の高さを計測します。
触診とは指で触れて病変を調べることです。触診では、硬結(こうけつ)や癒着、可動性の有無を、腫瘍の周辺の皮膚から少しつまみ上げるようにして調べます。
用語集
腫瘍 

2)ダーモスコピー

ダーモスコピーとは、色素性皮膚疾患を観察するための特殊なルーペ(ダーモスコープ)を用いた検査です。病変部を10倍から30倍程度に拡大し、反射光のない状態で明るく照らして観察することができます。痛みもなく、簡便な検査です。この検査によって、基底細胞がんに特徴的な所見の有無を確認します。

3)生検

臨床所見やダーモスコピーによっても診断が確定できない場合には、生検を行います。局所麻酔を行い、皮膚病変の一部を切り取って顕微鏡で調べます。

4)CT検査、MRI検査

腫瘍の下部組織への浸潤や広がりを調べるために、CT検査やMRI検査が行われることがあります。CT検査では、X線を使って体の内部を描き出します。MRI検査は磁気を使用します。造影剤を使用する場合、まれにアレルギーを起こすことがあります。アレルギーの経験のある人は医師に申し出てください。
更新・確認日:2018年02月13日 [ 履歴 ]
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1996年09月13日 掲載しました。

1.病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。病期は、ローマ数字を使って表記することが一般的です。

1)病期

基底細胞がんの病期は、0期からIV期までの5つに分けられます(表1)。

実際には、基底細胞がんの多くが2cm以下の大きさで真皮内にとどまっているI期の状態で見つかり、リンパ節や内臓への転移は非常にまれだとされています。
表1 基底細胞がんの病期
copyright
UICC日本委員会TNM委員会訳「TNM悪性腫瘍の分類 第8版 日本語版(2017年)」(金原出版)より作成
図3 基底細胞がんの病期
図3 基底細胞がんの病期

2)再発に対する高リスク因子

基底細胞がんでは、再発に関するリスクを高リスク因子(表2)をもとに高リスクと低リスクに分類し、それに沿って治療方針を決めていきます。
表2 基底細胞がんの再発に対する高リスク因子
表2 基底細胞がんの再発に対する高リスク因子
copyright
日本皮膚科学会編「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第2版(2015年)」、日本皮膚科学会雑誌;125(1),5-75より作成
用語集
再発 

3)治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者さんの希望なども含めて検討し、担当医とともに決めていきます。

基底細胞がんの治療法は、手術による外科的切除が第一選択となります。
図4は、基底細胞がんに対する治療方法を示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
図4 基底細胞がんの治療の選択
図4 基底細胞がんの治療の選択
copyright
日本皮膚悪性腫瘍学会編「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第1版(2007年)」(金原出版)より作成

2.手術(外科治療)

手術による外科的切除は、基底細胞がんに対する最も確実な治療とされています。初回の手術で病変が完全に切除できれば、根治する可能性は非常に高くなります。

1)手術の方法

腫瘍を確実に切除するために、腫瘍の辺縁(ふち)から正常皮膚を含めて大きく切除します。実際の切除範囲は、低リスクの場合は腫瘍の辺縁から4mm程度、高リスクの場合には5〜10mmの余裕をもって切除することが勧められています。
また、腫瘍の下部組織(皮下脂肪組織)も十分に含めた深さで切除します。組織型が高リスク(斑状強皮症型、浸潤型、微小結節型)の場合、もしくは腫瘍が大きい場合には、より深いところまでの切除を必要とすることがあります。
組織型が高リスク(斑状強皮症型、浸潤型、微小結節型)の場合は、手術中に切除した組織の切り口(切除断端といいます)に対して病理診断(術中迅速病理診断)を行い、切除断端に腫瘍が残っていないかを確認することが勧められています。
切除断端に腫瘍が残ることを断端陽性といい、腫瘍が残っていない場合は断端陰性といいます。断端陽性の場合は再発リスクが高くなるため、術後早期に再切除することが勧められています。再切除が難しい場合には、放射線治療が考慮されます。
手術による皮膚の欠損が大きい場合には、植皮(自分の皮膚の一部を移植すること)によって足りない皮膚を補います。また、高リスクの場合は二期的手術が勧められています。これは、手術後の病理検査によって切除断端に腫瘍が残っていないことを確認してから、再建手術を行う方法です。

2)手術後のケア、注意事項

植皮をした場合には、手術後に植皮部位の固定と安静が必要となります。手術後のケアや注意事項については、担当医にご確認ください。

3.放射線治療

基底細胞がんの治療の中心は手術です。しかし、主に以下のような場合に、放射線治療を行うことがあります。放射線治療を行うかどうかは、専門医による慎重な検討がされます。
・手術によって体の機能や見た目の変化が懸念される場合
・腫瘍が大きく十分な切除ができない場合
・再発を繰り返し手術が難しい場合
照射する放射線の種類や範囲、量、回数などは、腫瘍の範囲や深さによって検討されます。

4.薬物療法

基底細胞がんに対する薬物療法として、軟膏などによる局所化学療法が行われることがあります。手術ができない場合や局所進行例(転移がないが、がんが深く進行している場合)には、全身化学療法が行われることがあります。

1)フルオロウラシル(5-FU)軟膏

フルオロウラシル(5-FU)軟膏は、主に腫瘍内のDNAの合成を阻害することで腫瘍の増殖を抑えます。低リスク部位(体幹、四肢)の表在型基底細胞がんに対して使用されることがあります。1日2回、 少なくとも3〜6 週間は続けて塗布します。主な副作用には、塗った場所の痛み、熱っぽさ、浮腫、ただれ・潰瘍、感染しやすくなる、色素沈着などがあります。

2)イミキモド

イミキモドはウイルス増殖を抑制し、自然免疫を活性化する薬です。5%イミキモドクリームは、手術が難しい表在型基底細胞がんの場合に使用されることがあります。再発率はやや高いですが、効果がある人が多いとされています。主な副作用には、塗った場所が赤くなること、ただれ・潰瘍、刺激感、皮膚の色が薄くなることなどがあります。2018年2月現在、基底細胞がんに対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。

5.凍結療法

凍結療法は、液体窒素スプレーを用いてがん細胞を凍らせ、壊死(えし)させる治療です。結節型、表在型の低リスクの基底細胞がんで、手術ができない場合に、凍結療法を数回繰り返し行うことがあります。再発率はやや高いですが、効果がある人が多いとされています。実施については慎重な検討を行います。

6.光線力学的療法(photo- dynamic therapy; PDT)

低リスクの基底細胞がんに対する非外科的治療として、光線力学的療法(PDT)が欧米を中心に導入されています。光線に感受性のある物質を投与してからレーザー光を照射します。しかし、日本人に多い色素性基底細胞がんを対象とした研究は少なく、国内で積極的に推奨される段階にはまだ至っていません。2018年2月現在、基底細胞がんに対して公的医療保険の対象外であるため、詳細は医師にご相談ください。

7.生存率

がんの治療成績を示す指標の1つとして、生存率があります。

生存率については、全国がんセンター協議会(全がん協)で、院内がん登録から算出された5年相対生存率のデータが公開されていますが、現在のところ、基底細胞がんの生存率は公開されていません。

8.リハビリテーション

一般的に、治療の途中や終了後は、体を動かす機会が減り、身体機能が低下します。そこで、医師の指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動、日常の身体活動などを、リハビリテーションとして行うことが大切だと考えられています。日常生活の中でできるトレーニングについて、医師に確認しましょう。

9.緩和ケア

緩和ケアとは、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法です。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をします。患者さん本人にしかわからないつらさについても、積極的に医療者へ伝えるようにしましょう。

10.臨床試験

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で最良の医療であり、保険診療で受けることができる治療法です。

現在行われている標準治療は、より多くの患者さんによりよい治療を提供できるように、研究段階の医療による研究・開発の積み重ねでつくり上げられてきました。よりよい標準治療の確立を目指して、臨床試験や治験などの研究段階の医療が行われています。

1)基底細胞がんの臨床試験

現在国内で行われている臨床試験(医師・研究者が実施する臨床試験、および製薬企業や医師が実施する治験の一部)に関しては、「がんの臨床試験を探す」で、開発の段階別に分類された情報を閲覧することができます。

参加できる臨床試験があるかについては、担当医に相談してみましょう。

11.転移・再発

転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れなどに乗って別の臓器に移動し、そこで成長することをいいます。再発とは、治療の効果によりがんがなくなったあと、再びがんが出現することをいいます。

1)転移

基底細胞がんでは、転移は非常にまれであるとされています。

2)再発

基底細胞がんが再発した場合は、外科的切除が勧められています。一度再発した基底細胞がんは、初回治療例よりも再発しやすいため、外科的切除後に、病理診断で断端陰性を確認してから再建手術を行う二期的手術が勧められています。

ただし、高齢であることや合併症があるなどの理由で手術が難しい場合には、放射線治療や凍結療法などが行われることがあります。
更新・確認日:2018年02月13日 [ 履歴 ]
履歴
2018年02月13日 「皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版(2010年)」「科学的根拠に基づく皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン 第2版(2015年)」より、内容の更新をして再掲載しました。4タブ形式に変更しました。
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1996年09月13日 掲載しました。

1.日常生活を送る上で

1)日常生活の注意

皮膚のがんでは、自分で創(きず)の周囲の状態を観察することができます。手術を行った場合には、患者さんやご家族が定期的に鏡を利用して全身の皮膚の状態をチェックすることが、再発や転移を早期に見つけるために役立つとされています。

一般には、皮膚の色が変化したところはないか、急に盛り上がったり、しこりができたり、引きつれがないかどうか、などを観察します。普段の診察のときに担当医に、自分で気をつけておくべきことについて確認しておきましょう。心配なことがあったら、自分で判断しないで必ず担当医や看護師に相談しましょう。
一般的に、性生活には支障はありません。ただし、治療中の妊娠・出産や避妊の必要性、経口避妊薬の使用などについては、担当医とご相談ください。

2.経過観察

再発の有無や、新しい病変の早期発見・早期治療のために、定期的に通院し経過を観察します。通院の頻度や期間には明確な基準が示されてはいませんが、一般的には術後の初年度は 6カ月ごとに、2〜3年間は1年ごとに経過を観察します。高リスクの場合は、5年間の経過観察が勧められています。